Step1. ハローワーク
異世界に戻り、街中を散策していると、人族の他に耳の長いエルフ族や、低身長でひげの生えているドワーフ族、獣耳や尻尾のある獣人族が歩いていた。
「やった異世界! ファンタジー!」
期待していた冒険者ギルドを探しているが、いくら探して見つからない。人に尋ねてみたが、言っていることがよくわからない、といった反応だった。
代わりに教えてもらったのが、お仕事斡旋所だ。看板には"Hello Work d"と書かれていた。
Dの一族、Dの意思を感じる。繋げて読むと"Hello World"に似ていて親近感も沸いた。
"Hello World"とは、初めてプログラミングをする時に、よく使われる言葉で、世界中のプログラミング童貞を奪ってきたものである。
中に入ると、人だかりが出来ていた。職探しはどこの世界でも大変だ。
ようやく自分の番になった。対応してくれているのは、眼鏡をかけたおじさんだ。
――愛想はあまりよくない。
最初に、身分証明書を求められた。無いことを伝えると紙を渡されて、記入を促された。嘘の情報を書こうと悩んだが、正直に書くことにした。
名前:沢渡 誠
年齢:35歳
種族:人族
出身:京都
住所:なし
不安いっぱいで出してみると、住所がないことに嫌な顔をされただけだった。
(こんなのでいいんかよ……)
力もなく貧相で、言葉も流暢に話せなかったため、紹介できる仕事は、あまりないとのことだった。
求人票をばさっと見せてもらうと、1つの求人が目に留まった。
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Magic Soft社
職種:
魔法システムの開発
月給:
20~30万ガルス
仕事内容:
魔法システムの開発を経験できます!
未経験でも安心!丁寧に指導します!
住み込みも可!
誰でもいいから来て!!!
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"誰でもいいから来て!!!"という部分には不安しかないが、住み込みも可ということも良かった。地球には帰れるが、こちらに住んでみたい&住所が欲しい。何より魔法システムの開発という部分に、ときめかずにはいられなかった。
「Magic Soft社を受けたいです」
お仕事斡旋所のおじさんが少し怪訝な表情で見てきた。
「悪いことは言わないから、やめといたほうがいいよ。何人もの人間が、すぐに辞めて出てきているからね」
「ここが良いんでお願いします! 住むところもないので選んでられません」
というと、しぶしぶ先方に連絡を取ってくれた。
どうやら、すぐに面接に来て欲しいとのことだった。場所が分からないことを伝えると、地図を貰った。精巧な地図だ。文明レベルは高い。