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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
3章 回り始める物語3 1年目の終わり
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209 トライラム

※R18シーンに該当する表現をカットしております。

 本日は年末の個別デート最終日。お相手は当然ムーリだ。


 今日はムーリの希望で、スペルディアのトライラム教会の本部に足を運んでいる。


 うん。せっかく個別デートの機会を設けたのに、うちのお嫁さんたちは真面目すぎて素直にデートが楽しめないんだよ?



 改めて考えると、ちゃんとデートらしいデートしたのって、ニーナだけじゃない?


 ラブラブイチャイチャ的にはリーチェも大分デートらしかったけど、リーチェとはおうちデートになっちゃったしねぇ。


 ティムルは恩人への挨拶回りみたいだったし、フラッタに至ってはアウターに潜らされたからなぁ。



 ムーリがスペルディア行きを希望したのは、ガリアから救出された前シスターへの面会を希望したからだ。


 さすがトライラム教会と言うべきか、被害者の保護は徹底されていて、教会関係者ですら男性には居場所すら伝えない。居場所を知っているのは数名の女性幹部だけ。


 療養先に行くには本部に申請をしたうえで審査をパスし、選任の冒険者のポータルを使用しなければいけない。


 どうやら結構人里離れた場所で療養しているようだった。



 流石にガリアの不正を暴いたムーリに審査は必要なくて、申請したら即許可が下りたけれど、男の俺には当然許可が降りるはずも無く。


 デートの予定だったのに、ムーリが戻ってくるまでは大聖堂で待ちぼうけすることになりそうだ。




「あら? ダンさんじゃないですか。こんなところにお1人で、いったい何をされてるんですか?」



 一般開放されている礼拝堂で昼寝でもしようかなと思っていたら、ちょうど通りかかったテネシスさんに声をかけられてしまった。


 簡単に事情を説明する。



「ああ、シスタームーリの面会希望は今日でしたわね。それで彼女が戻ってくるまで、こちらでお待ちになっていたと……」



 ポータルを使われたからムーリをパーティから外さなきゃいけなくて、所在確認ができないんだよね。


 だから教会を離れたらムーリが困っちゃいそうで、街にも出られない。



「それでしたら私と少しお話でもしませんか? 私もちょうど手が空いてしまったので、どうしようかと思ってたんですよ」



 ふむ。どうせやることもないので断る理由もない。


 テネシスさんの提案に乗って、少しお話し相手になってもらおうかな。




 以前テネシスさんと会った時と同じ応接室に通される。

 

 手際よく用意してもらったお茶を飲みながら、孤児たちの話や最近の教会の話なんかを聞かされた。



 各地の教会の人手不足は懸念されてはいるようだけれど、孤児の奴隷落ちが無くなった事で精神的な負担はかなり軽減されて、各地のシスターや教会兵のやる気が漲っているという。


 それと俺は聞いていなかったけれど、既にマグエルの子供の何人かは将来教会で働きたいと言ってくれているらしく、始めの数ヶ月さえ乗り切れれば事態は一気に好転するだろうと、教会全体はとても明るい雰囲気なのだそうだ。



「毎年年末は孤児を奴隷商人に送り出すことが苦痛で、教会全体が鬱屈とした雰囲気に包まれていたんです。ガリアの件もありますし全てが上手くいったわけではありませんけれど……。それでもこれは、夢のような年末の光景なんですよ」



 来年1年間も耐えることが出来れば、トライラム教会の状況は全く違ったものになるだろう。今は大変でも、将来に希望が持てる大変さってことなんだね。



 そうだ。せっかく司教のテネシスさんがいるんだし、トライラム教会についてもう少し掘り下げて聞いておこうかな。



「そうですねぇ。トライラム教会がいつからあったのかは、私も存じませんわ。少なくともスペルド王国やヴェルモート帝国が成立する以前から、トライラム様は信仰されていたとされています」



 宗教団体なのに成り立ちを重視してないのがトライラム教会らしいなぁ。


 どこまでも現世利益を追求し、生きている人が幸せになることを重視している。



「トライラムという神様が歴史や神話に登場することはないんです。だからいつ誰がトライラム教会を設立したのか、私たちも分かってないんですよね」



 信仰の方はガッチガチなのに、教会への認識が緩いな!?


 そう言えば祈祷にも面倒な形式は必要なく、祈りこそが重要だとムーリに言われた記憶がある。



 トライラム教会では教義と信仰をこそ最優先して、教会の成り立ちや利益についてはあまり関心が無いのかねぇ?



「トライラムという言葉の意味は、『博愛の光で魔を浄化する』、という意味を持っているそうですよ。魔というのは恐らく魔物のことを指していたのだと思いますけれど、いつしか心の腐敗や悪意といったものも含まれるように解釈が拡大されたみたいですね」



 浄化……。やはり解呪の鍵は、教会にあるんだろうか?


 せっかくなのでもう少し踏み込んでみよう。



「テネシスさん。俺ってある人物の呪いを解きたいと思ってるんだけど、解呪の方法って心当たりはないかな?」


「……呪いを解きたい、ですか?」



 呪いと聞いて一瞬表情を強張らせたテネシスさんだったけど、それ以上踏み込んでくること無く俺の質問に答えてくれた。



「解呪の方法……。具体的な手段に心当たりはないです、ね……。お伽噺に出てくるような霊薬で治したという話は聞いたことがありますが……」



 エリクシールのことか。解呪のことを話すと必ず名前が挙がる霊薬。凄く有名なんだろうなぁ。


 ま、ダメモトで聞いただけだし、そんなにショボンとしないでくださいってば。



「それじゃ次なんですけど、実は俺、司祭の職業を得ているんです」


「え……? その若さで、司祭の修行を終えられているというのですか?」


「ええまぁ。それで司祭の次の職業ってなにがあるんでしょう? どうやってなれるか知りません?」


「えっと、教会の役職という意味ではなくて、職業の話で宜しいんですよね?」



 頷く俺に、難しい顔を返すテネシスさん。


 竜騎士の時みたいに、俺には教えてもらえないのかな?



「……難しいですね。職業的には私も教主イザベルも司祭なんですよ。司教や教主といった呼び名は、あくまでトライラム教会内の役職でして……」



 って、別ベクトルで情報が降りてこないのかーっ!


 あっさりイザベルさんの職業までバラしちゃうのはトライラム教会らしいけど、トップですら司祭ってことは、修道士ルートには先がない?



「歴代教主の中には、法王という職業に就いていた者もいたと言いますが……。その記録は非常に古く、どのような職業であったのかは伝わっておりません」



 と思ったら、ここでまさかの法王が来たかーっ!


 過去の教主に法王がいたなら、修道士ルートの先に法王があることはまず確定でいいと思う。だけど修道士ルートだけでは法王になれない、とかかな?



 そう、職業設定は鑑定が前提のスキルなんだよ。つまり、分析官を浸透していないと現れないとか……?



 ここでムーリが戻ってきたので、テネシスさんとの会話は終了した。


 収穫があったような無かったような、ちょっと微妙な感じだな。でもいい加減、分析官の方も見つけておきたいところだね。



 テネシスさんにお礼とお別れを言って、ムーリと合流。


 パーティを組んで、すっかり常連になってしまったマグエルの高級宿に飛んだ。




 今日は今までよりも更に早い時間に来てしまったので、夕食の準備が整うまではムーリのマシュマロボディに悪戯しながら、今日あった出来事をお互いに報告する。



「……前のシスターとちゃんとお話しすることが出来ました。私を守ってくれていた当時の面影も無いほどに傷つけられてはいましたけれど……。でも手遅れじゃなかったんです」



 ガリアに食い物にされたシスターたちは、世間から隔離された環境で農業などをしながら養生していたそうだ。


 生活必需品は教会が揃えてくれているらしく、静かで穏やかな場所でゆっくりと心と体を癒しているらしい。



 幸いな事に、と言っていいのかは少し疑問ではあるけれど、全員が同じ境遇の為に共同生活はとても順調で、深刻な精神状態だった人も少しずつではあるけれど快方に向かっているとのこと。



「みなさん本当に辛い目に遭った筈なのに……。孤児院の話、泣いて喜んでくれたんです。信じられますか……? 心が壊されるほどの目に遭ってなお、子供達の心配をしてたんですよ、あの人たち……」



 トライラム教会の関係者じゃなかったら信じられないけど、シスターたちなら理解できなくもない。


 それくらい純粋に善意しか持たない人たちだからこそ、悪意に対してあまりにも無防備だったんだから。



「ガリアに汚され、自分が地獄に落ちてなお、彼女たちは他人のために祈ったんです。1番被害が大きかった人でさえ、今年は誰も奴隷にならないと聞いて笑顔を浮かべたんです」



 そこまでの想いで、シスターたちは子供達の奴隷落ちを見送っていたのか。

 

 下手するとガリアから救出したことよりも、子供達の奴隷回避の方を感謝されそうだなぁ。



「私たちはガリアの犯行を未然に防ぐことは出来ませんでした……。けれどあの男を止めて、被害者の心を救済することは出来たんだと、私はそう信じる事にしました」


「……うん。そうだね」



 俺だっていつまでもウジウジ考えてられない。


 俺がこの世界に来る前のことまで俺が解決するのは、どうやったって無理なんだからさ。



「ダンさん。前任のシスターは、私にとっても母だったんです。母を救ってくださって、本当にありがとうございます」



 笑顔を浮かべて唇を重ねてくるムーリ。


 ま、俺が助けたのはムーリだけのつもりだったんだけどねぇ。



 それと最近母っていうワードには過剰反応しちゃうから、自重してくれるかな?



「これもぜーんぶ、私にえっちなことをするためだったんですよねー? 母を助けてくれたお礼に、今夜は私にいっぱいえっちなことをしてくださいね……?」



 ちょっとちょっとムーリさん! エロ宣言やめてくれますっ!?


 これから夕食をいただかなきゃいけないのに、先にムーリをいただきたくなったじゃないかぁっ!



 それでもこの甘いラブラブモードのムーリを最大限に楽しむ為には、今押し倒すわけにはいかぬぅ!



 ムーリを抱っこしたままゆっくりと夕食を取り、前回は1杯しか許さなかったお酒を好きなだけ飲ませ、メロメロでベロベロなムーリを堪能させていただく事にした。



「私、ばっかりぃ……! 私ばっかり、こんなに幸せで、ズル過ぎますよぉ……! あんなに素敵な人たちが、食い物にされていたのに……! 私だけぇ……!」



 俺と抱き合いながらも大粒の涙が止まらないムーリ。ムーリは初めての夜も泣いちゃったなぁ。


 ゆっくりよしよしなでなでしながら、ムーリの涙を無理に止めずに話を聞いてやる。



「私ばっかり……、私だけがこんなにも幸せで、本当にごめんなさいっ……! でも、ズルくても申し訳なくても……。もうこの幸せ無しじゃ生きていけないんですっ……!」



 ムーリの本音を全て吐き出させてやる。



「ムーリは前に自分で言ってたじゃないか。誰かを幸せに出来るくらいに、自分が幸せになれたんだって。みんなを助けられたのはムーリが幸せになれたからなんだよ」



 泣き続けるムーリの顔に、何度も何度も口付けをする。



「俺もいつも幸せになりすぎて、みんなの中に幸せをいっぱい注いでるだろ? 自分が幸せになってないと、誰かに幸せをお裾分けなんて出来ないんだよ」



 俺の言葉に一瞬唖然とした表情を浮かべるムーリだったけど、すぐに噴き出しながら抱きついてきた。



「もぉ~! 台無しです! 色々台無しですよーっ! でもありがとうございますっ……! 私もちゃんと幸せになりますね……!」


「うん。ムーリは幸せになっていいし、それを謝ったりしなくていいんだよ……」



 やっと笑ってくれたね。やっぱりムーリは笑顔の方が最高に魅力的だよ。


 悲壮感たっぷりのエロシスターなんて、俺の趣味じゃなかったね。



 その後はムーリが沢山の人を幸せに出来るように、魔力枯渇を覚悟してでも徹底的に幸せに満たしてあげた。



 ああ、外泊っていいよなぁ。どれだけ頑張っても翌日に洗濯しなくっていいんだもんっ!

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