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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
3章 回り始める物語3 1年目の終わり
205/637

205 雪化粧

※R18シーンに該当する表現をカットしております。

 サラッとした雪がマグエルの街を白く彩る。未だに雪かきが必要なほどではないけれど、すっかり雪化粧しているね。


 そんな普段とは少し違ったマグエルの街を、ニーナと2人で歩いている。



「久しぶりだねっ。2人だけで街を歩くなんてさっ。ダンとデートするの、すっごく嬉しいのーっ」


「久しぶりじゃなくて初めてだよ。奴隷じゃないニーナとこうして手を繋いでデートするのは初めてだってば」


「あははっ! そう言えばそうだったねっ!」



 厳密にはまだ奴隷なんだけどね。


 でもニーナと手を繋いで街を歩けることが、こんなにも嬉しい。



「でもダンは全然奴隷扱いしてくれないから、私はいつもと変わらないかなーっ?」



 いやいや変わってる! めちゃくちゃ変わってるって! ニーナのテンション、普段の数倍くらいに上がってますってば!

 

 ニーナと手を繋いでいるだけで、見慣れたマグエルの町並みが輝いて見える。


 マグエルについてからは2人でゆっくり過ごす時間、意外と無かったんだよなぁ。




 年末年始の休暇を長めに設定したので、みんなと1日ずつデートする日を設けてみたのだ。


 瞬番はいつも通りニーナからだ。この世界での生活はニーナから始まったのだから。




 物欲もさほど無く、知り合いもいなくて世間知らずの俺達2人は、デートと言っても特にやることがない。


 基本的に小食のニーナはあまり食べ歩きも出来ないので、本当にただマグエルの街を散歩して歩いているだけのデート。


 いつもと違うのは、俺とニーナが手を繋いでいる事だけだ。



「私、5月のあの日に死ぬところだったのになぁ……。まさかこんなに幸せな気分で年末を迎えられるなんて、夢みたいだよぅ」


「俺も別に死ぬつもりはなかったけど、今夢みたいな気分だよ。こんなに可愛いニーナと手を繋いで歩けるなんて、本当に信じられないよ」


「あははっ。いつももっと深く繋がってるのに、手を繋いだのが信じられないの? じゃあ今日はずっと握ってていいからねっ」



 勿論ずっと握ってますよーっ! でもせっかくニーナの許可が出たんだから、もっと積極的にいこーっ!


 普通に繋いでいた手を、ニーナの指の間に俺の指を潜らせていき、いわゆる恋人繋ぎを実践してみる。



「ふふ。この手の繋ぎ方、ダンがベッドで良くやる奴だよねっ」



 くっ……! せっかくの初恋人繋ぎが! ティムル先生直伝の大の字拘束をしすぎて、新鮮味が無くなってしまったぜっ!



 恋人繋ぎでにぎにぎとニーナの手の感触を確かめながら、周囲の様子を確認する。


 みんなが言っていたほど、年末って暗い雰囲気じゃないっぽいね? 孤児院のおかげで好景気だって話ではあるけど。



 ひと通り散歩したら結構体も冷えてきちゃったかな。ニーナの指先も冷たくなってる。


 本当はもっとゆっくりデートを楽しみたかったけど、エロいことばかりしてきた俺に普通のデートはハードルが高い模様。



 

 ニーナと2人手を繋いだままで、自宅ではない高級宿に足を運ぶ。今回のデートは終日2人きりになるために、1日の終わりは宿で過ごす事にしたのだ。


 泊まる宿はムーリを初めて抱きしめたあの宿で、既に今日から5日間予約済みである。ラトリアさんとはデートの予定は無い。


 

 ムーリの口から語られた彼女の初めての夜の体験を聞いたみんなは、自分達も同じ状況で抱かれてみたいと、ずっと思っていたそうだ。


 今回1年間お疲れ様と、来年も宜しくの意味も兼ねてこの宿でみんなを愛する事にした。


 ムーリはムーリで、もう1度来れるのが嬉しいらしい。



 ムーリと忘れられない夜を過ごした事で予習済みの俺は、スマートにスムーズに、ニーナをスイートな部屋に案内してあげる。



「わぁぁ……! ムーリとティムルには聞いてたけど、想像以上なのっ……!」



 ニーナがキョロキョロと、室内を興味深そうに見回している。


 ニーナのリアクションこそ、俺の想像以上に可愛いから困るんだよなぁ。もし獣化してたら、絶対耳をピコピコさせながら尻尾振ってたよ。



 いつも通りにベッドに座って、いつも通りにニーナを俺の上に座らせて後ろから抱きしめる。冷えてしまったニーナの両手を、手の甲から抱きしめる。



「今回は夕食も頼んであるから、このまま少しゆっくりしてようね。俺達が部屋に入ったのは伝わってると思うから、間もなく来ると思うよ」


「ふわぁ……。本当に特別な宿なんだねぇ……」



 初めて訪れた高級宿のサービスに、ニーナはしきりに感心している。


 このニーナの反応を見れただけでも大金を払った甲斐はあったかな?



「ふふ。フォーベアで1泊450リーフで驚いてた私が、随分贅沢になっちゃったっ」


「はは。ひと月で1億リーフも叩きだしちゃったからねぇ……」



 マグエルまでの道中は1日100リーフ以上稼げればいいくらいだったし、あの頃の俺達には450リーフでも大金だったなぁ。


 ニーナの手をにぎにぎして温めながら、食事が来るまでの時間、ゆっくりと会話を楽しんでいく。



「ねぇニーナ。俺は来年の春には絶対に解呪してやろうと思ってるんだけどさ……」


「えぇ? ダンはそんなに早く私の呪いを解いてくれるの?」



 そんなに早くって、こんなに可愛いニーナと婚姻を結べないのが辛いんだよぉ。


 1日でも早く呪いを解いて可愛いみんなをお嫁さんに貰ってあげないと、もう色々と我慢できそうにないんだ。



「それでさ。ニーナは呪いが解けたら、何かしたいことはあるかなぁ?」


「呪いが解けたら、かぁ……。呪いが解けたら、私がやりたいことかぁ……」



 んーっと唸りながら悩み始めるニーナ。


 急に聞かれても答えられないかな? 今までずっと、呪いがあるのが当たり前の人生だったんだし。



 ニーナの手が充分に温まってきたみたいなので、手の甲側から指を絡めて逆恋人繋ぎに手を繋ぐ。にぎにぎ。



「……ダン。以前呪いが解けたら、私の家に行ってみるって言ったじゃない?」


「うん。覚えてるよ」


「私、あの家で母さんのこと、ちゃんと弔ってあげたい、かなぁ……。きっと骨も何も、残ってないんだけど、ね……」



 ニーナが悲嘆にくれているようには感じられない。母の死を偲んで、心残りを解消したいって感じに見える。



 動けなくなったニーナの代わりに、食べる物を探しに行ってフレイムロードに遭遇してしまったニーナのお母さん。


 その母親を弔うこともできずにマグエルを目指したのは、仕方なかったとはいえ、やっぱり心残りだったんだね。



「うん。みんなでちゃんと弔ってあげようね。俺もニーナの旦那ですって、ちゃんと報告しなきゃいけないしさ」


「あ、私も旅人の浸透が終わってるから、ダンがいればポータルが使えるんだっ。じゃあ呪いが解けたら、私自身のポータルであの家に行って、私の家族を母さんに紹介したいなっ」


「ああ、それはいいアイディアだね」



 移動阻害の呪いに掛かっていたニーナがポータルで帰れば、きっとお母さんも安心してくれるはずだ。



「……ダン。私、呪いが解けたら、父さんのことも探したいんだ」


「ニーナのお父さん?」


「うん。きっと父さん、帰れなくて凄く悔しかったと思うから……。せめて父さんの足跡だけでも見つけてあげたいの。娘の私が……!」



 ニーナの父親か。


 獣化を会得して、1人で世界中を旅していたって時点でかなりの腕利きだろう。その行動範囲はきっと、想像以上に広そうだ。


 お父さんは移動魔法が利用できてたわけだしなぁ。



「そう言えばニーナのお父さんってなんの職業だったのかな? あと名前も年齢も、俺って何も知らないや。今まで聞いてなくてごめんね」


「えっと、父さんと母さんの職業は知らないなぁ。母さんはとにかくステータスプレートを出すのを嫌がってたしねぇ……」



 そりゃそうだろうなぁ……。


 ニーナのように先天的に呪われているのと、ニーナのお母さんの様に後天的に呪われるのでは、いったいどっちの方が辛いことなのか……。 



「父さんの名前はガレル。母さんの名前はターニアだよ。私が生まれたのは父さんと母さんが17歳の時って言ってたかなぁ?」



 ……え、若すぎないか?


 獣化も発現して、未発見のルインを調査するほどの凄腕のパーティ、だったよな? 平民出身で、その年齢で芽が出ることってあるのか? この世界で。


 容姿だけ見れば、ニーナは貴族令嬢でも王女様でも納得いくけどさぁ。



 でも貴族だった場合は、こんなところに隠れ住む必要性がない……か?



「ガレルさんとターニアさんね。名前と年齢で各種ギルドに問い合わせてみようか」



 ……ってターニアさんって、17歳の時にニーナを産んでるの?


 この世界って生まれた瞬間から1歳表記だから、娘のニーナが今16歳って事は、母親のターニアさんは32歳ってことになる?



「……ねぇニーナ。ニーナのお母さんって、もしかしてティムルと同い年だったの?」


「あーっ! 確かにそうかもっ!? ティムルって母さんと同い年っ!?」



 マジかよっ! 最近本当に母娘と情事を重ねてるけど、ニーナとティムルも普通に好色家母娘だったんじゃんかぁっ!


 や、やっばい……。また無駄に妄想が捗ってしまいそうだよぉ。



「俺達も利用してないしフラッタなんかもギルドには登録してなかったみたいだから、ギルドで情報が見つかるかは運だけどね。それ以前に登録者の記録がどれくらい残ってるかも分からないから、期待はしないでね?」


「うん。大丈夫だよ。でも生涯をかけてでも探していけたらなぁって思ってるの。私の生涯って、もうダンに相談しないで決められないことだから」



 ニーナが自分の将来と俺の将来を同じに考えてくれている事が嬉しい。


 そして、そんなニーナが生涯をかけるという言葉は、言葉以上の強い覚悟を感じさせた。



「ダン。私の父さんのこと、私と一緒に探してくれるかな?」


「勿論だよ。俺にはこの世界で成し遂げたいことなんて何もないしね。可愛いお嫁さんたちとベッタリ出来れば、他に何にも要らないよ」



 ニーナを背後からぎゅっと抱きしめる。


 ガレルさんとターニアさんにも今のニーナの姿を見せて、ちゃんと安心させてあげようね。



 と、ここでコンコンと部屋の扉がノックされた。夕食をお持ちしましたと、落ち着いた女性の声で告げられる。


 どうやらタイムリミットのようだ。ニーナとの会話を終えて、2人で夕食を楽しむ事にした。




 隣り合って座ったままゆっくりと夕食を取り、ニーナと新たな約束を交わす。

 

 まずは呪いを解くことが最優先。呪いが解けたらニーナのポータルでステイルークに赴き、ゴールさんに奴隷契約を解除してもらう。


 そしてみんなと正式に婚姻を結んだら、結婚の報告を兼ねてニーナの母親を弔いに行く。



 フラッタの悩みのシルヴァの足取り、リーチェの抱える事情を解決できたら、ゆっくりと世界中を回りながらガレルさんの足取りを追っていくことにした。



 ニーナのやりたいことかぁ。なんかいいなこういうの。


 今までって解呪とか納税とか、フラッタやリーチェの問題とか、教会の問題だったりティムルの冤罪だったり、解決しなきゃいけないことに追われるばかりの日々だった。


 だけどガレルさんの足取りを探す旅は、俺達が追う目標だ。なんだか前向きな感じがするねぇ。




 夕食後はムーリには1杯しか許可しなかったお酒を好きなだけ飲んだニーナが、ふわふわ甘々の状態になってくれた。


 これがあるからこの宿は最高なんだよなーっ! ニーナは持ち帰ったお酒も美味しそうに飲んでたし、自主的に酔っ払ってくれて困っちゃうよーっ!



「うふふー。父さんと母さんに報告するの、すっごく楽しみだねーっ! こんなにえっちにされちゃいましたって報告したら、父さん達怒るかなー?」



 うん。絶対怒ると思うからやめてあげてね?


 俺がガレルさんの立場だったら、地の果てまで追いかけてでも抹殺したくなっちゃうから。





「ニーナが受け入れてくれたから俺は今生きているんだよ。ニーナがいなかったらなんて、想像するのも怖くて出来ないよ」


「ダンさえいれば何も要らないのにぃ……! ダンにどんどんえっちな体にされちゃうよぅ……!」



 ……いやね? みんながどんどんえっちになるのは大歓迎なんですけどね? みんながえっちになってるのって、本当に俺が元凶なんですかねぇ?


 俺と愛し合いたいからみんなどんどんえっちになってるんだとすれば……。やっぱり俺が元凶なんですかねぇ……?



「えっちな俺はえっちなニーナも大好きだから、どこまでもえっちになっていいよ。これからも死ぬまで、えっちに塗れた生涯を送ろうね」



 言い終えてニーナの口をキスで塞ぐ。反論は認めません。


 大好きなニーナと生涯エロエロでラブラブな人生を送るんだいっ!



 ……やっぱガレルさんとターニアさんには、合わす顔が無いかもしれないな?

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