204 授業
※R18シーンに該当する表現をカットしております。
2度目の転職に成功したワンダ達幸福の先端には、泊まり込みのスポット遠征を許可することにした。ムーリとスケジュールを確認しあうことを条件にしてるけどね。
新しく転職した子供達は勿論日帰りしか許さないけれど、それでも自分達でお金を稼げる喜びのほうが大きそうだ。
「はーいっ。ここが皆さんの新しいお家ですよーっ」
ツアーガイドムーリが団体客を案内している。教会からまた新しく28名の孤児が送られてきたのだ。
流石にもう名前を覚え切れないんだよなぁ。魔物狩りを志願してうちで訓練を受ける子は覚えやすいんだけどさぁ。
孤児院を建設する大工さんのモチベーションが高すぎるので、1月と2月の15日までに1棟ずつ孤児院を建設してもらい、1月と2月の16日に新たな孤児を迎え入れる事になった。
マグエルの孤児、もはや100人規模だなぁ。
これ以上の孤児の受け入れと孤児院の建設をどうするかは、俺じゃなくてムーリとトライラムフォロワーのみんなで話し合って、トライラムフォロワーのお金で対応していくことになる。
既に下地は完成してるね。後は俺への借金と他の孤児の人頭税さえ払いきれれば、もう自立したと言っていいでしょ。
俺達仕合わせの暴君の年末は、とてもゆったりした時間が流れていった。
「そう言えば年末年始って何か特別な風習とかあるのかな?」
「あっ。私も知らないから教えて欲しいっ。何かあるならやりたいっ」
俺とニーナはこの世界のこと何にも知らないからなぁ。
フラッタはヴァルハールに出張中なので、他のメンバーに聞いてみる。
「いえ、そういうのは無いわねぇ。2人も知ってる通り、年末ってあまり良い雰囲気じゃないでしょ?」
ああ、この世界って年末って絶望と終焉の象徴みたいだもんね。
元商売人ティムルがこう言うようじゃ、特別な習慣なんてないのかな?
「ダンさんとニーナさんのおかげで助かりましたけど、年末年始って知人が奴隷になっちゃったり、家賃が払えなくて住所が無くなったり、あまりめでたい時期じゃないんですよね……」
「ああ、そりゃそうかぁ……」
説明してくれたムーリの所属するトライラム教会こそ、年末年始を憎んでそうだもんねぇ。
季節行事って信仰から始まる物も多いイメージだし、教会が年末年始を嫌っているこの世界じゃ特別な行事は無いかぁ。
「エルフに至っては、長命種であるせいで時節の流れには疎いからねぇ。気付いたら450年以上も独りで旅しちゃってたし……」
リーチェ。450年は流石にうっかりで過ごせる時間じゃないからね? よしよしなでなで。
「何も無いなら構わないよ。それなら年末年始はみんなとイチャイチャしながらのんびりかなぁ?」
「それって普段通りじゃないのーっ? まったくもう」
まったくもう、なんて言いながら俺の足の上に座ってくるニーナ、可愛すぎません?
フラッタが家を空けている間は、末っ子ニーナを満喫する気なのかな? ぎゅー。よしよしなでなで。
「年内には本当にやり残しは無いのかなぁ? ティムル、どう?」
「金銭的な意味ではやり残しは無いんじゃないかしらねー? みんなの抱える事情を解決する為には、いくらでもやることはありそうだけど……」
「う~ん、凄いですねぇ皆さん……。教会が抱える事情をあっさり解決しちゃったのに、それでも解決できない事情を皆さんが抱えているなんて……」
「いやアッサリでもないでしょ? ムーリと初めて出会ったのって6月だよ? トライラム教会の問題解決を軌道に乗せるまででも半年かかっちゃってるからね」
「たった半年ですよっ! 今まで教会の人間がどれだけ悩んできた問題だと思ってるんですかっ!」
俺を責めながらも抱き付いてくるムーリ。
むにゅううっとした柔らかくて幸せな感触が俺を包み込む。
「また旅生活が始まるんだなぁ……、でも拠点があるだけで気持ちが全然違うよ。それにみんなと一緒に歩いて旅をするの、結構楽しみなんだよねー」
「俺もリーチェと旅するの楽しみだよ。色々見て回ろうな」
楽しみだなー。なんたって旅先では洗濯の必要が無いもんなー。
エロいこともエロくないこともいっぱいしような。よしよしなでなで。
「ちゃんとムーリが寂しくなる前に会いに来るからね? 寂しくなっても1人で慰めちゃダメだよ?」
「だあああもうっ! せめてみんながいる前でその話はやめてくださいよぉっ!」
寝室でベッドの上で2人きりなら、この話をしていいということだねっ! 流石はナチュラルボーンエロシスタームーリだ!
「それじゃ1月の礼拝日までに、いっぱい愛して欲しいなー?」
ニーナ、積極的過ぎますってばぁ。ニーナがそんな調子だから、最近なかなか寝室から出れないって言うのにぃ。
この流れるようなエロへの移行。大変素晴らしいですね。日常生活にエロが溶け込んでいて、素晴らしく淫靡で爛れた年末年始を送れそうだ。
数日に1度はヴァルハールに顔出して、フラッタとラトリアさんの相手もする。
でもベッドでの対決よりも先に、2人とは剣で語り合う。俺がこの世界で出会った中で、剣の技術が最も高いのがこの2人だからね。
「う~ん……。ダンさん、また腕を上げられてますねぇ」
「ふははっ! 妾も負けておれぬのじゃーっ」
フラッタもヴァルハールにいる間はラトリアさんにかなり稽古をつけてもらっているみたいで、ルーナ竜爵家邸突入前と比べて明らかに腕を上げている。
会いに来る度に満面の笑顔でバスタードソードを振り下ろしてくるフラッタを見ると、支配状態にかかってないかを確認したくなってしまうよ。
剣の稽古が終わった後は寝室に直行……する前に、真面目な話を済ませておく。
「スペルディアへの報告書は提出しました。何箇所かに同時に送りましたので、握り潰される心配は無いと思います」
何箇所かっていうのは、王族以外に力を持つ貴族家やラトリアさんの知り合い関係、そして冒険者ギルドやトライラム教会などの国家を跨いで影響力のある組織のことだ。
教会にはムーリから報告が上がってるんだけどね。
敵がどこに潜んでいるのか分からないので、俺達が敵の存在に気付いたことを知られることは諦めて、敵の存在を王国中に知らしめようってワケだ。
「敵に関する情報が集まってくれたらいいんだけど、期待は出来ないかなぁ」
「ええ、それに年末年始は国も迅速に対応できないみたいで……。報告書を上げた後の王国の反応は1月の15日以降、納税手続きが終ってからになると思います」
正直、国のリアクションはどうでもいいんだよなぁ。
だって国のリアクションがあると、登城しなきゃいけなくなりそうじゃん?
「あ、それと納税の代行、助かりました。落ち着いたらお返ししますね」
「いやいや、愛する女性の税金くらい払わせてよ」
「ふふ。ありがとうございます。でしたらお言葉に甘えさせていただきますね」
真面目な話の合間に見せる柔らかい微笑み。
きっとこっちの表情がラトリアさんの素なんだろうなぁ。
「今回の報告を受けて、ルーナ家の取り潰しは一旦見直されるみたいです。……シルヴァが無事に見つからないと、自然消滅しちゃいますけどね?」
「跡継ぎが居ないからねぇ」
ま、そんな事情を知ってもフラッタを返すつもりはサラサラ無いけどねー?
でも優しいフラッタはソクトルーナ家の断絶を望まないだろう。フラッタと心置きなくイチャつく為にも、シルヴァには無事に生還してもらわないといけないな。
「20日には年内の私の仕事は終わりにするつもりですので、それ以降はフラッタと一緒に、またマグエルの方にお邪魔させてくださいね?」
「勿論歓迎するよ。今度は6人まとめて愛してあげるからね」
……6人、6人かぁ。とうとうフルパーティを相手にすることになってしまったのかぁ。
今のうちにみんなと沢山訓練をして、来るべき日に備えなければいけないなっ!
ラトリアさんとの会話を終えたら、フラッタ先生との礼節の授業が始まる。
俺がヴァルハールに来ている理由はルーナ母娘と色んな意味で手合わせすることだけが目的じゃなくて、登城に備えて最低限の礼節を覚える為でもある。
リーチェに教えてもらうには知識が古過ぎると断られて、ラトリアさんは領主の仕事で忙しい。なので意外とちゃんと貴族の礼節が身についているフラッタ先生に授業をお願いしたのだ。
この世界の礼節なんて知ったことじゃないんだけど、俺のせいで無用なトラブルを起こすのは避けたいもんね。
「ふはははっ! ダンは何でも出来ると思っておったのじゃが、礼節の授業は苦手なようなのじゃっ」
「出来の悪い生徒で済みませんねぇ。でも生徒の出来が悪くて喜ばないでくださいよフラッタ先生」
フラッタ先生には是非とも保健体育の授業を受けたいんだけど、エロを楽しむ為には真面目に頑張らなきゃいけない時もあるのだ。
日本にいた時の一般的な礼儀くらいは身についているつもりだけど、異世界の礼節は常識が違うのでややこしい。
例えば王侯貴族と謁見する場合、武器の携帯をしないほうが失礼にあたるとされる。
インベントリに隠し持っている方が危険であるという判断から、戦闘職の者が装備品を隠して謁見するのは暗殺に繋がる行為だとされている。
この世界での貴族の護衛とか近衛兵の人って、物凄く気苦労が多そうだ。その分悪意を可視化できる目利きスキルなんてのもあるし、トントンなのかなぁ。
「ダンは貴族になるわけではないからのぅ。基本的には登城した際の謁見で失礼が無ければ良いのじゃ」
貴族なんか絶対になりたくないわ。
魔物狩りしてりゃ普通に生きていける世界で、美人でえっちなお嫁さんも片手じゃ足りなくなってきたのに、これ以上権力なんか手に入れる意味が全く無い。
ニーナの呪いを解く為に必要だったり、リーチェの事情を解決する為に必要だったりしない限りはね。
「それでは今日の授業はここまでなのじゃーっ! ダンーっ! 頑張った妾にいっぱいご褒美が欲しいのじゃーっ!」
なんで生徒の俺が先生のフラッタにご褒美あげなきゃならないんだよっ! 喜んで差し上げちゃうけどーっ!
でもフラッタは以前自分でも言っていた通り、座学や調べ物は苦手らしい。だから人に教えるのも出来ればしたくないんだそうだ。
俺の足の上に横座りしてきたフラッタに、よしよしなでなでしながら頬ずりする。
「まったく、フラッタ先生は可愛すぎて困るよ。出来の悪い生徒でごめんね」
「ううん。妾こそ我が侭言って一緒に居られなくてごめんなさいなのじゃ……。ダンもみんなも大好きだけど、今は母上を支えてあげたいのじゃ……」
「みんな分かってるから。そんなに申し訳なさそうに言わなくていいんだよ。大好きなフラッタがやること、みんなちゃんと分かって応援してるからね」
大切な人を亡くした同士だからこそ支えあえることもあるだろう。2人はずっと一緒に生きてきた家族なんだから。
フラッタを抱っこして、普段フラッタが寝ているベッドに押し倒して、数日離れていた分を取り戻すように愛し合う。
フラッタと毎日触れ合えないのは本当に辛いけれど、その辛い日々がフラッタの意識を少し変えてくれたみたいで、純粋な好意の中に最近は少し情欲も混ざり始めている気がする。
俺とフラッタは2人とも勉強は大嫌いなんだけど、勉強後にこんなご褒美があるからなんとか投げ出さずに続けられている。
フラッタ先生の授業の後は、家事スキルの無い母娘の為に夕食を振舞う。
貴族令嬢が料理なんて出来ないのは当たり前みたいだし、ソクトルーナ家もソクトヴェルナ家も、そんな暇があるなら剣を振れ! という脳筋貴族だったらしく、自分達で料理をするっていう発想が根本的に無いみたいだ。
財産も家財道具も一切を奪われた今のルーナ家に新しい使用人を雇う余裕は無く、雇っていた使用人たちの回復待ちの状況なので、定期的に俺達が面倒を見てあげないと屋敷が荒れそうだ。
ちなみに2人の時は、食事は外食、掃除は放置で済ませているそうだ。って掃除ぃ。済んでないからねそれ。
夕食をご馳走した後は、お返しにルーナ母娘をご馳走になる。
好色家の浸透していないラトリアさんには余り無理をさせないよう気をつけながら、優しい刺激が大好きなフラッタにもあまり負担をかけないように気をつける。
ラトリアさんって41歳だっけ? 全然気にならないなぁ。
だけど竜人族の中では30を越えたら出産は絶望的で、40を超えたら老人扱いなんだそうだ。竜人族は40を越えると寿命を迎えてもおかしくないくらいには短命らしい。
それでも普通は50歳を超えてくれるらしいけどさ。
是非ともラトリアさんには長生きしていただいて、フラッタと一緒に俺を楽しませてもらいたい。
なのでアブノーマルなプレイは一切禁止だからね? 跡継ぎが生まれることもないんだからさぁ。
フラッタとラトリアさんを散々愛して、ルーナ家への出張は終了だ。
ポータルで家に帰って、家の扉を開けた瞬間みんなに寝室に引きずり込まれて、我が家でもう1戦交えることになる。
うむ。実に爛れた生活ですね。みんなの問題を全部解決したら、マジでずっとこの生活だけを送れるの? 実に頑張り甲斐があるなぁっ。