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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
3章 回り始める物語2 ソクトルーナ竜爵家
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175 次の礼拝日

※R18シーンに該当する表現をカットしております。

 教会の庭で開催されている騒がしい夕食会に参加していた俺は、ふと1つの事実に思い当たってしまった。


 あれ? 今回1日早く出発したのに、結局25日しか遠征してなくね……?



 1日でも長くスポットに潜って浸透を進めようって思ってたのに、あまりに順調な職業浸透とニーナの呪いの緩和、テラーデーモンの出現などですっかり忘れてしまったようだ。


 誰も指摘して来ないのはみんなも失念してるのか、俺に恥をかかせたくなくて黙ってくれているのか……。


 なんとなく前者の気がするな。我が家の家族は基本的に、エロいこと以外にはあまり執着しないから。



 食後のデザートに、ふかしたディロに甘味を足してホットサンドメーカー様に焼いていただいた、甘いハッシュドポテト風お菓子を配りながら、ワンダ達と話をする。



 2度目の転職費用は自分達の魔玉で払うこと。


 ワンダ達の2度目の転職と、現在訓練中の新人15名の1度目の転職は一緒の日に、今年の納税が済んでから行なうこと。


 ティムルが装備を作れるようになったことを明かして、装備の材料は売却せずに我が家に持ち込んでもらうことなどをお願いする。



 しかし俺のお願いを聞いたワンダは、申し訳なさそうな顔をして俺に謝罪してきた。



「……ごめんダン。ドロップアイテムを持ってくるのは良いんだけど、俺たちじゃどれが装備品の材料かなんて分からないよ……」


「あっと、そりゃそうか。レシピが見れる俺たちと違って、ワンダ達には装備品のレシピなんて分からないよな。持ってきて欲しい素材はね、石と、岩と……」


「そうじゃなくってダン。俺たち、ドロップアイテムの名前なんて気にしたことがなかったんだよ。全部そのまま冒険者ギルドに流して終わりだったからさぁ」



 ワンダの言っている事の意味が分からなくて、一瞬思考が停止する。



 ……あっ! そういうことかぁっ! 鑑定持ちの俺と違って、普通の人にはアイテム名が見えてないのかっ……!


 あー。これは完全に失念してたなぁ。っていうか結構危うかったな、今の俺の言動……。



「悪い悪い。そうだよな。失念してたよ」



 幸いワンダ達は俺の言動に不信感を抱く事は無かったようだ。


 コイツらって俺達以外の魔物狩りの知り合いもいないだろうからな。魔物狩りならドロップアイテムの事を言っていて当然なんだろうなって思っちゃったのかもしれない。


 ごめん。俺は鑑定でカンニングしてるだけなんすわ。鑑定と職業設定を持った俺って、本当にズルしてるよなぁ……。



「装備品の素材は俺とティムルには分かるから、売却する前に1度うちに寄ってくれ」


「分かった。ギルドに行く前にここに来れば良いんだなっ?」


「装備品に必要な素材と、あと各種ドロップアイテムの名前と用途も教えるよ。サウザーやビリーなんかは覚えておいて損はないはずだ」


「ほっ、ほんとに!? やった……!」



 俺の提案に思ったよりも食いつきの良い子供達。勉強なんて嫌がられるかと思ったけど、全然そんなことは無いようだね。



 ドロップアイテムの勉強は、サウザーとビリー以外も興味があるようだ。自分たちが売却しているアイテムのことが知りたいのは当たり前の好奇心だよな。


 悪かった。もっと早めに教えてあげれば良かったよ。反省点だなぁ。



 ……もしかして俺達に魔玉のことを伝え忘れたフロイさんも、こんな気持ちだったのかもね?



 ドロップアイテムの勉強会は、彼らの魔物狩り活動に支障が出ないように、夕飯前に我が家で行なう事になった。


 この子達の存在が我が家の風紀を律してくれると嬉しいんだけど……、まぁ無理だろうな。律して欲しくない気持ちもあるし?




「えっ!? 新しく魔物狩りを始めたみんなを僕達がっ……!?」


「そ。今回はお前たちに引率を任せたいんだ。頼めるかな?」



 装備素材の提出のお願いに合わせて、新しく魔物狩りを志願している15名の引率をワンダ達に任せたいと伝える。



 俺達は旅に出る予定もあるし、子供が来るたびに拘束されてしまったのでは俺達の負担が大きすぎる。その上、今のままじゃ俺たちがいなくなったら破綻してしまうシステムになっちゃうからな。


 俺達がいなくてもちゃんと機能する仕組みを作り上げておかないと。



「い、いくら職業を得たからって、私達に15人を護りきれるとは思えないよ……!?」



 不安げなコテンをよしよしなでなで。


 私に任せなさいっ! って感じだったコテンが、随分冷静になったもんだなぁ。



「心配すんなって。15名全員の全身装備が整うまでは絶対にスポットに入れさせないから」


「で、でもぉ……!」


「落ち着いて考えてみて? まだ装備は揃って無いんだから、あの15人の訓練期間はお前たちの時よりも長く取れるんだよ?」


 

 俺の考え方をみんなに説明する。



 ワンダ達は今訓練を始めた15名の引率をする。そしてこの15名は、次に魔物狩りを志願する子供達を引率する。


 というように引率の役割を後続に引き継いでいく事で、俺やワンダ達がずっと新人の面倒を見なくてもいいようにしていきたいのだ。



 魔物狩りを始める条件に、マグエルに到着した月は訓練以外は絶対に許さないこと。ムーリの許可を得たうえで、引率の者がちゃんと監督すること。最低でも俺の家族の誰か1人とでも顔を合わせない限り、魔物狩りをさせないことなどを設定する。


 3つ目の条件に関してはマグエルを旅立つまでの間って事になるけど、このくらい決めておけば俺たちがいなくても回せるかなぁ?



「15人の始めの転職は、2週間スポット内で引率を受けてからだな。もしそれより早く装備品が揃えられても、引率の期間は固定しようか」


「あ、僕達の時よりかなり長く引率期間を設けるんだね……?」


「新人だって初の魔物狩りだけど、お前らにとっても初の引率だからな。少し余裕を持っておこう」



 俺としてはワンダ達の引率にも不安は無いんだけど、本人たちは不安そうだからな。余裕の無いスケジュールを組むとテンパっちゃうかもしれない。



「新人たちの2度目の転職は……、一応3ヶ月後を想定しておこうか」


「えっ、まだ1度目の転職もしてないうちから2度目の転職予定日を決めちゃうの?」


「俺がいる場合はもう少し早くさせるかもしれないけどね。お前らみたいにさ」



 ティムルのように非戦闘員として過ごすのではなく、毎日お金を稼ぐ為に魔物狩りを続けていれば、3ヶ月もあれば余裕で浸透するはずだ。


 俺とニーナの2人でさえ、戦士と旅人の新党は1ヶ月で終わった……、はず。



「お前たちが自分で証明したように、孤児達だってちゃんと戦えるし稼げるんだよ」


「う、うんっ……!」


「だから引率の15人も、お前らに守られるだけの弱者じゃないんだ。今のお前たちなら、訓練を受けた村人の引率くらい出来るよ。絶対にね」



 俺の説得を受けて、子供達の表情から不安が消えていく。


 そりゃ自分たちで魔物と戦える事を事を証明したんだからなぁ。何より説得力があるでしょ。



 訓練を受けた子供が増えれば手合わせなんかもしやすくなって、子供達だけでの訓練の質も上がっていくだろう。今までが絶望的状況過ぎたおかげで、状況を改善する余地はいくらでもあるようだ。



 ワンダ達と話をしていると、新しくきた39人の中の小さい子供達が船を漕ぎ出したので、顔合わせと歓迎会はお開きになった。




 俺がマグエルにいる間は俺の家に泊めてあげてと、子供達から献上されたムーリと共に家に帰る。



 昨日が徹夜デーだったので、今日は休息日にして徹夜は禁止。だけど寝る前に少しみんなと話をする。



「はぁ~。今度の礼拝日が楽しみすぎますよぉ……。きっと街中の人が、教会の変わりようにびっくりしちゃうと思うんですっ」


「というか、もう私たちが手伝う必要なさそうだよね。マグエルは良いけど、他の教会の礼拝日が少し心配になるよぅ」



 喜ぶムーリに、もうマグエルの礼拝日の手伝いをする必要はもう無いのでは? と語るニーナ。


 ニーナの意見には賛成だけど、だからと言って他の街の教会まで面倒を見るのは、ちょっと手に余るよねぇ。



「始めの数ヶ月は大変かと思うけど、子供達が巣立ったら一気に楽になるはずよ。トライラム教会のシスターや、教会兵を希望する子も出るでしょうしね」



 考え込む俺に、トライラム教会の未来は明るいと解説してくれるティムル。



「今年の孤児の借金奴隷落ちも回避出来るし、無理に魔物狩りをする子も減るでしょう? トライラム教会の資金不足と人手不足は、これからどんどん改善されるんじゃないかしら?」



 まさにティムルの言う通りで、せっかく教会の為に働こうとしてくれる孤児たちが借金奴隷にされていたせいで、トライラム教会の負担がいつまで経っても緩和されなかったんだよね。



 預かっている孤児たちが、誰も借金奴隷にならずに済む。この一点がトライラム教会全体に与える影響は計り知れない。



「ヴァルハールでは妾と同年代の者と遊ぶ機会など殆ど無かったからのぅ。教会の皆と遊べるのは凄く楽しいのじゃっ。これからもっと人が増えるなど、楽しみで仕方ないのじゃ」



 フラッタは初回から、礼拝日の手伝いよりも子供達と遊んでいた気がするなぁ。



 うーん、今度の礼拝日の手伝いも参加する気でいたけれど……。俺達の手伝いが必要無くなるなら予定が空く事になるわけだし、行っちゃうか? その日に。



「教会の子供達なら、今までだってお手伝いしてきてるだろうね。子供達の自立を促すのなら、人手が足りているところに参加するのは止めた方がいいのかな」



 リーチェも、礼拝日の手伝いをしなくていいと言っている。



 ……うん。また前言を撤回する事になっちゃうけど、問題の解決なんて早い方が良いに決まってるよね。



「それじゃフラッタ、リーチェ。今度の礼拝日、俺達はヴァルハールに行こうか。ルーナ竜爵家邸の異変、解決してこようぜ。礼拝日にさ」



 俺の言葉にみんなが少し緊張したのが分かる。


 フラッタの事情を知らないムーリだけは、なんの話かよく分からないといった様子だけど。



「……うん。それはいいかもしれないね。私とティムルも、調理か何かでお手伝いさせてもらえれば気も紛れると思うし」


「ふふ。フラッタちゃんを助けてあげたくてウズウズしてるのねぇ。先月の礼拝日に続いて、また夕食で祝勝会をしましょうねーっ」



 ニーナとティムルを残していかなきゃいけないことが本当に辛い。


 こんな想い、ティムルを助ける為にニーナを置いてネプトゥコに向かったあの時以来だ。



「……ダン。それでは明日の朝、妾と立ち会ってもらうのじゃ。既にダンは妾なんて簡単に超えてくれると、信じておるのじゃっ」



 最高に可愛いフラッタの為に、無双将軍なんて余裕で蹴散らしてみせるからね。



「僕達3人で解決出来ない問題があるとは思えないけど、発光魔玉は全部ティムルとニーナに渡しておこうか。解決までに時間がかかる可能性もあるし、僕らの都合に子供達を巻き込めないよね」


「そうだな。リーチェの言う通り、発光魔玉は2人に渡しておくよ。ま、礼拝日のうちに片付けて戻ってくるつもりだけどさ」



 本当になにが起こるか分からないからなぁ。インベントリ内のアイテム消失、なんて攻撃を喰らう可能性だってゼロではない。



 家のことはニーナとティムルに、子供達のことはムーリに任せておけば何の不安もない。



「あ、悪いムーリ。今日はキスしながら寝てくれるかな?」


「へ? それは勿論構いませんけど……?」


「明日の朝のキスは、フラッタとの手合わせが終わってからじゃないと出来ないからね。寝ている間にムーリを味わっておきたいんだ」


「え、えっと、よく分からないけど分かりましたっ……! 要するにダンさんとひと晩中キスしてていいってことですよねっ……!? そんなの幸せすぎますよぉ……!」



 嬉しそうにキスをしてくるムーリに、少しムラムラっとしてしまう。


 明日の朝に備えて今日は眠っておきたいんですよムーリさんや。抑えて抑えて。



 明日の朝にフラッタと真剣勝負しなきゃいけないのに、今晩は今晩で真剣勝負を乗り切らなきゃいけないらしい。



 くくく。受けて立とうじゃないかっ。今夜はどこまでもどこまでも、果てしなく気持ちよくしてやるからなぁっ!

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