内気な幼馴染みと別れて5年。気づけば俺は陽キャ美少女動画投稿者になった彼女に買収されていた。
丁度今の季節の話です。
(でも今年は梅雨入りしたばっかりだから少し違うかな……?)
春が終わり、空気がジメジメと重たくなり始めた季節。
天気は毎日、雨。
そんな中だった。俺の人生を左右するようなメールが母さんから送られてきたのは。
内容を見て、俺はまず言葉を失った。そして、この親は何を言っているんだ?という疑問が2つ目に思い浮かぶ。
「なぁ碧人。今日ってエイプリールフールだったっけか?」
高校の昼休み。皆が学食やらお弁当やらを食べ終え、駄弁りやゲーム、動画鑑賞なんかをしている音が1学年のクラス中に響く。
「いいや。もし今日が4月1日だったら俺は今学校にいない」
しかし、いつもならその声は心地よいはずだ。なにせ、学校で楽しんでいるという事を自覚させてくれるのだから。
「だよな……?じゃぁなんで普段嘘をつかない母さんが、こんな変な事言ってんだ?それも妙に具体的に」
俺、峰崎 奏の母は嘘をつかない。いや、ついたことはあるが、それは俺が「ねぇねぇどうやったら赤ちゃんってできるの?」や「なんで好きな人とキスをするの?」などと言った知ってはいけないことを聞いた時くらいだ。
母はそれぐらい、言葉をはぐらかしたりせず、良い意味でも悪い意味でもはっきりと正直に使いこなしてきた人なのだ。
だからこそありえなかった。こんなに理解し難い変な文章を送ってきたことが。
しかもLINEではなく、きちんとしたメールで。何行も丁寧に。
「なぁ奏。さっきから何変なこと言ってんだ?」
「……もう毎回言うのめんどいんだが。俺は”かなで”じゃなくて”そう”な?」
「はいはい爽ね。なんかアイス食いたくなってきたわー」
「俺はアイスの名前じゃねぇよ?」
「ミント味くいてー」
「無視すんな?」
梅雨時だからなのかテンションが全く上がらない。全身に妙な気怠さを覚えてしまう。
「てゆーかさー。みんなよくこんな怠い季節にMTubeなんて見て騒げるよなー」
MovieTube、略してMTube。世界人口の半数以上が視聴アカウントを持つ、世界No1の動画投稿サービスである。日本でも当然ながら人気があり、チャンネル登録者数が1000万人を超す人もいる。
「でも碧人も、MTubeは見るだろ?」
「まぁなー。でもこういう日は頭の頭痛が痛くなるから基本みないなー」
「お前、漢字にして考えてみな?」
「カンジッテナニ?」
「俺もわかんないからスマホで調べてみ?」
梅雨だからなのか会話レベルまで落ちている気がする。こりゃダメだな。
母は嘘をほとんどつかない。それについたとしても、この嘘は異様すぎる。
恐らく碧人などの友達にこのメールを見せても、「お前の母さん病気なんじゃね?帰って病院つれてってやりな!」的な感じで信じてもらえないだろう。
そりゃ当たり前だ。自分も信じてなんかいない。身内が信用していないのに外様が信じる訳もない。
わざわざメールすんのもめんどいし、家に帰ってから確かめる……か。
☆☆
差出人:峰崎香
宛先 :自分
件名 :大事な話
あなたが小学生の時仲良くしてた三浦 美緒ちゃんって覚えてる?
中学校に入るころに引っ越しちゃった子。あなたあの頃美緒ちゃんとケンカしてたらしいけど……
まぁそれは置いておいて、さっき美緒ちゃんから電話があったのよ。
昔の事とか色々話したんだけど、何かのネタ?みたいなのであなたが欲しいらしいのね?
だから1億円と引き換えで、あなたは養子として美緒ちゃんの家に譲ることにしたわ。
明日からは美緒ちゃんのところでお世話になりなさい。
以上。
☆☆
学校の帰り道。
15時ごろ。傘にこぼれる雨音と自分の足音が変わらないリズムで交差している。
母さんのメールには、「美緒ちゃんって覚えてる?」と書いてあった。
じゃぁ逆に聞きたいが、初恋の相手を忘れる人なんて居るか?
初めて彼女と会ったのは幼稚園年長の時だった。
公園で楽しく鬼ごっこをしている俺のことを、1人砂場に座りながらボーっと見ている少女がいたんだ。
長い黒髪に青色のワンピースを着た女の子。よく考えれば、あの時から俺は恋に落ちていたのかもしれない。
「おーい。1人で何やってんだ?それ楽しいのか?」
俺が鬼を撒いて近づくと、彼女は大きく横に首を振って質問に答えた。
「じゃぁ俺たちと鬼ごっこするか?」
「……私、走るの上手くない」
「んんーー。じゃぁどうしよっか?」
「……見てるだけでい――
「わかった!俺と砂遊びでもするか!」
それから俺と彼女は砂場で大きなトンネル付きの山を作った。
途中で鬼ごっこをしてる奴らに小ばかにされたりもしたが、そんなのどってことは無い。
1人ボッチだった少女が公園を出る時に笑っている。そんなことが、当時の俺は嬉しくてたまらなかった。
その後、家が近所同士だと発覚。
それからは毎日のように遊んでは笑った。
「おい美緒!今日は何して遊ぶ?」
「奏んちでゲームしたい!」
「っしゃぁすぐ行くか!」
学校も、登下校でも、放課後でさえも、俺と美緒は常に一緒だった。
小学4年生になるまでは。
「なぁ……もしかして奏って、美緒ちゃんの事好きなんじゃね?」
「確かに。一緒にいるところしか見たことないかも」
「でも美人な美緒ちゃんに普通な奏って絶対釣り合わないよなー」
「ほんと。少し早く美緒ちゃんと会ったってだけなのにずるーい!」
授業の休み時間、トイレへ行く際。
俺は偶然自分自身の噂話を耳にした。
美緒はどんどん美人で頭がよくなっていったため、顔も成績も運動神経も普通なのに一緒に居る俺に対し他の男子が嫉妬をしたのだ。
今の俺なら逆に美緒を最高の友達として自慢できたかもしれない……が、この時の俺は小学4年生。周りからの視線が第一に気になるお年頃だった。
だからなのか、美緒と俺は一緒に居ていいのだろうか?美緒を苦しめてはいないだろうか?俺は美緒の輝きを濁らせているのではないか?そんな方向へと心を走らせてしまった。
そしてその日の放課後。
「ねぇ奏!今日は帰ったら何して遊ぼっか?」
「……」
「そうだ!前に奏が言ってた、MovieTubeって言うの私見てみたい!」
「……」
「奏が好きなものは私も知っておきたいし……!」
「……」
「ねぇ奏!話聞いてる?」
「……」
結局その日は、遊ばなかった。
それからは、下校中に美緒がただ一方的に話す日々が数か月続いた。
下を向いて歩く俺を美緒が後から追い、「ねぇねぇ」「どうしたの?」と話しかけてくるだけの日々が。
しかしある日、遂に俺は彼女に言ってしまった。
「ねぇ奏、今日こそ遊ぼ―よ……」
「……うるさい」
「え!?なになに?!」
恐らく久しぶりに俺が言葉を返してくれたことが嬉しかったのだろう。そのことが心の大半を占めており、俺が言った言葉の意味を把握できなかった。
だからなのか、美緒は目を大きく見開いて喜んでいた。
しかしそんな彼女に、俺ははっきりと言ってしまった。
「うるさい!」
「……え?」
「だからうるさいって言ってんだよ!言葉も!行動も!全部!もう付きまとうな!」
そして美緒は泣きだした。
当然だ。
普通は、自分のことを無視する相手を何か月も追いかけたりしない。つまり美緒はそれほど俺を大事だと思ってくれていたという事。
そんな相手がやっと口をきいてくれたっ!と思ったらもう付きまとうなと言われる。
一般男性でも人によっては泣いてしまうのではないか?
しかし当時の俺は更に追い打ちをかけた。
「第一ただついてくるだけの陰キャなんて気持ち悪いんだよ!もっと明るくて元気なほうが俺は好きなんだよ!」
「そんなっ……酷いっ……」
我ながら最低である。
思ってもいないことが口から自然と出てくるなんてどうかしている。
今となっては、そう後悔するしかない。
その後、小学校時代に話すことは二度となく、一言も話さないまま、美緒は中学校へ入る直前に転校した。
さらに、彼女は中学校入学と同時期にMTubeを始めた。
俺も初期のころの動画を見たことがあるが、そこにいたのは俺の知る美緒ではない。
「皆さんこんちゃ~!みおりんです☆」
と始まる挨拶は、ギャルとまではいかなくとも陽キャそのもの。中学生だというのに髪を茶色に染めており、顔は同じだというのに昔の面影が感じられなかった。
何にでも挑戦するマルチクリエイター。商品紹介にゲーム実況、ドッキリにCMに案件や歌ってみたなど、みおりんが投稿した動画は全てクオリティが高い。
そのせいなのか、そのおかげなのか。みおりんは日本MTubeの古参メンバーと言う訳でもないのに、翌年にはたった1年でチャンネル登録者数300万人を突破。チャンネル登録者数が100万人増えるごとにネットニュースにもなり、現在は1000万人間近という大人気投稿者にまで成長した。
しかし俺は、初期のころの動画、中学1年生のころの動画以来、MTuberみおりんを見ていない。
理由は様々だが、罪悪感、孤独感、置いてけぼり感が強いことがあげられる。
自分から美緒を避ける……あえて酷く言うならば捨てておいて、勝手に悪いと感じ、勝手に寂しいと思い、MTuberというやりたいことを見つけ俺なんかより遥かに先を歩む美緒を勝手に羨ましく思う。
やってることは正しく自己中な弱虫クズに等しい。
笑えてしまう。
――と、そんなことを考えていたらもう家までたどり着いた。
そこまで古くはないが新築と言う訳でもない、普通の一軒家。2階建てになっており、俺、父と母、妹の4人暮らしである。
「あら奏、おかえり」
ドアを開けると玄関先の廊下で、母が頭にはてなマークを浮かべながらお出迎えしてくれた。
どうやら、2階にある俺の部屋の家具を1階へ運んでいる途中だったらしい。階段を下りた先に、ベッドや机なんかが並べられている。
……
「おい母さんや。なぜ俺の家具を1階へ?」
「え?メール送ったわよね?あなた、美緒ちゃんとこの養子になるのよ?」
「いやメールは見たけど……ガチなんか」
「ガチよ」
と言いながら決めポーズをする母が妙にうざい。
「ていうか、メールには明日からって書いてあったけど?そこんとこどーなの?」
「話せば長くなるわよ……?」
ゴクリッ……!
俺は思い切り息をのんだ。
だって、母が話せば長くなるという場合、十中八九は――
「さっき電話して今日来てもらうよう変更してもらったわ♡」
短いのだから。
「一応聞くけど、変更してもらったっていうのはどういう意味で?」
「え?私とお父さん明日から一週間旅行に行ってくるのよ。だから明日は家にいないのね?そゆことよ」
「いやどゆこと!?親って子供との別れを悲しむものじゃないの!?」
「別にあんたなんかがいなくなったって誰も悲しまないわよ?むしろ部屋が一つ空くし、香奈(奏の妹)だって大喜びだし、食費だって浮くし、エロ本に消えていくお小遣いをあなたにあげ――
「あぁぁ!!なんか急に耳が痛くなってきて何も聞こえないなぁぁ!!まあ少なくともこの親が常人の心を持っていないってことはわかったしいいかぁぁぁ!!」
いや……普通に少し考えれば気がくるってるなんてわかるじゃないか。
これって実際子供を1億円で他人に売っているのと同じだよな。
はぁ。 ……ぴえん。
「母さん……俺、ひどく痛い胸の苦しみを癒すためにちょっと外でかけてくるわ」
「え!?もしかして恋!?ついこの前まで美緒ちゃんを独り占めしてると思ったら……あなた、すぐ心変わりする人はあまりモテないわよ?」
「いや何年前のことだよ!大体、俺は美緒のことなんて好きじゃなかったし……。そもそも、ドキドキとかキュンとかで恋って言うならわかるけど、胸の苦しみで恋ってのはどうなんかなぁ!?」
「奏……あなたさっきから、ツッコミが長くてくどいわよ?」
「いやこちとらツッコみたくてツッコんでるわけじゃないからね?」
「なによさっきから……。ただギャーピー言って家具運びの邪魔するならさっさとどこか行ってくれないかしら?」
「言われなくともそうさせてもらうよ!!」
こうして俺は、雨の中、心を落ち着かせるために一人外へと出て行った。
☆☆
急に酷くなった土砂降りに翻弄されながら、コンビニ帰りの河川敷を彷徨う。
普段は河川敷だなんて場所、行くことはほぼないのだが、今日は何故か家へ帰りたくない気分だ。
理由は何だろうか……自分でも明確にはわからない。
だが、家へ帰れば自分で切り捨てた幼馴染みに引き取られるということは確かだ。
美緒と、何を話せばよいのだろうか。
どんな顔して話せばいいのだろうか。
そもそも話すことができるのだろうか。
おそらく美緒は、動画でバズりたいが為に、人間を買うという全世界で誰もやり遂げていないことをやろうとしているのだろう。
そしてその相手に、恨んでいて憎んでいてたまらない俺を選んだ。
なんとなく想像がついてしまうのが恐ろしいところだ。
このまま家へ帰ればあっさりと引き取られ、執事やらマネージャーやら雑用やら奴隷やらのようにこき使われてしまうのかもしれない。
そんなのは嫌である。
大体、親も親で本当にどうかしている。
1億円で子を別の家庭に譲るという俺の親も、
人間を買いたいという子供のためにわざわざ自分の養子にしてまで合法的に人間を買収してしまう美緒の親も。
美緒の意見は結果に反映されているから良いとして、俺の人権は何処へ行った?
まるで梅雨時に振り続ける土砂降りのように、俺の心は小学4年生の時から雨模様なのかもしれない。
やむことなど一度も来ない、激しく暗い土砂降りなのかもしれない。
しかしながら、 でもまぁ別にいっか!と思う自分がどこかにいる。
俺は勉強、運動、容姿、すべてにおいて普通だった。……容姿についてだけは自己評価でしかないが、普通だよね?普通以下なんてことはないよね!?
そんなことは置いといて。
有名MTuberに買収されたということは、要するに、普通でないことをする機会を手に入れたということだ。
これは持論でもあるのだが、普通というのは自然体でできるものではない。自分が普通というものを理解し、それを望んで真似をする、もしくは何もしないことによって、初めて普通になれるのだと思う。
例えば。毎日MTubeを見て無難に勉強し、運動も凡庸で成績も普通なAさんがいるとする。自身は何か自分にも人並外れた才能があると信じ、それが生活に現れるのを待って人並に生活をしている。
もし仮に、Aさんに人並外れた何らかの才能があるとして、その人は素晴らしい人生を送ることができるのだろうか。
俺は否だと考える。
何にも挑戦していない人に、自分の才能ややりたいこと、進むべき道を見つけ出すことができるとは到底思えない。
誰かがよく、「何事もチャレンジだ!!」と言うのを耳にするがまさしくその通りだと思う。
でも俺の持論は、そのことを言いたいのではない。
俺が言いたいのは、実はAさんはそのことにおいての普通を理解しており、「まぁ妥当だよな、勉強も部活もこの程度でいいか」と自分で限界を決め、それを気づかぬうちに忠実に真似てしまっているのでは?ということだ。
例えばスポーツ選手。彼らは運動という一つのことに本気で取り組んだため、他人よりも凄い力を発揮することができる。
例えば研究者や発明家。彼らは物事を追求するということに興味を持ち、自分の発想力で新しいことに取り組もうとする。
そして、例えば美緒。彼女はMTubeという生きていくことがとても困難な業界において、自分の発想力や根性、アンチにも負けない強いメンタルで最高クオリティの動画を毎日みんなに届けている。
今あげた例すべてに共通して言えることは、いずれも自身の限界を勝手に決めず、普通でないことをしようとしている点だ。
勿論、才能や容姿、遺伝子など、彼らは恵まれている部分もあるだろう。
しかしそれ以前の問題として、普通は気になることああれば、実際に行動してみようとするはずだ。
当たり前である。
自分にその素質があるのかどうかなんて、一度本気で取り組んで、本気で努力してから考えればいいじゃないか。
学校があるから?部活と勉強の両立だけで忙しい?大人になってから考えればいい?
もちろんそのような考え方もある。そのように振舞うのが最適な場合もある。
けれどもそれって、”今”は楽しいのだろうか。少なくとも、俺はAさんのように生きてしまっているが、まったく楽しくない。どこかハラハラしない。どこかつまらない。そんな気がする。
将来社会の社畜になりたくないのならば、勉強だけを極めたって意味はない。あくまで勉強ができるということは、良い社会的地位に属すための挑戦権に過ぎないのだから。
そして、人生において、社会的地位になんら価値はない。結局、自分がいる地位から、自分がしたいことを極められるかが大切になってくるのだ。
もっと別の、周りを見ても自分しかやっていないような、勉強のように上には上がいるというのではなく、みんなそれぞれに意味があるような、そんなことを見つけなければならないのだと思う。
――と、大分話が脱線してしまった。
まぁ簡単に言えば、俺は何もしてこないがために普通だった。いや、何もしてこないで、普通を演じていた。
だからこそ、美緒の周りにいられるということは、ある意味自分を普通から変えることができるチャンスなのではないだろうか。そう考えている。
ま、それもすべて、極わずかな希望に過ぎないことなのだが。
すると、川のこちら側とあちら側を繋ぐ橋の下で蹲っている女性を見つけた。
銀髪で、少し長めのストレートミディアムヘア。そして、身長は160cmほど(俺より10cm下)だろうし、胸だって大きくない、多少小柄な高校生的雰囲気なのに、袖がひらひらした大人の女性服が妙に似合っている。
そのことから考えると、大学1年生とかか?俺も今高校1年生だが、まだ中学生っぽさが抜けてないって言われるときあるし。
しかし、全身が水浸しだった。
「おーい。それ何やってるんだ?」
気づけば俺は無意識のうちに彼女に話しかけていた。
俺の悪い癖でもある、初対面の人にタメ口で。
彼女はこちらを向くと、一瞬大きく目を見開いたのち、自分の懐を見せてくる。
「これ、見て?」
「え……子犬か?」
「そう。さっきそこの橋を歩いていたら溺れているの見ちゃってさ」
懐にいたのは彼女のように白くて小さな子犬。それも寒さでかなり弱っているようだし、白いはずの毛の中には赤い部分があった。
「まさか、この土砂降りの中川に入ったのか!?」
「だってまだ生きているんだから、見捨てられないでしょ?」
「いやそうだけど!あんたバカかよ!子犬を助けようとして自分が死んだら元も子もないじゃんか!」
この雨だ。川だってかなり水位が上がり、水も茶色に濁っている。下手すりゃ……いや、俺みたいな中途半端な人なら余裕で命を持っていかれてしまうレベルだ。
「あなた……会って間もない女の子に怒鳴りつけるとか、学校でモテないでしょ?」
「それついさっき母さんにも言われた……。俺ってそんなにヤバいんかな?」
「かなりヤバいねぇ……。私多少の占いならできるんだけど、あなたって昔幼馴染みのこと盛大に罵倒したでしょ?そんな人、モテないよ?」
「え!?なんでそれを!」
「……私、今言ったばかりだよね?占い師からすれば、こんなの簡単に見破れるの」
「じゃぁもしかして、俺とすれ違った占い師はみんな俺のことを最低だって理解してるってことか!?」
「かもね」
最悪だ……。
「俺さ、後悔してるんだ。あの時に幼馴染みに酷いことしたよなって」
「ほぅ?」
「周りからさ、その子と早く出会ったってだけで一緒にいられるなんて卑怯だって言われて、その後何か月も……いや、あれからずっと、幼馴染みのことを無視してきた」
「そういうことだったんだ……」
「え?どういうこと?」
「いいや!何でもない!!」
「……はぁ」
「何よ、そんなに落ち込まないの。さ、そんなことよりも、早くこの子を動物病院に連れてって上げよ?」
「え?俺も行くの!?」
「当たり前でしょ?こんな水浸しの美少女に一人で歩かせるわけ?」
「自分で美少女って言わなけりゃ完璧なんだけどなー」
その後、俺は彼女に軽く蹴られた。
☆☆
2人傘を並べて動物病院まで歩く。
それにしても、彼女の服が透けてなくてよかった。そのおかげで目のやり場に困らないし、周囲の視線を気にせずに道を歩ける。
けれども……
「おっ…おぃ」
「ん?なーに?」
「上着とかって持ってたりしないのか?」
「見たらわかるでしょ?こんなジメジメで暑い季節に、上着なんて持ってるわけないじゃない」
「そうだよな……」
「上着がどうかしたの?」
「いや……服が体に張り付いてて、目のやり場に困ると言うか……」
「ふむ。なるほどねぇー」
その後、俺は彼女に強く蹴られた。
☆☆
数十分後。
俺たちは無事に、駅前周辺の動物病院へたどり着いた。
今は子犬を先生へ預け、エントランスで待っている途中である。
ちなみに彼女の服は病院へ入って数分で乾いた。蒸し暑いとはいえ、気温が30度近い上に着ていたのは夏服だ。何ら不自然なことではない。
「子犬、大丈夫かなぁー」
「俺は大丈夫だと思うよ?」
「でももし助かんなかったら?」
「それは……この病院を信じるしかないな」
「それもそうだよね」
自分たちではどうしようもできないからわざわざ病院まで来たのだ。医師を頼る以外に、今の俺たちにできることはない。
「ねぇお姉ちゃん!サインください!」
すると、俺たちが子犬を預ける前に飼い猫を診断してもらっていた小学生低学年の少女が、こちら側へ寄って来た。
「…へ?俺、遂に有名人デビュー?」
「いいや残念ながら私宛ね」
そういうと、少女が持っている色紙をしゃがんで取って立ち上がり、スラスラとなんて書いてあるのか良くわからない文字を書いた。
そして再びしゃがみ、少女に返す。
「お姉ちゃんありがと!大切にするね!」
少女はそういうと、自分の猫を連れて病院を後にしていった。
「これなんて書いてあるんだ?」
「サインなんだから、私の名前に決まってるでしょ?」
「へぇ……。そういえば、まだ名前聞いていないよなぁ。なんて言うん?」
「はぁ、全くこの鈍感は。本気で私に気づいてないの?(呟声)」
「ん?声小さくて聞こえなかった。もう一度言って!」
「そうね……Mさんとでも呼んでちょーだい」
「えっ……君、もしかしてマゾ!?」
「ちゃうわい!名前の頭文字がMなだけやい!」
「おぉいいツッコミだぁ……真似させてもーらお」
「やめい!」
名前を明かしてくれないということは、恐らく知られたくないということなのだろう。まぁ、ついさっき会ったばかりの見知らぬ男に名前を教えるなんて、かなりリスクがでかいだろうしな。当然というべきか。
それにしても、サインを求められるということは、有名人なのだろうか。
確かに目立つ銀髪にこの美人さなら、有名女優とかでもおかしくはないけど……。
というかこの顔立ち、どっかで見たことあるような。
「ん?私の顔に何かついてる?」
「あぁいや別に。ただ有名女優さんか誰かなのかなぁと」
すると、Mさんはこちらを見ながら大きく目を開け、頬を赤くした。
「……私って、そんなにキレイ?」
「いや……キレイってのも勿論あるけど、それよりは可愛いのほうが似合うかなぁー?」
「!?///」
照れるMさんは、この世からあの世へ飛び立てるほど可愛かった。
「ほらそこのお2人さん。子犬を置いてイチャイチャなんてしないでくださーい」
すると、子犬を預けた先生が手術室から出てきた。
「子犬はどうなったんですか!?」
それを見るなり、Mさんは思い切り先生に向かって大声を出す。
先生が言ったイチャイチャするなという煽りは眼中にないようだ。頬を赤らめてるのは俺だけのようで、なんだか恥ずかしい。
「まぁ落ち着いてください。治療は無事成功です。1か月間は薬を飲ませなければいけませんが、後遺症になりそうな問題は見つかりませんでした。安心してください」
「はぁ……よかったぁ」
先生の優しい声を聞き、Mさんは膝から崩れ落ちた。それほど気を張っていたのだろう。お疲れ様と言い、頭をなでてあげたい。ついでにペロペロしたい。ごめん忘れてくれ。
「後はこの子犬をどうするかなんですけれども……誰か親戚などに飼ってくれる方はいますか?」
「あっいえ大丈夫です!私が飼いますんで!」
子犬のことをよっぽど心配していたようだし、自分で最後まで責任を取るつもりなのだろうか。まぁどちらにしろ、助けた本人が飼うというのは自然の流れである。
「じゃ、俺、この後自分のお客さんが家に来るから、そろそろ帰るわ」
俺の役目はここまで。
いやぁ、養子になる前に貴重な経験ができた。
子犬君とMさんには感謝しかないな。
――と、そう思ったところまでは良かった。しかし、この先の予想外なMさんの発言に、俺はさらに引っ張られることになる。
「何言ってるの?今からこの子のペットグッズを買いに行くわよ?」
「え?」
「ここまで来たんだから、最後まで付き合ってよね?」
「いやでも俺は家に帰んないとまずいんだが……」
「あぁそのことなら大丈夫。占いによると、雨のせいでその人は19時まであなたの家には来ないから」
「いやいや胡散臭すぎるだろ!!」
「何?私の占いが信じられないの?さっき橋の下で一つ当てて見せたのに?」
「いや……確かにそうだけども」
今の時刻は17時だ。家を出てからは2時間が経っている。
「まぁ俺もあまり家に帰るのは乗り気じゃねーし、別にいっか」
「クスクス…!」
「ん?何かおかしいか?」
「いいや別に♪」
「では、この子はここで預かっていますので、買い物が終わり次第ここへ向かいに来てください」
こうして、俺とMさんは動物病院を後にした。
☆☆
「ねぇ…この青と白が混ざった服とこっちのピンクっぽい服、どっちが似合う///?」
「うーん、どっちでもいいんじゃないか?」
「もう!そんなテキトーな返しばっかりしていると、女の子にもてないぞ♡」
「いや……そんなことを言われても」
「何?女の子の言葉に言い訳するの!?」
「だってよぉ……、わんこの服だろ?」
俺とMさんは現在、先ほどの動物病院の近くにあるペットショップに来ていた。
「ちぇー、詰まんないの」
「Mさん急にキャラ変わった?」
「私だってボケたい時ぐらいあるんですぅ―」
ドッグフードや寝床など、取り合えず必要なものを買うのかと思ったら、真っ先に見に来たのが服だったとは。
「なぁ、その前にドッグフード買ったほうがいいんじゃね?」
「私あんまりそういうのわかんない」
「いや…でもMさんが買わなかったら誰が買うの?」
「ん」
「おいMさんや」
「何?」
「その指は何ですかな?」
おいおい俺に買って来いってか……俺だってペット飼ったこと無いからわからねぇよ。
「ワタシワンコノオヨウフクカウノデイソガシー」
「はいはい。じゃぁ俺買ってくるから、ここら辺で服見て待ってな」
「ありがとぉー!!お金は後から出すねぇー」
はぁ、なんでこんなにテンションが高いんだよ。
俺はため息をつきながら、スマホの検索結果とともにペットフードコーナーへと向かった。
数十分後
「はぁ……やっと買い終わったぁ」
俺は両手にドッグフード、ペットシーツ、犬用のケージを持ち、先ほどMさんと別れた服売り場まで戻って来た。もちろん、服売り場と言っても犬用なのだが。
「なぁ、みおりんだろ?確かみおりんってペット飼ってないんじゃなかったっけか?」
「なぁ教えろよぉ。もしくは俺たちと一緒に夜を楽しもうぜ」
すると、男2人組に絡まれているMさんを発見した。
「ここからだと何を話しているのか聞こえないが……絡まれていることは確からしいな」
って言うかなぜペットショップにチャラ目のナンパ系陽キャがいるんだよ!……いや、別にいてもおかしくはないか。
見た目だって茶髪にイヤリングのおしゃれ系イケメンだし、ペット関連で用があってこのペットショップに来て、偶然あまりにも可愛すぎるMさんを見つけたからナンパしただけだろう。
Mさんは後ずさり気味な体制で露骨に困っています感を出している。
参ったなぁ。俺今両手が塞がってるから、かっこよく登場して相手ぶん殴るとか、Mさんの手を握ってダッシュで逃げるとかできないんだけど。
って言うかそもそもとしてここ店の中だから手が塞がってなくても出来ないんだけど。
……こうなったら、脅すだけ脅してみる?
「なぁ、別にいいじゃん。減るものでもないんだし」
「おい違うだろ?目の前の処女は1から0へ減っちゃうぞ?」
「おい。人の彼女になに手だしてやがる?」
あーあ。もう後戻りは出来ないやー。でも人生で一度は言ってみたいセリフランキングで上位に位置するこの言葉を言えたからいっか。
「おいなんだよテメー。制服ってことは学生か?」
「あ”?学生だからってバカにすんじゃねぇよ。お前ら痛い目にあいたいのか?」
「何生意気なこと言ってんだこいつw」
「大体お前両手が塞がってんじゃねぇか。それで何ができる?」
「お前らなんて見るだけで潰せるぜ?」
「はっ何をふざけたことをw高校でボクシング習ってた俺にお前が勝てるわけないだろーが」
おっとぉこれはまずいぞ?あと数秒後に俺は死んでいるかもしれない。
――と思った次の瞬間
グヘェ……
グハァ……
急に男ら2人が床に倒れ落ちた。
「ふぅ。大丈夫?」
「え?あ、うん。Mさんって強かったんだね……」
その後ろにいたのは丁度蹴りを入れた後のMさん。
どうやら今まで俺に入れてきた2度の蹴りは、どちらとも本当に弱いものだったらしい。
それぐらい、倒れた2人が苦しそうだった。
「相手を気絶させてしまうほどのものとは……いやはや、恐ろしっ!」
「別にそんなに身構えなくても、君には何もしないよ?私って有名人だから、護身用にちょっと備えてるだけだし」
「ちょっとの備えで元ボクシング部を気絶させられるとは到底思えないんだが!?」
「ま、そんなことは置いといて」
「そんなこと!?」
「君さっき、人の彼女になに手だしてやがるって言ってたよね……?」
「あぁ!いやっ!その……、別に可愛かったからとかいう下心があるわけじゃなくて!ただ男はこのセリフに憧れるって言うか……いやつい口が滑っちゃって!!」
「ふぅん……口が滑ったってことは、私を彼女にしたいとか思ってるんだぁ」
「!?べべべ別にそういうことじゃなくて!」
「はぁ……さっきは不意打ちで褒められたからつい赤くなっちゃったけど、そういうのは外見よりも中身で考えてくれたほうが嬉しいものよ?」
「勿論中身で判断したぞ!!」
「はぁ。私の中身を見てるならとっくに美緒だって気づくでしょ。普通(呟声)」
「え、何?聞こえなかった!」
「まっ、テンプレ通り助けに来てくれたのは嬉しかったよ」
「そりゃどうも」
Mさん、さっき病院で褒めたときと違ってどこか冷静だ。
それほど不意打ちにだけ弱いのだろうか。それともさっきの男2人組が実はかなり怖かったのだろうか。
「ジーッ……」
いや、これは俺のことを軽蔑する眼だな。
声に「ジーッ」って出してまでジト目で睨みつけるということは、見た目で判断されたのがそんなにいやだったのだろう。
それでもさ、普通そこまで下等生物を見るかのような目で軽蔑する!?
「そっそれより!頼まれたもの買ってきたよ!!」
「おぉ!私が頼んだドッグフード以外にも沢山買ってきてくれた!」
「どうせ後で頼まれるんだろうなと思ったからな」
「流石。何年経ってもそういうところは気が利くんだもんなぁ」
「え?何年経ってもってどう言う意味?」
「ん?……あぁいやいや、何でもない」
「そう。ならいいけど」
Mさんはそう言って、何かをごまかした。
まぁ別に、ペットショップでMさんと俺は別れる。それっきり、二度と会うことはないだろう。名前も聞いていないぐらいだし、今更何かごまかされたってどってことはないさ。
ちなみにMさんの蹴りは、正当防衛ということでお店の人に許された。
☆☆
ペットショップを出た先にある歩道にて。
今日買った荷物は犬に着せる服を除いて全て、宅配便で明日、東京にあるMさんの家へ届くらしい。
東京暮らしの大学生か。いいなぁー。俺も陽キャになってエンジョイしてみて―。
「ねぇ君。今日はありがとね。色々付き合ってくれて」
「いや別にいいよ。お姉さん普通の人と違うから、面白かったし」
「!?……お姉さん…か…。私、奏と同じで高校1年生のはずなんだけど?」
「え!?いや俺はてっきり大学生かと……あれ?なんで俺の名前と学年を知ってるんだ?」
俺は名前も年齢もMさんに聞かれなかった。だから自分から答えもしなかった。
それなのに、なんで俺の名前も学年も知ってる?
「まっ、今のお姉さんっていうのは、歳とって老けたって意味じゃなくて、綺麗で大人っぽいって意味で捉えてあげるよ」
「いやそんなことじゃなくて……!」
「じゃ!またね!」
そう言うとMさんは、足早とタクシーへ乗り込み、この場を後にした。
そう言えば、動物病院の先生は、ここで子犬を預かってるから終わり次第迎えに来てくださいと言っていた気がする。
今からダッシュで病院へ戻れば、Mさんと会うことができるのではないだろうか。
よし、行こう!
そしてMさんを問い詰めよう!
――と思ったところで、母からLINEが届いた。
『あなた、自分の荷物ぐらい自分で身支度したら?』
『もう18時よ?』
『美緒ちゃんが迎えに来るわ』
『今すぐ家に戻ってくるのよ?』
俺は、不思議な出来事だって人生の中では一度や二度ぐらいあるさ。と心に言い聞かせ、渋々家へ戻った。
☆☆
――ピーンポーン――
19時00分。
Mさんが言っていた通り、19時ジャストに玄関のチャイムが鳴った。
本当に彼女は占い師なのだろう。俺の過去を見破るし、家に美緒が来る時間をピッタリ当てた。恐らく、俺の名前がわかっていたのも占いの一種のお陰なのかもしれない。……って、それはもはや超能力とか魔法だよなぁ。
と、そんなことは置いといて。
「あらいらっしゃい!美緒ちゃんが家に来るのは5年ぶりぐらいかしらー?」
遂に母がドアを開け、開いたドア越しで美緒と直接話し出した。
「いやぁ久しぶりです!奏のお母さん、5年前と全く変わってないですね。お若いです」
「あらもう!美緒ちゃんは5年でますます美人さんになっちゃって。雰囲気も大人っぽいし」
「いえいえそんなことはないですよ?」
女性特有の、まずは両者を互いに褒めたたえるタイムから始まった。
一体、5年たった美緒はどのようになったのだろうか。
心臓のバクバクが止まらない……ってあれ?どこかで聞いたことあるような声だな。
いや、昔からよく遊んでいたのだから、知ってる声ってのは当然か。
でもそうじゃない。ついさっきまで、この声に振り回されていた気がする。面倒ながら楽しかった記憶がある。
俺は、ドアの前に立つ母の隙間から、高校1年生になったであろう美緒の姿を覗いた。
次の瞬間、全ての思考が停止。そして、全ての疑問点が繋がった。
何故Mさんが俺の名前を知っていたのか。
何故Mさんはピンポイントで占いができていたのか。
何故Mさんは派手な髪色をしているのか。
何故Mさんはサインを要求されるほど有名なのか。
何故MさんがMを名乗ったのか。
「あらわんちゃん!可愛いわね――うぉぉ!!」
俺は次の瞬間、母を思い切り後ろへ跳ね除けた。
「美緒!!!」
そして気づいた時には、Mさん――いや、美緒のことを抱きしめていた。
目から流れる水滴が止まらない。
美緒ももらい泣きしているのだろうか。美緒が顔を埋める俺の胸が濡れているのがわかる。
「美緒ごめんっ!5年前から俺、ずっと無視してたっ!」
「ホントだよ!私、ずっと無視されてて辛かったんだよ?」
「美緒ごめんっ!俺、美緒といるのが怖くて嘘ついたっ!」
「私、奏の好みになるために頑張ったんだよ?明るくなれるように頑張ったの!」
「美緒ごめんっ!俺、橋の下から今まで、美緒だって気づいてやれなかったっ!」
「……絶対に許さない」
「……えっ!?」
「許さない!だからっ!これから毎日私を見てっ!そして目に焼き付けて!一生私だけを見てっ!」
……
「……わかった」
「ちょっと、今の間は何?」
「いや、一生美緒だけを見るのってかなり難しいなと思いまして”ぇ”!!」
急に膝蹴りをお見舞いされた。痛い。
「もう……今のは素直に『はい』って言えばよかったのに!」
俺を膝蹴りすると、美緒は少し後ろへ下がりムスッとした顔を見せる。
「美緒、顔真っ赤だし、目だって腫れてる」
「奏だって、男らしくもないだらしない顔」
「変なの」
「ほんと」
その瞬間、太陽の光が差し込んだ。
それを機に、雲が太陽に押しのけられていく。
やがて、夜の7時だとは思えない、夏のような夕暮れが顔を露わにした。
それと同時に、俺の心にも変化が現れる。
昔は俺が美緒を引っ張って歩いていた。
美緒はただ俺についてきていた。
しかし今日からは違う。
ついさっきの出来事のように、これからは美緒が俺を引っ張ってくれる。
これからは、辛いことでも2人で乗り越えられる。
俺の心に広がった雲が、美緒によって押しのけられていく。
それがはっきりとわかった。
ついに来たのだろう。
今年の6月も。
俺の心も。
梅雨明けだ――
こんなに長いしなんか主人公暗くて詰まらない話を最後まで読んでくれた人っているんかな?
もしいるなら、正気か!?(※感謝)
だって、ヒロイン出てくるの話の半分過ぎたころだし、全体的にどんよりした話だし、これで完結させるとしたらタイトルでは動画配信者とか言ってるけどほぼ詐欺だし。
永遠と続く詰まらない文章をを1万5千字も耐えてくれたんか……。
素直にありがとう!!
一応続編も作れるように話は膨らませて書いたんだけど……
まぁ沢山の人が読んでくれたら、嬉しさのあまり手が勝手に動くかもしれません。
ちなみに作者はハーレムラブコメとかよりも純愛ラブコメ派です!純愛は正義なり!
(ハーレムも嫌いではないから批判しないでぇ~!)