Step6. Hello World
トイレの後のことは、よく覚えていない。気づいたら、ベッドの上で朝になっていた。
そういや、就業時間分からないな……
手元のスマホを見ると7時だ。スマホのバッテリーもないから、帰って充電もしなきゃな。ちょっくら職場の様子を見に行くとしますか。
職場に行くと、ジン先輩だけが居た……
「おはようございます」
「おう」
「会社の就業時間って、何時からなんですか?」
「俺たちは、納期さえ守れば自由だ」
「(ボソッ)……終わらないと帰れないやつ」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ、今日から魔法システムの開発の学習を始めて行こうと思います」
「がんばれよ」
「どの言語を覚えたらいいのかと、魔法システムで作るものって何ですか?」
「E言語を覚えたらよいぞ、作ってるものは、国立図書館の本の貸し借りを管理するシステムだ」
「ありがとうございます。このゴブリンでもわかるE言語プログラミングで、いいですか?」
「いいぞ、みんなその本から始めるんだ」
「やってみます。分からない部分があれば、お尋ねすると思うのでよろしくお願いします」
「おう」
まずは、魔導演算装置をつけて……と。これどするんだ。魔力でも流すのか?あたふたしていると、ジン先輩が教えてくれた。
「魔導演算装置は、そこの赤い部分に魔力を流したらいいぞ。最初だけつければ、あとは館内から魔力が供給されるので、動き続ける。消すときも同じだ」
「ありがとうございます」
良かった。これで点けられる。
ポチっとな!
General...
Unilateral...
Neuro link...
Dispersive...
Autonomic...
Maneuver...
……なんて文字がでたら、かっこよかったんだけど。何もなかった。黒いコンソール画面が起動した。
お、おう。前時代的だ。GUIはまだ発明されてないのかな。
言っていても仕方がないので、教科書通りに進むか。
viと入力して、テキストエディタを起動する。続いて、サンプルコードを書き写してtest.eに保存っと。
内容の一部を、Hello Worldと書き換えるのはご愛敬。
using System;
namespace goblin
{
class Magic
{
static void Main(string[] args)
{
Console.WriteLine("Hello World");
}
}
}
elfcで魔法陣製成する。
>elfc test.e
success.
成功した!続いて、elfで実行だっ。
>elf test
Hello World
やった! 出たHello World! これだけかと思われるかも知れないが、実際にやってみると分かる。めっちゃ感動する!
ジン先輩に自慢したくなったが、凄い形相で仕事してる……これは集中モードに入っているな。これしきのことで、ゾーンを解除すると、比喩表現なしに命に関わるので、声をかけてはいけない。大事な処世術だ。
しかし、ゾーンに入るなんて凄いな。ジン先輩は間違いなく、優秀な人材だろう。そんな人と一緒に仕事できるのは誇らしくて、嬉しいな。
仕方ない、ジェシカを探すか、もう9時を回っているのでいるだろう。
……居た!
「ジェシカ―、ちょとちょっと大事な用事があるんだ。こっちきて」
「何よ? こっちは忙しいんだから」
「まぁまぁ、そういわずにこれを見て」
>elf test
Hello World
「で?」
「すごいっしょ!!! Hello Worldが出てる」
「あー、すごいすごい。それじゃね」
軽くあしらわれた。この凄さを理解できないとは、未熟よのう。まぁ仕方ない、一般人の反応なんてこんなものだ。誰かに見て貰いたかっただけなので、満足だ。
気づいたのだが、ジェシカには素の自分で話しかけられることに驚いた。魔法使いの自分が、どぎまぎせずに居られたのだ。獣人族ということもあり、異性と認知しなくて済んでいるのだろうか。