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【全年齢版】異世界イチャラブ冒険譚  作者: りっち
2章 強さを求めて3 孤児と修道女
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135 トライラム教会の本質

※R18シーンに該当する表現をカットしております。

 ガリアが逃げ出していった応接室に、俺とムーリの2人だけが取り残されている。



「私が嫁がなければならない話も、14名もの婚姻契約も……。全てがあの男の嘘だったのですか……?」


「……それはこれから教会が暴いてくれるでしょ」



 未だに放心した様子した様子のムーリの問いかけに、少し慎重に言葉を選んで返事をする。


 ガリアがエロジジイな事は確信しているけれど、全ては俺の想像で証拠など何も無い話なのだ。一応ね。



「俺はさ、トライラム教会ってかなり頑張ってると思ってるんだよね。そんなトライラム教会がムーリやシスターを食い物にするルールを設けているとは、ちょっと信じられなかったんだ」


 

 異世界の宗教関係施設って悪者のイメージが強いんだけど、トライラム教会にはクリーンな印象しか抱けない。



 孤児たちの税金までは賄えないけど、シスターたちの税金は教会が負担している。


 毎月1度教会負担で、王国中で完全無償の炊き出しを長年継続して行なっている。


 教会の行事を手伝う俺たちにすら改宗や勧誘を迫ることなく、市民たちへも自由な信仰が許されている。


 教会関係者の奴隷所有は認めていないけれど、奴隷制度自体を否定することはなく、社会に対する価値観の押し付けは一切ない。



 そしてなにより凄まじいのは、お布施や寄付を受け取らず、自分達で収入を稼ぐ独立採算制を採用しているところだ。


 利益を自分達であげながら、身寄りのない子供達を引き取っているんだ。そりゃ慢性的な資金不足にも陥るっての。



「ガリア司祭がたまたまエロジジイだっただけで、ムーリや子供達を拾って育ててくれたトライラム教会全体が腐ってるとは思わないよ。神様への信仰も教会への感謝も、何も疑わなくて大丈夫だよ」


「ふふ。なんで分かっちゃうんですか? 私の考えてること。不思議な人ですよね、ダンさんって」



 熱っぽい視線を向けてくれるムーリ。


 問題も解決したし、今すぐここで可愛がってあげたいくらいなんだけど、そうもいかないよな。



 俺と同じくらいムーリのことが大好きなみんなに、ムーリの無事と俺の勝利を伝えてやらないとね。



「ムーリ。今すぐここでお前を押し倒したいくらいなんだけど、その前に子供たちに元気な姿を見せてあげて。俺とムーリを力いっぱい送り出してくれたみんなに、もう何も心配要らないんだって教えてあげなきゃね」


「あはは。えっちなことばかり言って、実際えっちなことばかりしてくるのに、なんでこんなに楽しいんですかっ」



 笑いながら胸に飛び込んでくるムーリを抱きとめ、お互いに強く抱きしめ合う。



「あの男に美辞麗句で婚姻を迫られた時は嫌悪感しかなかったのに、ダンさんに押し倒したいって言われると、なんでこんなに嬉しいんですかぁ……」



 押し倒されたいなんて、男冥利に尽きるね。


 それじゃまぁ幻滅されないように、子供たちの待つ食堂へ凱旋といきますか。



 食堂には既に夕食の準備が整っていた。


 毎月振舞われている夕食よりも、今晩は目に見えて豪華だ。



 いいね。祝勝会にはちょうどいい。



「みんな。エロジジイは無事に撃退してやったからな。今からムーリは俺のお嫁さんだ。お前らも改めてよろしくなーっ!」


「「「わーーーっ!!」」」



 食堂が子供達の歓喜の声で包まれる。


 凄いなぁ子供って。16人しかいないのに教会が揺れてるみたいだよ。



 男の子達は普段より豪華な料理に夢中で、女の子達はムーリを囲んで根掘り葉掘り事情聴取だ。


 フラッタとリーチェは男の子側に混じって料理の争奪戦を繰り広げている。



 ……今日は朝食を食べられなかったからなぁ。2人の姿は半分俺のせいだと反省しておこう。




 さて、今晩は少し忙しそうだ。今晩のことをさっさとニーナに相談しよう。


 ムーリのことだってちゃんと愛してやりたい。そしてムーリを抱くことを、ニーナに相談しないわけにはいかないのだ。



「ニーナ。今日はムーリと過ごしたいと思ってるんだ。だから外泊していいかな?」


「ムーリと過ごすのは構いませんが、なんで外泊するのですか? 別にうちで抱いてあげても良いのでは?」



 普通に自宅で抱けって言ってくるニーナの器の大きさよ。


 流石にもう慣れたけど、慣れはしたけど尊敬する。



「実は少しこれからムーリとしなきゃいけないことがあってね。時間的にどの程度かかるか読めないんだ。教会でムーリを愛するのは子供たちに良くないと思うし、今晩は宿を取ろうと思ってる」



 追い詰められた男が何をするかなんて分かったもんじゃないからな。


 今晩のうちに教会側に報告を上げて、14名の婚姻契約者を保護してあげないと。



 パーティ契約を結ぶとメンバーの居所が確認できる。婚姻契約も同じだとするなら、雲隠れをする際に妻の存在が邪魔になる。


 婚姻破棄や契約解消ならまだ穏やかだけど、誘拐や殺人に発展されたら夢見が悪いなんてもんじゃない。



「今晩はムーリの隣りで、ムーリを支えてあげようと思うんだ。あっと、ポータルを利用する可能性もあるから、今晩はパーティも外れておくよ。宿を取ったら1度家に顔を出すから、いいかな?」


「……ムーリだけじゃなく、まだ誰か不幸になっている人がいるんですね……」



 いつも通り、俺の思考を正確に読み取ってくれるニーナ。



「マグエルのこの教会は素晴らしい場所なのに、不幸はどこにだって転がっているんですねぇ……」



 ニーナは残念そうな様子だけど、ニーナもこの教会を素晴らしいって思ってることがなんだか嬉しい。



「人の数だけ幸福も不幸もあるんだよ。ニーナとティムルとフラッタとリーチェとムーリを好きな男から見れば、みんなを独占している俺のことを殺したくなってもおかしくないしさ」



 実際フラッタを大好きな連中からヴァルハールで襲撃を受けたわけだし。



「……それが分かっているなら、ムーリをしっかり愛してあげてくださいね?」



 ニーナが可愛くほっぺを膨らませて、だけど俺を静かに咎めてくる。



「ご主人様を慕うムーリの横でご主人様の寵愛を受ける私も、ムーリに殺されてもおかしくなかったんですよっ? 私たちを羨む必要が無くなるくらいにムーリのことも幸せにしてあげなきゃ許しませんからねっ?」



 そりゃもう、言われなくても好き放題にさせてもらいますよぉっ!


 

 食事が済んだら片付けを他のみんなに任せて、ティムルの案内でマグエルの高級宿の部屋を取る。


 ムーリを抱く部屋をティムルに紹介してもらうことに、もう罪悪感なんて覚えない。


 俺が申し訳ないと感じることこそ、みんなは1番悲しむのだから。



 部屋が取れたら教会に戻って、今晩の用事をムーリと共有する。



「ムーリ。ガリアが下手な行動に走らないように、今日中に教会に報告を上げるよ。簡単でも良いから事の顛末を文章に起こして貰えるかな」


「わっ、分かりましたっ……。すぐに報告書を作成します。少しだけっ、少しだけお時間いただけますか?」


「焦らなくていいよ。俺も1度家に戻らないといけないしね。少し経ったら戻ってくるよ。ポータルの料金は俺が持つから今晩中に教会本部に持っていこうね。俺も付き添うから安心して」



 ムーリに最低限の指示を出して、大急ぎで家に戻る。


 入浴も体を拭くこともしないで、みんなを寝室で裸に剥いておやすみのちゅーをする。



「今夜は帰ってこないから、その前に1度ずつだけね。今日もお手伝いを頑張ったみんなに何もしないで行くわけにはいかないからさ」



 今晩みんなが少しでも寂しさを感じないように、みんなを俺の愛で満たしていく。   



「それじゃみんなおやすみ。パーティを抜けるけど心配しないでね? 俺もちゃんと帰ってくるし、みんなの家族はもう俺だけじゃないんだから寂しがらないでね?」



 みんなの目の前でパーティを脱退し、軽くキスをしながらみんなの頭を撫でる。


 明日の夜はムーリも交えて、みんなでいっぱいエロいことしような。



 家を出て、しっかり施錠を確認。


 今の寝室は完全無防備状態だからな。セキュリティは万全を期す。



 教会に戻ると子供達はもう殆ど寝ていて、年長のワンダが出迎えてくれた。


 ワンダに案内されて、ムーリの私室だというシスター室に通される。



「なぁダン。明日はスポットに行くのかな? コテンが心配しててさ、聞いておいて欲しいって」


「ああ、行く予定だよ。ムーリをお嫁に迎えるんだから、お前らだって家族みたいなもんだしな。放り出したりしないで、ちゃんと面倒みるつもり」


「家族、ダンが家族かぁっ!」



 騒がない騒がない。もうみんな寝てるんだろ。


 そこまで喜んでくれると嬉しいけど、もう半分家族みたいなもんだったろ、既にさ。



「あ、そうだダン。新しく魔物狩りに参加したいって奴がいるんだよ。明日ダンの家に連れてっていい?」


「あ、そうなの? 構わないけど何人?」


「今回は2人だよ。リオンとビリー」


「へぇ? リオンとビリーがねぇ?」



 リオンとビリー。人間族の姉弟で、性格は2人とも大人しい方かな? 


 あの2人が魔物狩りを志望するなんて少し意外に感じる。



「人数的にちょうどいいから、俺達のパーティにそのまま入ってもらおうかなって思ってるんだ。転職や装備の話についてはもう話して、2人とも納得してる」


「了解だ。あっと、もしかしたら明日、俺の到着が遅れるかもしれない。だからリオンとビリーには、その間に戦闘訓練をさせてあげておいてくれる?」


「分かった。じゃあ明日はいつもより早めにダンの家に行って、少しでも手解きを受けておくよ」



 ああ、それいいかもな。


 明日はきっと、みんないつもより早起きするだろ。何かすることがあったほうが気も紛れてくれるはずだ。



 案内してくれたワンダにお礼とおやすみを伝えて、シスター室の扉をノックする。


 どうぞと入室を許可されたので、遠慮なくムーリの私室に足を踏み入れる。ちょっとドキドキ。



「間もなく終わるので少しお待ちください。椅子なんて無いので、済みませんがベッドにでも腰掛けていただければ」


「了解。急がなくていいから焦らないでね」



 普段ムーリが寝ているベッド。


 これだけで興奮するフレーズなんだけど、シスター室に生活感が無い為、あまりエロティックさを感じない。



 本当に最低限の物しか置いてなくて、執務室と言われたら信じちゃいそう。執務室にベッドはないだろうけどさ。



「お待たせしましたっ」



 報告書を書き上げたムーリが、立ち上がって振り返る。



「教会本部はスペルディアにあります。利用料を負担させてしまうのは心苦しいですが、ポータルで参りましょう」


「気にしない気にしない。ムーリはもう俺の家族なんだからね」



 せっかく書き上げた報告書を潰してしまわないように気をつけながらムーリを抱きしめ、ステータスプレートを取り出す。



「それじゃパーティを結成してさっさと行こう。早いところ用事を終わらせて、今日中にムーリを俺の女にしてやらないといけないからね」


「あはは。楽しみにしてますっ。では急いで終わらせちゃいましょうっ」



 抱き合ったままパーティを結成し、ムーリと手を繋いで夜のマグエルを移動する。


 冒険者ギルドでポータルを使用し、初めてのスペルディアに到着した。



 まぁ暗くて町並みはよくわからないかな。



「教会への道は分かるの?」


「はい。暗くて少し自信が無いですけど、何度か来たことはありますので大丈夫かと。こちらです」



 ムーリに手を引かれて、夜のスペルディアを2人で歩く。



「あ、そうだ。俺ポータルが使えるから、ドレッドの転職の時は俺に言ってくれればお金かからないよ。今日の帰りに修道士ギルド前まで案内してもらえば、直接修道士ギルド前に送れるね」


「ダンさんってポータルが使えるんですか? 凄いですねぇ。確か初めてお会いした時は戦士だったと記憶してますけど……」


「これでもスポットの中心までいく魔物狩りだからね。存分に頼ってよ」



 今夜俺にスペルディアのフラグを立てさせたことには何か意味があるのかなぁ?


 ま、ムーリたちの往復のポータル代が浮くだけでも良いんだけど。



 ムーリに案内されて目的地に到着。


 スペルディアのトライラム教会は、マグエルとは比べ物にならない規模だった。



 すっげぇなこれ。まさに大聖堂って感じ?



 ムーリの用件を聞いた受付の人は、ムーリと共に教会の奥に消えていった。


 教会関係者じゃない俺は中に入ることが出来ないので、ムーリの報告が終わるまでは礼拝堂で待つことになった。



 スペルディアのトライラム教会では、全ての迷える者のためにと礼拝堂は24時間解放されていて、宿に泊まれない者たちが床で横になっている。


 礼拝堂の出入り口には重装備に身を固めた門番が2名ほど立っていて、路上で寝るよりよほど安心して寝られることだろう。


 やっぱトライラム教会自体は凄いところだと思う。礼拝堂の警備費用だって馬鹿にならないだろうにねぇ。



 寝ている人たちの邪魔をしないように大人しく待っていると、思ったよりもずっと早くムーリが戻ってくるのが感じられた。


 礼拝堂に現れたムーリも言葉を発さずに、ジェスチャーで外に出ようと伝えてきた。



 2人で静かに教会を出る。



「……話、凄く早かったんです。マグエルのシスターの記録を見たら、明らかに回転が早すぎるって……」



 教会から少し離れてから、中で行われた話をムーリが説明してくれる。



「ガリアはスポット周囲の4都市の統括を任されていて、各都市から気に入った孤児を無理矢理迎え入れていたみたいですね」



 随分好き勝手やってたんだなぁ、あのオッサン。


 この世界って権力や暴力が物を言いすぎるから、弱者が食い物にされまくるんだよねぇ。



「明日夜が明けたら、すぐにガリアの自宅に捜査が入るそうです。もう今晩のうちに教会兵の編成が行われるそうで……」



 きょ、教会兵……!?


 修道士も職業補正ありだし、教会の武力も低くなさそうだな、この世界。



「私は明日もう1度スペルディアを訪れて、事の顛末を見届けるよう勧められました。私も出来れば見届けたいです。見届けさせて、もらえますか……?」


「ムーリがしたいなら好きにしていいんだけど、明日は付き添えないよ? スポットの引率があるから。勿論往復のポータル代くらいは出すけど、1人で平気?」



 トライラム教会には不信感は無いけれど、今回司祭の不正を暴いた立場だからなぁ。


 大丈夫だとは思うけど、ちょっとだけ心配だ。



「大丈夫です。ここには何度も来ていますし、教会本部のことは私も信用していますから。ポータル代は……、申し訳ありませんが、お言葉に甘えさせていただきますね」


「これからは好きなだけ甘えていいからね。俺たちはもう家族なんだから」



 ムーリの手を引っ張って、ムーリのことを強く抱きしめる。


 ……もう我慢の限界だよムーリ。さっきからお前の事を抱いてあげたくって仕方ないんだ。



「それじゃ修道士ギルドに案内してくれるかな? 明日も忙しいみたいだから、早くムーリを抱きたいんだよ」


「は、はいっ! よろしくお願いしますっ!」

 


 大急ぎで修道士ギルドに向かい、そこからマグエルの宿に直接飛んだ。


 教会の不始末を押し付けられた形だし、しっかりと報酬はいただくとしましょうねぇ?

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