275 深獣化
※R18シーンに該当する表現をカットしております。
暗殺者を浸透させた事で、ニーナに獣戦士という職業が現れた。
「ようやく見つかったはいいけど、これは……」
まず間違いなく獣戦士は獣人族の専用職業だと思うんだけど……。転職条件結構厳しくない?
獣戦士取得まで最短距離を走るとして、村人10、戦士30、射手30、狩人50、斥候100、盗賊100、殺人者100、暗殺者100ってところか?
累計520レベルも上げてようやく到達できる職業ってなに?
転職条件が間違っている可能性はあるけど、暗殺者に転職するのがまず敷居高いんだよねぇ。
「えっと……。他の種族専用職はどうだったっけ?」
名匠は村人10、商人30、職人30、武器・防具・宝飾職人50、付与術士100で転職可能だったはず。
あ、もしかしたらアイテム職人と調剤士も50にする必要があるんだろうか?
だとすると累計420レベル必要ってことになるな。
獣戦士、名匠と比べると、村人10、戦士30、兵士50、騎士50、聖騎士100の、累計レベル240でなれる竜騎士はかなり敷居が低い専用職業って感じがするね。
もしかしたら竜人族は短命種ってことを考慮されているんだろうか?
ドワーフ族よりも獣人族のほうが戦闘に向いた種族だから、転職条件がより厳しいとか?
ま、1人で考えていても答えなんて出ないか。みんなと共有しよう。
料理人になって戻ってきたリーチェと、調剤士を浸透させたフラッタに悪戯しながら、ニーナに獣戦士という職業が現れたこと、深獣化という聞き慣れないスキルがある事を報告する。
「うん。まだ職業を固定する気はないけど、試してみるのが早いと思うの。ダン、私を1度獣戦士にしてくれる?」
「了解だよー」
俺の話を聞いて、即決で獣戦士を試そうと転職を決めるニーナ。
ニーナさん、相変わらず思い切りがいいっすね!
というかニーナの転職の意識って俺ありきだから、他のメンバーよりも転職のハードルが低いのかもしれないなぁ。
フラッタとリーチェの可愛い喘ぎ声を聞きながら、ニーナを獣戦士に設定する。
「それじゃ早速試してみるねっ。まずは獣化から……」
言うが早いか狐耳に狐尻尾が生えた、今や見慣れたコンコンニーナに変身する。
その様子には変わった所は見られないかな。
「えと、獣化消費軽減の方はよく分からないかな。でも深獣化の方は分かったの。獣化から更にもう1段階獣化することを深獣化って言うみたい?」
「なるほどぇ。第2形態みたいなものかな?」
「第2形態ってなにー?」
金目で狐耳の狐っ娘ニーナが首を傾げて聞いてくる。可愛いなぁもう。
「それじゃ深獣化も試してみるのーっ」
「了解。無理しないでねー」
ニーナの体を高濃度の魔力が覆い、ニーナの雰囲気が研ぎ澄まされていく。
ニーナが纏っていた魔力がお尻に集まっていき、コンコンニーナの狐尻尾が2本になった。
「お~? 深獣化って尻尾が増えるんだ?」
「…………」
「ってニーナ? なんでそんな獰猛な笑顔を俺に向けてくるのかな~……?」
嫌な予感がした瞬間、消えるような速度でニーナに唇を奪われその場に押し倒された。
フラッタとリーチェに悪戯したままの俺には抵抗が出来ず、フラッタとリーチェを巻き込んで押し倒されてしまった。
「ん~~~っ」
俺の首筋に両腕で抱きつき唇を重ねてくるニーナ。
……なんかニーナって、初めて獣化した時も発情モードに突入しなかったっけ?
コンコンニーナと激しくキスをするのは最高に気持ちが良いんだけど、あの時みたいに魔力枯渇を起こさせるわけにはいかないからね。
ニーナ、ちょっと失神するくらい気持ちよくさせてもらうよー?
「んんっ!? ん~~~っ! んん~~っ!!」
無事にニーナは失神して深獣化は解除されたみたいだ。無事に失神とはいったい。
ぐったりしているニーナたちが復活するまではサンクチュアリを展開して、さっきまで周囲警戒をしてくれていたティムルとヴァルゴの2人とキスをしながら待ち続けた。
3人が回復する頃に2人が戦闘不能にならないように、ちゃんと加減しないとね。
暫くして目を覚ましたニーナが、申し訳無さそうにみんなに向かって頭を下げる。
「う~。ごめんねみんな。獣化のコントロールには慣れたつもりだったんだけど、深獣化のコントロールは全然出来ないみたいなの……」
ティムルとヴァルゴを解放して、ニーナを正面からぎゅーっとしてよしよしなでなでを繰り返す。
ニーナが謝ることなんて何もないんだよ。深獣化したニーナ、最高に可愛かったから。
「深獣化すると気持ちのタガが外れちゃって、ダンを大好きな気持ちが抑えきれなくなっちゃうみたいなの。いつもはちゃんと我慢できるんだけど……。ごめんね?」
普段は我慢してるけど、本音はいつもこうやってイチャイチャしたいんです、なんて言われて謝られても困るよぉ可愛すぎるぅ。
はぁ~、ニーナ可愛い。大好き。もう本当可愛すぎるよぉ。よしよしなでなで。
「普通の獣化と比べて、深獣化の方が身体能力が跳ね上がるけど、魔力消費も桁違いに多くなるみたいなの。多分3分も維持出来ないんじゃないかなぁ?」
3分も維持出来ないって、竜化よりも更に燃費が悪くなるのね。
使いどころが難しい、かなりピーキーな能力のようだ。
「それと深獣化は自分の意思で解除することは出来ないみたいなの。発動しちゃったら、意識を失うか魔力枯渇を起こすまで止まれないみたい」
「そっかー。深獣化しちゃったら頑張らないといけないなーっ」
深獣化したら自分の意思で止まれないのなら、深獣化する度に気絶するくらい気持ちよくさせてあげなきゃいけないねぇ。
深獣化を習得していなかった今までも、毎日毎晩意識飛ばすくらい愛し合ってましたけど?
「う~ん……。強力な能力だけど、種族専用職業はまだいいかなぁ? 次は職人、農家、料理人をお願いしていい? 私ももっと気持ちよくしてもらいたいのっ」
「おっけーい! ニーナのこと、どこまでも気持ちよくしてあげるからねー!」
今日中にその3つは浸透させて、今との感触の違いを夜に思い切り確かめよっか!
モチベーションが爆上げされた俺たちは、9箇所目の中継地点に到着するまでに思い切り職業の浸透を推し進めた。
ニーナは職人、農家、料理人を終わらせて慈善家LV12に、ティムルは司祭、農家、料理人を終わらせて荷運び人を選択した。
慈善家 最大LV30
補正 魔力上昇- 幸運上昇
スキル 全体幸運上昇-
荷運び人 最大LV50
補正 持久力上昇+
スキル インベントリ 所持アイテム重量軽減+
そしてティムルは鑑定スキルを全て浸透させた事で、分析官を得る事に成功した。
リーチェの問題が片付くまで、分析官はなるべく後回しにするみたいだけど。
フラッタは武器職人を終えてアイテム職人LV42、リーチェは料理人と調剤士を終えてアイテム職人に、ヴァルゴは探索者から魔法使い、職人まで浸透させて、現在攻撃魔法士LV36まで上がっている。
アイテム職人 最大LV50
補正 持久力上昇 身体操作性上昇 五感上昇
スキル アイテム鑑定 アイテム作成 インベントリ
攻撃魔法士 最大LV50
補正 魔力上昇 魔法攻撃力上昇-
スキル 中級攻撃魔法
「範囲攻撃魔法の威力が上がるのは嬉しいですね。槍で1体1体魔物を仕留めるのは、やはり時間がかかってしまいますから」
ヴァルゴは魔法使いルートと職人ルートを交互に進めて、対魔物に有効な魔法と、五感と身体操作性補正の累積を平行して進めていきたいのだそうだ。
戦闘力を上げつつ感度も上げていく素晴らしい選択だっ。
そしてニーナ、リーチェ、ヴァルゴの職業浸透が進んだ事で、うちのメンバーは6人とも、1辺が3mの27㎥インベントリを使用可能になってしまったぜ。
ポータルとアナザーポータルも全員使用できるから、ほぼほぼ死にスキルになっちゃったけどねっ!
俺の職業は召喚士がLV89に、魔王LV83勇者LV83まで浸透が進んだ。
恐らくだけど、魔王と勇者はLV上限無いんじゃないかなぁ? 明日にはそれも確かめられるだろう。
そして、9箇所目の中継地点の出口には漆黒の壁が存在した。
「お、おおっ……! とうとう辿り着いたんだな……!」
「良かったぁ……。奈落って果てが無いんじゃないかなぁって思い始めてたとこだったの……」
安堵の溜め息を吐くニーナをよしよしなでなで。お疲れ様だよー。
漆黒の魔力壁。
スポットでも竜王のカタコンベでも既に見たことのある、アウター最深部への入り口だ。
この境界線が現れたという事は、奈落10階層は奈落の最深部、奈落の底ということになるわけか。
何が出てくるのか分からないけど、スキルジュエルがドロップしてくれるようになるのはありがたいね。
「この先に行くのは明日にしようね。今日はみんながどれだけ敏感になったのかを、ひと晩かけてじっくりと検証させてもらわないといけないからさっ!」
「検証しすぎて明日は起き上がれない、なんて事にならねば良いのじゃがなぁ?」
可愛いフラッタの忠告も、最早前振りにしか感じないっ!
全員の五感上昇補正が累積したなんて、ベッドに乗るのが楽しみすぎて仕方ないよー!
今夜は寝かせない……、わけにはいかないから、気絶するまで可愛がっちゃうぞぉっ!
マグエルでムーリを拾って、1度みんなでヴァルハールに行く。
エマとラトリアのことも、そろそろ迎えに行ってあげないといけないからね。
「おかげさまでシルヴァの回復も順調ですっ」
嬉しそうなラトリアによると、シルヴァの回復は順調で、既に当主としての仕事をいくつか始めているらしい。
パーティメンバーと父を亡くした悲しみを振り切ろうと、仕事に没頭していたいのかもしれない。
保護された竜人族たちは地下の訓練場で療養しながら、竜爵家の人に一般常識や戦い方などを習っているらしい。
既に何人かずつ竜王のカタコンベに潜り始めているらしく、竜人族たちの社会復帰はそこまで難しくない見通しだ。
「それとですね……。実は保護した女性の中に、シルヴァ様との関係を強要されてしまった方が何名かいらっしゃいまして……」
心苦しそうにエマが報告してくる。
実は保護された竜人族の女性の中で、奴隷化している際にシルヴァと肉体関係を持って妊娠した女性が5名ほどいるらしい。
その子どもの父親がシルヴァかどうかは確認のしようがないため、その子たちをルーナ家の次期当主に据えることは出来ないそうだけれど、シルヴァはその5人の女性全員を娶って責任を取ると言っているらしい。
いきなり5人も奥さんを貰うとか……、凄すぎて尊敬するよシルヴァ。
お前が好色家になれるようになったら、必ず浸透の協力をしてやるからなっ……!
「不幸中の幸いなのが、女性達のほうもシルヴァとの婚姻を嫌がっていないことですね」
そりゃあシルヴァレベルの美男子に貰われるなら……と思ったけど、女性達はシルヴァの美貌に惹かれたのではなく、今後の生活の安定を重視したらしい。
不特定多数の男性と強制的に肌を重ねさせられていた状況に比べれば圧倒的に待遇が良くなるし、世間知らずの彼女達が野心のようなものも持ち合わせているわけも無く、安心して暮らせるならばと乗り気のようだ。
5人が落ち着いて体力戻ったらエマとラトリアが少しずつ教育して、竜爵家の嫁に相応しい戦闘力を身につけさせると意気込んでいた。
流石脳筋竜爵家。礼儀作法より戦闘能力重視である。
「……ディアは亡くなり、私とフラッタもダンさんに嫁いでしまっている状態ですから。1人になるシルヴァには、支えてくれる家族が必要だと思うんです」
シルヴァも今から新しいパーティを結成する気も無いそうで、娶った女性達5人と紅竜の結束として活動しながら内政の方に力を入れて生きていきたいと語っていた。
直接的な戦闘力は、もうフラッタがいるからね……、と。
メナスという共通の敵を持ったルーナ家と救出された竜人族の結束は固く、今のところお互いに良い関係を築けている。
可能な限りこのまま竜爵家に雇い入れて、竜爵家とヴァルハールの発展と治安維持に役立ってもらうそうだ。
シルヴァも保護された竜人族たちもとても落ち着いているという事で、今晩からはエマとラトリアも寝室に復帰してもらう事になった。
パルソバータの宿で数日振りにラトリアとエマを楽しむ。
数日振りのエマとラトリアを可愛がってあげた後は、みんなが今日1日でどれだけ敏感になったかを徹底的に調査する。
ムーリは昨日と変わりないと思うけど、ついでに徹底的に調査しよう。
「ラトリア。ゴブトゴさんに職業ギルド誘致の許可を貰って欲しいんだ。もしそれが無理なら、転職施設の設置だけでも可能かどうか聞いて欲しい」
急激に敏感になった体に負担がかからないようにみんなを甘やかしながら、ラトリアに転職設備の事についてお願いしておく。
「もし可能なら、ゴブトゴさんと直接話す機会を設けてもらうと嬉しいかな。あ、ニーナ、また出るよっ」
「職業ギルドはそれぞれ独立した組織なので私も詳しくは無いんですけど、転職魔法陣の設置はそれほど難しくなかった気がします」
「設置は、っていうと、なにがネックになってくるのかな?」
「転職魔法陣は新設するのは簡単なんですが、維持していくのが難しい施設だと説明を受けた記憶があります。各種職業ギルドは、転職魔法陣を維持するために存在している側面もありますから」
設置は簡単で維持が困難な施設か。ちょっとイメージし難いな。
やはりゴブトゴさんでも誰でもいいから、詳しい人の話を聞いてみたいところだね。
「ラトリア。ゴブトゴさんに面会を申し込んでおいてね。時間がかかるようなら転職魔法陣の敷設許可だけ先に貰う感じで。その場合必要なお金や時間を知りたいから、その辺も問い合わせておいてね」
あ、そうだ。今のうちにシルヴァに好色家の条件をクリアしてもらおうかな。
「エマ。ラトリア。シルヴァが5人の女性と夜を共にするときは、なるべく俺みたいに複数人で一緒に過ごしてもらうようにしてあげて欲しい」
「えっ……。そ、それはちょっとハードルが高いのでは……?」
「複数人で愛し合う事が好色家の転職条件だからね。好色家を浸透させられれば何度でも女性を愛することが出来るようになるし、病気耐性は竜人族に必要なスキルだと思う。是非浸透させるべきだよ」
さて、好色家についても言及したし、後は何かあるかな?
あー、シルヴァの奥さん候補って奴隷だったから戦闘経験が無さそうだし、一応忠告しておこうか。
「竜王のカタコンベにはトラップの可能性があるから、新生紅竜の結束の職業浸透を進める際には細心の注意を払ってね? ラトリアたちと違って、シルヴァのお嫁さんたちはほぼ非戦闘員なんだから」
「はい。ですがシルヴァにとっても庭のような場所ですから、心配は無いと思いますよ。私たちも手解きはさせてもらいますしね」
ふむ。シルヴァがいれば心配は要らないのかな。
ラトリアとエマが剣の手解きをするなら、きっと直ぐに戦えるようになるだろうし。
シルヴァと奥さんたちのことはこの辺でいいか。後はエマとラトリアの今後の予定を相談しよう。
「エマはなるべく早めに探索者になって欲しいし、ラトリアももう少し別の職業を浸透させて欲しいところだねぇ。好色家のおかげで補えているけど、持久力補正が低すぎるからさ」
「……ですね。このまま竜騎士でいるだけでは生きていけない時代が訪れそうです。少なくとも魔法使いは浸透させたいですね」
「ラトリアはトライラムフォロワーを見て思うところがあったみたいだけどさ。職業浸透の知識を独占するのは無意味だから、保護した竜人族にはどんどん色んな職業を経験させてね」
「はい。ヴァルハールを中心に、職業浸透の知識を広めていくつもりです」
「ドワーフ族じゃなくてもミスリル装備は作れるし、竜人族だって魔法使いとして戦うことも出来るんだ。戦闘職だけに偏る危険性を、この先も絶対に忘れちゃいけないよ」
あんまり偉そうなことは言いたく無いけれど、職業浸透に関しては多分俺が世界一進んでると思うからね。
職業浸透の知識を一般レベルまで普及させるために、ラトリアにも協力してもらいたい。
「当分はシルヴァたちの補佐と教育の為にヴァルハールで活動しようと思いますが、近いうちに住まいをマグエルに移そうと思います。ヴァルハールもルーナ家も、もう何も心配は要らないと思いますから」
「おっ! とうとう2人とも同居できるんだねっ! シルヴァを救出した甲斐があったなぁっ!」
「ふふ。ダンさんとフラッタのおかげで、ヴァルハールと竜人族は滅びの道から救われました。主人に代わって、改めてお礼申し上げます。本当にありがとうございました」
笑顔を浮かべて頭を下げようとするラトリアを制止して、お礼ならこっちが欲しいなとラトリアの唇を奪う。
俺こそゴルディアさんにお礼を言わなきゃいけないんだけどね。フラッタとラトリアを愛させてもらってるんだからさ。
今まで領主の仕事を頑張ってきて偉かったね。
これからはゆっくりたっぷりエロい余生を過ごそうね。
「ダンさんのことも心から愛しておりますが、シルヴァ様のこともヴァルハールのことも同じくらい大切なんです。だからダンさんと寄り添う前に、もう少しだけ面倒を見させてくださいね」
「はは。ずっと他人の為に生きてきて、やっと我が侭を言ったと思ったらやっぱり誰かのためだなんてエマらしいね」
エマとも改めてキスを交して、待ってるからねと約束する。
エマはもうポータルを使えるんだから、自分の足でどこにだって、我が家にだって来ることが出来るんだ。自分のやりたい事を優先していんだよ。
それを申し訳ないなんて思う必要は全然ないからね。
「……そうだラトリア。シルヴァを無事に救出できたんだから、改めてゴルディアさんをちゃんと弔おう?」
「え……。ディアを、ですか?」
唐突な俺の提案に、戸惑ったように固まるラトリア。
突然でごめんね? ヴァルハールの件がひと段落したなって思ったら、ゴルディアさんの件をやり残してるなって思ったんだよ。
フラッタの父親に、そしてラトリアのご主人に俺もちゃんと挨拶をしておきたいから……どうかな?