Step0. 異世界の始まり
システム開発の会社を辞めることになり、送別会が終わった帰り道のことだった。
暴走トラックが、突っ込んできた。キーボードを20年打ち込んで来た自分なら避けれる。
――構成材質、補強
足に、全力で、電気信号を送りようやく跳び退く。
しまった! 目の前には壁が! 避けれない!! 両腕を頭の前でクロスし、衝撃に備える。
――刹那
「痛っ……くない……?」
たたらを踏むと同時に、声が出ていた。
恐る恐る目を開けると、見知らぬ街並みが広がっていた。9と4分の3番線を、越えて来たのかな。某世界的ファンタジーを思い出す。
周りにはお店の看板があり、アルファベットで書かれていた。日も明るいし、時差のある英語圏の国に転移したのかも知れない。
人通りもあるので、話しかけやすそうな、おじさんに聞いてみよう。魔法使いである自分が、見知らぬ女性に話しかけることは出来ない。溜め込んだ魔力を失って、固有結界を発動できなくなってしまう。
「Excuse me. What is the name of this country?」
(すいません。この国の名前は、何といいますか?)
英語は得意ではないが、日常会話レベルなら何とかできる。
「変なことを聞くのぅ、ジーオンという国じゃよ」
言葉が通じた! 公用語は英語でよさそうだ。
おじさんに会釈とお礼を言い考えてみる。聞いたことのない国の名前だ……もしかして、地球ではないのだろうか?
生命の存在する惑星や、パラレルワールドの可能性もあるが、きっと異世界だ。ネット小説で異世界ファンタジーに憧れていたので、そう思うことにした。
少し考えて、元来た壁に体を突っ込んでみると、地球に戻ってこれた。どうやら旅の扉がここにあるらしい。
「よしっ!」
行き来は自由に出来そうだ。旅の扉がいつまでも開いているとは限らないが、帰れなくなっても異世界を楽しもう。