Step4. 魔力解放
「ここよー、ごゆっくりぃ♪いつまでも拗ねてないで、許してよ。ごめんね。(てへぺろ)」
ジェシカは、ウインクしながら横ピースをして部屋に案内してくれた。少しイラッとしたが、気にしたら負けだ。
「これが部屋の鍵でもあり、社員証だよー。登録するから、ここに魔力を流してね」
ジェシカは、社員証の青い部分を、指さしながら教えてくれた。
「……魔力、出し方分からないです。どうしたらいいでしょう?」
正直に聞くことにした。これが大人の嗜みというものだ。
「ぷっ。たまに田舎者にいるのよねー。ちょっと待っててね」
軽く失笑されたが、どうにかなるらしい。
「これ飲んで、魔力が出せるようなるわ。大人でも飲んでない人いるのよね」
そんなことで、簡単に魔力を出せるようになるのかと驚いた。対応してくれたジェシカに感謝しかない。
「ありがとう、助かったよ」
ジェシカが、ビンを差し出してきたので受け取る。パッケージを見てみるとRed Blue……大丈夫かこれ? 翼を授けるとこから、訴えかねられない商品名だ。にしても赤なのか青なのかはっきりして欲しい。中身の色は紫色だ。
見ていても仕方ないので、飲むことにした。味は炭酸の抜けたファ○タグレープだった。美味しい。
「どう?全身に力が漲ってきた?」
ジェシカが、両腕を胸のあたりでがんばれのポーズをして聞いてきた。
「そう言えば……なんだか……」
「嘘よ。そんな効果はないわ」
ジェシカに手を出さなかったことは、称賛に値すると思う。見事にプラシーボ効果に騙された。ここで怒る訳にはいかない。まだ魔力の出し方が分からない。ぐっと堪える。
「それで、どうやって魔力を出したら?」
しれっと流した上で、横目で問いかける。
「お腹で呼吸して、指先に魔力でろ~って意識するの♪」
ジェシカも流して教えてくれた。
「そんな簡単に……? 出来た……」
やってみると、指先に軽く熱が出るのを感じる。そのまま社員証に指を置く。
「これで登録完了ねー。部屋に入る時は、ドアノブにかざしたら入れるわよ。あとこれで買い物とか出来るから、それで生活は乗り切ってね。使った分は給料から引いておくわ。逃げたら地の果てまで追いかけるから、覚悟しておいてね!」
前半は笑顔で、後半は恐喝された。
「わ、わかってるよ。逃げたりしないよ。色々とありがとう。本当に助かりました」
「どういたしまして、それじゃぁね~」
ジェシカは笑顔で去っていった。
「やったぁぁああああああ」
真の意味で、魔法使いになったんだ。内心めちゃめちゃ嬉しい。これぞ異世界って感じがする。人の前では言えない気持ちをようやく出せた。
十分に感激に浸ったあと、部屋に入ってみる。部屋の広さは、四畳くらいの一部屋でベッドとタンスが1つずつあるだけだった。こんなもんか、寝るだけの部屋って感じだな。
後日談だが、地球では魔力が発動しなかった。機会があれば、理由を調べてみようと思う。