238 傾国
※R18シーンに該当する表現をカットしております。
「ほ、本当に……! 本当に呪いが……! 呪いが、無くなってるっ……!」
自分のステータスプレートを見て号泣するターニアさん。
ターニアさんの様子から、呪いが彼女の人生にどれ程の苦しみを齎していたのかが伝わってくるようだ。
この家は環境的にあまり良くない。
ターニアさんが動けなくなってからは掃除もされていないし、隙間風も凄くて、冬の夜を過ごすには劣悪な環境だ。
なのでターニアさんをマグエルの我が家に招待しようとして、いやいや私は呪われてるんですー、いやいやその呪いはもう解きましたよー、という流れで解呪をお知らせしてあげたのだ。
ちなみにターニアさんのステータスプレートには『人頭税(30万リーフ)』の表記があった。
ニーナと同じ2年間の滞納分20万リーフと、今年の納税期間ももう過ぎてしまったせいで、今年の税金8万リーフにも滞納金2万リーフが追加されてしまったんだなぁ。
「ご覧になったように呪いも消えてますし、マグエルの家は広いですから遠慮は要りません。人頭税も俺が払っちゃうので、どうか一緒に来てもらえませんか?」
ターニアさんが落ち着くのを待ってから、改めてマグエルにご招待する。
「ニーナのお母さんをここに置いていくなんて、出来ればしたくないんです。お願いします」
「母さんお願い。私たちと一緒に来て欲しいの。母さんも私も無事で、2人とも呪いも無くなったんだから、もうこんな家に隠れ住む必要は無いんだよっ……!」
「えっと、お世話になるのはありがたいんだけど……。私、お邪魔じゃない? 貴方達、婚姻を結んだばかりなんでしょ?」
そこは気にしないで貰って大丈夫。婚姻結ぶ前からイチャイチャしてるから。
……むしろターニアさんのほうが居辛く感じないか心配だなぁ。
とりあえずマグエルへのご招待は受けてもらえたので、さっさと移動しよう。
1度衰弱してまだ回復しきっていないターニアさんに、この家で過ごさせるのはあまり良くない。
ニーナとターニアさんに、持っていきたい荷物などを確認してもらうけれど、2人とも特に無いようだ。
本当にギリギリの暮らしをしていたのか、思い出の品とかも特に無く、家にはボロボロになった実用品しかない。
唯一ターニアさんが持ち出したのは、ブルーメタル製の槍だった。
「他は全て売却しちゃったけど、ここで暮らす以上武器だけは手放せなかったの」
アウターのすぐ隣りだもんねぇ。
それに武器があれば、ドロップアイテムを得ることも出来るからな。確かに必需品だろう。
ニーナがパーティを脱退し、ターニアさんとパーティを組んでもらう。
そしてポータルでマグエルの冒険者ギルドに行き、ターニアさんが滞納していた税金を払ってしまう。
「はぁ~……。呪いも税金も無くなっちゃった……。これで私、普通に外を歩けるようになったんだなぁ……」
「あはっ! 一緒にお買い物にも行こうねっ! マグエルを案内してあげるのーっ!」
まっさらになったステータスプレートを見てぼうっとしているターニアさんと、そんなターニアさんに抱き付いてニコニコしているニーナ。
そんな2人の姿は微笑ましいんだけどさぁ。
納税期間外に納税をすると更に追加で5万リーフかかるって、なんかすげぇ納得いかないんだけどぉ?
「ええ……。ニーナの旦那さん、随分モテるんだねぇ……」
納税を済ませてターニアさんの憂いを解消したら、我が家に戻ってみんなを紹介する。
ラトリアは居ないけど、まぁいいでしょ。
「ニーナと2人っきりで暮らしてたのに、突然賑やかになっちゃうなぁ」
「母さんは賑やかなの、嫌い……?」
「ううん。そんなことないよニーナ。母さんの産まれた家は兄弟が多くてね。もっとずっと賑やかだったの。だからちょっと昔を思い出して、懐かしくなっちゃっただけなの」
ターニアさんのご実家のグラフィム家は、子供が50人以上いるとか言われてたっけ。
もし異種族間でも子供が作れたら、うちも似たような事になってたんだろうなぁ。
「こんなに美人な娘ばかりで母さんも鼻が高いわ。皆さん。ニーナ共々、どうかよろしくお願いしますね」
はっはっは。更に教会に孫が100人規模でいますよ。
うん。既にグラフィム家と大差無かったわ。
みんなで夕食を食べて、ニーナとターニアさんにお風呂に入ってもらい、その間に少しターニアさんについて相談する。
「既に実家とは縁が切れていて、人頭税も払ってきたのね? ならマグエルに滞在しても何の問題も無いと思うわ」
ターニアさんが普通の暮らしをするにあたって、何か見落としている事は無いかと確認してみたんだけど、ティムルが大丈夫と保証してくれた。
実家と縁が切れていなかったら、面倒な事になっていたのかなぁ?
「この家に一緒に住むのは構わぬのじゃが、ダン的にどうなのじゃ? 母上のように、ターニアを抱く予定はあるのかの?」
「ねぇよ! っていうかラトリアだって家族に迎える予定は無かったんだからねっ!?」
ぶっ込んできたフラッタにツッコミを入れていると、ただでさえ凶悪なおっぱいを、両腕を組んで更に強調したリーチェが妙な提案してくる。
「う~ん……。ダン。今のうちにこの家、増築した方が良くないかな? なんとなく、もっと住人が増える気がして仕方ないよ……」
「やめんかっ! 縁起でも無いってのっ!」
「そうねぇ。それにもしダンがターニアさんを抱かずに同居するつもりなら、1つ屋根の下でずっと暮らすのはお互い無理が出てくるんじゃないかしら」
「へ……? あ~……。そういう問題もあるのかぁ……」
「ニーナちゃんとターニアさんにも聞いてみて、離れみたいな場所を作ったほうがいいかもしれないわ。お互いのためにね」
ふーむ。多妻な家にいたティムルらしい意見だな。
確かに娘とニャンニャンコンコンしてる家に、母親が一緒に同居するのは問題かなぁ。ラトリアの場合は本人のことも抱いてるから、ターニアさんとは状況が違うわけだし……。
「っていう話が出たんだけどどうかな? 2人の意見も聞かせて欲しい」
お風呂上りのニーナとターニアさんに、今の話をそのまましてみる。
ティムルたちは入れ替わりで入浴タイムだ。
「ニーナと私を助けてくれた対価に体を求められれば拒まないけど……。ダンさんが言ってるのは、そういうことじゃないのよね?」
「うん。俺は好き合ってる相手以外は抱きたくないんだよ。ターニアさんのことは、とっても魅力的な女性だと思ってるけどね」
ターニアさんはニーナそっくりの美人さんだ。
その上ニーナには全く感じられない女性的な膨らみもしっかりとあるのだ。
容姿だけで言えば今すぐ押し倒してもいいくらいに魅力的なんだけど、これまたラトリアとは事情が違うターニアさんに気軽に手を出すわけにはいかないよ。
「もしターニアさんが俺のことを好きになったっていうなら応じるつもりだけど、お礼とか対価とかでターニアさんに手を出すつもりは無いんだ」
「う~ん。確かにリーチェの言う通り、もっと住人が増える気がするなぁ……。それにティムルの言うことは無視できないし。離れかぁ……」
前半に不穏なことを呟きながら、離れの必要性は感じているらしいニーナ。
我が家の家族の、ティムルへの絶対的な信頼感よ。
この世界って建設費用はさほど高くないし、土地も余ってるから気軽に建ててもいいと思うんだよね。
……って勝手に話を進めちゃったけど、ターニアさんにはなにか希望があったりしないのかな? やりたい事とか行ってみたいところとか。
なんか完全にマグエルに定住してもらう方向で話を進めちゃってたね。
「一緒に住まわせてくれるなら凄くありがたいの。他に頼れる人もいないしねっ」
けれど俺の心配を余所に、マグエルでの同居に前向きな様子のターニアさん。
他に頼れる人もいないって、そんなウィンクしながら言い放たれても返答に困るんですよ?
「それにここってスポットの近くの街なんでしょ? これでも多少腕には覚えがあるし、かと言ってもうルインに潜るのは嫌だからね。屋外型アウターでリーパーとして生計を立てられれば、それが1番かなぁって」
マグエルに定住することを前向きに検討してもらえてるのならありがたい。
あ、腕に覚えがあるなら、トライラムフォロワーの訓練教官でもやってもらえばいいかも。
それ以前に、槍使いなら俺もご教授願おうかな?
「離れに住むことはいいの? 母さん1人だけ別の建物で寝泊りするんだよ?」
「あははっ。ニーナが居なくなってから、私ずっと1人で暮らしてたんだよ? 貴女が近くにいるのなら寂しくもなんともないのっ。それにもっと人が増えるかもしれないんでしょ~?」
からかうような笑顔を向けてくるターニアさん。
ふ、増える予定はないんだけどなぁ~?
自分でも否定しきれないところが嫌だなぁ、まったくもう。
ま、離れを作る必要があるにしても、同居には前向きで良かった。
せっかく再会できたお母さんと、理由もなく離れ離れにはさせたくないよね。
離れの建設はとりあえず仮決まりって感じで、それまでは客室で寝泊りしてもらうことにしよう。
「あ、ダン。お話は終わったの?」
同居の話が済んだのでお風呂にいくと、リーチェが1人で長湯を楽しんでいた。
浴槽内で抱き合って、入浴中はずっとキスをしながら、新妻リーチェと愛を確かめ合った。
リーチェを思い切り堪能してからお風呂から上がる。
するとムーリが仕合わせの暴君を脱退して、ターニアさんと新しくパーティを組むと言い出した。
「私は非戦闘員ですし、基本的にマグエルに滞在していますからね。それに仕合わせの暴君に所属したままだと、私も登城しなきゃいけなくなっちゃいますよ」
「私にとってはムーリちゃんも娘だから、知らない人と組むよりは安心なの。トライラムフォロワーに所属すれば、ダンさんともニーナとも、殆ど同じパーティみたいなものだしね」
んー。確かにムーリは、うちのパーティメンバーとはちょっと言えないかもなぁ。
今まではパーティメンバーに空きがあったからそのまま所属してたけど、戦闘力の無いムーリは俺達のパーティに所属してる方がトラブルに巻き込まれかねない、かぁ。
今後はムーリもターニアさんに槍を習って、スポットの入り口付近では戦える程度の戦闘術を身につけていくつもりらしい。
でもうちのパーティの場合、基準がアウターエフェクトのソロ撃破、出来ればイントルーダー戦に参加できる実力が必要だもんな。
ちょっと要求の水準が高すぎるね。
「それでですねっ。もし良かったら、ダンさんにパーティ名をつけてもらいたいんですよっ」
「ええ? パーティ名を俺が考えるのぉ?」
「はいっ! 仕合わせの暴君は私達でつけちゃった感じでしたから、私の新しいパーティ名は、是非ダンさんに名付けてもらいたくって!」
声とおっぱいを弾ませて、ウキウキと命名を頼んでくるムーリ。
名付けとか命名とか、凄い苦手なんだよなぁ。そもそも俺がダンゴモチだし……。
「仕合わせの暴君はダンさんのイメージでしたから、ダンさんが私に抱いているイメージを参考にして命名してくれたら、すっごく嬉しいんですよねっ!」
「ムーリのイメージぃ……? そうだなぁ……」
JKとかエロシスターとか、マシュマロボディに低反発。ソロプレイヤーに1番欲しがり屋さんとか……。
あとはまぁ俺のお嫁さんって事だよね。
ムーリに限った話じゃないけど、みんな美人で可愛くて最高のお嫁さんたちだ。
「傾国……。そうだな、『傾国の姫君』にしよう」
1人1人が最高の美女で、俺の大切なお姫様たちなんだ。
一緒のパーティには居られないけど、それくらい大切な存在なんだよって伝えたいんだ。
「俺はムーリの為ならスペルド王国を滅ぼしてやれるし、ムーリは俺の大切なお姫様だからね。うん。傾国の姫君でよろしく」
「ちょちょちょーっ!? そんな名前付けたら私、どれだけ自惚れてるんだって思われますってばーっ!」
「自惚れじゃないよ。ムーリは絶世の美女だ。自信持って」
ガリアとかいうエロ司祭も、お前のために命を捨てるくらいにゾッコンだったじゃないか。
あいつの命をあの世という名のゴミ箱に放り込んだのは俺だったかもしれないけど?
「ターニアさんもニーナそっくりの美人さんだし、傾国って言っても大袈裟じゃないよ。うん、何も問題ないね」
「あら。ありがとうダンさん。お上手ね。でも褒め言葉は私じゃなくて、ニーナに言ってあげて欲しいかなぁ」
勿論ニーナもティムルもフラッタもリーチェも、みーんな最高の女性ですよ。
美貌、能力、性根、そしてエロさ。どれを取っても完璧ですね、全員がっ!
モジモジしながらブツブツと独り言を呟いているムーリをバックハグして、耳元で愛を囁いてやる。
「ムーリ。全然自惚れなんかじゃないよ。ムーリは最高に可愛いお姫様だから。最高に可愛いお姫様には、もっと自信を持ってもらえたら嬉しいなぁ。ムーリのこと大好きだから、傾国の姫君って名前、自然に浮かんだんだよ」
「は、はぅぅぅ……! ズ、ズルいよぉ……! ズルすぎますよぉ……! そうやって言われたら、私が断れないって知っててぇ……!」
「大好き。大好きだよムーリ。可愛いムーリが大好きだよ。愛してる。俺の大切なお姫様は、傾国の姫君の名前、受け取ってくれるかな?」
「はぁぁぁっ……! 大好き……! 私も大好きだから、断れないよぉ……!」
ふふ。ムーリは最高に美人のエロシスターなんだから、傾国の姫君で何の問題もないよ。
でも照れてるムーリも最高に可愛いよ。よしよしなでなで。
今晩はニーナとターニアさんが客室で一緒に寝る事になったので、ニーナと出会ってから初めて、ニーナと別々で寝ることになった。
「ダン。今日だけは許してね。死んだと思ってた母さんだから……。今日だけは一緒に居させて欲しいの」
「構わないよ。もちろんニーナと一緒に寝れないのは寂しいけどね。今夜は母娘水入らずで過ごしてね。俺のお姫様」
寝室の外でおやすみのちゅーをする。
名残惜しくて何度も唇を重ねてしまい、なかなか寝室に向かえない。
「ふふ。ダンさん。今晩だけ娘をお借りしますね。ニーナを幸せにしてくれて、本当にありがとう。心から感謝します」
客室の扉が閉まるまで、終始笑顔の母娘2人を見送った。
ニーナと離れ離れなのは寂しいけど、他のみんなだって大切だし、全員が俺にとっては傾国の姫君だからな。
早速寝室に行って、全員と抱き合った。
「本当にダンは凄いわねぇ。貴方に会う前に失くした物まで拾っちゃうなんて。もうかっこよすぎて、お姉さん何度も何度も惚れ直しちゃうわよぉ」
「ニーナ、凄く嬉しそうだったのじゃ。ニーナが嬉しいと妾も嬉しいのじゃ。ダン。ニーナを幸せにしてくれて、ありがとうなのじゃーっ!」
「ぼくの旦那様ぁ。ぼくも旦那様のこと大好きだよぉ。かっこよくて優しくて、とってもえっちな旦那様が好きで好きで堪らないよぅ」
「私のことを傾国なんて言うんだから、いっぱい愛してくれなきゃ許さないですっ! 言葉だけじゃ絶対に信じませんからっ!」
新婚のみんなと愛し合って、お互いの愛を確かめ合う。
ここにニーナが居ないのは寂しいけれど、それはニーナが幸せな証拠なんだから、いつまでもウジウジ考えるのはやめよう。
ティムルもフラッタもリーチェもムーリも、俺の大切なお姫様たちを全身全霊で愛してあげないとね。
ニーナの分もみんなに受け止めて欲しいなっ! みんな大好きーっ!