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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
5章 王国に潜む悪意1 嵐の前
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295 急成長

 無事にトライラムフォロワーの協力も得られる事になり、俺と親交のある人たちへの説明が済んだ。



 シュパイン商会とトライラム教会は拡散された悪評に便乗する事を最後まで渋っていたのに、1番親しいトライラムフォロワーがノリノリすぎて若干釈然としない。


 いや、俺が頼んだことなんだけどさぁ。



 ニッコニコの子供達に見送られてマグエルを後にする。


 頼むから、次に会うのは法廷だ! なんて言わなきゃならないほどに悪評を拡散するのは勘弁してくれよぉ……?




 マグエルの次は、装備素材の回収をしにディローム族の集落へと転移した。



「ふむ。ダン様の悪評については我らには関わりの無いこと。しかし場合によっては王国の民を守るために、我ら守人が各地に出向く必要があるかもしれないと」



 王国の情勢にほとんど関わっていない魔人族のみんなには踏み絵をさせる必要はない。


 でも一応現状の説明だけはしておく。



 もしかしたら守人たちに協力してもらわなきゃいけなくなるかもしれないしな。



「お任せください。職業の加護を得た今、集落の防衛には人手を割かずに済みますからの。出来る限りの人数が協力できるよう、来たるその日までしっかり腕を磨いておきますぞ」


「ダン殿の要請にすぐに応える為には、冒険者の数が必要だな。冒険者が浸透すれば次は探索者になれて、樹海の中を自由に転移できるようになるのだから損も無い。ならば浸透を急がねばなぁっ!」



 やる気に満ちた様子のルドルさんとカランさん。


 アウターエフェクトとも普通に戦えそうな守人たちが味方なのは心強いね。対人戦にも不安が無いし。



「先の話は置いておいて、まずは浸透が終わってる人の転職を済ませよっか」



 元々高い戦闘技術を持った守人の一族は、職業浸透が進み最低限の装備品が行き渡った事で職業浸透速度がどんどん加速している。


 集落の周辺に出る魔物のレベルも30~50LVくらいなので、よく村人のままで今まで滅ぼされずに済んだなぁと感心するよ。



 今回の転職では、職人を浸透させた15名を本人の希望に合わせて3人ずつ各種職人に転職させることが出来た。


 これでディロームの集落には、今後装備品を卸す必要は無くなった。



 1週間もしないうちに冒険者の浸透も終わっていそうだから、これからは3つの集落の行き来も容易になり、連携も取りやすくなるだろう。



「これ以上の転職の面倒を見ちゃうと王国に来る必要が無くなっちゃうからね。次からは王国の職業ギルドで転職するようにして欲しい。王国まで自力で来ることは可能なのかな?」


「問題ないぞっ! 加護が得られた今、聖域の魔物に後れを取る者などおらんからなっ!」



 がははと笑いながら、魔物に負けるはずがないと断言するルドルさん。


 トーチを使わないと視界が得られないような深い闇の中で、良く普通に生活したり魔物と闘ったり出来るよなぁ。



「ほほほ。森に入ったばかりの守人たちには加護が残っておりましたし、それ以降はこの森で生まれこの森で生活する者しかおりませんでしたからの。体が樹海に適応してくれたのでしょう」


「え~……? 500年も経ってないのに、体の方が環境に合わせて進化したの? 凄いなぁ……」


「おかげさまで闇の中で視界を閉ざされたりしませぬし、森の中で迷ったりすることも殆ど無いですなぁ。勿論、研鑽を積んだが故の能力かもしれませぬが」



 環境に適応したと言われるよりかは、修行の末に獲得した特殊能力と言われる方が納得するね。


 特にディロームの人たちは魔迅で肉体に魔力干渉できるからな。視力に何らかの魔力的な影響を受けてもおかしくない気がする。



「ということだから安心してくれいっ! 冒険者を浸透させた暁には自力で、スペルドに建設中だというダン殿の村を訪ねてみせよう!」


「俺の村じゃないからっ! それ絶対外では言わないでよ!?」


「王国では魔人族を見かけないと聞く。故に無用な混乱を避けるため、ダン殿には我ら魔人族の来訪を村に前もって伝えてもらえると助かるなっ」


「ん、確かにね。それは了解」



 元々魔人族に使用して貰う予定で再建した開拓村だったけど、守人たちの来訪が予想よりも早まりそうだから、改めて村人やオディさんたちに通達しておくべきか。


 事前連絡の重要性はカランさんが自ら証明してくれたんだし、怠るわけにはいかないよね。



「それじゃこの辺で失礼して、ガローブとグローグの集落にも顔を出してくるね」



 今日中に魔人族の集落全てを回りたいので、必要な話が済んだら長居無用だ。


 しかしディロームの集落を立つ前に、もう1度声をかけておく。



「装備品の素材回収は今回で終わりにするから、後は自分達で装備品を作ってどんどん戦力を拡充させて欲しい。もう守人たちは自立していけるはずだからね」


「……ここまで面倒を見ていただき、感謝の言葉もありません。ダン様の期待を裏切らぬよう、必ずや神器の守人に相応しい力を手に入れて見せますからな……!」


「それと、防衛協力のほうもお願いね。みんなの出番が1ヵ月後になるか、それとも明日になるかは俺にも分からない。だから充分に備えて欲しい」


「「「応っ!!」」」



 ディローム族のやる気に満ち溢れた返事が聖域の樹海にこだまする。


 魔人族はみんな真面目で士気も高いんだけど、中でもディローム、中でもカランさんのモチベーションが高すぎるよぉ。


 森を揺らすような怒号に鼓膜を揺さぶられながら、アナザーポータルでその場を離れた。




「これはこれはダン様! よくぞ参られました!」


「えぇいっ! 再会する度にいちいち跪くのをやめいっ! 転職するから村人を集めてくれるかなっ!」



 ガローブの村では5人ほど職人の浸透が終わっていたので、1人ずつ各種職人になってもらった。


 職人1人ずつでも充分だろう。集落の人口そのものが少ないからな。



「最終的には付与術士まで浸透してもらって、ウェポンスキルの付与まで自前で出来るようになって欲しい。ただ、スキルジュエルが聖域で入手できるかは分からないんだけど」



 分からないんだけど、ウェポンスキルジュエルの自作が可能なことが分かったからな。


 仮に聖域の樹海の最深部でスキルジュエルを拾えなくても、付与術士の必要性は全く変わらないのだ。



「付与術士を得るのは多少時間がかかると思うので、長い目で見て浸透を進めてね。無理して事故とか起こされても堪ったもんじゃないから」


「祝福された武器まで自分達で用意できるようになるなど信じられませぬ……! ほんの少し前までは槍1つ、剣1つすら無かったというのに……!」



 いや、その状態でアウターで暮らしていた方がよっぽど信じられないっての。


 ガローブの集落でも決戦が近いかもしれないことを伝え、装備品の素材を受け取ってグローグの集落へ転移した。



「ダン様! この者を見てくださいませんか! 恐らく冒険者の浸透が終わっていると思うのですがっ!」


「おっ!? マジでっ?」



 グローグの集落に着くなり、冒険者を浸透させた者がいる事を知らされた。



 やる気ダダ漏れのカランさんですら冒険LV28だったのに、まさかそれを上回るペースで浸透を進めるとは……。


 やるじゃんグローグの人たち。



「実は集落全体で協力して、この者の冒険者の浸透を進めていたのですよ。探索者が1人居れば、ダン様の負担が大きく減るという事でしたからね。みんなで魔物を集めて、彼の近くで魔物を狩り続けたのです」


「あーっ。なるほどなぁ」



 今、魔人族の人たちのほとんどがペネトレイターに参加してるから、集落全体で経験値を共有できる状態になってるのか。


 だからある程度の範囲内であれば、パーティシステムの制限を受けることなく職業の浸透が進むわけだ。


 たとえ本人達が休んでいたりしても経験値を取得できると。



 集落を挙げてたった1人の冒険者の浸透を優先したため、他の職業の浸透は少し遅れ気味のようだけど、聖域の樹海で暮らす守人の中から探索者が誕生する意味は非常に大きい。


 さくっと探索者に設定して、とうとう魔人族たちはアナザーポータルが使用可能になった。




「王国側を目指す前に、まずはディロームとガローブの集落にいつでも行けるようにして欲しい。もし既に行けるなら問題ない」



 既に各種職人が誕生している他の集落との連携をお願いしておく。



 探索者ならインベントリも広めだし、装備品の運搬も簡単だ。これで魔人族を取り巻く環境が劇的に変化していくことだろう。



 ていうか、自立するのが早過ぎるよ森人さん。魔人族のこと、完璧に見縊ってたわ。



「ディローム・ガローブの集落では装備品や魔法薬を生産できる職人が生まれたので、それぞれ連携して戦力を拡充してくれるかな。実力不足のままで王国に来られても困るからね」



 なんて言いながら、今回は素材は全部回収していくけどねっ!



 職人の浸透が進まないと碌な物は作れないので、今素材を回収する分には問題ないはずだ。


 職人の浸透を進めている間に充分な素材が集まるだろうからね。



 王国全体で装備品の流通量が足りていないので、職人たちには素材の限りどんどん生産を進めてくれるようにお願いする。


 勿論魔人族が自分達で使う分を優先してもらうけれど、余剰分はシュパイン商会に流して王国中に流通させてしまおう。



 将来的にはスキルジュエル化することも可能なので、いくら生産してもらっても過剰生産ということはないはずだ。



「探索者が1名だけでは無理も出来ません。ダン様の仰る通り守人全体で協力しながら、まずは確実に王国を目指したいと思いまする」



 グローグ族の長がしっかりと頷いてくれる。


 超絶技巧の守人達が、装備作成とアナザーポータルを使えるようになった影響は計り知れないだろう。



「ディローム、ガローブ、そして我らグローグの民も、長い年月の間に相当人数を減らしてしまいましたからな。一族という括りに拘りすぎないように、森人全体で柔軟に対応することが求められる時代になったようです」



 決意の眼差しで遠くを見詰めるグローグの長。


 メナスがいつ仕掛けてくるかは全く分からないけれど、この調子なら瞬く間に成長して、アウターエフェクトくらいになら余裕で対抗できる勢力になってくれそうだ。



 っていうか、守人の人たちって職業浸透早過ぎないかなぁ?


 散々早い早いと言われていた俺よりも職業浸透が早い気がするよ? 最大LV30の職業がメインだとしても。



 スポットの最深部で出現する魔物がLV50台、守人の集落付近に出る魔物も同じくらいのレベルだよな。


 それに加えて、ディロームの集落に訪れた時に300を超える魔物の群れに襲撃されていたことを思い返すと、スポット最深部よりも聖域の樹海の方が魔物の数も質も上なのかもしれない。



 けどなぁ……。それにしても早すぎる気がする。



「ははは。それは仕方ないんですよ。皆やる気に漲っておりますからね」



 首を傾げる俺に、グローグの長は笑い混じりに説明してくれる。



「森の外から来たダン様には想像出来ないかもしれませぬが、我ら守人は職業の加護も装備品も失われて久しく、この森の魔物にはずっと苦しめられ続けてきたんです」


「……少なくとも、職業の加護と装備品無しで魔物と戦おうとは思わないかな」


「そこにダン様のおかげで戦士の加護を受け、低品質でも武器を用意された事で、今まで脅威だった魔物たちに報復する機会を得たのです。皆が張り切るのも仕方ないというものでございましょう?」



 ……そうだった。魔人族ってマジで絶滅1歩手前だったんだった。


 村人のままでアウターの中で暮らす苛酷さは、俺には想像することも出来ない。



 魔物との戦闘はバトルシステムが逆に足枷になってしまい、首を切っても急所を突いても、HPの壁に阻まれてしまっていたわけだ。


 そうして頑張って魔物を討伐しても職業補正は得られないし、ドロップアイテムを加工することも出来ないなんてなぁ……。



「親を、友人を、大切な者を魔物に殺された経験が無い者など、守人にはおりませぬ。それはディロームもガローブも同じでしょう。憎き敵である魔物を狩るのはどうにも力を入れすぎてしまうようですな」


「張り切るなって言う方が無理なシチュエーションだね。なるほど……」


「それに旅人の加護を得た事で、長時間の活動も苦にならなくなりましたからな。ダン様の力になりたいという目標もあります。我ら守人の魔人族は、今が成長期ということなのでしょうなぁ」



 魔物に虐げられてきた歴史。戦闘補正と持久力補正を得られて、魔物に対抗できるようになったこと。


 そして呼び水の鏡を任せられるくらいに、メナスとの戦いで協力してもらえるくらいに強くなって欲しいという俺の希望。



 色々な要因が重なって、魔人族たちは堰を切ったように急成長を遂げているっていうことなのか。



「俺はたとえ手が足りなかったとしても、実力不足の者を戦線に加える気は無いからね? 加護の力を過信せずに、槍の研鑽もちゃんんと続けて欲しいんだ」


「お任せください。ダン様の予想すら上回る速度で強くなって見せますよ」


「期待してるよ。そして期待だけじゃなくて、協力だって惜しまないからね」



 探索者を誕生させたボーナスというわけじゃないけど、グローグの集落に槍手と武道家、そして兵士の転職魔法陣を設置する。


 後はアナザーポータルで各集落と連携を取って、各自浸透を進めて欲しい。



 あとはミスリル武器が作れるようになって、戦闘職の浸透が進めば、もう守人たちはアウターエフェクトの撃退も可能な戦力になってくれるはずだ。



「守人たちならどんな相手でも犠牲を出すことなく対応できるだろうって、俺にそう思わせるくらいに強くなってくれたら嬉しいよ」


「おおおっ、お任せくださいっ! 必ずや期待に応えて見せますぞぉっ!」



 新たな転職魔法陣を設置し、やる気に満ちたグローグに見送られて聖域の樹海を後にした。



 グローグの集落を出た後はキャリアさんを拾って開拓村に行き、現地の責任者であるトーレさんとオディさんも交えて、近々魔人族がこの村を訪れることを告げておく。



「ふむふむ。『守人の魔人族』と名乗ったらダンさんの知り合いで間違いないわけね。了解よ」


「それに加えて今日魔人族の集落に、少人数ではあるけど装備品の職人が誕生したんだ」


「……相変わらず、サラッととんでもないこと言うね。魔人族って転職を始めてまだひと月も経ってなかったんじゃないの?」


「気にしない気にしない。それで始めのうちは魔人族が自分で使う装備品を優先してもらうけど、余剰分はシュパイン商会に任せてしまおうと思ってるんだ。構わないかな?」



 魔人族の魔物殲滅速度は非常に早く、集落の住人も少ないから、かなり早い段階で装備品が過剰生産されるはずだ。


 開拓村の住人たちにも装備品が行き渡ったら、とうとうシュパイン商会も装備品業界に参入することが出来るだろう。



 主に俺達のせいでだけど、王国中の在庫が枯渇状態に陥っている今が新規参入のチャンスだ。


 将来的にはスキルジュエルにも変えられるのだから、装備品が余剰在庫になるのはずっとずっと先の話のはずだしな。



「ふふふ……。装備品の取り扱いはシュパイン商会の長年の悲願だったからねぇ。腕が鳴るわぁ……!」


「いやいやいやっ! キャリアってば燃えてる場合じゃないでしょ!? まだ村の方でもやることが山積みだっていうのに、もう装備職人が増えて在庫も流れてくるとか、手が足りないってばぁっ!」


「私とオディさんが居ても手が足りてないんだけど!? キャリアさんっ、他にも誰か寄越してもらえないかしらっ!?」


「ん? 人手が足りてないの?」



 トーレさんとオディさんの様子に首を傾げてしまう。



 外野から見ると、開拓村は結構順調に開発が進んでいるように見えるんだけどな。


 住人の個人宅も6割方くらい完成してるみたいなのに、これで人手が足りないと言われてもピンとこないな?



「ぜんっぜん足りてないのよぅ。幸いダンさんのおかげで、資金的な心配は無いんだけどね?」



 やれやれと肩を竦めながら、オディさんが説明してくれる。



「人が動けばお金が動き、お金が動けば手続きが要るの。知識の無い者に取引は任せられないから、どうしてもねぇ……」


「ああ。人手って単純な労働者層じゃなくて、村の運営に携わる層のことかぁ」


「最低限商人の職業を得て目利きが使える者じゃないと、簡単に騙されちゃうからね。熟練の商人だと、悪意を見せずに偏った取引を持ちかけてくる相手だっているの」



 ベテラン商人になると、悪意のラインを超えてこないような匙加減が上手くなるってことなのかな。



 なんにしても、この開拓村は今後魔人族が頻繁に出入りすることになる場所の予定なのだ。


 なのに、魔人族がまだ現れていないうちから人手が不足しているようではあまり上手くないな。今のうちに対処しておかないと。



 投刃と精神異常耐性大効果、そして魔力吸収小効果のスキルジュエルをインベントリから取り出す。



「これは投刃ってウェポンスキル、こっちは精神異常耐性大効果と、魔力吸収小効果のスキルジュエルなんだ」


「……え? スキル……ジュエ、ル……?」


「これをシュパイン商会に譲るから、これを代金としてファミリアから何人か選んで商人として教育してやってくれないかな?」


「……………………」



 テーブルの上に並べたスキルジュエルを見詰めて、完全に固まるキャリアさんたち。




「……………………ごめんダンさん。少しだけ時間をくれない?」



 搾り出すように、なんとかそれだけ口にするキャリアさん。


 そう言えばスキルジュエルって貴重なアイテムだったね。すっかり忘れてた。



「いきなり3つもスキルジュエルを見せられて、しかもウェポンスキルまで譲ってくれるなんて言われて理解が追いついてないの……。今何を言われても、なにも頭に入ってこないのよぉ…………!」」



 目の前のスキルジュエルを見詰めたまま、身動きが出来ない3人。


 待っている間少し暇だったので、みんなの分のお茶を用意して寛がせてもらった。



「……スキルジュエルを放置したまま席を外さないでよぉ。なんでこっちがこんな忠告しなきゃいけないのぉ……?」



 思ったよりもダメージが大きそうなキャリアさん。立ち直るにはもう少し時間がかかりそうだ。



 さっきキャリアさんは、装備品業界への参入は長年の悲願だと言っていた。


 装備品の取り扱いが出来ないのであれば、スキルジュエルを取り扱うことも出来なかったのかもしれない。



 もしかしたらスキルジュエルの存在もまた、キャリアさんにとっては悲願の1つだったのかもしれないなぁ。


 なのにサラッと出しちゃって、ちょっとだけ申し訳ないね。



「性格的、体力的に魔物狩りが難しい者を優先して、勿論本人にも希望を聞いて教育を進めて欲しい。同じくファミリアの中から護衛隊を組んで、ゆっくりでいいから職業浸透も進めてあげて欲しいかな」


「そして本人は普通に話し始めてるし……。ダンさんが非常識なのは知っていたつもりだけど、年寄りにダンさんの相手はキツい! キツすぎるぅ……!」


「ううう……! ダンさんのことは信用してるけど、シュパイン商会には付与術士のツテなんて無いから確認できないのがもどかしいわ……!」


「これから装備品を取り扱うかもー、なんて話をしてたはずなのに、なんで3つもスキルジュエルが出てくるのぉ……。あ、頭が痛い…………」



 まま、皆さん落ち着いて。せっかく用意したんだからお茶でも飲んでさ。


 う~ん。スキルジュエルって扱いが難しいなぁ。



 あ~、そう言えばあのティムルですら、スキルジュエルを初めて見たときめちゃくちゃ驚いてたんだっけ。


 うちの家族以外にスキルジュエルの話を振るのは、些か刺激が強すぎた……?



 ま、将来的にシュパイン商会に流通を任せるとしたら、この刺激はいつかは通らなきゃいけない道だからね。遅いか早いかの違いでしかない。


 キャリアさんたちは大商人なんだから、ちゃんと受け入れて活用してくれるはずさっ!



 なんてティムルに報告したら、丸投げとか責任転嫁とか言われちゃいそうだけど?

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