197 追憶
※R18シーンに該当する表現をカットしております。
ニーナと抱き合ってお互いの鼓動と温もりを確認し合っていたら、抱き合ったままのニーナが指揮を取り出した。
「それじゃダンがラトリアさんを抱く為に、色々決めていかなきゃいけないねっ」
「ちょちょーっ!?」
ニーナさん! 貴女はなんでそんなウッキウキに俺の女を増やす会議を始めようとすんのさ!? 別に俺達には世継ぎも出来ないんだから、お嫁さんを増やさなくてもいいんだよっ!?
「ダンはラトリアさんを娶る気はないし、ラトリアさんも婚姻は望まない。ラトリアさんが望むのは、ダンとの肉体関係だけって事でいいのかな?」
「はい。私の愛は生涯、主人と子供達に捧げます。ですが己を打ち負かした強者を求める竜人族の疼きだけは止められなくて……」
エ、エロー!?
俺の嫁のニーナが未亡人に対して肉体関係を許可してるこのシチュエーション! ちょっとエロすぎないかなぁっ!?
「ダンはフラッタの旦那さんなんだけど、それについては気にならないの?」
「私はあまり? フラッタには少し申し訳ないとは思いますが……。ただ、我が娘の男を見る目には感服してしまいますねっ」
……なんだこのエロ面接。
俺今ニーナに抱きしめられながら、何に立ち会ってんの? 俺の愛人採用面接とか、なんで俺抜きで進められてるのかなぁ?
「ヴァルハールの領主の仕事は続けるんだよね? ってことはこっちには住めないって事になるけど平気かな?」
「そうですね。私ももう若くないですし、たまに抱いてもらえれば充分です。毎日求められると仕事に影響が出てしまいますし、別居するくらいがちょうど良いかと思いますね」
くっそ、これ完全に面接だよぉ!
俺、たまにラトリアさんを抱く為にヴァルハールに出勤しなきゃいけないわけぇっ!?
「ティムル、どうかな? 何か問題ありそう?」
「うーん。特に無いんじゃないかしら? ダンもさっきから興奮してるし」
止めてティムル! こっちに話振らないで!
「リーチェとムーリはどう思うかなぁ?」
「ぼくも構わないと思うよ。別居も仕方ないと思うな。好色家の無いラトリアさんが毎日ダンを受け止めるのは難しいだろうからさ」
「ま、まさか私が先輩になるとは思いませんでしたよぉ……。私はダンさんと皆さんが問題を感じてなければ、特に思う事はないですかね……?」
でしょうねーーっ! 我が家の嫁は、俺の嫁を増やす事に積極的だもんねーっ! 嫁たちからは反対意見が出ないことは分かってましたーっ!
「フラッタはどう? 本当に気にしない? 本当に我慢してないかな?」
「うん。最初はびっくりしたけど……。母上が父上のことを嫌いになった訳じゃないなら構わないのじゃ」
はぁ~……。最後の砦だったフラッタも陥落かぁ。
実の娘であるフラッタがゴーサインを出しちゃったら、もう誰にも止められないじゃんかぁ……。
「母上と一緒にダンに抱かれるのは、ちょっと楽しみなくらいなのじゃっ!」
……なぁんでそんなにニコニコとご機嫌なんだよ。これだからフラッタは。
フラッタとラトリアさん。実の母娘2人を同時に抱くなんてさぁ。俺、止まる自信が無いんだけどぉ?
「あはっ。ダンもその気になってくれたみたいだし、早くお風呂にいこっか。ダン。すぐに沸かしてくれるかなー?」
はぁい! 仰せのままにーっ!
でもニーナと離れるの嫌だから、このまま抱っこしていくねーっ!
正面から抱き合ったニーナを抱っこしてお風呂にいく。
ニーナは両手両足で抱きつきながらキスしてきてくれたので、キスに応じながらニーナが落ちないように右手で支え、左手でフレイムランスをキープしてお湯を沸かす。
プリティリキッドで全身を洗浄し、今回は悪戯せずにさっさと浴槽に浸かる。
「我が家では、初めての日はダンと2人っきりにしてあげる慣習があるからねっ。私達のことは、お風呂場でいっぱい愛してくれる?」
今夜、寝室ではニーナのことを愛せないのかぁ。
なら余計なことは考えず、大好きなニーナがひと晩寂しくないように、ニーナをいっぱい愛してあげることだけ考えよう。
ニーナを愛し、ティムルを愛し、フラッタを愛し、ムーリを愛し、最後にリーチェを抱き締める。
その光景を見てラトリアさんがどん引きしていたけどもう遅い。抱けと言われた以上、全力で楽しませてもらうまでよぉっ!
みんなを愛し終わった後、ニーナとティムルが何かを相談しているのが見えた。
相談を終えたニーナは俺にすすすっと寄ってきて、耳元で囁くように確認を取ってくる。
「ダン。今日は人数的に、ダンがラトリアさんと客室を使ってくれる? 流石に4人一緒に寝るには、寝室のベッドじゃないと狭いから」
ああ、寝る場所の相談をしてたのか。確かにみんなが寝るには客室のベッドじゃ狭すぎるもんね。
……ってニーナ? 人数間違えてるよ? 4人じゃなくて5人でしょ?
「あはーっ。安心してダン。間違えてないわよぉ?」
「へ? どういうことティムル?」
「今日寝室で寝るのは4人。ニーナちゃん、私、リーチェ、ムーリの4人だけなのよー。ダンなら私の言ってること、分かるわよねぇ……?」
えーっと、その流れでいくと、フラッタはどこで寝るのかなー?
なんて、1ヶ所しかありませんよねぇ……!?
ええっ、アリなの!? フラッタとラトリアさん的に、それってアリなんですかぁっ!?
「ダンー。今夜は母上共々よろしくなのじゃーっ!」
元気いっぱいかよーーっ!?
好色家末っ子よ! お前ちゃんと意味分かって言ってる!?
「ダ、ダンさんっ! 娘共々、今夜はよろしくお願いしますーっ!」
ラトリアさんに至っては今日が初対面だよっ!? 積極的過ぎるよこの未亡人!
え、どうすりゃいいの!? 母娘それぞれから母娘共々よろしくってお願いされちゃったんだけどっ!?
あ、みんな! そそくさと服着て寝室に行っちゃわないでぇー!?
俺が困惑して混乱している間にみんなはさっさと寝室に移動してしまって、この場にはフラッタとラトリアさんと俺だけが残されてしまった。
なんでうちのお嫁さんは、旦那が新たに女性を迎える事にこんなに協力的で積極的なのぉ……?
はぁ~……。これ本当に誰も悲しまない行動なんだろうなぁ?
ラトリアさんは41歳とは思えない美貌だから、抱くのは問題無いんだけどさぁ。抱いた後に、本当に問題が起きないんだろうなぁ?
まぁ、ニーナが許可して全員に確認も取ったんだから今更かぁ。覚悟、きめますか。
相変わらずニッコニコのフラッタと、少し緊張気味のラトリアさんに向き直る。
「フラッタ。ラトリアさん。2人とも本当に構わないんだね?」
「うむっ! 今宵は母上と一緒に愛して欲しいのじゃっ!」
「ダンさんにはご迷惑をおかけしてしまって恐縮ですけど、フラッタともどもよろしくお願い致します……!」
「……了解。それじゃ寝室に行こうか。2人とも抱っこしてあげるね」
最近恒例になりつつあるダブルお姫様抱っこでソクトルーナ母娘を抱き上げ、今日は1階の客室に向かう。
誰かが俺の相手をしているうちにみんなが掃除してくれているらしく、普段使いしていないはずの客室の手入れはいつも完璧だ。
いつも通りベッドに腰掛けて、両サイドに美人母娘を侍らせ、その折れそうなほどに細い腰を抱き寄せる。
「フラッタ。ラトリアさん。これからひと晩中抱かせてもらうからね? 裸でベッドに乗った以上、俺はもう止まれないから」
「うむ。好きなだけ妾を愛して欲しいのじゃ」
「私のことも、どうぞ好きなだけ好きにしてくださいっ……!」
……好きなだけ好きにしたら多分ラトリアさんはもたないだろうから、俺の方で何とか自制するとしよう。
ラトリアさんのおっぱいはティムルと同じくらいで、俺の手には余るサイズだ。まるでおっぱいが大きくなったフラッタみたいで死ぬほど興奮する……!
「今日は優しいダンなのじゃ? 優しいの好きなのじゃ」
「気持ちいい、気持ちいいです、ダンさんっ……!」
フラッタが敏感なのは母親譲りかな? 母娘ともに大変敏感でいらっしゃるようだ。
「ねぇラトリアさん。良かったらご主人のこと、聞かせてくれないかな?」
「……へ? い、今主人のことを話すんですかっ……!?」
「出来れば知っておきたいんだ。ラトリアさんの旦那さんで、フラッタの父親だった人のことを」
口が寂しくなってきたのでフラッタとキスをする。
フラッタとキスを続けながらも、ラトリアさんにルーナ竜爵家当主の話を聞いてみる。
「こ、こんな時に主人の話が聞きたいなんて、ダンさんは変わってますね……?」
「よく言われるよ。でもご主人のことを知らずにラトリアさんを愛するのは、俺の中ではちょっとありえなくてさ」
ラトリアさんに語りかけるときだけフラッタの口を解放し、話し終えたらすぐにフラッタとキスをする。
「結婚前から一緒に育った幼馴染だったんでしょ? 子供の頃からずっと好きだったのかな?」
「そうですね、ディアとは……。あ、昔は主人のこと、ディアって呼んでたんです。ゴルディアって長いし、可愛くないでしょ?」
「可愛くはないけど強そうな名前で、竜爵家当主に相応しい名前じゃないの?」
「ふふ。ディアは子供の頃は臆病で、よく私の後ろをついて回ってたんです。そんな彼にはちょっと似合ってないように感じてたんですよ」
ふむ? ちょっぴり臆病で、女の子の後ろをついてくる可愛い男の子か。
それなら確かに、ゴルディアよりもディアという方が似合っているかもしれない。
「でも彼はソクトルーナ家の次期当主。臆病では務まらなくって……」
娘とキスをしながら相槌を打って、母親から旦那さんの話を聞いている俺。
なんだろう、最高に変態じゃない?
「ディアは臆病で優しくて、でも誰よりも真面目で責任感が強くて……」
臆病だったディア少年は、ルーナ家の当主となるべく厳しい稽古を積んでいく。
ソクトルーナ家とソクトヴェルナ家は元々親戚関係だったそうだ。
歯を食い縛って必死に力をつけていくディア少年と、少年を幼い頃から1番近くで支え続けたラトリアさん。そんな2人が惹かれ合うのに時間はかからなかった。
ラトリアさんが16歳の時に、2人は両家に祝福されて一緒になった。
竜人族は出生率の低い種族だというのは以前も説明を受けたけど、やはりゴルディアさんとラトリアさん夫婦も長年子宝に恵まれなかった。
2人が20歳の時にようやくできた第一子、フラッタの兄であるシルヴァが後継ぎである男子だと分かった時は、それはそれは盛大にお祝いをしたそうだ。
シルヴァを生んだ事で夫婦仲は更に良くなったそうだが、それでもやはりなかなか子宝には恵まれず、フラッタが生まれたのはシルヴァが生まれた8年後の、ラトリアさんが28歳の時だった。
短命種として知られている竜人族は30を過ぎると子供を産むことが難しく、フラッタの誕生はルーナ家を大いに喜ばせてくれたらしい。
幼馴染の愛する夫と、2人の愛する子供に恵まれ、本当に夢のように幸福な日々を送ってきたのだそうだ。
……マルドック商会からの、内部告発があるまでは。
「……なんで、何でこんなことになってしまったんでしょう……」
楽しげにゴルディアさんとの日々を語っていたラトリアさんが、突然声のトーンを低くする。
「ディアは斃れ、シルヴァは行方不明に……。フラッタが幸せになれたことだけが救いですけど、いったい私たちに何が起こったんでしょう……!」
「母上……」
少し前からキスをやめ、2人の腰を抱き寄せている。
今は彼女たちの体を貪る時じゃない。彼女たちの心に寄り添うときなのだ。
「……幸福で愛に満ちた日々だったんだね。ゴルディアさんは戦士としてだけではなくて、人としても立派な人物だったんだね」
「はいっ……! はいっ……! ディアは、本当に素敵な人なんです……! 素敵な人、だったん……ですっ……!」
とうとうラトリアさんの真っ赤な瞳から大粒の涙が溢れ出す。
俺に抱かれる話も本気なことは本気だったんだろうけれど、自分の愛した人を失ったのに涙の1つも見せなかったのが気になっていた。
きっと、フラッタの前では気丈に振舞おうとしていたのだろう。母として。
「あんなに臆病だったディアが、デーモン種とロード種に囲まれても、私を常に庇って……!」
「ゴルディアさんのおかげで、ラトリアさんと使用人たちの命を救えたんだ。ゴルディアさんのおかげで、フラッタを幸せにすることが出来たんだ。本当に凄い人だったんだね、ゴルディアさんは」
「あああああ……! ディアぁ……、ディアぁぁ…………!」
どうして私を残して死んでしまったの?
戦士として立派に死んでなんて欲しくなかった。それよりも一緒に生きていて欲しかった。
きっとラトリアさんはその言葉を必死で飲み込んでいるんだろう。
それは自分を守って散っていった、戦士ゴルディアに対する侮辱だから。
ラトリアさんの様子を見て一緒に泣き出したフラッタの頭と一緒に、ラトリアさんが落ち着くまで静かに頭を撫で続けた。
暫く撫でて2人の涙が止まったころ、改めて確認する。
「ラトリアさん。貴女は本当に俺に体を許していいの? 今なら俺も止まれるし、怒ったりもしないよ」
ラトリアさんは今でもゴルディアさんを本気で愛しているようにしか見えない。
そんなラトリアさんが、ゴルディアさん以外の男に抱かれてしまって本当にいいの? 本当に後悔しないの?
「……ありがとうございます。でも、体の疼きも本当なんですよぅ……」
先ほどまでのどこか強張って様子は抜けて、もじもじと顔を赤らめるラトリアさん。
「私は生涯ディアを愛します。けど竜人族の体が疼くのはどうしようもないんです……」
「……そっか。ゴルディアさんに対する裏切り行為にならないのであれば良いよ。俺もゴルディアさんからラトリアさんを奪いたくはないから」
愛する人を守るために散っていった戦士から、その相手を奪うなんて絶対にしたくない。
たとえその行為を相手が望んでいたとしても、絶対に。
「ラトリアさん。俺は貴女の体を生涯愛すと誓う。だから貴女にも誓って欲しい」
「誓い……ですか?」
「ラトリア・ターム・ソクトルーナの愛は、永遠にゴルディア・モーノ・ソクトルーナと共にあるって。俺の前でこそ誓って欲しいんだ」
これから夜通し、娘と一緒に愛しまくってやるから。だから誓って欲しいんだ。貴女を護り散っていった偉大なる戦士への愛を。
もしも俺に抱かれたことでゴルディアさんへの愛を忘れたら……、俺は絶対に貴女を許さない。
「誓いますっ、誓うに決まってますっ……! 私の愛は、永遠にディアと共にあるんです! 貴方なんかに言われるまでも無く、私の愛は永遠にディアと子供達に捧げますっ……!」
「母上ぇ……! 妾もっ、妾も母上のこと、大好きなのじゃぁっ……!」
泣きながら抱き合うフラッタとラトリアさんの頭をよしよしなでなで。俺も2人のことが大好きだよ。
それじゃ確認はオッケーだ、ラトリアさん。その気持ち、絶対に手放しちゃダメだからね。
ラトリアさんがゴルディアさんへの愛を貫いてくれるなら、シルヴァのことも俺が必ず見つけてみせるから。




