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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
4章 マグエルの外へ1 竜王のカタコンベ
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226 利用

※R18シーンに該当する表現を若干カットしております。

「酷いですっ! 酷いですっ! あれは酷いですよーっ!」



 執務室での逢瀬が終わった後、着替えを済ませたラトリアが俺に食って掛かってくる。


 ごめんごめんとよしよしなでなでしながら、興奮するラトリアを宥める。



 現在は夕食も済ませたあとで、フラッタの部屋でみんなと合流済みだ。



「新しいスキルの検証のつもりだったんだけどね。つい楽しすぎてやりすぎちゃったんだ」


「つい、じゃないですよぉっ! なんなんですかあの状況! 私、どうすればいいのか分からなくなっちゃったじゃないですかーっ!」



 酷いですー! と抗議するのは良いんだけどね? 俺の足の上に座って抱きつきながらだと逆効果なんだよラトリア?


 ラトリアって夫婦生活長かったわりに、甘えるの上手くない?



「ダンは職業補正やスキルをえっちに活用するのが上手いし、好きよねぇ」



 俺に甘えるラトリアの姿を見て、ティムルがなんだか怪しい視線を送ってくる。



「私もせっかく生産職を極めさせてもらえるんだから、もっともっと貪欲にならなきゃねっ」


「待ってティムルお姉さん。お姉さんにこれ以上貪欲になられたら、俺とみんなの身がもたないから」



 ちなみに、対気配遮断スキルに使えそうなセンサーやレーダーみたいなマジックアイテムは無いそうだ。


 そんなのがあったら護衛とか野営が楽になるんだけどー、と残念がっていたので、本当に心当たりは無いんだろうなぁ。



「それにしても、エマに気づかれなかったのは凄いのじゃー」


「へぇ。フラッタにここまで言わせるほどの腕前なんだ? エマーソンさんって」


「うむっ。エマは母上の幼馴染で、双竜の顎のメンバーでもある凄腕なのじゃ。今ならば負けぬ自信はあるが、剣の腕だけなら妾よりも上かもしれないのじゃっ」



 自分より強いかも、とフラッタが嬉しそうに語ってるってことは、本当に強い人なんだろうな。


 でも職業は聖騎士で、まだ浸透も終わってなかったんだよなぁ。ラトリアと同じメンバーだったら、竜騎士でも良さそうなものなのに。



 というか使用人には竜騎士って1人もいなかったんだっけ? ってことは本当に秘中の秘なんだろうね、種族専用職業って。


 広めた方が絶対に発展していけると思うけど、それは俺が被支配者層だからこそ思う発想なのかなぁ。



「盗賊に殺人者、それに狩人と斥候も必要な可能性のある総合職かぁ……。断言は出来ないけど、恐らくはダンしかいないんじゃないかなぁそんな職業」


「やっぱリーチェもそう思う?」


「そりゃあね。まず、犯罪職を浸透させたって話も聞いたことが無いからさぁ」



 リーチェの言う通り、この世界って犯罪職になると転職が禁止されちゃうからね。


 野盗狩りをしたことのある人なんかは転職条件を満たしてるかもしれないけど、職業設定が無いと犯罪職になることも、犯罪職から抜け出すことも出来ない。



 あーでも、貴族や王様が隠密部隊や諜報部隊を持ってるのって定番だからなぁ……。



「あ、あー……。そのスキルを使って、子供の前で私を押し倒すダンさんが目に浮かびますよぉ……」


「まーたムーリは直ぐに俺のことを誘ってくるんだからぁ。今真面目な話してるんだからちょっとだけ我慢してね?」


「うーっ……! い、言い返したいけど言い返せないぃ……!」



 そんなに潤んだ瞳で期待されたらやらないわけにはいかないじゃないか。


 いっそ礼拝日に……? いやいや流石にトライラム様を冒涜しすぎだから。



「ラトリアですら私たちに気付かなかったの。他に使い手が居なければ問題ないけど、こういうスキルもあるってことは覚えておいた方がいいと思う」



 真剣なニーナの言葉に全員が頷いている。


 俺もみんなの体に無断で触れられないように、しっかりと注意をしておかないとな。



 気配遮断の話題がひと段落したところで、思い出したようにラトリアが別の話題を切り出してきた。



「あ、それでダンさん。ダンさんたち仕合わせの暴君に登城命令が出ましたよ。2月の初めの日に、登城して欲しいとのことです」



 ラトリアの言葉に思わずため息を零しそうになる。


 登城()()ね。トライラム教会とは大違いだ。



「って待った。パーティ単位で呼び出されたってことは、まさかニーナとティムルも登城しろってこと?」


「はい。非戦闘員であるムーリさんは足を運ぶ必要は無いかと思いますが、ニーナさんもティムルさんも戦闘員として戦えますので、出席は必要でしょうね」



 戦闘員として戦えるから出席の必要がある?


 当時のヴァルハールにはいなかった2人が参加を強制されて、ムーリは戦えないから必要ない? いくらなんでもその発言には無理があるんじゃないかなぁ?



 言い返すのは、ラトリアの言い分を全部聞いてからにしておくけどさぁ。



「スペルディアには竜爵家が管理する屋敷がありますので、滞在はそちらで」


「待って。滞在ってどういうこと? 登城して終わりなら、滞在は1日でいいんじゃないの?」



 なんて思ってたのに、聞き捨てならないことを言われたもんだからつい聞き返してしまった。


 ラトリアは俺の言葉の強さに一瞬怯んだ様子を見せたけど、直ぐに取り繕って話を続ける。



「……これで一応ルーナ竜爵家は、スペルディア最強を謳っていたんです。その竜爵家を襲った騒動と、それを解決してくれたパーティですから。恐らく数日間はなんだかんだと引き止められるかと思いますよ」


「ラトリア。流石に話が違うんじゃないかなぁ?」



 そりゃ俺だって滞在日数を確認しなかったけど、登城して終わりじゃないってのは話が違う。


 俺は別に臣下でも家来でもないし、そんなものに付き合う義理も無いんだけど?



 フラッタの部屋が剣呑な雰囲気に包まれる中、それでもラトリアは1歩も引かずに話を続けてくる。



「……権力者というのは往々にして横暴なものです。ダンさんの都合など、向こうが考慮してくれるとは……」


「あ、そう。じゃ俺もそっちの事情は考慮しない」



 ラトリアの言葉を意識的に遮る。


 そっちが聞く耳を持つ気が無いなら、こっちだって話を聞いてやる気は無い。



「俺がスペルディアに滞在するのは最長で3日間。それ以上は認めない」


「ダンさんっ! ですから……!」


「これを破るならスペルド王国全ての貴族を皆殺しにしてからスペルディアを出ていくって、スペルディアの王族に伝えておいてくれる?」


「みっ、皆殺しって……。本気で言ってるんですか!?」


「こんなこと冗談で言うと思う? 伝え忘れは許さない。絶対に通達しておけよラトリア」



 敵と対峙するつもりでラトリアを見る。


 その視線に込められた本気度を感じ取ったラトリアは、混乱したように騒ぎ始めた。



「まま、待ってください! スペルド王国全てを敵に回すおつもりですかっ!?」


「権力者って相手の都合を考慮しないんでしょ? こっちは暴君だよ? スペルド王国なんか知ったこっちゃないね」


「でで、ですがっ……! いくらダンさん達でも王国全てを敵に回して無事に……」


「今日竜爵邸に忍び込んで、竜騎士のラトリアにすら気付かれることなく執務室に出入りしたの忘れちゃった? 敵対して困るのっていったいどっちだと思ってる?」



 想定が甘いなぁラトリア。俺ってこれでも世界を滅ぼす事にだって躊躇が無い男なんだよ?


 ポータルも使えるから、今からスペルディアの王城に乗り込んで今晩中に王族全て殺すことも可能だからね?



 貴族だか権力者だか知らないけど、こっちの都合を無視するなら、こっちが大人しくしてやる義理も無いよ。



「王城に巣食ってる敵も殺せるし一石二鳥だね。いっそ今から全部殺してこようか?」


「まま待って……! お願いだから待ってくだ……」


「こっちはフラッタに礼節まで習ってんのに、あまり舐めた事言ってると俺が王国ごと滅ぼしてもいいんだよ? いいかラトリア、お前のやってる事は……」


「はいはいダン。ちょっと落ち着いてねー。私たちはダンにそんなことをして欲しくないよー?」



 ニーナが俺の頭を抱きしめながら頭を撫でてくれる。その温もりに荒んだ心が癒される。



 でもみんなが望まなくても、俺達を阻む存在を滅ぼす覚悟くらいはとっくに出来てる。


 みんなを守るためなら、たとえみんなに嫌われてでも俺は世界を滅ぼすよ。

 


「ラトリアー。貴女ももう少し考えて行動してね?」


「か、考えてって……! ニ、ニーナさん、私はっ……!」


「ダンは私達の為なら、本気でこの世を滅ぼせる人なんだよ? それを私達が望まなかったとしても、私達の為だと思ったら、私たち以外全ての人間を殺すことも厭わない人なの」



 まるで俺の思考をそっくりそのまま代弁したように、ニーナが俺を語ってくれる。



 それにしても、珍しくニーナが他の女を責めているな。


 割とニーナは他の誰が何をしようとも、あまり口を挟まないのに。



「ラトリアって、ダンを王国に所属させる気で動いてるんでしょ? でもやめたほうがいいと思うなー。ダンはそんなものに興味ないからねー」



 そんなもん押し付けられたって迷惑なだけだよねー。


 俺達にはお互いさえいれば、あとはなんにも要らないんだから。



「私が貴女に許可したのは肉体関係までだよ? ダンを好きに扱おうっていうなら、私達の関係はここでお終い」


「お、お終いって……」


「今すぐ私たちはヴァルハールを出て、2度と竜爵家とは関わらないの。勿論、フラッタもね?」



 フラッタの方を見ると、感情を抱かない瞳でラトリアを見詰めている。


 今は余計な口を挟まずに、ラトリアの出方を窺っているようだ。



 娘に見詰められたラトリアは、次の言葉が見つからないかのように戸惑っている。



「ラトリア。今すぐ答えないなら私達の関係はお終い。竜爵家と王国と私たちは敵対関係になって、今後一切要請には応じないから」



 最後通告を迫るようなニーナの言葉に、ラトリアが戸惑っているのが分かる。


 なんでここまで関係が拗れたのか、ラトリアは本気で理解出来ていないんだろうなぁ。



「私達が譲歩できるのはダンが提示した条件まで。これを呑むの呑まないの? 黙秘は許さない。今すぐ答えてくれる?」


「………………分かり、ました。仕合わせの暴君の滞在は3日間」


「間違えないでラトリア。()()()、3日間だよ?」



 この期に及んで下らない悪あがきをしようとするラトリアにちょっと笑ってしまう。


 ラトリア。もう交渉の余地がある状況じゃないんだよ?



「ダンも言ったでしょ? 私達が王国側の都合なんて考慮する義理は無いって。詰まらない用事に付き合ってあげる気はないよ? 最長で3日間。ほら」


「……みなさんの滞在は、最長で3日間です。それがもし破られた場合は、貴族全員を皆殺しにしたのちに王都を離れます」


「宜しい」



 ニッコリと微笑みながら、俺に抱きついていたラトリアを剥がし、強制的に立たせるニーナ。



「ダンは謁見中に王侯貴族全員に決闘を申し込む人だからね? あまり甘く見て、ラトリアのせいで王国を滅ぼしちゃっても知らないよ?」



 立たせたラトリアを反転させて、入り口に押しやっていくニーナ。


 その表情は終始笑顔で、一見すると機嫌が良さそうにも見える。



 ま、表情を取り繕わなきゃいけないほどに怒ってるって事なんだけどね……。



「私は今のラトリアをダンの女とは認めない。だから今日は自室で寝てくれる?」


「えっ、ちょっ待っ……」


「王国の利益とか発展とか、そんなものにダンを利用しようとする人は私たちには必要無いの。そういうことをする人を家族だとは認められないの」



 そうして終始笑顔のままラトリアを追い出したニーナは、改めて俺を抱きしめなおしてくれた。



「ごめんねダン。貴方がラトリアを受け入れるのを渋ってたのって、こういうことだったんだね」


「なんでニーナが謝るのさ。ニーナは俺を守ってくれただけでしょ。謝らないでニーナ。いつも守ってくれてありがとう」



 抱きしめ返してよしよしなでなで。


 でもニーナがラトリアを言い負かすのは少し意外だったかな。ラトリアの考え方とかを察して牽制するのって、ニーナっぽくなくない?



「ラトリアを受け入れた時、ダンが凄く渋ってたでしょ? だからその理由を他のみんなで何度か話し合ったことがあるんだよー」


「ああ。事前に想定してあったことなのね」


「うん。今は私が代表して話をしたけど、私の言葉はみんなも同意見ってことなの」



 言いながらティムルに視線を送るニーナ。


 その視線を受け止めたティムルは、俺に向かって苦笑いを浮かべながら口を開く。



「キャリア様との交渉もダンに頼りっきりだったでしょ。だから反省したの」


「ティムル。反省って……」


「戦闘力でも交渉面でもダンに頼ってばかりじゃ、私達の存在が貴方にとって負担になっちゃうからね。お姉さんももっと成長したいのよ」



 だから気にしないでと笑ってくれるティムル。


 結局のところ、今の俺とラトリアの会話だけじゃなくて、以前からみんなで話し合っていたわけね。1人1人とデートしてる時間もあったわけだし、話し合う機会には困らなかったわけだ。



「受け入れた時にニーナも言ってたけど、ラトリアさんはぼくたちと比べて、ダンへの依存度があまり高くないと思うんだ」


「いやいやリーチェ。お互いへの依存度なんて、低い方が健全なんだけど?」



 今更なに言ってるのと、ツッコミを入れた俺の頬にキスをしてくれるリーチェ。


 ま、確かに今更かなぁ……。



「ぼく達はダンに運命を変えてもらったと思ってるけど、ラトリアさんは偶然通りかかった自分より強い男、くらいの認識しかしてないように思えるかな」


「ラトリアさんに悪意は見えませんし、悪気があってやってるわけじゃないんでしょうけれどねぇ……」



 ラトリアが悪意を孕んでいなかったと言及するムーリ。


 もしかしてガリアの1件を反省して、ラトリアに目利きを試してみたのかもしれない。



「ダンさんを利用しようなんて無謀すぎるんですよぅ。ダンさんって我が侭で手加減が下手なんだから、怒らせたら本当に大変なんですからぁ……!」


「手加減が下手なのはお互い様だからね? ムーリはもう少しエロ方面の行動を控えてくれないと困るってば」



 だってぇ~とほっぺを膨らますムーリ。エロ行動を控える気は一切無さそうである。



 あとさっきから黙ってるけど、フラッタは大丈夫なの?


 フラッタも竜爵家と敵対するよー、ってニーナが宣言しちゃったんだけど。



「母娘だから、家族だから許せないこともあるのじゃよ……!」


「フラッタ……」


「父上を愛したうえでもダンと愛し合いたいなどと言っておきながら、そのダンを自分の思惑に利用しようとするなど、家族だからこそ許せぬのじゃ……!」



 せっかく助けた母親を許せないなんて、可哀想過ぎるよフラッタ。


 フラッタを呼んでニーナに抱きしめてもらい、フラッタごとニーナを抱きしめて3人でよしよしなでなで列車だ。



「はぁ~……。面倒臭い事になっちゃったねぇ……」



 これだから価値観の違う相手ってのは、面倒臭くて嫌だったんだよなぁ。だって今回の1件のラトリア、全く悪意無くやってることなんだもん。


 俺達が社会的地位を得るために色々と根回しして、それが俺達のためになると本気で思って行動してるんだよ。



 面倒臭いとしか言い様がないんだよなぁこれ。


 迷惑だって言っても、絶対に理解してもらえないんだから。



「母上を迎えた時にダンが言った言葉、あの時は分からなかったのじゃが……」



 ニーナの腕の中で、フラッタがポツリポツリと語りだす。



「母上はダンが評価されて王国で地位を築くことを、本気でダンのためになると思ってやっておるのじゃろう? でも妾達はダンがそんなものを一切望んでいないのを知っておるのじゃ」


「そうだねフラッタ。王国での地位なんて俺達は一切望んでないよね」


「価値観の違いと言われてもピンとこなかったのじゃが……。実際目の当たりにすると凄く分かりやすいし、分かり合えないのじゃ……」



 肩を落すフラッタをニーナと一緒に慰めていると、ため息混じりにティムルが口を開いた。



「ラトリアさんは貴族として生まれ育ったからこそ、王国に従わないダンの価値観が理解できないのかもしれないわねぇ……」


「生粋の貴族生活で育まれた価値観か」


「私たちはダンが王国どころか、世界そのものを滅ぼしたって驚かないわ。でも王国貴族であるラトリアさんは、国に楯突くという発想がそもそも無いんじゃないかしら」



 うちの嫁たちはみんな奪われる側だったからねぇ。


 フラッタですら、自分の無力を嘆いて、どうにも出来ない現実に絶望してたもの。



 家柄と血筋を守るために生きてきたラトリアとは、価値観が違って当然だ。



「登城を強要した事と俺を王国に取り込もうとしたこと。これで2度目だね」



 せっかく苦労してヴァルハールを解放したのになぁ。


 まさか俺の口からこんなことを言わなきゃいけなくなるとはねぇ……。



「フラッタ。今回までは許すけど、3度目があったらもうルーナ家とは縁を切るよ。お前もそれでいいかな?」


「……構わぬのじゃ。命は助けてもらったのじゃから、それ以上は望まぬ」



 俺の問いかけに体を強張らせるフラッタだったけど、直ぐに覚悟を決めた眼差しを俺に返してきた。



「母上と兄上がいればルーナ家は安泰なのじゃ。だから兄上を見つけてあげられれば、結局は母上の為にもなるのじゃ。だから妾は兄上を見つけようと……」


「そうじゃないのフラッタ。ダンは今回のことを水に流すって言ってるんだよ?」


「えっ……?」


「そして次に同じことがなければ、ラトリアも受け入れたままでいいって言ってるの。だからフラッタ。貴女がラトリアを説得しなきゃいけないの。分かる?」



 俺の言葉に素直に頷くフラッタに、ニーナが補足をしてくれる。


 ニーナお姉ちゃんも、末っ子フラッタに成長して欲しいのね。



 フラッタ。流されるだけじゃダメなんだよ。望む未来があるなら、黙って待ってちゃダメなんだ。



 他ならぬフラッタが、それを1番痛感してるじゃなかったのかな?



「そう、だったのじゃ……。何もしなければ、状況は悪くなるだけなのじゃ……!」


「そうなのフラッタ。当事者の貴女が黙ってちゃ駄目なんだよっ」


「まだ妾たちと母上は敵対したわけでは無いのじゃ……。母上と敵対したくないなら、娘の妾が母上を説得すればいいだけなのじゃっ!」



 ニーナの腕の中で笑顔になったフラッタを、ニーナお姉ちゃんと一緒によしよしなでなで。



 俺だってフラッタとラトリアを引き裂くようなことはしたくない。でも多分俺が何を言っても、ラトリアは理解してくれないと思うんだ。


 貴族として生きてきたラトリアを説得できるのは、同じく貴族として生きてきたフラッタだけだと思うんだよ。



「俺もゴルディアさんが守った竜爵家と敵対するのは避けたいんだ。だからフラッタ。ラトリアの説得、よろしく頼むな?」


「うむっ! 任せて欲しいのじゃっ!」



 先ほどの悲痛な覚悟ではなく、前向きな決意を感じるフラッタの笑顔。


 14歳のフラッタには辛い修羅場だと思うけど、みんなが笑顔でいられるようにがんばろうな。



「父上が守った竜爵家を、母上のくだらない思惑で潰すわけにはいかないのじゃっ! 兄上が帰ってきた時、迎えてやれない竜爵家にするわけにはいかないのじゃっ!」



 いやいや待ってフラッタ。


 潰さない。別にルーナ家を潰したりはしないってばぁ。



 でもフラッタの言う通り、せっかくシルヴァを見つけて助け出せてもフラッタが家にいられないなんて、そんな竜爵家をゴルディアさんに見せるわけにはいかないね。

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