プロローグ
初投稿になります。
現職プログラマをやっております。
ご意見・ご感想を頂けると嬉しく思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
ッターン!
キーボードを軽く叩くと、魔法陣が光を纏って動き出した。世の理を書き換えて、魔法が発動する。
……はずだった。
「あー、まだどこかバグってるな」
デバッグ用の魔法陣を構築して、ステップ実行で調べてみる。ちょちょいのちょいっと。
条件分岐を誤っており、nullアクセスでクラッシュしていた。修正して再構築っと。
さてさて、気持ちを取り直して。
「闇の炎に抱かれて消えろっ!」
叫ぶ必要は全くない、様式美と言うやつだ。
ッターン!
魔法陣が動きだす。
「もっとだ! もっと!! もっと!!! もっと輝けぇぇぇぇ!!!!」
魔法陣は光を失わない。
……イヤッタァ! 動いたどー!
「……先輩、ついに動きました。あとは確認のみです」
髭の濃い小人の先輩に報告する。
「よくやった! 流石じゃの」
「……我らが悲願、縮退炉が完成すれば、母艦ユグドラシルを起動できる! 帝国を滅ぼし、国を取り戻すことも夢ではないっ!」
* * * * *
ーー母艦ユグドラシル艦内。
「レーダーに敵の艦隊発見!」
「よし、アンチ・ブラストフィールド、展開」
「同時に主砲エターナルフォースブリザード充填開始!」
ついに帝国とも、ここまで来たか。
「重力波確認! 敵がワープしてきます!」
「なん……だと、敵はこんな短い距離でもワープ出来ると言うのか!?」
「敵艦隊ワープアウトします! 艦影1、3、5、7、10! 囲まれました!」
「フィールドを解除し、主砲発射後に全速前進!」
「エネルギーの充填がまだです!」
「構わん、やられるよりはマシだ!」
* * * * *
「…………タリ」
「……ワタリ」
「……サワタリ」
ーーハッ!
「……先輩、帝国の艦隊はどこに?」
「まだ寝ぼけておるんか、お主との付き合いも1年になるが、相変わらずじゃの」
「……すいません。また行ってました」
頭を切り替えよう。
先輩と発魔力所の制御システムを、開発してたんだった。
ちなみにプログラマは、十中八九SFやロボットが好きだ。
異論は認める。
「仕事の続きやるぞ」
「はい、ここからはペアでやりましょう」
プログラムを修正したので、テストコードを走らせて、他に影響や問題がないか確認する。
ーーオールグリーン、ヨシ!
「ひとまずは良さそうですね。あとは想定通りに動くかどうか……」
「そうじゃの」
とある名言がある。
プログラムは、思った通りに動かない。
作った通りに動くのだ。
「今までは、仮想装置での動作確認だけでしたから、実物は緊張しますね」
「ああ、出鼻を挫かれたことじゃし、何より高価な装置を壊すわけにはいかん」
「ですね、先ずは燃料を入れて、ボイラーに火を点けるとこやって見ましょうか」
「おう」
カタカタ……タンっと。
あれ? 動かないぞ。
バグか? それとも壊れたか?
「サワタリ、エラーメッセージが出とるぞ」
流石、先輩! なになに。
「あー、空焚き防止のために給水を先にやらんと動かないのか」
「みたいじゃの」
APIのフェイルセーフが、上手く機能している。
ポンプを動かして、給水してから、再度実行っと。
カタタン
カタカタ……タン
グォォォォオン!
ボイラーに燃料が投下されて、炎が上がる。
「よし、上手くいった」
しばらくすると、蒸気でタービンが回り出して、発電ならぬ発魔力を始めた。
あとは、自動モードにしておく。
長時間の稼働に耐えたら、テストは完了だ。
「ふぅ、上手く行きそうじゃの。しばらく様子みて、問題なけりゃ、切り上げるか」
「はい!」
「この後どうじゃ、久々にドラゴンでも食いに行かんか?」
「是非! お供させていただきます!」
* * * * *
突然始まった異世界生活。
これと言って、代わり映えはしないけれど。
出会いあり、驚きあり、戸惑いありの楽しい日々を送ってきました。
地球が恋しくならないかだって?
いつでも帰れるから、大丈夫なんです。
これまでの、そしてこれからの物語に興味がおありでしたら、続きをお楽しみください。
また貴方にお会い出来ることを、心待ちにしています。