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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
3章 回り始める物語1 スポットの奥で
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152 ※閑話 初めての夜

※R18シーンに該当する表現をカットしております。

ダン視点。時系列は014~015の間となります。

 明日、俺とニーナはステイルークを旅立つことになる。


 明日を迎えれば、俺はニーナを所有することになり、ニーナは俺に隷属する。



 ニーナが俺のモノになる。その言葉が持つ響きに、興奮を覚えないと言ったら嘘になる。


 だけど俺はニーナを俺の好きにしたいんじゃない。ニーナを好きでいたいんだ。



 奴隷になってから君を抱くわけにはいかない。


 奴隷になる前の君を、愛さなければいけない。


 そんな衝動に突き動かされて、ニーナの唇を奪い、押し倒してしまった。



 女性と関係を持ったことなんてない。それどころか、女性と付き会った事だってない。


 そんな俺が、まさかこんなに情熱的で強引なことが出来るだなんて、俺自身だって知らなかった。



 押し付けるだけのキスをやめて、少し離れて改めてニーナを見る。


 月明かりだけの部屋の中、茶色の綺麗な瞳で真っ直ぐに俺を見詰めて、切なそうな表情をしている。


 ごめんニーナ。そんな顔されたら、俺もう我慢出来ないよ。



 ニーナのことがもっと知りたくて、ニーナの体中に両手を這わせる。


 この時まで、ニーナも俺の首に抱きついてくれていたことにも気付かなかった。



 痛々しいくらいに痩せぎすなニーナ。


 なのに汗ばんだ体はどこに触れても柔らかくて、まるで両手が勝手に動き回っているかのようにニーナの体を隅々まで這い回って、その感触を確かめる。



 初めて触れる女の子の体。それがニーナのものだと思うと、その事実だけで意識が飛びそうなほどに興奮する。



 鼻が触れそうな距離でニーナを見詰める、


 本当に可愛い。こんな女の子が俺を受け入れてくれるなんて、本当に夢みたいだ。



「綺麗だよニーナ。ニーナとこんなことできるなんて夢みたいだよ。大好きだよニーナ。初めて見た時から君のこと、可愛いって思ってたんだ」



 思ったことをそのまま口にして、そしてまたキスをする。


 唇を重ねては息継ぎのために口を離して、その度に思いのままに言葉を紡ぐ。



「自分が死ぬって分かってて、なのに俺のことを気遣ってくれる優しいニーナが好きだよ」



 想いを伝えてキスをする。



「俺なんかとパーティを組みたいって言ってくれて、凄く嬉しかったんだ」



 想いを伝えてキスをする。



「手を繋いだり、お互いの名前を呼び合うのがこんなに楽しいことなんだって、ニーナに教えてもらったんだよ」



 何度想いを伝えても、まだまだ伝え足りなくてキスを繰り返す。


 好きだ。好きなんだ。自分でもどうしようもないくらいに、君のことが好きになっちゃったんだよ。



 俺だって生きていけるか分からない。


 この先どうなるのかなんて、先行きなんてなにも分からないのに。



 ニーナの為なら、独りぼっちの君を守る為なら、俺はなんだってしてみせる。



「わっ、たし、もっ……、私も貴方が、好きぃっ……!」



 俺の頭を抱きしめながら、今度はニーナが俺に愛を伝えてくれる。



「自分も大変なのにぃっ、それでも私のお世話を引き受けてくれた、優しいダンが好きぃっ!」



 思いの丈を吐き出しながら、でも決して俺の頭は放さない。



「私がどんなに距離を置こうとしても、全部無視して踏み込んできてくれた、ダンが好きなのぉっ!」



 ニーナの胸に抱かれながら、それでも耳はニーナの声に傾ける。



「呪いも他の人も、私の気持ちさえ無視して、それでも私と生きようとしてくれる貴方を、もうどうしようもないくらいに愛してるのぉっ!」



 愛している。


 その言葉を聞いて、なんだか無性にニーナの顔が見たくなった。



 顔を上げてニーナを見ると、ニーナもこちらを向いていた。



「ニーナ。俺も好きだ。どうしようもないくらいに君が好きなんだ。愛してる。俺も君のことを、心から愛したいんだっ」



 ひと回りも年下の女の子に、まだ出会って半月しか経っていないような相手なのに。



 絶対に離れたくなくて。その想いを伝えたくて。


 まるでニーナに縋りつくように言葉をぶつけた。



「ダン。私も好きなの。もう貴方がいなきゃ生きていけないくらいに貴方を愛してるの……」



 ニーナも俺を愛してくれる。


 ニーナが俺に、愛されたいと言ってくれている。



「だから私、呪いも奴隷も関係なく、貴方に私の全部を貰って欲しい……」



 この先どうすればいいかなんて分からない。


 ニーナも初めてなんだろうけど、俺だって初めてなんだ。



 でもやり方なんてどうでもいい。作法なんて知ったことじゃない。俺たちはお互いを愛したいだけなんだ。



「ニーナ。大好きだよ」


「ダン。大好き」


 

 気持ちいい。


 なにも考えられないくらいに気持ちいい。



 ニーナが抱きしめてくれる心地良さに、俺は今にも力尽きそうになってしまう。


 ニーナが俺に伝える愛に、俺の意識は溺れそうになる。



 でも俺だけが受け取るわけにはいかないよ。俺だって、ニーナのことを愛してるんだって伝えたいんだ。


 キスをしながら全力で抱き合って、もう絶対に離れない、離れたくないと、ニーナを抱きしめる。



 まるでお互いがお互いの欠片であるかのように、まるで寄り添っている事こそが自然であるかのように、ニーナと一緒になっていることが嬉しくて、何より幸せだ。



 ニーナ、君はどうなんだろう。俺と一緒で、幸せになってくれているんだろうか?


 この世界に呪われた君が、俺と同じく幸せを感じてくれているんだろうか。



 聞いてみたい。確かめてみたい。


 でもそれ以上に離れたくなくて、ニーナと唇を重ね続ける。



 俺は今、こんなに幸せなんだよ。俺は君のこと、こんなに大好きなんだよ。



 幸せすぎて、脳が焼ききれそうだ。



 それをニーナに伝えたくて、キスをやめようと思うんだけど、ニーナが凄い力で抱きついて、決して俺を放そうとしない。


 俺の体を絶対に離すまいと、俺を凄い力で抱きしめ続けてきた。



『私はこんなにも貴方を愛しています』



 まるでそう伝えられているみたいに感じる抱擁。



 もうそこから記憶も曖昧なほどに、ニーナを愛することしか考えられなかった。


 精も根も尽き果てて、それでもやっぱり離れたくなくて、ニーナと抱き合ったまま眠りについた。






 いつもの時間に目覚めると、俺の腕の中には裸のニーナが眠っていた。


 俺の腕の中で安心しきったように穏やかに眠る寝顔を見て、やっぱりニーナのことが大好きなんだと改めて思い知らされる。


 なんて可愛い人なんだろう。こんな人が独りぼっちで死んでいくなんて、絶対にありえないよなぁ。



 胸に抱いたニーナの頭を撫でながら、彼女が起きるまで飽きもせずに寝顔を眺めた。



「ん……。んん……」



 ずっと頭を撫でていると、ニーナがようやく目を開けた。


 寝ているニーナも最高に可愛いけれど、目覚めたニーナも最高に可愛い。



 俺の胸の中で寝惚けたまま、顔を上げて俺と目が合わせるニーナ。



「ダ~ン~。大好きぃ。大好きだよぅ……」



 寝惚けながら俺に好きだと伝えてきて、そのままキスをしてくるニーナ。寝起きらしいゆったりとした動きで唇を重ねてくるニーナに、朝っぱらから興奮して仕方がない。


 俺も好きだよって返したいのに、これじゃ返事が出来ないよニーナ。でもそれよりキスを続けたいから、このままでもいっか。



 暫くキスを堪能していると、突然ニーナの動きが止まってしまった。


 どうしたんだろうと閉じていた瞼を持ち上げると、ニーナがびっくりしたように目を大きく見開いて、顔を真っ赤にして固まっていた。



「ん~~~~っ!」



 動き出したニーナが、俺の胸に顔を埋めてなんだか唸っている。


 なんだかパタパタと暴れているけど、それでも決して俺の胸から逃げ出そうとしないニーナが愛おしくて、彼女が落ち着くまで頭を撫で続けた。



 暫くしてようやく気持ちが落ち着いたのか、暴れるのをやめたニーナ。


 だけど恥ずかしいのか、俺の胸に顔を埋めたままで、俺を見ようともしないし、俺に顔を見せてもくれない。



 顔を見せないままぎゅっと俺に抱きついて、そしてようやく口を聞いてくれた。



「……ねぇダン。こういうことって、奴隷になるまでしないって言ってなかった?」



 うん。ごめんね。ニーナが可愛すぎて、ニーナが好き過ぎて我慢できなかったんだ。


 可愛くて愛しいニーナの頭を撫でながら、俺は彼女を愛してしまった言い訳を始めるのだった。

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