223 神鉄
※R18シーンに該当する表現をカットしております。
「あははははっ! はやいはやーい!」
「ニーナ。舌を噛まないように気をつけてね?」
今日もニーナをお姫様抱っこして、最深部まで一気に走る。
自分で走りたいと言うかなーと思ったけど、抱っこ移動も今まで出来なかったので、これはこれで楽しんでくれているみたいだ。
最深部でみんなと合流して、5日目の探索を開始する。
俺の盗賊、ニーナの魔法使いは、フラッタの探索者と比べて浸透がかなり早い。盗賊に上限レベルがあるかどうかは不明だけど、今日中に50は余裕で超えられそうだ。
「ダンー。スキルジュエル出たよーっ」
軽い調子でリーチェがスキルジュエルを回収してくれる。
今回のスキルジュエルのドロップは1つ。スキルは病気耐性-さんだ。
現状の我が家にはあまり必要がなさそうなスキルなので、やっぱりインベントリの肥やし行きである。
「赤き奔流。紅蓮の災禍。赫灼たる魔の炎。汝、焼き滅す者よ。フレイムサークル」
ニーナが攻撃魔法の詠唱を練習しつつ魔物を殲滅していく。
魔法職を全部浸透させてる俺と比べるとどうしても威力が低いけど、弓に持ち替えなくても遠距離攻撃が出来るようになったのはかなり大きい。
それと何度か試してみたところ、獣化したキツネっ娘ニーナは魔法攻撃力も上がるみたいだね。
ただ獣化の魔力消費に攻撃魔法の消費魔力が追加されちゃうので、相当気をつけないと魔力枯渇まっしぐらだ。
でもニーナがインパクトノヴァまで使えるようになったら、俺以上の攻撃魔法の使い手になれる可能性が出てきた。
「あっ……! 回復魔法が融合したっ! ダン! ぼくの修道士、浸透が終わったみたいだっ!」
俺の盗賊が64まで上がった頃に、リーチェから修道士の浸透が告げられた。
スキルが融合したってことは、リーチェって回復魔法士は浸透させてあったのねぇ。
リーチェの浸透が終わったのならばとニーナを鑑定してみると、やっぱり彼女の魔法使いの浸透が終わっていた。
「次は攻撃魔法士でお願いするのっ! 支援魔法士や探索魔法士は数が必要な職業じゃないみたいだしねっ」
攻撃魔法の楽しさに目覚めたニーナは、次の職業に攻撃魔法士を選択した。
攻撃魔法士LV1
補正 魔力上昇 魔法攻撃力上昇-
スキル 中級攻撃魔法
既に俺とリーチェがヘイルストームまで使えるので、ここでニーナも使えるようになったら鬼のような殲滅力だなぁ。
5日目の探索で俺は篤志家と弑逆者LV66、盗賊LV72。ニーナは攻撃魔法士LV11、ティムル名匠LV68、フラッタは探索者LV27、リーチェは修道士がLV30になったようだ。
司祭の職業ギルドはちゃんとあるらしいので、リーチェはまたスペルディアに行って、今日中に司祭になってくるらしい。燃えてるなぁ。
「そりゃそうだよっ! エルフには司祭はおろか修道士だって殆ど居なかったんだ! エルフのぼくが司祭にまでなれるなんて、思ってもみなかったんだからねっ!」
あー、ティムルとは逆で、種族的に向いてない職業に就ける嬉しさなのかぁ。
戦闘力の安定しているリーチェが治療魔法を使えるようになるのはありがたいね。
フラッタを我が家に迎えた頃はフラッタとリーチェが突出している感じだったけど、今は他のメンバーも能力面で追いつけてきているかもしれない。
既にフラッタがアナザーポータルまで使用できるし、ニーナが中級攻撃魔法を使えるし、誰かが欠けたら機能できなくなる状況からは脱しつつある。
ティムルの名匠の補正も優秀だから、ちょっと前にニーナと大きく差が出来てしまった敏捷性補正が、ここに来てちょっとずつ追いつき始めてるんだよね。
ニーナは今魔法使いルート育成中で、敏捷性補正を上げてないのもあるけどさ。
ニーナは呪物の短剣で物理攻撃力が跳ね上がったところに攻撃魔法の威力を一気に上げてきているので、死角がなくなりつつある。
一方のティムルは名匠の補正が優秀なので、他の職業を浸透させなくても問題ないくらいに成長している。
移動魔法が使えるようになったので、戦闘しか取り得の無かった脳筋フラッタはもういないし、元々ラスボスだったリーチェはここに来て更なる職業浸透を進めて、どんどん強くなっている。
俺達って既に、建国の英雄達より強かったりしないかねぇ?
「ダンさーんっ! 今日もいっぱい可愛がってくださいねーっ」
「たっだいまー! 無事に転職してきたよーっ!」
司祭になって戻ってきたリーチェと、マグエルから攫ってきたムーリをぎゅっと抱き締める。
2人の極上ボディを堪能していると、そう言えば気になっていたことがあったなぁとラトリアに聞いてみる。
「ゴルディアさんってオリハルコン製の武器を持ってるって聞いたことがあるんだけど、それってやっぱり失われちゃったのかな? それとも奪われた?」
「失われてしまった……、と思いますね。ディアは死んでも剣から手を離しませんでしたから、ディアと一緒に魔方陣に飲み込まれてしまったはずです」
そっかー。胸を貫かれても、最期までゴルディアさんは剣を離さなかったのね。
最悪の想定ではオリハルコン武器を敵に奪われているかと思ったけど、ゴルディアさんは愛剣を敵に渡すようなポカはしなかったようだ。
ゴルディアさんが使っていた武器は神鉄のロングソードという武器で、神鉄とはオリハルコンの別称みたいだ。
ずっと昔からルーナ竜爵邸に伝わっていた品で、歴代当主が代々引き継いできたという。
質問に答えてくれたラトリアに、お礼を言ってキスを贈った。
名匠LV60で重銀……、ダマスカス製の防具のレシピが解放されたみたいだけど、オリハルコンの解放はいつになるんだろうなぁ。
……って、人の手で作れる最高の装備がオリハルコン製で、アウターレアはドロップでしか入手できない最高級品なんだよね?
だったら呪物の短剣にスキルを付与していくのはありなんじゃないかなー?
夜が明けたら朝の配達の時間だ。
今日で6日目の探索。今までと同じペースで考えるなら今日はアウターエフェクトか出るはずだけど、どうかな?
敵を集めては殲滅され集めては殲滅され、もう罰ゲームというよりもそういうルーティンであるかのように、魔物狩りとキスを繰り返す。
「ねぇねぇティムル。1つ相談があるんだけどいいかな?」
「呪物の短剣にスキルを? アウターレア製の武器なら更新の心配もまず無いし、スキル融合があるから後悔する可能性も低いかしら?」
キス休憩中にティムルにお願いして、呪物の短剣に貫通-と魔力吸収-のスキルを付与してもらった。
呪物の短剣
ランダム状態異常付与+ 貫通- 魔力吸収- 無し 無し
「ティムル、ありがとうなのっ! ティムルにスキル付与してもらったの、すっごく嬉しいのっ!」
「あはーっ! 私もニーナちゃんの武器に関われて幸せよーっ」
ニコニコと抱き合うニーナとティムル。ここに俺をひと摘み、なんて野暮はするまい。
殆ど被弾をしたこともなく、回復魔法の使い手の多い仕合わせの暴君メンバーじゃ体力吸収はあまり役に立たないし、ランダム付与で毒と魔法妨害が出る可能性もあったのでこの2つも却下した。
物理攻撃力上昇をつけても良かったんだけど、貫通で充分だと断られてしまった。
アニマライザーまで付与してるから、火力過多気味だしねぇ。
「はいはいお疲れさん。またのお越しをお待ちしてまーす?」
今日はスキルジュエルが落ちないなぁなんて考えていた正午を少し過ぎた頃、アウターエフェクトの兆候が出て、ウィンドロードという魔物が出てきた瞬間吹き飛んで死んだ。
もう悲しいくらいに相手にならないな、アウターエフェクトさん。
ドロップアイテムは緑色の宝石ウィンドソウル。
何かの素材なんだろうけど、ティムルの名匠が上がれば何か分かるのかなぁ。
「もう完全に相手にならないねぇ。ここまでは無理にしても、私も1体くらいなら圧倒できるようにならなきゃなぁ」
「んー、そういう意味では私が1番不安なのよねぇ。敵が悪意を持ってアウターエフェクトを扱ってくる以上、ダンと分断されることも覚悟しておかないと……」
「ニーナもティムルも、既に1体だけなら相手取れると思うがのぅ」
アウターエフェクトを討伐した直後に、真面目な口調で相談しながらも俺に体を擦りつけてくるニーナとティムル。
アウターエフェクト討伐直後は誰の邪魔も入らないからな、すぐに寄り添ってきてくれるんだよね。最高かな?
そんな2人の実力は認めつつも、懸念材料を挙げるフラッタ。
「ただアウターエフェクトには状態異常を使う者も多いからの。そういう意味でティムルの耐性が少し不足しておるのじゃ」
「普通に考えたら充分すぎる、過剰なくらいの戦力なんだけど……。敵がアウターエフェクトを何体操っているのか……。下手したら兵隊のように何十、何百と従えている可能性だって、決してゼロとは言えないからね……」
アウターエフェクトを単体で語るフラッタと、敵勢力全体として語るリーチェ。
考えたくない想定ではあるけど、リーチェが言うようにアウターエフェクトの軍勢みたいなものがある可能性はゼロではないんだよなぁ……。
敵と相対するのがいつになるか分からないけれど、出来れば全員に全状態異常耐性+までつけておきたいよなぁ。
集中攻撃できれば一瞬で滅ぼせるけど、複数体出て来られたらそういうわけにもいかないし。
「さて、それじゃ普段よりかなり早いけど、鑑定したら上がろうか」
「「はーい」なのじゃ」
「戻ったら手合わせでもして訓練に充てよう。もう俺達にとっては、魔物狩りじゃ腕が鈍りそうだからさ」
俺は篤志家と弑逆者LV89、盗賊がLV100になっている。盗賊ってLV100で終了かな? 職業設定を開いてみるも、新しい職業は出ていないようだけど。
けどアウターエフェクトを倒してピッタリLV100になったとは考え難い。上がりやすかったしね。
ニーナは攻撃魔法士LV50到達。どうやら無事浸透してくれたようだ。
ティムルは名匠LV83になり、アクセサリー枠のレシピが解放されたようだね。
フラッタは探索者LV61に到達。そしてリーチェは司祭LV1のスタートだったから、一応明日まで探索してから転職してもらう事にする。
以前犯罪職は浸透しないのかなーなんて思ったけど、天井が高いだけでちゃんと浸透はするっぽいね。
ってことは上位職なり派生職なりが見つかってもいいと思うんだけどなぁ。
俺は盗賊から殺人者の犯罪者ルートに、ニーナはトラップや地形を気にせず思い切り走りたいと、探索魔法士を選択した。
殺人者LV1
補正 敏捷性上昇 敏捷性上昇-
スキル 対人攻撃力上昇
探索魔法士LV1
補正 魔力上昇 魔法攻撃力上昇-
スキル 探索魔法
盗賊って結構レベルの上がりやすい職業だった気がするけど、盗賊を得た人は魔物なんか狩らなくなっちゃうかな?
この世界はとにかく装備品が高くて、装備品を売り払えば手っ取り早く稼げちゃうわけだし。
ま、犯罪職ならともかく、ガチの犯罪者にあまり強くなられても困るけどさ。
いつもより大分早い時間で探索を終えて、竜王のカタコンベを脱出した。
「じゃあ私たちは冒険者ギルドに行ってくるわね。フラッタちゃんちで合流しましょ」
「宜しくね。手合わせの準備はしておくよ」
冒険者ギルドに向かうティムル、リーチェ、フラッタを送り出す。
ドロップアイテムを処分して、あとは日没まで領主邸の庭で手合わせ三昧だ。
「それじゃダン対他の全員ね。武器も真剣でいこうか」
ムーリを迎えに行くには少し早い時間なので、先に手合わせをしようとリーチェが武器を構えて対峙する。
「今のダンならぼくたちが束になっても、傷1つつけずに圧倒してくれると思うからね」
「任せとけ。大事なみんなの柔肌に傷1つ付けてたまるかよ。いつかみたいに無意識に剣を止めたりしないで、真っ向から捌き切ってやるさ」
俺対嫁全員という寝室で毎晩行われている勝負が、剣でも行われる事になった。
嫁の相手は慣れてるよ。絶対に誰も怪我なんてさせないからね。
「「はぁぁぁっっ!!」」
ふむ。フラッタとリーチェを主軸に、ニーナとティムルが遊撃してくる感じか。
俺が確実に受け太刀出来るのは、ティムルのミスリルダガーのみ。
だからティムルのダガーも受け太刀できないと想定して、1つ1つ丁寧に捌いて勢いを殺していく。
スキルが無くてもみんなのことを感じられるのに、生体察知まで使って髪の毛の先の動きまで把握し、ラトリアから盗んだ技術をみんなに伝えていく。
俺達が1番集中するのは、お互いのことを考えている時だから、俺の息遣いや動きの全てをみんなに全力で読み取ってもらい、把握してもらう。
「ふははははっ! たっのしいのじゃーっ!」
段々とみんなの動きの息が合ってきて、真剣で斬り合っているのにまるで演武でもしているかのようだ。
ふふ。みんな、まるで4人でロックバンドでも結成してるみたいだよ?
メインのフラッタはボーカル。それに合わせて主旋律を担当するリーチェはギター。鋭い動きのニーナはシャープなベースで、全体を見据えて締めるところはきっちり締めるティムルの動きはバスドラムってね。
「私もーっ! 私も参加させてくださーいっ!」
おっと、庭先であんまり楽しそうに騒ぎすぎたせいか、ラトリアまで参戦してきてしまったぞ。
新メンバー加入で激しさを増すビートに酔いしれながら、剣戟でハーモニーを奏でていく。
いやぁ楽しいなぁ。楽しすぎて困るよ。
みんなの剣が瞬く間に磨き上げられていくのが感じられる。俺から盗んで学んだ技術をどんどん自分の物にして、自分に合わせて最適化してくる。
ははっ。ラトリアまで前より腕を上げてきてるじゃないかよぉ。
「はっや……! ダン、早すぎなのっ……!」
五感上昇補正を極限まで研ぎ澄まし、自分とみんなの動きを磨き、どんどん動きを早めていく。
真剣で打ち合いながら、みんなの熱い視線を感じている。
以前はフラッタとリーチェとしか打ち合えなかったのに、今はこうしてニーナとティムルも打ち合えるようになった。
ラトリアと剣を合わせた事で、俺たちは思い切り腕を上げることが出来た。
アウターエフェクトがいくら来ても必ず滅ぼして、みんなを護りきってみせる。
「ニーナ。ティムル。フラッタ。リーチェ。そしてラトリア。みんなみんな、大好きだぁぁっ!」
剣に乗せるのが間に合わない気持ちが口から漏れ出て叫んでしまう。
ぶっ通しで剣をぶつけ続け、もうすぐ日没という時間。
ニーナ、フラッタ、ラトリアの3人が同じタイミングで獣化と竜化を発動する。ラストスパートってワケ?
3人の強化に合わせて俺も敏捷性補正を神経伝達に乗せて、極限まで加速して対応する。
3分程度全力で剣を合わせた後、真っ先に息を乱し始めたフラッタの唇を捕らえ、全員の剣に対応しながら高速詠唱キスをお見舞いする。
「んっ!? ん~~~~っ!?」
竜化でいつも以上に敏感になっているフラッタは一瞬にしてダウンしてしまったけど、次の魔力枯渇の兆候が発見できるまでは、このままキスしまくっておこう。
その後魔力が枯渇する度に1人ずつ捕まえて、その唇に蓋をして無力化していった。
地面に投げ出された全員の装備を回収し、更に全員を回収してフラッタの部屋に寝かせてからムーリを迎えに行く。
「な、なんで私までむぐぅっ!」
全員が休んでいるベッドにムーリを押し倒して、彼女にもお相手していただいた。
復活したみんなに装備を返却しながらお夕飯。
「う~っ! あのキス、気持ちよすぎて耐えられないよぅ。来るのが分かってても、一瞬でトばされちゃうんだもんっ!」
「もうなにがなにやら分からなくなるわねぇ……。お姉さんもえっちには自信があったのに、簡単に負けちゃったわぁ」
「竜化して敏感になったところを一瞬で蹂躙されてしまったのじゃ……。キスされたと思った瞬間には意識が飛んでしまうから、対処が難しいのぅ」
「キスだけであんなに気持ちよくされちゃうなんてぇ……。ダンはいったい何処までぼくを気持ちよくしてくれるのぉ……?」
「ま、まさか竜化をこんな方法で攻略されるなんてぇ……! 剣を合わせて最高に気持ちが高ぶっている時にあのキスは、絶対に反則ですっ!」
「あ、あ~……。私も抗議したいですけど、私はまだマシだったんですかね? いきなり押し倒されたとはいえベッドの上で、部屋には皆さんしかいなかったんですし……?」
ぷんぷんと俺に抗議しながらもみんなくっついてくるので、夕食が食べ辛いなぁ。
手合わせで最高にハイテンションになってからのキス落としだったので、この日の夜は盛大に盛り上がって最高だった。
巻き込まれたムーリには、少しだけ申し訳なかったけどね。え? 大歓迎だった?