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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
3章 回り始める物語1 スポットの奥で
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165 解呪の動機

 リーチェの作ってくれた食事を取りながら、ゆっくりと傷ついた心を癒す。

 

 しかし美味しいなぁ。リーチェも腕を上げたもんだ。まだ少し調理に時間は掛かってしまうけど、それは経験を重ねれば改善されていくでしょ。



「それじゃ食事が終わったら走って帰ろうね」


「ふふっ、すっごく楽しみー!」


「あ、あと食休みも兼ねて、今のうちにみんなの鑑定結果も共有しておこうかな。帰りは多分、一切戦闘しないだろうからね」



 ニーナが全力で走れるなら、今までと違って家までは魔物を狩ることもないはずだ。ということで、今回の遠征はもう終了したと思っていいだろ。




 ダン

 男 25歳 人間族 騎士LV50 賞金稼ぎLV30 英雄LV58

 装備 聖銀のロングソード ミスリルシールド ミスリルサークレット 

    精霊銀のサーコート 魔絹のグローブ ウィングブーツ 静穏の首飾り


 ニーナ

 女 16歳 獣人族 獣化解放 斥候LV35

 装備 ミスリルダガー ミスリルダガー 魔絹のターバン 姫騎士の聖鎧 

    魔絹のグローブ ウィングブーツ 魔除けのネックレス

 状態異常 呪い(移動阻害)



 ティムル

 女 32歳 ドワーフ族 熱視解放 付与術士LV79

 装備 ミスリルダガー ミスリルダガー 魔絹のターバン 魔絹の服

    魔絹のグローブ ウィングブーツ 癒しのネックレス

 


 フラッタ・ム・ソクトルーナ

 女 13歳 竜人族 竜化解放 聖騎士LV27

 装備 聖銀のバスタードソード ミスリルサークレット 聖銀のプレートメイル

    ミスリルガントレット 飛竜の靴 竜珠の護り




 あ、あれ……? ニーナとティムル、こんなにレベル高かったっけ?


 それに俺の騎士の浸透が終わってる? ひょっとして、賞金稼ぎも終わってるのか?



「む? ダン、なにかあったのかの? 鑑定でなにか良からぬものでも見つかったのかのぅ?」


「あ、ああフラッタ。そうじゃない、逆だよ。なんか思ったよりもみんなの浸透が進んでて、ちょっとびっくりしちゃって……」



 騎士と賞金稼ぎって、絶対浸透してなかったよね? それにさっき恐慌を確認した時、2人のレベル、こんな高くなかったような?


 焦ってたし、レベルなんて見てる余裕なかったから自信ないんだけど……。



「テラーデーモンを倒して一気に浸透が進んだんじゃないかな?」


「え、でもリーチェ。かなり浸透が進んでるっぽいんだ。たった1体の魔物を倒しただけでこんなことあるのかな?」


「腐ってもアウターエフェクトだからね? ダンがいなかったら僕でも厳しい相手だったと思うし、相当な魔力を得ることが出来たんだと思うよ」



 なるほど、ボス戦をクリアして大量の経験値をゲット出来てってことか。


 改めて全員に鑑定結果を伝えてから、自分の職業を設定する。騎士が終わったので、ここは素直に聖騎士にしておこう。




 聖騎士LV1

 補正 体力上昇+ 魔力上昇 物理攻撃力上昇+ 物理防御力上昇+

    敏捷性上昇+ 身体操作性上昇+ 五感上昇+ 装備品強度上昇+

    全体幸運上昇+

 スキル 全体補正上昇+ 対人攻撃力上昇+ 対人防御力上昇+

     対不死攻撃力上昇+ 物理耐性+ 魔法耐性+

     聖属性付与魔法 回復魔法




 自分に設定すると、改めて凄まじい性能の職業だなぁと感じてしまう。



 上級攻撃魔法と同じく、聖属性付与魔法はLV1では使えないみたいだ。


 そして回復魔法はヒールライトのようだ。つまり修道士や回復魔法士と全く同一のスキルだから、聖騎士が浸透したら進化しそうだな。


 

 そしてもう1つ、新しい職業を得ていた。


 賞金稼ぎの上級職にも見えなくもないけど、でもやっぱりこれはテラーデーモンを殺した事で得たとしか思えないな。




 悪魔祓いLV1

 補正 体力上昇 全体魔力上昇+ 魔法攻撃力上昇+ 

    五感上昇+ 全体幸運上昇+ 装備品強度上昇+

 スキル 対不死攻撃力上昇+ 対悪魔攻撃力上昇+

     全体魔法耐性+ 聖属性魔法 対魔法障壁




 ここでようやく聖属性魔法きたかーっ! 魔法使いルートとは別ルートだったのかー!


 そして魔法防御能力がめちゃくちゃ高い。対魔法障壁ってなに!? こんなのロマンスキルじゃん!



 こんなの育成するっきゃないでしょ! 賞金稼ぎから悪魔祓いにチェーンジ!




 ダン

 男 25歳 人間族 聖騎士LV1 悪魔祓いLV1 英雄LV58

 装備 聖銀のロングソード ミスリルシールド ミスリルサークレット 

    精霊銀のサーコート 魔絹のグローブ ウィングブーツ 静穏の首飾り



 

 ……なんか職業3つとも、あんまり人に見せれない気がするなぁ……。



 対魔法障壁は魔法じゃないので詠唱が要らないようだ。使いやすそうだね。


 そして悪魔祓いの聖属性魔法も、やっぱりLV1では覚えられないみたいだ。残念だけどそれだけ強力なんだろうね。



 悪魔祓いについて1つ不思議なのは、俺以外の誰も転職条件を満たしていないということだ。ラストアタックでも取らないと転職条件を満たせないっていうなら、相当に厳しいな。


 もしかしたら前提に賞金稼ぎの浸透が必要な可能性は低くない。もしくは補正的に見て、魔導師の浸透が前提条件の可能性も捨てきれないかな?



 賞金稼ぎはなー。ニーナもティムルもなれないんだよなぁ。侠客も2人ともなれないんだけどさぁ。


 俺が野盗を壊滅させた時、ニーナもティムルもすぐに捕まっちゃったもんねぇ……。



 装備面での更新は、俺のロングソードに魔力吸収-を付与、フラッタのバスタードソードに貫通-を付与。俺の静穏の首飾りの精神異常耐性が大効果になって、ニーナの魔除けのネックレスに全状態異常耐性-を付与したくらいかな?


 魔力自動回復-のスキルジュエルが2つほど、インベントリの肥やしになってるけど。



 魔玉は遠征全体で2792個ほど光ったらしいね。インベントリに収納したアイテムは直感で把握できるから、凄く便利だ。


 発光魔玉2792個。つまり1億3960万リーフなり? 転移ボーナスCは、何とか年内に越えられたようだな。



 これ全部売ったらヴァルハールが混乱しそうだから、これも当分肥やしかなぁ。もしくは我が家で使う分という感じだね。



「い、1億リーフ越えかぁ……。ナイトウルフの毛皮を売るのを惜しんでいた頃が懐かしいよぅ」



 ニーナ、それ懐かしすぎっ。


 1つ30リーフの毛皮を野営地で売るのは勿体無いって、マグエルまで売るの我慢したんだよねぇ。



「ドロップアイテムだけでも、今回2000万リーフ近く売り上げてるからねぇ……。装備品を扱ってないシュパイン商会よりも、私達の方がお金持ちの可能性すらあるわね……」



 大商会から追放された今の方がよほどお金持ちになってしまった事実に、ティムルが複雑そうな表情を浮かべている。


 こんな金額を俺たちだけで貯め込んでおくのは問題になりそうだな。やっぱりムーリに窓口になってもらって、トライラム教会に寄進しよう。



「休暇前の荒稼ぎだと思えばなかなかの額なのじゃ。デーモン種を滅ぼしたダンに力量不足も何もないと思うのじゃが……。妾から1本、見事に勝ち取って欲しいのじゃっ!」



 そうだね。あんなスキル頼みの大味な魔物より、フラッタの方がよほど手強いよ。


 無双将軍との1戦、気を引き締めて臨まないとな。



「アウターエフェクトなんて、ぼくも倒したことがないよ。本当にこのパーティは規格外すぎるねぇ」



 ……え? 今の発言、おかしくないか?


 建国の英雄の1人、リーチェ・トル・エルフェリアが……、邪神ガルクーザを退けたと言われている翠の姫エルフが……、アウターエフェクトを倒したことが、無い……?



「ん? ダン? どうしたのじゃ?」


「ん、なんでもない。ちょっと大金過ぎるから、トライラム教会に寄進しようと思っててさ。あの教会、ただでは受け取ってくれないだろうなって、どうやって渡すか悩んでたんだよ」



 なんとなく、今のは重要な発言の気がする。だけど今は俺の頭の中に焼き付けておくに留めよう。



「確かに私達の手には余る金額だよねぇ……。子供達の借金奴隷落ちが回避できるなら、1番いいお金の使い方だと思うけど……」


「とりあえずムーリに窓口になってもらって、1度教会の偉い人と話をしてみたいと思うんだ。今年で奴隷落ちになってしまう14歳の子供たちだけでも何とかしてあげたい」


「うんうん。私もそれでいいと思うのっ。今のダンだったらこんなお金手放しちゃっても大した負担じゃないと思うし」


「滞納していた人頭税が支払われれば、国にだって莫大な金額が入るんだ。スペルド王国にとっても悪い話じゃないはずだからね」



 どっかのジジイみたいに、新しく奴隷落ちした子供を買うのが趣味の奴は困るだろうけど、そんな奴の面倒まで見れないっての。


 元シュパイン商会のジジイを思い出していると、元商会長夫人のティムルがうんうんと俺に同意を示してくれている。



「そうね。こんな大金を私達が貯めておくのはあまり良くないわ。正規の手続きで国庫に納められるのであれば、それが最も丸く収まる使い道よね」


「ダンは慈善家は慈善家なのじゃが、お金の流れを随分気にしておるのぅ。ただお金を出して終わりー、という小金持ちとはそこが違うのじゃ」



 金出して終わりーは、ただの趣味みたいなもんでしょ。金で解決できることはすごく多いけど、本質を無視して金だけ投入しても意味無いと思うんだ。



「今回デーモン種の討伐に成功したし、僕も年内に1度フォアーク神殿に行ってこようかな? 今の職業は間違いなく浸透したと思うからね」



 そうだね。リーチェの職業は分からないけど、最深部に到達した遠征も2回目だし、アウターエフェクトも討伐したし、LV100上限の職業でも間違いなく浸透してると思う。



「よっし。それじゃ帰ろうか。ニーナ、思いっきり走って帰ろうねっ」


「うんっ! すっごく楽しみーっ!」



 か、可愛いっ……! 走るのが楽しみとか、なんか幼さすら感じてひたすら可愛いーっ!



「あーっと……、ごめんなさい2人とも……。多分私じゃ、ニーナちゃんの全力についていけないと思うかなー……?」



 っとここでティムルから待ったがかかった。



 なるほど。種族的にも補正的にも、ティムルがニーナについて行くのは厳しそうだ。好色家先生のハイパー持久力補正もついてて、ペース落ちないだろうしなぁ。


 うーんと、それじゃこうしようかな?



「ニーナとフラッタも行商人を浸透させたんだし、ティムルの荷物を2人で手分けして持てないかな?」


「まっかせてー! 荷物くらいなんともないのーっ!」


「ティムルのことは俺が抱いていくよ。揺らしちゃうかもしれないけどさ」



 俺は荷運び人まで浸透させてるので、重量的にはティムルの荷物だって持てるんだけど、元々俺が持つ分の物資もあるから手が足りないんだよねぇ。


 アナザーポータルで荷物やニーナ以外のメンバーを送るなんて、そんな野暮なことはしたくないしさ。



 ニーナとフラッタは喜んでティムルの物資を分担して背負ってくれた。


 流石にリーチェは行商人の浸透はさせていないそうなので、今回は好色家姉妹が運搬担当だ。



 俺もティムルをお姫様抱っこして、準備万端だ。



「なるべく揺らさないよう気をつけるつもりだけど、辛くなったら遠慮なく言ってね。家まで我慢とかしちゃだめだよ?」


「ダンにこうして運んでもらうのが幸せすぎて、他のみんなに申し訳ないのが辛いわ。ぎゅーっと抱きついちゃってもいいかしら?」



 大歓迎ですっ! もう力いっぱい抱きついちゃっていいからねー!


 ニーナを先頭にすれば生体察知と五感上昇から得られる情報で、視界が閉ざされてもどうとでもしてみせるからっ。



「ダンーっ! ティムルーっ! 出発するよーっ! 2人だけでここに残ったりしちゃダメだからねーっ?」



 ニーナにかけられた言葉を聞いて、ティムルと2人で笑いあう。釘を刺されなかったら、確かに2人でここに残ってたかもしれないね。


 走り出したニーナに続いて、俺とティムルも出発する。



「あははははははっ! はやーい! すごーい!」



 ニーナは走るのが楽しくて仕方ないといった感じで、笑いながらスポットの中を疾走している。この姿を見られたら、新たな怪談が生まれそうだなぁ。



 獣人のニーナは元々瞬発力が高いのに、敏捷性補正が積み重なってるので凄まじい速度で走り続けている。フラッタは馬より早いって言ってたけど、下手すりゃ車より早いんじゃ……?


 そんなニーナに普通についていける自分にもびっくりするよ。



 今回スポットで得た経験を活用して、どれだけ速く走ってもティムルへの振動や負担は最小限に抑える。


 流石に風圧まではどうしようもないけど、ティムルの茶色の長髪がたなびく姿が美しくて見蕩れそうになる。



「凄いわねぇ。こんなに速く走ってるのに、馬車よりよほど快適よ?」


「そりゃあ宝物を運んでる最中だからね。乱暴には扱えませんって」


「……ダン。ニーナちゃんの呪いもだけど、フラッタちゃんのうちの問題、ちゃんと解決してあげてね?」



 五感上昇のおかげか、はたまたリーチェがなにかしてくれてるのか、高速移動中も会話に支障はなさそうだ。



「ニーナの問題とか、ティムルのフラッタのリーチェのムーリのとか、もう個人で考えるのはやめたよ。みんなの問題は俺たち家族の問題だ。家族だから問題だって共有しよう」


「フラッタちゃんの問題は、私の問題でもある……?」


「そうだよティムル。お前にも協力してもらうからね? 頼りにしてるよお姉さん」



 一瞬キョトンとしながらも、すぐに不敵に笑うティムル。



「あはーっ。私ったら馬鹿なこと言っちゃったわねぇ。うん。私もみんなの家族なんだもの。ダンに解決してもらうんじゃなくて、ダンと一緒に解決すればいいのね。ふふふ、お姉さんも頑張っちゃうわよーっ」



 ぎゅーっと抱きしめてくるティムル。


 ヤッバい。このお姉さん、可愛すぎて困るぅ。



 ニーナについていきながらティムルを揺らさないで走るのは、補正のおさらいに最適だ。


 デーモン種は倒したけど、ここから先は対人戦が待っている。しっかり技術を磨いておかないとね。






「とーーーちゃーっく!」



 大きな声と共にスポットの出口でぴたっと止まってみせるニーナ。


 全力でスポットを走り抜けたのに、その顔には汗1つかいてないし、息切れもしてない。しかも半日とかからず脱出してしまったんだけど……。


 獣人とステータス補正の相乗効果、恐るべしっ……!



 スポットの外で全力疾走は危険なので、マグエルまでは歩いて移動する。予定よりめちゃくちゃ短時間で脱出できちゃったしね。今更急ぐ必要もない。


 走る必要が無くなったので、ティムルを1度ぎゅーっとしてから下ろして、ニコニコしながら飛びついてきたニーナをよしよしなでなでする。



「ダンーっ! 走るのって、すっごい楽しいんだよーっ!」


「ニーナ、可愛すぎるってば、もう。これから少しずつ出来ることを増やして、何でも出来るようになろうね」


「私ねっ。ダンがいてくれたら呪いなんて解けなくていいって思ってたのっ! だけど走れる様になったら、今までよりもずっとずっとダンのことが好きになったのっ! だからやっぱり私も呪いを解きたくなっちゃったのーっ!」



 呪われてても気にしないけど、俺のことをもっと好きになりたいから呪いを解きたくなったって……。


 あ、危なく鼻血噴いて卒倒するところだったわ……! ニーナ、恐ろしい娘っ……!



「乗り物に乗れるようになったら、ニーナと一緒に馬車でゆっくり旅するものいいよね。移動魔法が使えるようになったら、1度ニーナの家にも行ってみたいんだ。だからね、呪いなんてとっとと解いちゃおうね」


「ふふっ、なーんにも無い家だけどねっ? ボロボロだし狭いし汚いしっ。でもあの家にみんなを招待するの、すっごく楽しみーっ」



 ニコニコのニーナと手を繋ぎながらマグエルに帰る。


 まだ奴隷から解放出来たわけじゃないけど、でもようやくニーナと手を繋いで外を歩けるようになったんだ……!



 さぁ、次はムーリとフラッタの番だ。


 年内に家族の問題を全部解決して、ニコニコエロエロとした新年を迎えたいところだねっ。

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