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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
3章 回り始める物語1 スポットの奥で
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148 ようやく進んだ第1歩

 初めてドロップしたスキルジュエル。当然のように精神異常耐性大効果が付与されていると思っていたけれど、現実は非情だった。



 え、全状態異常耐性-? え、マジで?


 これで竜爵家に行くことは確定だな、とか言っちゃった俺、恥ずかしすぎじゃない? キリッ、とか聞こえてきそうな決め顔で言っちゃってた気がするんだけどぉ?



「これがスキルジュエルなんですねぇ。見た目は魔玉をそのまま白くしたような感じなんですね」



 ほうっと呟くニーナは見た目の感想だ。発光魔玉は黒く発光するから、本当に対照的だよね。



「はぁ……。まさかスキルジュエルのドロップをこの目で見る日が来るなんて……。ご主人様に貰っていただいてから、女冥利にもドワーフ冥利にも尽きる日々を送らせてもらっちゃってますっ」



 将来的にはティムルも付与術士になれるけどね。恐らく装備製作職人3種を浸透させることが付与術士の転職条件だろうから。



「やっぱりスキルジュエルだったのじゃー! 妾も初めて見たのじゃが、美しいものなのじゃっ」


 スキルジュエルがドロップしたことより、スキルジュエルだという予想が当たった事に喜んでいるようにしか見えないフラッタ。あー可愛い。


 ルーナ竜爵家にはお抱えの付与術士がいるとか言ってたけど、装備品は家から借りてたって言ってたから、家の付与術士とフラッタには接点が無かったのかなぁ?



「いやいや、本当に呆れるよ……。まさかスキルジュエルまで自前で調達しちゃうなんてさぁ……」



 リーチェのこの反応的に、スキルジュエルのドロップ率って本当に低いんだろうなぁ。


 レアドロアップスキルや幸運補正が多重に累積している俺達ですら、技能宝珠出現率上昇スキルを獲得するまでお目にかかれなかったわけだし。



「あ、ダン。鑑定でこのスキルジュエルの効果は見れるのかな?」



 リーチェの言葉で、そう言えばみんなに付与術士になったことを言ってなかったことを思い出す。でもまぁいいか。どうせすぐバレるだろ。



「見れるね。全状態異常耐性の小効果みたい」


「うあぁ~~~っ! 全異常耐性は物凄く高いのに、小効果かぁ~~~っ! 勿論超がつくほど稀少だけど、惜しいなぁ~~っ……!」


「た、確かに全異常耐性は1年に1つも出るかどうかって稀少さですよね……! でも小効果と中効果では、2桁くらい金額が変わってきますもんねぇ……」



 リーチェとティムルの評価を聞いてなるほどと思う。


 全異常耐性は非常に強力な能力だけど、気休め程度の小効果と、アクセサリーに付与されている実用レベルの中効果では、その価値は大きく変わってしまうのかぁ。



「ティムルよ。小効果だとどのくらいの価値になるのじゃ?」


「そうですね……。確か全異常耐性の小効果が付いたアクセサリーが王金貨120枚ほどで落札されていた記憶がありますよ」


「え、えぇぇ。小効果で金貨12000枚相当ですか……。となると中効果ではその100倍以上の価値が……? ひえぇぇ……」



 あ、スキルジュエルの値段を聞いてニーナが怯え始めた。


 ひと晩450リーフの宿に泊まったときですら、こんなに高い宿泊まれませんって言ってたもんね俺たち。



「装備品は高額だし、スキルジュエルも高額だからねぇ。付与術士の腕が悪いと付与に失敗してスキルジュエルが消失することもあるからね。付与に成功した装備品が超高額になってしまうのも仕方ないさ」



 ため息混じりに零すリーチェ。



 そう言えばフラッタの家の付与術士も、スキル付与を試していたとか言ってたっけ? 試していたってことは、失敗する確率がそれなりに高い?


 腕が悪い……。付与術士のLVでスキル付与率が左右される?



 俺の付与術士は現在LV84だ。このまま行けば少なくとも100までは上がりそうだよな。


 ……まさかとは思うけど、付与術士のLVがそのままスキル付与の成功確率だったり、しないよな……!?



 ……なんの確証も無いけど、LV100か最大LVに到達するまではスキル付与を試すのはやめておこう。


 100%以外は信用するな。成功率が1%であろうが99%であろうが結局は成功と失敗の2分の1でしかないと、オンラインゲームで嫌というほど味わったからな。



「それじゃこのスキルジュエルの扱いはとりあえず保留でいいかな? もしかしたらもっと出てくるかもしれないし」



 例えば、精神異常耐性のスキルジュエルとかが。



「私は構いません。とても希少なものだそうですけど、今の私達は経済的にも困ってませんしね。ご主人様の好きに扱ってもらって大丈夫です」



 スキルジュエルよりも、ニーナの体を好きに扱いたいんです。


 まぁ好き放題扱わせてもらってますけどぉ?



「私もご主人様にお任せします。将来的には私も付与術士を得られるかもしれませんし、それまで取っておいてもいいんじゃないでしょうか。インベントリに入るものですから盗難の心配もないでしょうし」



 そうそう。うちのパーティなら自分たちで使う方が良いよね。


 ティムルの浸透を待たずとも、今日1日戦えば俺の付与術士は100に到達できるだろう。



「ダンの好きにすると良いのじゃ。全異常耐性は魅力的じゃが、小効果では戦闘中に頼りにするのは少し不安じゃからのぅ」



 無双将軍フラッタはいっそ清々しいくらいの脳筋思考ですね。


 ま、確かに戦闘面で小効果はなぁ。



「取り乱しちゃったけど、ぼくもダンの好きにしていいと思うよ。僕自身には全異常耐性のスキル効果の装備は既にあるしね」



 リーチェを好きに……、ってこのくだりはやったばかりだから。


 流石はラスボス。全異常耐性持ちかぁ。


 

 みんなの了承も得られたので、このスキルジュエルは俺の好きにさせてもらおう。


 まずは付与術士のLV100を目指して魔物さんを皆殺しだぁっ。




 9日目はただひたすらに魔物を狩り続ける。


 全員の武器がミスリル品質になった事で、殲滅力が更に跳ね上がっている。魔玉はパカパカ光って、もう点滅してるみたいだよ。



 銀も前回よりも早いペースで手に入れられているので、11日目の休憩日には全員の防具更新を視野に入れよう。ティムルの防具職人の浸透も終わってるかもしれないからね。



 付与術士の浸透が終わる前に、まさかの調剤士がLV50に到達。


 付与術士は現在LV95。高レベルな分、上がりにくくなってるのかもしれないなぁ。



 いつも通り好色家をLV25にしたのち、まずは修道士のレベルを上げることにした。




 修道士LV1

 補正 魔力上昇- 幸運上昇-

 スキル 回復魔法




 これでもムーリと共にマグエルのトライラム教会を盛り立てていく立場だからね。その俺が修道士じゃないってのはかっこつかないでしょ。



 現在ニーナの紳商がLV36、ティムルの防具職人がLV24、フラッタの紳商がLv33だ。


 紳商もLV50が最高じゃなかった場合ニーナとフラッタの職業浸透が遅れるけど……。紳商の補正が超強力だからあまり心配する意味もないかな?


 

 俺の職業浸透数を考えると、俺ってこの世界ではかなりの職業補正を得ているとも思えるんだけど、それで油断するわけにもいかないんだよね。


 例えばルーナ竜爵家は、9歳から毎年転職を繰り返して職業浸透を繰り返している。


 聖騎士になったら転職をやめている可能性もあるけど、もし毎年1つ職業浸透を完了させていたとしたら、フラッタの両親は俺よりも職業浸透数が多い可能性が高い。



 それにエルフという長命種の存在もある。


 現にリーチェの職業浸透数は恐らく俺よりも全然多い。技量でも負けているけど、未だに職業補正でも追いつけていないのだ。


 この世界で最強を目指し、この世界最強の一角であろうリーチェを救い出すためには、職業をコンプリートするくらいの気持ちが必要だ。


 俺は鑑定と職業設定のおかけで、最強までの道筋がはっきり見えているけれど、道が見えているだけでまだまだ先は長いのだ。



 そんなことを考えながらも付与術士が無事にLV100に到達する。


 好色家に付け替えてもスキル鑑定は発動するので、LV100で間違いなく浸透してくれたようだ。良かったぁ。



 好色家をLV27に上げて、次は慈善家を上げるとしよう。




 慈善家LV1

 補正 幸運上昇 魔力上昇-

 スキル 全体幸運上昇-




 しかし慈善家で修道士って、聖職者感が半端ないな。俺が信仰しているのはエロ神様なんだけど。


 まぁ今は性職者……もとい聖職者の話はどうでもいい。今重要なのは付与術士が浸透を終えた事実だ。



「ニ、イ、ナーっ。ちょっとだけ魔除けのネックレス貸してくれるー?」


「はいどうぞ? ご主人様、なにをするんですか?」



 戦闘の合間に、戸惑うニーナからネックレスを借り受ける。


 さぁ初のスキル付与、いってみようじゃないかぁっ!



 両手にそれぞれ魔除けのネックレスとスキルジュエルを持ち、頭に浮かんだ呪文を詠唱する。



「摂理の宝珠よ。神意に従い、加護と恩寵と祝福をここに。スキル付与」


「「え、ええええっ!?」」



 ティムルとリーチェのエロ担当組が驚いているけど、俺って1ヶ月前にはもう付与術士だったんだよ? 言ってないけど。


 スキルの発動が終了し、手に残った魔除けのネックレスを鑑定する。




 魔除けのネックレス

 魔法耐性 全状態異常耐性- 無し




 ふむ。しっかりスキルが付与されてるね。流石は付与術士LV100だけあるよ。



「ごごごごごご主人様ぁっ!? いいいいつの間に付与術士になってたんですかぁっ!」


「ていうか成功したのっ!? 今のスキル付与、成功したのっ!?」



 ティムルとリーチェが詰め寄ってきた。


 ちょっとちょっと2人とも。メンバー内でのナンバー1、2のおっぱいを押し付けないでもらえるかなぁ?



「付与術士自体には前回の遠征で既になってたんだ。浸透がなかなか進まなくて苦労したけどね。そしてスキル付与は間違いなく成功しているよ。鑑定が間違ってなければ、だけど」



 せっかくおっぱいを押し付けてくれてるのに勿体無いけど、今はそれよりも大事なことがある。


 2人を優しく押し退けて、スキルを付与したネックレスをニーナに差し出す。



「はいニーナ。スキル付与には成功したよ。受け取ってくれる?」


「ご、ご主人様……。お、お気持ちはとても嬉しいんですけど、私にこんな高価なものを贈ってくれなくてもいいんですよ……?」



 受け取ってはくれたけど、スキルジュエルの価値に気後れしているのか、ニーナは恐縮したり遠慮したりしてなかなか装備してくれない。


 ふふ。ニーナは高価な物を贈っても喜ばないだろうとは思ってた。



「ニーナ。俺は高価だって理由でこのネックレスを贈るわけじゃないんだ。ニーナに全状態異常耐性をつけてもらった理由を説明したいから、まずは装備してくれるかな?」


「な、なにか理由があるんですね……? そ、それなら分かりました。まずは装備させてもらいますね」



 遠慮がちにネックレスを装備するニーナ。


 そんな彼女を鑑定して、装備が適応されているのをしっかりと確認する。



「ニーナ。悪いけど実験に付き合って欲しい。ちょっとだけ全力で走ってみてくれるかな?」


「は、はい? 全力で走ってみせればいいんですか? よく分かりませんが、了解しました」



 困惑しながらも俺の言う事を聞いてくれるニーナ。


 さて、全状態異常耐性の効果で呪いには対抗できるのかな?



「それでは行きますよー? 見ててくださいねー?」



 実験と言ったせいか、ニーナはわざわざみんなの注目を集めてから勢いよく飛び出した。



「「「えっ!?」」」


「あ、あれぇっ!? あっ……!?」



 戸惑うみんなの声、そして躓き勢いよく転ぶニーナ。そのまま地面に突っ伏したまま、頭に幾つものはてなマークを浮かべている。



 ふむ。どうやらちゃんと耐性スキルの効果が出ているらしいね。


 ニーナは自分の移動の早さについていけずに転んでしまった。つまり今、ニーナの移動阻害が発動しなかったのだ。



 転んだニーナを抱き起こすけど、ニーナは未だ混乱から立ち直っていないようだ。


 可愛いからそのまま抱きしめておこう。ぎゅー。よしよしなでなで。



「ダン!? 今のはなんじゃっ!? ニーナの呪いはなぜ発動しなかったのじゃ!?」



 ニーナを抱きしめる俺に詰め寄る3人。


 フラッタが代表で質問してきたけど、ティムルもリーチェも説明しろって顔をしている。



「確証が無かったから黙って試すことにしたんだ。驚かせてごめんね?」


「そういうのはいいから! 早く説明して! ニーナちゃんの呪い、解けたの!?」



 ティムルの言葉を聞いてニーナを鑑定するけど、残念ながら解呪には到ってない模様。よしよしなでなで。ぎゅー。



「まずは結論から言おうか。ニーナの呪いはまだ解けてない」


「なっ……、なら今のって……!?」


「だけど今回手に入れた全状態異常耐性。アレのおかげで、呪いの効果を緩和させることに成功したみたいなんだ」


「そっ、そんなばかなっ!? そんな話、聞いたことないよ……!? 呪い自体がそもそもあまり事例がないんだけど、それにしたって状態異常耐性で呪いを緩和したなんて、そんなばかなっ……!?」



 そう言えばリーチェは全状態異常耐性の装備を持ってるんだっけ。



 全状態異常耐性で呪いを緩和できることを知らないということは、リーチェの事情って呪いじゃない……?


 呪い以外にステータスプレートに表示されるのは……、誓約?



 まぁ今はいいさ。今は説明をする場面だ。



「ステータスプレートには呪いとしか表記がないのはみんなも知ってるよね? だけど鑑定をすると、呪いは状態異常として扱われているんだよ」


「呪い、呪いが、状態異常……?」



 あ、ニーナが起動し始めた。まだ混乱しまくってるみたいだけど、頑張って状況を理解しようとしてる。



「うん。だからぬか喜びさせないために言うけど、ニーナの呪いが解けたわけじゃないんだ。でも耐性のおかげで、呪いの効果が少し弱まってくれたみたいなんだよね」


「呪い、弱まった……? だから私、走れるように、なった……?」



 ニーナが静かに全力で俺を抱き返してくる。



 ぐぬぬぅ……! 獣人族のフルパワーハグもなかなかですね……!


 でも竜人族、ドワーフ族のハグに耐えた俺の体はこの程度で音を上げたりはしないっ!


「嘘でしょ……? 16年。16年だよ……? 生まれてからずっと、呪われてたんだよ……?」


「効果がある確証がなかったから、試すまで黙っててごめん。呪いの効果はあくまで緩和されただけだから、なにが出来てなにが出来ないのか検証しようね」


「ダンと会ってから、まだ1年も経ってないんだよぉ……? なんでもう私、走れるようになっちゃったのぉ……?」



 俺としちゃあ今年中に解呪出来そうもなくて、ちょっぴり落ち込んでるんだけどね。


 でもニーナがこんなに喜んでくれてるなら、落ち込まないで喜んでおくさ。



「解呪はまだ出来ないけど、ニーナの出来ることを増やせて良かった。ニーナと出会ってもう8ヶ月かな? ようやく1歩、前に進めた気がするよ」


「たっただよっ! たった8ヶ月だよ、もう! ステイルークでダンの手を取った時は、凄く苦労するだろうなぁって思ってたのにさぁっ! 苦労どころか幸せにしかしてもらってないよっ! もうっ! も~っ!」



 はぁ~、怒りながら抱きついてくるニーナ、めちゃくちゃ可愛い。


 解呪出来なくて、こんな方法で誤魔化しちゃってごめんね。必ず、必ず解呪してみせるからね。よしよしなでなで。



 おっとぉ。流石に騒ぎすぎて、魔物さんたちが寄ってきたみたいだ。


 でも俺とニーナの逢瀬を邪魔する魔物には、1匹残らず死んでいただくとしましょうか。

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