表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
4章 マグエルの外へ2 新たな始まり、新たな出会い
244/637

244 レリック

 まさかの転職縛りを目の当たりにして絶句する。


 魔人族さん。聖域の異変よりも、転職縛りを何とかするべきですってば。



「ルドルさん。加護を失ったってのは、転職出来なくなったって事で合ってる?」


「転職……。ええ、その通り。魔人族は職業の加護を失ってしまった種族なのです」



 俺の問いかけに一瞬言葉を詰まらせるルドルさん。


 職業の加護を失って久しいせいで、転職という言葉が一瞬通じなかったぽいな。



「失ってしまった……。つまり過去には転職は可能だったってこと?」


「一応過去には職業の力を得ていたとは言われていますが……。誰も覚えていないほどの、遥か昔の話という事になりますなぁ」



 大昔には法王がいたのか、それともガルクーザの時は英雄の中に魔人族もいたらしいし、普通に森の外でも生活していたのか。


 どちらにせよ、魔人族は先天的に転職出来ない、という訳ではないようだね。



「職業の加護を失くしてからは、満足に森の外に出ることも出来なくなり、魔人族の人口は減る一方ですな」


「……だろうね。むしろこの状態でアウター内で暮らせているのが奇跡でしょ」


「バロール族が消息を絶ったとするならば、守人の氏族はあと3つ。ディローム、ガローブ、グローグしか残っていないということになるのぅ。これは本当に危機的な状況かもしれぬ……」



 今までとは打って変わって真剣な様子で悩み始めるルドルさん。



 バロール族が帰ってこなくておかしいなぁとは思いつつも、まさか消息を絶っているとは夢にも思ってなかったようだ。


 さっきはそれを暢気だって言っちゃったけど、バロール族にもヴァルゴと同水準の使い手が何人もいたとするなら、魔物や悪人に後れを取ることなど無いと思うのも無理はないかもな。



「ダン殿が嘘を吐いている可能性も無くはないが、我らディロームを騙して得られる物など何も無いしな……」



 ルドルさんと同じく、カランさんも難しい顔をして腕を組んでいる。


 まぁ俺が嘘を吐いている可能性も確かに考慮すべきだけど、襲ってきたヴァルゴも無傷で返したし魔物の撃退にも協力したんだから信用して欲しいところだね。



「バロール族のことは気がかりではあるが……。ルドル様、ここはダン殿にこそ協力を仰ぐべきではないですかな?」


「……そうじゃなぁ。少なくともダンさんはスペルド王国から参られたのじゃから、間違いなくスペルド王国に到達できるということでもあろうな」



 そう来ますよねー!


 でも正直な話、この世界で転職縛りとか正気の沙汰じゃない。ここで魔人族を見捨てるのは、夢見が悪いなんてレベルの話じゃないからなぁ。



 まぁ乗りかかった船だ。大したことは出来ないしする気も無いけど、転職のお世話くらいはするべきだね。


 元々の戦闘力はアホみたいに高い人たちだから、ひと月もすれば自立できるだろ。



「俺に協力できることなら強力しますけど、その前に2つ聞かせてください」


「む? なんじゃ。ワシらに答えられることであればいいのじゃが」



 隔絶された環境で生活している魔人族のみなさんは、王国とは別の常識や知識があるかもしれない。


 見返りというわけじゃないけど、聞けることは聞いておこう。



「1つ。魔物を自在に操る能力に心当たりはないですか? 口伝や伝承の類いでもいいので、何かあれば教えて欲しいです」



 最近スペルド王国で、魔物を使った犯罪行為が起こるようになって、この森に入ったのも手がかりを探してのことであると説明する。


 丸っきり嘘ってワケでもないよな。


 魔人族の種族特性は氏族や個人の差が激しい。もしかしたら召喚士(サモナー)魔物使い(テイマー)がいたかもしれないからね。



「……ダンさんには済まぬが、そんな能力は聞いた事無いのう」



 そんな期待を込めての質問だったけど、3人とも心当たりは無いそうだ。残念。


 ま、ラトリアを襲ったのは人間族ってことだから、他の種族からの情報に期待するだけ無駄かぁ。



「2つ目。魔物に襲われて壊滅した村跡に、呼び水の鏡と呼ばれるマジックアイテムが置かれ……」


「呼び水の鏡じゃとぉっ……!?」


「うわっ……!?」



 ルドルさんが凄い勢いで立ち上がり、こちらを睨みつけてくる。


 びっくりしたなぁもう。



「ダンさん! 今呼び水の鏡と申したのかぁっ!?」



 驚いて反応が遅れる俺に、再度怒号を飛ばしてくるルドルさん。


 いやいや俺を睨んでどうするんだよ。俺は質問してる側だってのにさぁ。



「呼び水の鏡のこと、知ってるのルドルさん? なら教えてくれるかな?」



 ルドルさんの剣幕に付き合わず、極めて冷静に、静かな口調で呼びかける。



「あ、ああ……。済まない、つい取り乱してしまった……」



 するとルドルさんは自分が激昂してしまった事に今更気付いたようだった。



「しかしそうか。呼び水の鏡……。だからダンさんはここに辿り着いたのか……」



 ルドルさんは咳払いをして座りなおし、傍らに置いてあった徳利のような物を呷り、グビグビと喉を鳴らしている。


 えぇ? 匂い的に、それって酒じゃないんですかぁ……?



「ぷはぁっ! ……済まんの。流石に呼び水の鏡の話になるなど予想してなくてな」



 服の袖で口を拭いながら、表情を引き締めるルドルさん。


 呼び水の鏡って、これほどまでに取り乱すようなアイテムなのか。



「呼び水の鏡とは、この聖域の樹海とは逆の役割を果たすマジックアイテムじゃ」


「聖域の樹海の逆? それって?」


「つまりこの世界に魔力が足りなくなった時、魔に満ちた他所の世界からこの世界に魔の力を引っ張ってくる為の、特殊なマジックアイテムじゃな」



 ふうん? それだけ聞くならそこまで危険なアイテムにも感じないけどなぁ。


 ルドルさんが驚いた理由、ルドルさんが呼び水の鏡を知っている理由、呼び水の鏡の危険性、洗いざらい喋ってもらおうじゃないの。



「驚いた理由も知っている理由も簡単じゃ。呼び水の鏡とは、バロール族の護りしレリックアイテムだったのじゃからのぅ」


「うっわ……。そっちの驚きかぁ……」



 そりゃ聞かなきゃよかったわ。バロール族が消息不明で、バロール族の護っていたお宝だけが見つかるとか、最悪すぎるんだけど?


 てか、レリックアイテムって言葉も初めて聞いたよ? マジックアイテムとは違うわけ?



「レリックアイテムとは悠久の昔より伝えられし、人の理解を超えた性能のマジックアイテムの総称じゃ。神なる存在が、この世界の秩序を保つ為に人の手に預けたとされる代物じゃなぁ」


「神様が作ったマジックアイテムねぇ……」



 魔人族にとっては、この聖域の樹海もレリックアイテムの1つであるという認識のようだ。


 呼び水の鏡と1対になっていて、世界の魔力バランスを保っていたと。



 でも聖域の樹海の異変があってからバロール族は消息を絶ったわけだから、この森の異変とバロール族の失踪に直接の関わりはないと思う。



「余分な魔力を吸収するこの樹海以外の場所で呼び水の鏡を発動すると、魔に満ちた別の世界より大いなる災禍を招くと言われておるのよ。遥か昔の邪神ガルクーザ。奴のような存在を招いてしまうとな……」


「ふぅん。ロード種とかデーモン種みたいなアウターエフェクト、ドラゴン種みたいなイントルーダーを招いてしまうってことだね。そう考えるとめちゃくちゃ厄介な代物だねぇ」



 ルドルさんの話を聞いて、開拓村跡地をアウター化させようとした敵の狙いがちょっとだけ分かったような気がした。



 どんな魔物でも意のままに使役できるとしたら、より強力な魔物を召喚したくなっても不思議じゃない。


 スペルド王国最強とも言われていたらしいゴルディアさんを捧げても、アウターエフェクトしか呼べなかったんだ。


 とすると生贄召喚でイントルーダーを呼び出すのは、事実上不可能だと判断したのかもしれない。



 ……だから呼び水の鏡を使って、アウターエフェクトを超える存在を呼び出したかった、とか?



「デーモンやロードならまだしも、ドラゴンやイントルーダーという名前まで知っとるダンさんは、いったい何者なんじゃ……?」


「俺はただのリーパーだよ。別に特別何者ってわけでもないさ」


「ただの魔物狩りにしては、戦闘力が高すぎると思うんですけど……?」


「実は呼び水の鏡が置いてあった場所は、ドレッドデーモンとサンダーロードに守られてたんだよ。つまり鏡を置いた誰かは、その2体よりも強力な存在を呼び出したかったのかもしれない」



 小声で突っ込むヴァルゴを意図的にスルーして、インベントリから呼び水の鏡を取り出す。


 アウターの中だからなのか、村跡で見たような空間の歪みが発生することはなかった。



「ほ、本当に呼び水の鏡ではないかぁっ! という事は、バロールの者は……」



 言葉に詰まるルドルさん。


 きっと彼は俺と同じで、最悪の想定が頭をよぎってしまったんだろうね。



「いや、今は呼び水の鏡じゃ! ダンさん! それは大変危険なレリックアイテムなのじゃ! 聖域の樹海から運び出すことは本来禁止されているものじゃっ! 頼む! 森に返してくれ!」


「分かってる。俺もこんな物所持していたくない。ディロームの人に渡せばいいの?」


「む……。確かにこのままワシが受け取って良いものなんじゃろうか……」



 呼び水の鏡の返却を懇願するルドルさんだったけど、俺の問いかけに冷静になってしまったようだ。


 魔人族には他の氏族もいるらしいので、バロール族が守っていたレリックアイテムをそのまま預かっていいのか自信が無くなったようだ。



「というかさ。聖域からの持ち出しが禁じられてるなんて、なんでそんな大事な物を持ったバロール族がスペルドに向かったの?」


「我等が森人であり守人でもある魔人族であることを示すには、レリックアイテムを提示するのが1番確実じゃからな」


「まさかの身分証明書代わりっ!?」


「ディローム、ガローブ、グローグの護りしレリックアイテムはこの森そのものであり、動かすことは敵わぬからのう。バロール族の皆に縋るしかなかったのじゃ」



 スペルドでは魔人族は殆ど見ないし、疑われることもないと思うけど……。


 その王国の状況をこの人たちは知らないんだから、身分の証明に呼び水の鏡を持ち出したわけか。



 ということは、開拓村跡地も数日とか短い期間でアウター化したわけじゃないのかな? バロール族だってインベントリは使えなかったんだろうし。



「話は分かった。ルドルさんたちのことは疑ってない。でもこれをすぐに返すわけにはいかないよ」


「なっ!? それはいったいどういうことじゃっ!?」



 呼び水の鏡をインベントリに収納する。



 ルドルさんが嘘をついている感じもないし、呼び水の鏡もこの森の中でなら安定しているように見える。


 だからルドルさんの話を疑いはしないんだけど、だからと言って今すぐ呼び水の鏡を返すわけにはいかないんだよな。



「悪いけど今の魔人族は力不足だ。呼び水の鏡を魔物や敵の存在から守り抜く力があるとは思えない」


「ぐううう……! 悔しい……、悔しいが……! 確かにダンさんの言う通り、かぁ……! 先ほども、助けてもらったばかり……!」



 ルドルさん、カランさん、そしてヴァルゴが悔しそうに俯いている。


 いやいや、()()()()って言ったんだからちゃんと聞いてよね。俺は出来ればこんな物持ち歩きたくないんだからさぁ。



「ルドルさん。カランさん。ヴァルゴ。今の魔人族は力不足で、すぐには返せないって言ったんだよ? 力不足なら力を磨いて、レリックアイテムの守人として相応しい力を手に入れてくれる気は無いかなぁ?」


「守人として相応しい力、ですと……? ダンさん、それはいったいどう……」


「手に入れてみせます! 守護者たる存在として相応しい、ダンさんをも超える力を必ずや手に入れてみせましょう! 誇り高きディロームの護り手の名にかけて、必ずやっ!」



 戸惑うルドルさんを差し置いて、ヴァルゴが決意に燃える瞳で力強く宣言する。



 今のヴァルゴに、初めて出会った時のようなやる気のなさそうな雰囲気は微塵も感じない。あるのは己の実力不足への燃え盛るような怒りだけだ。


 そんなヴァルゴを見て、戸惑っていたルドルさん、カランさんの瞳にも光が戻る。



「うん。期待してる。それじゃ情報を共有していくよ」



 魔人族の人たちは既に化け物じみた戦闘技術を習得してるんだからね。


 後は職業と装備品さえ揃えられれば、この人たちから何かを奪える奴なんていなくなるだろう。



 あとは敵の情報も共有しておけば磐石の態勢を整えてくれるだろう。



「呼び水の鏡を村跡に設置した相手は恐らく人間族。相手はデーモン種とロード種を操る術を身につけている。だから最低限、デーモン種とロード種を倒せるようでないと、鏡の守護は任せられない。ここまではいいね?」



 3人が力強く頷いたのを確認して、話を先に進めていく。



「現在確認済みの情報だと、同時に10体を越えるアウターエフェクトを操ることが出来るようだ。俺が確認済みのマインドロード、ドレッドデーモン、サンダーロードの3体は確実に消滅させたけど、相手の戦力が分からないのであまり安心できる状況じゃない」


「10体を越えるアウターエフェクトを同時に……! 確かにそんな相手に鏡が狙われているのであれば、我々では護りきれぬな……」



 悔しそうに歯噛みするカランさん。



 さっきまでの魔人族は、通常の魔物にすら押し切られかけてたからね。


 でもそれは職業の加護無しの話だ。魔人族はこれから強くなればいい。



「そこでだ。俺から魔人族のみんなに、職業の加護と装備品を提供するよ。だから魔人族のみんなはなるべく早く強くなって、守人として相応しい力を手に入れて欲しいんだ」


「は……? 職業の加護を提供とは、どういう……。あ、もしやダン殿は移動魔法が使えるのか? 先ほどの魔物撃退の時も広域範囲魔法を放っていたと聞いているしな。それで皆をスペルドまで連れていき、転職させていただけると言うことかっ!?」



 カランさん。ゴツいオッサンがそんなに瞳をキラキラさせないでください。


 確かに俺は移動魔法も使えるし、法王が無ければその方法しかなかったけどね。もう法王の職は得たし、遠慮せずにどんどん使っていこうじゃないかーっ。



「3人とも。ステータスプレートを取り出して、村人のところ見ててもらえるかな?」


「む? 了解だ」



 俺の言葉を訝しみながらも、素直に言われた通りにしてくれる3人。


 みんな村人は浸透しているから戦士、商人、旅人になれるみたいだけど、ここは素直に全員戦士にしておこうかな。



 みんな戦士になーれっ! 職業せってーい!



「「「えっ!!?」」」



 3人の驚愕の声を聞きながら再鑑定。


 うん。間違いなく3人とも戦士になっているね。



「俺は法王って職業を得ていてね。転職を自由に行うことが出来るんだよ。この能力で職業が魂に定着する現象、職業浸透を見分けることも可能なんだ」


「「「……………………」」」



 職業設定の説明をするも、3人は自分のステータスプレートを見て固まったままだ。


 話、聞こえてるんだよなぁ? もう1度説明するのは面倒なんだけどぉ?



 まぁいいや。聞いてなかったらしらんしらん。



「守人の魔人族はディローム、ガローブ、グローグの3氏族だけでいいのかな?」


「そ、それって……!?」


「うん。乗りかかった船って奴だからさ。当分は守人の転職を面倒見るよ」



 流石に限定された人にだけ職業設定をするわけにはいかない。


 最低限魔物に後れを取らない水準に至るまでは、魔人族全体の転職の世話をする必要があるだろう。



「職業の加護は俺が与える。だから誇り高きディロームの護り手の名に相応しい力、手に入れてもらえないかな?」



 ステータスプレートが消えて、3人が俺に顔を向けてくる。



 ルドルさんは信じられないといった表情、カランさんは強くなれるのが嬉しくて仕方ないといったキラキラした表情。


 そしてヴァルゴは紫の顔を真っ青を通り越して、真っ白にしている。



 ……なんで?



「も、守人全員に加護を授けてくださるなど……。ダン様は御使い様だったのですかな?」


「ダン殿ぉっ! 何卒よろしくお願い申し上げるっ! すぐにディロームの者たち全員を集めさせる! 少々待たれよぉっ!」



 ルドルさん。アンタなんで今、修道士の職業を得たんだよっ! 俺はただのリーパーだって言ってんでしょ!


 そしてカランさんは話が早すぎるからねっ!? まさか他の集落まで走ってったりしないだろうなぁ!?



「ささささ先ほどは本当に申し訳ありませんでしたーーっ!」


「おわっ!?」


「御使い様に槍を向けるなど万死に値しますっ! どうか、どうか私の命だけでお収めいただきたくーっ!」



 突然泣きそうな顔で、全身全霊を込めて謝罪し始めるヴァルゴ。



 そういやこいつとはさっき殺し合いしたばっかりだったわ。それでこいつ真っ青になってたのか。


 俺にとっては槍の訓練にもなってありがたかったんだけど、ヴァルゴとしちゃあ気が気じゃないかぁ。



「ヴァルゴ。怒ってないし、せっかく助けたお前を殺すとか意味分からないっての。顔を上げてくれよ」



 このネタでちょっとイジってやりたい気もするけど、捨てられた子犬みたいな顔されると申し訳なくなるなぁ。



「そうそう。お前を殺す気は全く無いけど、さっきは話の途中だったね。なんで俺を殺そうと思ったのかは聞かせてくれる?」


「ひっ……!」



 殺さねぇって言ってるのに、ガタガタ怯えて言葉が出てこない様子のヴァルゴ。


 お前、俺と手合わせをしていた時の不遜な態度はどこいったんだよ?



 ほら、よしよしなでなでしてやるから、俺の質問に答えてくれよ。



「あっ……」


「ダン様。ヴァルゴを責めないでやってくだされ」



 固まったまま一向に口を開かないヴァルゴを見かねたのか、ルドルさんが口を挟んできた。



「ヴァルゴは守人として、侵入者から聖域の樹海を守る為に行動したに過ぎませぬ」


「えっ、守人の魔人族の案内無しにこの場に近づくと、問答無用で殺されちゃうの? それだけ閉鎖的なら、職業の加護が自然消滅しても仕方ないのかなぁ……」



 でもあれだけの戦闘技術を持った人たちがそこまで閉鎖的なら、職業の加護さえ得られれば番人としては最適な人選だ。


 うん。やっぱり魔人族の人に協力した方が良さそうだね。



 ……そしてルドルさんよ。何でさっきから俺を様付けで呼ぶのかなぁ?



「ダン殿ーっ! 今集落中の者に声をかけて、広場に集まってもらっているからなっ! 話が終わり次第、すぐにみんなに加護を授けてやって……」



 バァン! と勢い良くドアを開けて入ってきたカランさんが、部屋の中の俺達の様子を見て、実に意地の悪そうな笑顔を浮かべる。



「……ほっほーう!? 堅物ヴァルゴにも、とうとう春がきたようだなぁっ!?」


「ん? カランさんなに言って、あっ……」



 カランさんからヴァルゴの名が出たので彼女を見ると、なんだかトロンとした目で俺を見詰めてきている。



 やっべ。よしよしなでなで止めるの忘れてた……。


 このパターンは不味い。非常に不味いんじゃないかなー……?



 だって俺、5人の美女と結婚してからまだ数日しか経ってないんだよ……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ