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001 旅立ち PART1

 「・・・おーい。大丈夫かー。さっきからボーっとしすぎだぞ!」


 俺はその声でハッと我に返った。


 後ろから声をかけてきたのは、親友のフジコ(フジコ=ルプクァ=ウドルフトグヤ)だった。武器屋の親父の子供だ。俺とは幼いころからの友達で、いつも近所の家にいたずらをして遊んでいた。性格はおとなしいとは言えず、やんちゃだ。ぼさぼさの茶髪だからなのか、他の人とはあまり交流ができないらしい。


 「いや・・・。俺の親父が殺された時の怒りを思い出して。」


 そういえば、さっき勇者一行のパレードを見ていたのだ。


 「だとしても、勇者の一行を目で睨みつけるのは問題だと思うぞ。」


 そう、この国は、勇者は国王の次に偉いとされている立場だ。前の国王のパレードで国王を罵りながら国王に突っかかった男は、死刑になった。勇者は国王の一つ下の位とはいっても、やはりそれ相応の罰があるだろう。


 「ああ、ごめんごめん。そんなことより、お前も勇者に対して何か思うことはないか?」


 「お、俺?まあ、そうだなー・・・。あ、そういえば、勇者ってやけに上から目線なんだよなぁ。」


 フジコの言う通りである。道をどかなかったら平気で突き飛ばすし、口調もずっと上から目線である。それになにより、稀にだがレオンの父のように街中で殺される村人もいる。


 「俺は親父が殺されて、母さんも国に捕まって死刑になってしまった。俺はその時決意したんだ。」


 「なんだ?俺はまだその「決意」事をかれこれ三年聞いたことがないぞ。今日こそ教えてくれよ。」


 フジコが聞いてくる。そうなのだ。俺はフジコにさえその「決意」ことを話していないのだ。これまで誰にも話さなかった理由は、自分以外の人をこれ以上巻き込みたくなかったからである。すでに俺は、母親という大切な人を巻き込んでしまった。自分のせいで。

フジコは、俺の父親が殺されて、母親も死刑になったことは知っているのである。しかし、決意を言うと、もう後戻りできなくなるかもしれない。自分だけならいいが、フジコまで巻き込みたくない。


 「それを言うと、後戻りできなくなるかもしれない。それでもいいか?」


 「いいよ。」


 ノリが軽い。もう少し考えてから言葉を言ってくれないだろうか。


 「俺は・・・


 この世界の(ほぼ)全ての勇者に復讐する!」


 フジコが、口をぽっかり開けてレオンを見ている。それもこの世界の人の反応としては当然だ。たった今、レオンはこの世界のほぼすべての勇者に敵対宣言をしたようなものである。最悪、国家反逆罪で死刑である。


 「・・なんで、全ての勇者じゃなくて、ほぼ全ての勇者なんだ?」


 こいつ、ズレている。気になる所はそこじゃないだろ。


 「それは、中には優しい勇者だったり、俺達村人を対等に扱ってくれる勇者だったり、俺らの国の勇者のような中身まで腐ったやつばっかりじゃない。いや、そう思いたい。そう勇者と出会った時のために、ほぼ全ての勇者にしたんだ。」


 どうせ言ってもフジコには分からないだろうけど。


 「で、それ。俺も一緒にしてくれ!」


 意外な反応だった。フジコは今自分の言った事が分かっているのだろうか。でもまあ、仲間が増えるのはいいことだけれど。 


 「はぁ。で、どうやって復讐する気なんだ?」


 「それはまだ分からない。たしか、自分のステータスが分かるステータスプレートをタダでくれる所があったぞ。そこに行って、まずステータスプレートをもらってこよう。」


 そう、この村にはステータスプレートがタダでもらえる所があるのだ。村人で貰いに行く人は少ないが、面白半分、又は自分の護身用でいく人はいる。


 「いやいや、方法を思いついていないのによく「復讐する」とか言ったな!普通は順序が逆だと思うぞ。」


 と、フジコがズッこけそうなぐらい驚きながら言ってきた。


 「フジコ君、君が言っていることは正論だ。でも、考えてみろよ。どこをどうしたらそんな方法が思いつくって言うんだ?」


 「言われてみれば、ないな。」


 その後、いろいろと復讐の事についてフジコと話しながら、ステータスプレートをタダでもらえる所に向かった。


―――


 「ステータスプレート?村人が?どうせスキルも特殊能力も無しで、通常ステータスもオール糸桁だと思うよ。」


 受付の係をしていた女は、こういいながらもステータスプレートをレオンとフジコに渡してくれた。


 早速俺はステータスを見た。


 『 レオン・ゼクス 15(男)

  攻撃 7

  防御 4

  体力 7

  素早さ 12

  魔力 6

  スキル 

  無し

  特殊能力

  根性(未開放)、ド根性(未開放)』


 俺は真っ先に特殊能力に目がいった。


 (根性とド根性?)


 俺は根性を選択した。すると、システムの説明が上に表示された。


 ―――根性(未開放)―――


 『通常では取得できない特殊能力やスキルを取得できる可能性が上がります。(村人以外は最初から解放、村人のみ別途条件有り)また、ステータスの上昇速度も上がります。また、撃たれ強くなります。


 取得条件 あきらめない心(条件あり)』


 どうやら、普通なら習得できないスキルや特殊能力が習得できるらしい。簡単に言うと、普通は村人はスキルや特殊能力は習得できないし、ステータスもほとんど上がらないが、この根性という特殊能力は、可能性は限りなく低いが、スキルや特殊能力が取得できる可能性があるということだ。解放できればの話だけど。また、ステータスも普通に伸びるということだ。


 次に俺は、ド根性を選択した。きっと、根性の上位互換なのだろうから、と期待をして。

 『―――ド根性(未開放)―――

  特殊能力「根性」の上位互換

  効力は根性の2倍

  効果は「根性」参照

  解放条件 「根性」が解放されていること

      不屈の意志(条件有り)    』


 ・・・説明が適当すぎないか?


 俺は、もしこのステータスプレートの文を書いた奴を見つけたら、一発殴ろうと密かに心に思った。


 「おーい、レオン!お前のステータスは?」


 フジコが俺のステータスについて聞いてきた。


 「フフフ、驚くなよ」


 そして、自慢げに俺はステータスプレートを見せた。


 フジコから俺に「すげー」の一言が返ってくるだろう。俺はそう思っていた。


 「うわ、「根性」ってなんかお前に似合ってそうな能力だな。つーか、お前特殊能力持ってるじゃん!スゲーな、レオン!」


 ここまでは、俺の予想通りだった。


 「でも、防御は俺の方が勝ってるな」


 そのフジコの言葉も、個人差によるわずかな違いだと思っていた。


 「おいフジコ、お前のステータスは、どんな感じだ?」


 そう言いながら、俺はフジコのステータスプレートを上から覗き込むようにして見た。


 『フジコ=ルプクァ=ウドルフトグヤ

  15(男) lv1

  攻撃 1

  防御 20

  体力 1

  素早さ 1

  魔力 1

  スキル 

  盾系相性○ 瞬間防御Ⅰ

  特殊能力

  なし               』


 俺は言葉を失った。三つの意味で。


 一つは、ステータスの防御が誤差という範囲を超えていること。これだけを見れば、村人である。


 二つ目は、それ以外のステータスが最低の「1」であること。


 そして最後の意味は、フジコにとって非常に残念なお知らせのようなものだった。


 「どうだ、俺のステータスは!特殊能力はお前みたいについてないけど、防御力は、俺の方が高いんだぜ」


 「フジコ、そのステータスは、明らかに盾役だぞ。相性がいいのは。」


 「え・・・」


 フジコが固まった。その姿を見ていると、呼吸まで一緒に止まってしまったのではないかと思えてくる。


 「大丈夫かー。生きてるかー」


 まだフジコが固まっている。


 (ダメだこりゃ)


 これ以上話しかけても意味がない。そう思った俺は、仕方がないのでフジコが動き出すまでの時間を数えてみることにした。結果、フジコは三分間ぐらい固まったままだった。


―――


 「で、どうやって武器を調達するんだ?」


 「もちろんお前が店からとって(盗って)くるんだよ」


 俺たちは、また話を再開した。そして今は、武器の調達の話になっているのだが・・・


 「へぇ、レオンお前武器を買えるぐらいに金がたまってたのか!すげえなあ、お前」


 中々察しの悪いヤツである。そもそも俺がそんなに金持ってたらこの話はしてねえよ。


 「持ってるわけないだろう、そんな金」


 「じゃあ、どうするんだよ」


 「フジコ、お前の家は武器屋だろ。そこから盗ってくるんだよ。」


 「え!」


 「じゃ、頼むわ」


 「ちょいと待った!そんなことしたら怒られるだろうが!つーか勘当されちまうよ。」


 フジコの父親は、とても厳しい人である。

一年前だろうか、俺とフジコが遊びに夢中になって、フジコが家の門限に五分ほど遅れてしまったらしいのだが、翌日フジコを誘おうとフジコの家に行くと、フジコが立たされていた。本人に聞いたところ、昨晩から立たされているらしかった。もし、フジコが武器などを盗めば、自分の子であることなど関係なく甚当されるだろう。だが、勇者達と対立するには、まず自分たちのレベルを上げなくてはいけない。


 「でもお前、俺が「後戻りできなくなってもいいか」って聞いたとき、「いいよ」っていっただろ?」


 「あれは何かの冗談だと思ったんだよ!本気だなんて思ってなかったんだよ!」


 「自分の言った言葉には責任を持て」


 俺はまるでどこかの母親が言いそうなセリフを言った後、フジコに無理やり話を飲ませた。


―――


 気が付くと、空が赤くなっていた。


 「おい、フジコ。ちゃんと武器盗ってこいよ。」


 「・・・分かったから。その代わり、もしこれが冗談だったとしたら、レオンお前の事殺すぞ?」


 「まあ、そんなこというなよ。じゃあ、また明日な」


 「はいよ」


 そうして俺たちは、家へと帰った。

※レオンが何気に犯罪行為みたいなものをやっちゃってますが、そこは見逃してください。

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