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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
5章 王国に潜む悪意1 嵐の前
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303 嵐の前

※R18シーンに該当する表現を若干カットしております。

 職業情報が掲載されています。閲覧されるデバイスによっては見辛くなっているかもしれません。

 やることも決まって、数日間は何事もない日々が続いた。



 何事も無いと言っても、俺の悪評は着々とスペルド王国全土に広がりを見せている。


 そこにトライラムフォロワーと教会の孤児達が面白がって、更なる悪評を上乗せしていたりするんだけどね。



 あいつら、覚えとけよぉっ!? 俺は絶対忘れないからなぁっ!




 職業の浸透は順調に進み、俺は勇者と魔王がLV218に、神殺しがLV67まで上昇した。


 LV200を超えた途端にレベルアップが一気に遅くなってしまったけれど、新たなスキルを得られるわけでもないので問題ないだろう。



「深獣化の使いどころは難しいけど、切り札が増えるのは嬉しいのっ」



 ニーナは英雄と竜殺しを浸透させて、とうとう獣戦士になった。


 というのも法王や聖者、守護者や神殺しといった職業がニーナには表れていないため、最早他に上げる職業が無くなってしまったんだよねぇ。




 獣戦士 LV上限無し

 補正 体力上昇+ 魔力上昇+ 物理攻撃力上昇+ 持久力上昇+

    敏捷性上昇+ 身体操作性上昇+ 五感上昇+ 装備品強度上昇+

 スキル 貫通+ 獣化消費軽減 深獣化開放




 なんとなく怪しいと思えるのは……、篤志家かなぁ?


 でも俺以外には篤志家って現れてないんだよねぇ。転職の条件が満たせていないんだよ。



 出てないものは仕方ないのでニーナは獣戦士になり、現在は既にLV116まで到達している。



「私には切り札みたいなものは無いけど、それでも名匠として恥じないように頑張るわねっ」



 ティムルは分析官、侠客、英雄、竜殺し、武道家を経て名匠に戻った。現在は名匠LV223だ。




 名匠 LV上限無し

 補正 体力上昇+ 魔力上昇+ 敏捷性上昇+ 五感上昇+

    身体操作性上昇+ 幸運上昇+ 装備品強度上昇+ 

 スキル 上級レシピ解放 熱視消費軽減 装備品出現率上昇




 ティムルの場合は職業浸透よりも、マジックアイテム開発の方が進んでしまってびっくりだよ。


 レインメイカーで救われる命がどれほどあるんだろうね。



「ソクトルーナ家の令嬢として、母上と父上が自慢できる娘でありたいのじゃーっ」



 フラッタは殺人者、暗殺者、慈善家、竜殺しを浸透させて、とうとう竜騎士へと到達した。


 竜殺しを浸透させた次に竜騎士になったのはいいんだろうか? いいんだろうな。




 竜騎士 LV上限無し

 補正 体力上昇+ 魔力上昇+ 物理攻撃力上昇+ 物理防御力上昇+

    敏捷性上昇+ 身体操作性上昇+ 五感上昇+ 装備品強度上昇+

 スキル 対人攻撃力上昇+ 対人防御力上昇+

     物理耐性+ 魔法耐性+ 病気耐性+ ブレス強化




 フラッタはブレスの応用や気配遮断と陽炎の組み合わせなど、積極的にスキルを活用して戦闘力を高めようとしている感じがする。


 現在の職業は竜騎士LV104だ。



「……みんな、今まで鑑定しないでくれていてくれてありがとう。もし鑑定されていたら、ぼくはみんなとは一緒にいれなかったかもしれないなぁ……」



 リーチェは竜殺しと慈善家、そして分析官を浸透させて、現在巫術士LV89である。


 リーチェのレベルは、鑑定が使えるようになったリーチェからの自己申告だ。



 好色家にはまだなれなかったらしく、かと言ってフォアーク神殿で犯罪職になるわけにもいかず、巫術士を狙ってみたら転職出来たという流れだ。


 職業設定が使えないせいで、今ではリーチェの職業浸透数が他のメンバーより少ないくらいになってしまった。



 リーチェは犯罪職の敏捷性補正が浸透していないのに、他のみんなの動きに問題なくついてこれている。


 このことから、俺たちは累積した職業補正をフルに活用出来ていないであろうことが推察できそうだ。



 ちなみに巫術士の職業スキルである精霊憑依の披露は、今はまだ控えてもらっている。


 どう考えてもエロい展開に転がる未来しか見えないからなっ! 問題が片付くまでは我慢するしかないのだぁっ!



 メナスの件が片付いたら、最優先でリーチェの問題を解決するぞぉっ!



「はぁ~、信じられませんね……。ほんのひと月ほど前は、職業の加護なんて1つも得られていませんでしたのに……」



 ヴァルゴは殺人者、暗殺者、英雄、紳商を経て、現在魔祷士LV101だ。




 魔祷士 LV上限無し

 補正 体力上昇+ 魔力上昇+ 物理攻撃力上昇+ 魔法攻撃力上昇+

    敏捷性上昇+ 五感上昇+ 身体操作性上昇+ 装備品強度上昇+

 スキル 魔技消費軽減 魔技使用制限緩和




 彼女は農家や料理人、竜殺しや慈善家になることが出来ないので、リーチェより更に浸透数が少ない。


 どうやらドレイク種は竜族認定してもらえていなかった模様。



 魔祷士のスキルである魔技使用制限緩和なんだけど、コレは単純な話、ヴァルゴは訓練次第で魔迅以外の能力も習得できる可能性があるということらしい。


 だから色々試行錯誤しているようだけれど、今のところは上手くいってないみたいだねぇ。


 魔迅が強力すぎるので、戦闘面では特に困っていないっぽいけど。



 仕合わせの暴君メンバーの他には、ムーリとラトリアが冒険者を浸透させて、2人とも探索魔法士の浸透を開始している。




 探索魔法士 最大LV50

 補正 魔力上昇 魔法攻撃力上昇-

 スキル 探索魔法




 ターニアとエマが探索者になったおかげで、職業浸透が早まっている感じがするなぁ。




 ペネトレイターの開拓村来訪は既に達成されていて、開拓村の住人には魔人族は見慣れた存在になりつつある。


 そこで魔人族から30人ほど冒険者を選抜して、王国内の主要都市全てにポータルで移動できるように準備した。


 これで何処が襲撃されても、イントルーダーさえ現れなければ被害を最小限に食い止めることが出来るだろう。



 ヴェルモート帝国が魔物に襲われる可能性もあるかもしれないけど、流石にそこまで面倒見れませーん。



 ぼちぼち探索者と高品質装備品が行き渡り始めた守人たちは、更なる職業浸透を求めて聖域の樹海の最深部を探しているのだけれど、今のところ発見には至っていないようだ。


 聖域の樹海、広すぎでは?



「ふむふむ? ここに発光した魔玉をはめ込めばいいのですな?」



 魔人族の集落で、ティムルの開発したマジックアイテム、レインメイカーの試運転も行なってみた。


 魔人族にとっては発光魔玉なんて素材以上の価値も無いアイテムなので、魔玉から水を生み出すことには全く抵抗が無かった。



「の、飲み水がこんなに手軽に、そして安全に入手できるようになるなんて……!」



 好評だったので各集落に10個ずつ配布してあげると、魔人族たちはティムルの姿を見るたびに地面に跪いて祈りを捧げるようになってしまった。


 流石は女神ティムル。魔人族のハートを鷲掴みだぜっ!



 ほとんど自立できたように思える魔人族たちの転職の面倒を見るのはやめて、これからは王国の転職魔法陣を積極的に活用してもらう事にした……かったんだけどぉ。


 まだ恐らくメナスに把握されていないペネトレイターの存在を自分たちから喧伝するのは馬鹿馬鹿しいので、結局未だに俺の職業設定で転職してもらっていたりする。



 対テロ戦力の切り札である魔人族たちは、メナスの件が片付くまでは今まで通り俺が面倒を見続けなきゃいけない。


 その存在を秘匿するためには仕方ないけど、めちゃくちゃ面倒臭いよぉ。



 でも面倒臭いけれど、ペネトレイターたちの浸透は本当に早い。


 職業浸透に対するモチベーションが高すぎる。



 騎士や攻撃魔法士を浸透させるものも出てきたので、パーティ単位なら充分にアウターエフェクトに対抗できる戦力として数えられるだろう。


 造魔で生み出された魔物はオリジナルより劣化しちゃってるしね。


 俺が討伐した事のあるデーモン種とロード種を毎日村に配置して、対アウターエフェクト戦の訓練にでも使ってもらおうかな?



「あ、ダンーっ! 他の街の子たちにもダンの悪口広めておいたからねーっ!」


「言い方ぁっ! ちょっとは自重しろお前らぁっ!」



 俺の悪評をせっせと広めているトライラムフォロワーも、今では参加者が100人を超えるほどの大所帯になったようだ。


 空き枠に余裕が無くなってきたアライアンスプレートを見て、ムーリがいつもニコニコしている。



 ワンダ率いる幸福の先端は、なんと既にスポットの最深部に到達してしまったらしい。


 あいつら優秀すぎぃ!



 だけど全員の装備を全身ブルーメタル以上にするまでは、最深部には踏み込まない方針らしい。


 その間にワンダの冒険者の浸透を済ませ、アナザーポータルの習得を目指すのだとか。



 …………堅実すぎて怖いなあいつら。




 トライラムフォロワーやトライラム教会の教会兵に魔玉を使った職業浸透判定法を伝えた事で、一般的な魔物狩りにも少しずつ職業浸透という概念が広まりつつあるらしい。


 悪評の目立つ俺が情報源だとマズいので、トライラム教会が発見した事実として流布している。



 職業浸透の知識が改善された事で、教会兵から一般の魔物狩りに至るまで、この世界全体の職業浸透スピードが早まっているらしい。



 転職しても確実にスキルを受け継ぐ方法があるのなら、転職のリスクは限りなくゼロに近い。


 そりゃみんなどんどん転職を始めるよなー。



 行商人の重量軽減スキルだったり、旅人や冒険者の持久力補正がもっとこの世界に広まっていったら、大工や職人たちの作業って死ぬほどスピードアップするんじゃないか?



 この世界の人たちの職業補正は全然足りてなかったと思うから、みんなの職業浸透が進んでいくのは歓迎すべきことだとは思うんだけど、1つだけ懸念がある。


 それは、この世界の魔力バランスのことだ。



 職業浸透が進むメカニズムは、魔物を倒す事で魔物から魔力を奪って、その魔力で職業の力を自分の魂に定着させていくという物だ。


 つまり人間たちの職業浸透が進むほど、大気中の魔力が欠乏していくということに他ならない。



 奈落の底から勢い良く噴き出す魔力を見た後だと心配要らないような気もするけれど、かつてバロールの民がスペルド王国を目指したのは聖域の樹海に異変が見られたためだ。


 それに、ドワーフの里のように魔力が全く無い土地というのも既に存在している訳だし、あまり楽観的に考えすぎない方がいい問題の気がするんだよなぁ。


 ま、今はメナスの事で手一杯なんだけどさぁ。




「飛ぶ鳥落す勢いの私たちを見て、正面からぶつかるのは得策ではないと判断したんでしょうね。カリュモード商会は表立った行動を控え始めたわ」



 ふふんっとドヤ顔で報告してくれるキャリアさん。


 現在、シュパイン商会とカリュモード商会の小競り合いは小康状態に入っているそうだ。



 魔人族から装備品が届き始めたシュパイン商会は、ついに念願だった装備品業界に参入。


 俺のせいで王国中の装備品が不足していたこともあって、シュパイン商会の扱う装備品は飛ぶように売れているそうだ。



 高品質の魔物狩り用品を扱っていたことから、元々魔物狩りからの覚えが良い商会だったこともあり、しかも稀にウェポンスキルつきの武器まで扱っているというのだから、シュパイン商会の評判はうなぎのぼりだ。



「おかげさまで業績は順調そのものよ。でも気になる情報が2つあるの」



 シュパイン商会の快進撃を上機嫌に語っていたキャリアさんが、忌々しそうに表情を歪めて懸念を伝えてくれる。



「1つ。カリュモード商会を中心にいくつかの商会が裏で手を組んで、反シュパイン商会の一大勢力に成長しつつあるみたいね。ダンさんたちのおかげでそれでも私達の方が有利な状況だけど……。鬱陶しいったらありゃしないわね」


「ええ……? そこまでいくと俺との付き合いとかもう関係なくない? シュパイン商会自体がターゲットになってる気がするんだけど……」


「はっ! 流石ダンさん、話が早いじゃない」



 ウンザリしたように吐き捨てるキャリアさん。


 そんな風に褒められても、説明してもらわないと分からないんだよ?



「実は最近、ネフネリの奴が脱走したって方が届いてねぇ。似たような獣人の娘がカリュモード商会の人間と接触している目撃情報が寄せられてるのよ」


「嘘、ですよね……? 脱走って、そんなぁ……」



 キャリアさんの説明を聞いて、ティムルもまたうんざりした様に眉を顰めている。


 ネフネリって確か、ティムルに濡れ衣を着せようとした、どっかのジジイの元妻の1人だったっけ?



 っていうか、なんでそんなあっさり脱走してんの?


 ネプトゥコの警備隊って1度ドロームを取り逃してるから、世界樹の護り関係の容疑者には厳しい扱いをしてそうなんだけどなぁ?


 いや、ネフネリがネプトゥコで投獄されていたとは限らないか。



「ティムル~。ウンザリするのはまだ早いわよぉ?」


「え~……。正直聞きたくないんですけどぉ……」


「カリュモード商会に接触したと思われる人物はネフネリだけじゃないの。ロジィ……、どっかのジジイもカリュモード商会に出入りしてるのが目撃されてるのよね……」


「はぁっ!? あのジジイがカリュモード商会にですかっ!? カリュモード商会は、あんなジジイに何の価値を見出して拾ったわけぇ……?」



 ロジィという名前に聞き覚えは無いんだけど、どうやらティムルには心当たりがあるようだった。


 ネフネリが脱走したという話を聞いたとき以上に落胆した様子で、大袈裟に頭を抱え込んでいる。



「ねぇティムル。ロジィって誰?」


「あっ、ごめんね? ロジィってのは元シュパイン商会の会長で、奴隷だった私を買った男のことよ」



 ああ、俺のティムルを弄んだジジイのことか。


 シュパイン商会から放逐されたあとも、意外としぶとく生き残ってたわけね。



「あの男は無能で商才も碌に無いんだけど、強者を見極めて尻尾を振るのが上手いのよねぇ。カリュモード商会か、はたまた別の誰かに尻尾を振って取り入ったんでしょ」


「ふぅん?」



 蛇蝎の如く嫌っている元妻ですら、エロジジイの人に取り入る才能を認めているようだ。



「まったく忌々しい……。追放じゃなくて殺してやれば良かったわ」


「同感よ。一応命を拾ってもらった恩だけは返そうと、追放だけで済ませたっていうのにさぁ。カリュモード商会と手を組んで反シュパイン商会の勢力の先頭に立って活動してるとか、信じられるぅ?」



 おーっとぉ、オディさんとトーレさんという元妻達から強烈な殺気が漏れているぞぉ?


 うちの家族はこうならないように気をつけないといけないな。



「元々シュパイン商会の顧客だった一般層の魔物狩りたちには影響が無いんだけど、貴族層や富裕層の人間と手を組んで反シュパイン商会、反仕合わせの暴君運動を扇動してるみたいね」


「ジジイとネフネリが取り込まれているなら、ターゲットはもうダンだけじゃないってことですか」


「あくまで私たちはついででしょうけどねー。皆さんと面識の無い貴族連中には、カリュモード商会に賛同しちゃってる人も出始めてるみたいでさぁ」



 要するに、俺に対する悪評が実を結び始めたってことか。


 それじゃ、そろそろ始まるかもしれないなぁ。



 ジジイの元妻による愚痴と悪口に散々つき合わされてから、シュパイン商会を後にした。





「ごめんみんな。ちょっとだけ寄り道させてくれる?」



 なんとなく開拓村に転移して、俺がこの世界に初めて降り立ったあの広場に足を運んだ。


 復興の際に残してもらわなくても良かったんだけど、俺の好きにしていいと言われたので、なんとなく残してもらった場所だ。



 あの時の惨劇。


 あの時に出会ったフレイムロードが、もしもメナスによって呼び出されていた魔物だとしたら……。



 俺とメナスの間には、この世界の誰よりも深い因縁があるのかもしれないなぁ。



 あの日、この世界に下り立って。


 燃え盛る街の中、悲鳴と怒号が響き渡る中で、俺はたった1人で何も出来ずに、人々が殺されるのを見ている事しか出来なかったけれど。



「ここがダンが来た場所なの? 変わったものは何も無いんだねー」



 ニーナと出会って、俺はこの世界で生きる意味を見つけた。



「あはーっ。オディ様とトーレ様も随分張り切ってるのねぇ。ここが少し前までは無人だったなんて、とても信じられないわぁ」



 ティムルと出会って、この世界での人との繋がりを持てた。



「造魔で弱体化されていたとはいえ、村人すら浸透していない状態でフレイムロードと相対するなど背筋が凍るのじゃ。その時にダンが殺されておれば、妾たちも出会うことは無かったのじゃなぁ」



 フラッタと出会って、この世界で強さを求めるようになった。



「1度完全に壊滅させられたのに、こうして復興に向かうこの村を見ていると、ダンが訪れた後のこの世界の縮図を見てるみたいだよ。この世界は色々なことが忘れられ、様々な物が失われちゃったけれど……。ダンのおかげで少しずつ大切な物を取り戻せている気がする……」



 リーチェと出会って、最強の更に先を目指すようになった。



「守人たちも失われた加護の力、スペルドとの関わり、色々な物を旦那様に取り戻していただきました。私達のほかにも旦那様は、沢山の人の大切な物を守ってくださっていたんですね」



 ヴァルゴと出会って、俺が戦うべき敵の存在を知った。



「みんな、付き合ってくれてありがとね」



 愛するみんなとの出会いこそが、俺がこの世界で生きてきた証そのものだ。



「深い理由があるわけじゃないけど、なんとなくこの場所に来てみたくなっちゃったんだ。メナスとの戦いが始まる、その前にさ」



 無力で独りだった俺はもういない。


 心から信頼できる家族を得て、見つけた限りの全ての職業の加護を得て、最高水準の装備品に身を包み、戦う覚悟と意志を持った。



 相手がこの世界を裏から牛耳る巨悪だとしても、負ける気なんか全然しない。



「きっともうすぐメナスとの戦いが始まると思う。でもさ、俺にとってはこんなの厄介事の1つでしかなくて、どうでもいい案件でしかないんだよ」



 この王国に潜む闇に、この世界を牛耳る存在なんかに自分から関わろうなんて思った事は無い。


 けれどメナスを放置していたら、俺の愛する家族達が不幸になってしまうかもしれないから、面倒でも厄介でも立ち向かうしかないのだ。



「メナスなんかさっさと片付けて、翠の姫エルフの抱える問題をさっさと解決して、あとはみんなでずーっと、寝室に篭って暮らしたいねぇ」


「ダンは面倒臭そうにしてるのに、自分から厄介事に手を伸ばしちゃうの。でもそんなダンが大好きなのーっ!」


「あはーっ。リーチェと一緒にダンに愛されるの、すっごい楽しみなのよねーっ! エルフと一緒に愛されるドワーフなんて、絶対に私しかいないでしょーっ!」


「妾を助けてくれた時と同じなのじゃ。ダンは絶対に誰も見捨てられないから、助けなきゃいけないから面倒臭いって言ってるのじゃなー!」


「ぼくも王国の危機よりも、ダンに抱いてもらえるかどうかの方が気になって仕方ないなぁ。だから王国の危機なんてどうでもいいこと、サクッと解決しちゃおうねっ」


「はぁ……。旦那様の御子を授かれないのだけが残念で仕方ありませんよ……。残念ではありますが、そのおかげで常に旦那様に愛してもらえるんですから複雑ですねぇ」



 あの日滅びた村は復興し、あの日独りだった俺は、こんなに可愛いお嫁さんをいっぱい貰うことになってしまった。


 勘違いで始まった異世界での生活だけど、今はこの世界に来れた事に感謝してる。



 さぁお姫様たち、家に帰ろうか。


 戦いが始まるまでは、いつも通りみんなで楽しく過ごそう。



 この世界で始めて降り立った場所でみんなにキスをして、マグエルの自宅に転移した。






「ゴブトゴ様より伝令っ! みなさん、緊急事態ですっ!」



 次の日の朝、スペルド王国の各地で大量の魔物が暴れ回っているという報せが届く。



 この日、俺とメナスの戦いが幕を開けた。

※こっそり補足

 リーチェの職業である巫術士の情報ですが、職業情報は職業設定を使用できないと閲覧できないため、鑑定が使えるリーチェでも詳細を確認することができません、

 なので職業情報はあえて記載しておりません。

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