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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
4章 マグエルの外へ3 奈落の底で待ち受ける者
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268 奈落探索 6階層

※R18シーンに該当する表現をカットしております。

 中継地点ではみんなと甘々イチャイチャさせていただいたので、今晩はムーリとラトリアにも優しく愛する事にした。



「あはは。ダンさん、私の事を優しく扱うのが好きなら、いっつも優しくしてくれていいんですよー?」


「はぁ……。今日のダンさん、優しいです」




 この世界の職業補正に心から感謝しつつ、1人も失神させないでゆっくり夜通しみんなを愛し続けて過ごした。



 夜が明けたあとも甘々の甘えモード全開のみんなを全力で甘やかして、みんなでこの世の幸福を享受する。


 一緒に行けないムーリとラトリアの2人は、気持ち多めに可愛がった。



「それじゃ行ってくるよ。今晩もいっぱい愛してあげるから、いい子にして待っててね。愛してるよ。俺の可愛いムーリ」


「い、いってらっしゃぁい……」



 可愛いムーリのえっちなおねだりならいつでも大歓迎だよ。


 寝室で蕩けているムーリの頭を撫でてから、奈落の中継地点に転移した。



 ムーリとラトリアを送り届けている間に、みんなの体力はすっかり回復してくれたようだ。


 リーチェも無事に斥候に転職できたそうだ。つまりは準備万端だ。



「この先に何かがある可能性はかなり高い。気になった物があったら遠慮せず報告してね」



 全員とキスをしなおしてから、6階層の調査・探索を開始した。



 6階層に出現する魔物はLV75~100くらいのようだ。


 つまりここからは、スポットの最深部よりも魔物が強いということになる。



 ……のはずなんだけど、うちのパーティの火力が高過ぎて全然実感できないな?



「白き閃光。不言の万雷。滅紫の衝撃。雷霆響くは界雷の宴。汝、瞬き奔る者よ。サンダースパーク」



 ティムルが唱えたサンダースパークで、目の前の魔物全てが焼き払われる。


 その光景を見て、エマがあんぐり口を開いて驚愕の表情を見せている。



 シルヴァって当主教育の一環として各地のアウターを巡ってたとか言ってたし、ゴルディアさんと同じパーティだったエマは、奈落の探索を行なったことがあったのかもしれないなぁ。



「中継地点には今日中に辿り着けそうだけど……。虱潰しに調査するなら、数日かかりそうだねぇ」


「そうねぇ……。だからこそ何かを隠すにはうってつけなんでしょうけど……」



 リーチェとティムルが、サーチで把握したMAP情報を見てウンザリしている。


 6階層はかなり広くて、3日間くらいかけて調査をする必要がありそうだなぁ。



 でも、その分浸透が進むと思えばやる気も出るってものだ。


 どっかのアウターエフェクトみたいに、浸透が進まないのが1番萎えるんだよねぇ。





「フラッター。射手の浸透が終わったよー」



 本日初めの職業浸透は、フラッタの射手だった。


 そのまま狩人に変更して、生体察知を取得させる。




 狩人LV1

 補正 体力上昇 魔力上昇- 持久力上昇 身体操作性上昇

    幸運上昇 装備品強度上昇

 スキル 生体察知




「これで妾も察知スキル持ちなのじゃーっ」



 はしゃぐフラッタをよしよしなでなで。



 魔物が強い分、浸透速度もかなり早そうだ。


 もしかしたら今日中に、魔物察知まで使えるようになってくれるかな?





「……おお。融合、したな?」



 フラッタの次に職業浸透を終えたのは、俺の法王と救世主だった。


 法王の浸透でピュリフィケーションとキュアライトが全体化し、救世主の聖属性魔法と聖属性付与魔法が融合して、更に強化されちゃったみたいだ。



 そしてこの2つを浸透させたことで、新たに2つの職業が見つかった。




 勇者LV1

 補正 体力上昇+ 魔力上昇+ 物理攻撃力上昇+ 魔法攻撃力上昇+

    敏捷性上昇+ 五感上昇+ 身体操作性上昇+ 装備品強度上昇+

 スキル 物理耐性+ 魔法耐性+ 自動体力回復+ 自動魔力回復+

     稀少品出現率上昇+ 技能宝珠出現率上昇+ 装備品出現率上昇+



 魔王LV1

 補正 体力上昇+ 魔力上昇+ 魔法攻撃力上昇+ 魔法攻撃力上昇

    魔法攻撃力上昇- 身体操作性上昇+ 装備品強度上昇+

 スキル 詠唱短縮 同時詠唱 魔力威圧





「……待て。色々と待ってくれ」



 なに勇者と魔王が仲良く出現してるわけぇ?


 勇者は救世主の、魔王は法王の上位職として出現したのか? 補正やスキルを見るに、魔王は魔導師の上位職って言った方がしっくり来るけど……。



 魔導師と法王、その両方を浸透させた事で出現する、魔法使いルートの到達点だったりするの? だから()()使()()()()という意味で魔王?



 ……えぇっと、そこは普通に賢者とかで良くない?


 というか魔王って、魔人族の種族専用職のほうがしっくり来ませんかねぇ?



「しかし、融合出来そうなスキルもパーティ補正も無し、かぁ……」



 勇者も魔王も、全体補正が1つも無くなっているのが気になる。これじゃ種族専用職業みたいじゃないか。


 ひょっとしてこの2つ、レベル上限が無かったりするのかな?



 勇者のスキルと補正は隙が無く、全てがバランスよく上昇する感じだ。


 レアドロップ系が全てくっついているあたりが、勇者らしいと言えば勇者らしいか?



 魔王は完全に魔法特化の補正とスキルだね。


 詠唱短縮が職業スキルとして現れたのは嬉しいけど、同時詠唱ってなんだ? それに、魔力威圧……?



 まぁそれはともかくとして、勇者と魔王という職業があるなら、勇者や魔王と呼ばれる役割を持った存在はこの世界にはいないってことになるんじゃないかな?


 勇者になったからと言って、魔王と戦わなきゃいけないみたいなことはなさそうだ。



「ま、細かいこたぁいいんだよーってね。職業せってーい」



 現状、他に上げる職業もそんなに無いので、ここは素直に魔王で勇者な魔物使いになってしまいましょうねー。



 魔力威圧は、ティムルの咆哮の下位互換といった感じかな。


 殺傷能力の無い魔力波を放って、相手を萎縮させる能力のようだ。



 同時詠唱は……。



「……なんだこれ? ちょっと練習が必要かも……」



 上手く説明できないけど、頭の中で2つの詠唱を同時に処理できるようになってる。


 頭の中にある詠唱ラインに詠唱を乗せることが出来れば、詠唱を口に出さなくとも魔法の発動が可能になったっぽい?


 ある意味、無詠唱スキルなのか?




 魔力威圧を試したり、同時詠唱の練習をしながら6階層の探索を続ける。



「おっけいエマ。聖騎士の浸透完了でーすっ」



 俺の次に職業浸透を終えたのは、エマの聖騎士だった。



「ま、まさか私が聖騎士の浸透を終わらせることが出来るなんてぇ……!」



 俺の報告に口元を押さえて、感激にその身を小さく震わせるエマ。


 竜騎士の存在を知らないエマにとっては、聖騎士が人類の到達点みたいなものなんだろうな。



 その竜騎士にも転職出来るようになったけど、エマにはまず他の職業を上げてもらって出来る事を増やして欲しいんだよね。


 だからまずは商人になってもらうよー。




 商人LV1 

 補正 幸運上昇-

 スキル 目利き




「目利きのスキルを試してみたいのですが……。ふふ、ここには悪意を持った人なんて1人もいませんねっ」



 俺が初めて商人になった時と同じことを言うエマを抱き締める。可愛いなぁもう。ぎゅー。


 エマには商人、旅人を浸透してもらって、行商人、冒険者、探索者まで浸透できたら魔法使いルートに進んで、探索魔法士まで浸透してもらえたら言うことないね。



 そして基本職というか始まりの職業だからか、商人は瞬く間に浸透してしまう。



「エマー。商人の浸透終了だよー」


「は……、はぁ!? も、もうですかぁっ!?」



 一瞬呆けた後に、今日1番の驚愕を見せるエマ。



 エマは俺達とは別パーティだけど、アライアンスのおかげで経験値を共有できているのかな?


 なんにしても浸透が早くて困る事はない。どんどん浸透を進めていこうね。



「……ほ、本当に瞬く間に職業浸透が進んでいくんですねぇ」


「俺達の浸透速度も早いんだけど、世間一般の常識も間違ってるんだよねー」



 職業浸透に1年もかけなくていいんだよと言いながら、エマの職業を旅人に設定する。




 旅人LV1

 補正 持久力上昇-

 スキル インベントリ




「インベントリが使えるのは嬉しいです。それに私がポータルまで使えるようになれば、ラトリア様とムーリさんの送迎を私が担当することも出来ますねっ!」



 嬉しそうなエマには悪いけど、2人を迎えに行くのは結構好きだから、結局俺自身がやっちゃうような気がしないでもないね。


 でもこのペースなら、今日の探索中にエマは冒険者になれると思うよ。




 エマばっかり浸透が進んでいるけれど、他のメンバーの職業は上位職だったりLV100まで上がるものばかりなので、今日中に浸透が終わる感じじゃないなぁ。


 ティムルの魔導師も早く終わらせて、斥候と暗殺者まで上げてあげたいところなんだけどねぇ。



 魔物のLVがスポットの最深部より高いだけあって、アウターエフェクト抜きなら奈落の方がレベリングに向いてるなぁ。


 だけどこっちは探索者と探索魔法が無いと危険度が高すぎる。



 傾国の姫君は早い段階でこっちに潜れるようになりそうだけど、幸福の先端が奈落に潜るのは少々厳しそうかもしれない。


 ムーリも魔物狩りとして生計を立てるつもりはないだろうから、スポットで安全に活動できれば充分だと判断しそうだけどね。



「あっ……! ダ、ダンさんっ! イ、インベントリの容量、3つ目も同じサイズになりましたーっ!」


「おっ、おめでとうエマ。旅人の浸透終了だよー」



 間もなく次の中継地点に到着しそうだというタイミングで、エマの旅人が浸透を終えた。


 やったねエマ。本日職業浸透のハットトリック達成だよっ!



「それでは次は冒険者に……って、先に行商人を浸透させるのですか? 別に構いませんけど……」


「うんうん。行商人が終わったら冒険者になってもらっていいからさ。ごめんね」



 予定通り冒険者になってもらおうかなと思ったけれど、ここは先に行商人を上げてもらって、今日のお迎えをエマに任せない口実を作るとしよう。




 行商人LV1

 補正 持久力上昇-

 スキル 所持アイテム重量軽減-




「あ……、これは確かに凄いですね……? 明らかに装備品が軽く感じますよ?」


「うんうん。行商人って何気に凄まじく有用な職業なんだよねー」



 転職したてなのに体感できるほどのスキル効果に驚くエマ。


 侍女のエマにとって、行商人の重量軽減スキルは重宝しそうだし、行商人はLV30で浸透してくれるから先にやっちゃっておいた方がいいでしょ。



 単に俺がラトリアとムーリを迎えにいきたいというだけで回り道させちゃったけど、損はさせていないはずだ、決して。




「フラッター。狩人終わったよー。斥候に設定するねー?」


「お願いするのじゃーっ! これで妾も魔物察知が使えるのじゃーっ」



 そしてその直後にフラッタの狩人が浸透を終えたので、次の職業は勿論斥候に設定する。



 フラッタは1日で察知スキルを2つ習得かぁ。優秀すぎじゃないか? この無双将軍。




 斥候LV1

 補正 体力上昇 魔力上昇 持久力上昇+ 敏捷性上昇+

    身体操作性上昇+ 幸運上昇 装備品強度上昇

 スキル 魔物察知




「ふぅむ。察知スキルとは誠に便利なものなのじゃなぁ」



 恐らく察知スキルを試しているフラッタが、キョロキョロと辺りを見回しながら感心している。



「今までダンとニーナに頼りきりにしてしまっていた分、これからは存分に妾に甘えてくれたら嬉しいのじゃっ」


「はは。フラッタのことはいっつも頼りにしてるって」



 張り切るフラッタをよしよしなでなで。



 それにしても、付与術士が2人と勇者のスキルまで乗っかってるのに、スキルジュエルが1つも出ないのが悲しすぎる。


 スポットの最深部よりも敵が強いのに、スキルジュエルが出ないっておかしくなぁい?






「あ、見えたわよー。あれが6つ目の中継地……ダン?」


「んー……。ちょっとだけ待ってねお姉さん。これって……」



 フラッタの転職が済んだタイミングで中継地点に到着する。


 指を指して到着を報告してくれるティムルお姉さんが可愛くて困るんだけど、そのお姉さんを引き止めて一旦足を止める。



「ダン、これって……」


「この展開は予想外だったかも……」



 ニーナとリーチェが俺の顔を窺いながら武器を握る手に力を込めている。



 なーんで誰も到達していないはずの中継地点から、たくさんの生体反応と魔物の反応があるのかなー? 理由を考えるのが嫌過ぎるんですけどー?



「まさか……、本当に全てが出鱈目だったのじゃ……!?」



 ドラゴンイーターを握る手を怒りに震わせるフラッタ。


 察知スキルを持たない3人は気付いていないけれど、察知スキル持ちの3人はこの異常事態に気付いたみたいで、緊張感を漂わせている。



「ティムル、ヴァルゴ、エマ。ちょっと聞いてくれる?」


「え、ええ……。ダン様もフラッタたちも、いったいどうしたのですか……?」



 達人ヴァルゴも、この距離で人と魔物の気配に気づくのは無理か。


 察知スキルの有用性を改めて認識させられるな。



「もうすぐ6階層の出口である中継地点に到着するんだけど、そこに大量の生体反応と魔物反応が確認できた」


「は……? 生体反応? しかも大量? え、魔物反応も???」



 俺の言っている事が飲み込めず、頭にハテナマークを浮かべるティムル。



 誰も居ないはずの未踏破エリアから生体反応があるだけでも異常なのに、それが村でもあるのかってくらい大量の反応があって、それと同じくらい大量の魔物反応と一緒に居るんだよ。


 ティムルが混乱するのも無理は無いし、説明している俺も混乱するよ。何が起きてんのってさ。



「……竜人族牧場が存続していて、大量の魔物に防衛されてる事態が想定されるよ。油断しないでね」


「嘘でしょ……。始めっから虐殺なんて無かったのぉ……?」


「つまり、敵がいる可能性が高いということですね。畏まりました」


「ゴルディア様とラトリア様を陥れた、シルヴァ様の凶行の報告……。それ自体がまったくの偽りであったというのですか……!!」



 俺の言葉を聞いてゲンナリするティムル、集中力を高めるヴァルゴ、そして怒りを顕わにするエマと、それぞれが違ったリアクションを返してくれた。



「シルヴァの凶行が嘘だった時点で想定されたことだったけど、本当に何事も無く牧場の経営は続けていたなんて、吐き気がするわねぇ……」


「同感なの……! ティムルとフラッタとリーチェの人生を狂わせた事件。それが全部嘘だったなんてっ……!」



 ティムルが状況をまとめてくれて、ニーナが怒りを顕わにする。


 家族のことが大好きなニーナは、大好きな家族の運命を狂わせた事件が嘘だったと知って、混乱と怒りを滲ませている。



「シルヴァに濡れ衣を着せ、ソクトルーナ夫妻を操り、シルヴァの濡れ衣を肯定させる事で事件は終わったものとして闇に葬っておきながら、実際には牧場は存続しているなんて……」


「いいとこ取りでもしたつもりなのかのぉ……! 随分と妾たちを弄んでくれたみたいじゃなぁ……!?」



 竜化状態よりも数段強い殺気を孕み、視線の先の中継地点を睨みつけるフラッタ。


 愛する家族が不幸に陥れられたシルヴァの凶行。なのに濡れ衣どころか、そもそも大量虐殺なんて起こっておらず、違法奴隷の飼育自体は続けられていたなんて……。



「いったいどんな悪意を抱けばそんな発想が出来るわけぇ……?」


「悪意……。そう、悪意なんだよ……! みんなに初めて出会ったときから、ぼくたちはいつだって人の悪意に翻弄されてきたんだよ……!」



 リーチェが顔を青褪めさせている。



 リーチェと初めて会ったとき、彼女は人の悪意に無頓着すぎたことを後悔していた気がする。


 悪意はいつだって俺達の傍に居て、俺達を陥れようとしていたのか……?



「もう少し加護の浸透が進んでから相対したかったところですが、そうも言っていられません。たとえ何が待っていようとも、我が槍にて全ての敵を貫き通してみせましょう」



 1度ふぅっと息を吐いて、直ぐに思考を切り替えるヴァルゴ。


 流石に達人級の武人だけあって、一瞬で戦闘モードに入りなおしたようだ。



「ゴルディア様が斃れ、シルヴァ様が失踪し、幸せだったルーナ家を不幸のどん底に叩き落すきっかけとなった竜人族牧場……! とうとう辿り着きましたよゴルディア様、ラトリア様……!」



 震えるほどに強い力で剣を握り締めているエマ。



 ……エマとフラッタはちょっと気負いすぎかな?


 この先にどんな現実が待っているのか想像もつかない。クールダウンが必要そうだ。



「エマとフラッタ、ちょっとおいで」


「「えっ?」」



 怒りに震える2人を呼んで、戸惑う2人をぎゅーっと抱きしめてあげる。



「この先にどんな現実が待ち受けているのか、ここからじゃ想像も出来ない。もしかしたら竜人族の、ルーナ家の2人には耐え難い現実が突きつけられるかもしれない」



 もしかしたらシルヴァの死が判明してしまうかもしれない。


 竜人族牧場に協力している竜人族もいるかもしれない。



 最悪の想定をしたらキリが無い。この先2人にはどれ程残酷な事実が突きつけられるか分かったものじゃない。


 ――――けど。



「だけど、2人だけでその現実に立ち向かう必要はないこと、忘れないでね? お前達2人には、とっても頼りになる家族がついてるんだから」



 どんな残酷な現実に打ちのめされようとも、お前たちを1人にはさせないよ。


 だから何が起きても冷静に、激情になんか飲み込まれちゃダメだからね?



「……うん。ダンもみんなも、頼りにしてるのじゃ……」


「ダンさん、ありがとうございます。私は怒りに我を忘れ、冷静さを欠いてしまうところでした……」



 戸惑ったまま俺に抱き締められていた2人は、俺の言葉を聞いて落ち着きを取り戻し、ゆっくり抱き返してきてくれる。



「この先に進む事で何を知ってしまうのかと思うと凄く怖いけど、どうか妾のことを助けて欲しいのじゃ……!」


「敵に怒りを感じるのは仕方ありませんが、私達がすべきはシルヴァ様の行方を追う事。それ以外のことは全て些事だと思うべきですね」



 ……フラッタのこともエマのことも助けるに決まってる。大好きで大切な、俺達の家族なんだから。



 2人を抱きしめていて、俺こそ落ち着きを取り戻せた気がする。


 ルーナ家を襲った相手に、開拓村を壊滅させた相手に、バロールの人たちに危害を加えたと思われる相手に、俺こそが苛立っていたのかもしれない。



 この先に何が待っているのかは正直見当も付かない。


 だけどそれでも悲劇を終わらせる為に、この1歩を踏み出さないと始まらないんだ。



 大好きなみんなの顔を見渡して、この世の全ての不幸からみんなを護り抜く覚悟を持って、6つ目の中継地点に足を踏み入れたのだった。

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