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プロローグ

 勇者たちが魔物をまた一匹倒して帰ってきた。多くの村人が、少なくとも表面上は皆喜びに満ち溢れている表情になっている。それも当然だ。我らが勇者様が無事帰ってきたのだから。しかし、中には不満顔でいる村人もいる。レオン(レオン・ゼクス)も、そのうちの一人だった。


―――


 そもそも、勇者という地位は異世界からこの世界に召喚され者たちだ。その勇者の中で、今魔物を仕留めて帰ってきた勇者のような攻撃系の勇者は、魔物狩りやダンジョン攻略などを担当。生産などの産業系の勇者は、地域の産業の活性化を担当。頭脳系の勇者は、政治や外交担当と、担当する分野が分かれている。


 しかし、この世界に召喚された勇者は、ほぼ全員上から目線で傲慢である。だが、その理由は召喚されたことの不満からではない。自分たち勇者の他に強い者がいなかったからだ。一応上に王族や貴族などの勇者より地位の高い者はいるが、所詮ただの飾り。武力などは持っていないのだから、勇者にいいようにこき使われている。逆らうと、すぐ殺されてしまうからだ。


 その考えに反対の勇者もいないわけではない。しかし、そのような考えを持つ勇者自体が少なく、仮にそういう考えが芽生えたとしても、ほかの勇者がその考えを危険とみなして、「勇者」という地位を剥奪するのだ。もちろん、表面上は「重大な違反による地位の剥奪」ということになっている。もちろん、この事実を知っている者は勇者と一部の関係者だけである。


 村人だって、勇者に負の感情を抱いていないわけではない。勝手に家に上がられて有力な情報を無理やり言わされるわ、ぶつかっても謝らないわ、勇者のマナーは最低最悪のものであった。しかし、勇者は自分たち村人を魔物から守ってくれている存在だ。        


 だから、表向きでは勇者に感謝しているのだ。あくまでも、表向きは、だ。


 しかし、彼の場合は、表向きでさえ不満を漏らしているのだ。人間、理由なしにしていることなどない。では何故彼はそんな風にしているのか。そのわけは、父親がその勇者に殺されたからである。勇者の話からも分かるように、ろくでもない理由で殺されているのは明らかである。そう、殺された理由は、


 「なんか注意されてむかついた」


 という意味の分からない理由である。勇者が召喚される前にいた世界でも、こんなことをしていたのだろうか。それはともかく、なんと理不尽な理由なのだろうか。彼の父は、他人の柵に腰かけていた一人の格好がチャラそうなサングラスをかけている男の勇者に対して、注意をした。当然の注意である。たとえむかついたとしても、普通の村人ならその注意に従っただろう。自分のしていることがやってはいけないことだと分かっているからだ。そう、普通の村人なら。


 だが、腰かけていたのは勇者だった。この勇者は、それまで村人に一度も注意されたことがなかったのだろう。また、自分は正義のために魔物と戦っている勇者で、その魔物から自分ら勇者たちがどうして村人から注意をされないといけないのか、とも思ったのかもしれない。だが、その注意されていることはやってはいけないことなのは事実なので、素直に聞いていれば事はそれで済んだ。しかし、注意にむかついた勇者は、取り返しのつかないことをした。


 勇者が彼の父に突然斬りかかった。レオンの父も、さすがに斬りかかってくることは予想できなかった。それに、レオンの父だって村人である。当然ながら何か特殊能力やスキルを持っているわけではない。勇者が振り下ろした剣の先は、無残にもレオンの父の腹を真っ二つに切り裂いた。


 血が辺りに飛び散る。鮮血が腹からどっと出る。周りを歩いていた村人は、今目の前に見えている信じられない光景に顔が引きつっている。しかし、だれもそのことを言おうとしない。理由は簡単。今この勇者を下手に刺激しようものなら斬られてしまうと考えたからだ。そして、その考えはすぐに現実のものとなった。


 「あの、勇者様?こういうことはいくら勇者様とはいえ許されない事ではないのですか?」


 勇気を振り絞って声をかけたであろう男の村人は、その1秒後には血を吹き出す肉の塊に成り果てていた。


 辺りは急に静かになった。その場にいる全ての村人が恐怖に恐れおののいた。中には逃げ出す者もいた。今立っている勇者は、チャラい見た目とは裏腹に、目が血走っていた。それは、サングラスをかけていてもわかるほどのものだった。

そして、その中に一人だけ、泣きそうになっている村人の少年がいた。そう、レオンである。父が今目の前で斬られたレオンは、父を斬った相手が勇者であることに呆然としていた。確かに勇者に不満があることもあったが、それでも魔物を倒して自分たち村人を守ってくれている勇者を完全に、とは言わないが尊敬していた。それが今自分の目の前で裏切られたのである。呆然としないはずはなかった。


 少しずつ、辺りが落ち着き、又騒がしくなった。周りで見ている野次馬の中には、城の兵士に向かって今のことを訴える者も現れた。しかし、城の兵士は困った顔で首を横に振っている。


 周りの野次馬達(村人)はなぜ城の兵士が首を横に振っているのか分からなかった。しかし、すぐにその意味は分かった。さっき兵士に訴えた村人が戻ってきて、言われたことを話したのだ。その村人曰く、


 「勇者のした事には、何も言えない。どちらにしろ俺のような兵士に判断はできない。」


 という話だったそうだ。思えば、最初に斬られた時もこの兵士は報告に行かなかったのだ。そこで、事の異常さに気付くべきだったのだ。


 周りの野次馬(村人)はそのことに疑問を持っていたが、あることに気が付いてハッと後ろを振り返った。そう、あの勇者がまだこの場にいたのを忘れていたのである。様子を見る限り、興奮はある程度収まってきているが、刺激をすればまた興奮状態になりそうな感じであった。野次馬(村人)達は、ならべく勇者を刺激しないように立ち去ろうと、行動を始めていた。


 「絶対にお前に復讐してやる!」


 その絶叫は、その場にいた村人全員に聞こえるほど大きかった。周りの村人が一斉にその声がした方を向いた。


 そこには、レオンがいた。村人達は、彼に心の中で怒っていた。あの勇者がまた興奮したらどうするんだ、と。そして、恐る恐る勇者の方を向いた。


 勇者の顔は、今にもレオンに斬りかかってきそうな表情をしていた。そして、かけていたサングラスをそこら辺に放り投げた。そのサングラスは、二つに割れた。


 最悪の事が起こった。周りの村人はそう思った。それとともに、誰もがこの少年もあの勇者に斬られてしまうのではないかと思った。


 しかし、勇者はしばらくは彼を目でにらみつけていたものの、そのうち口がニヤついてきた。そして、


 「お前みたいな子供に何ができる!この俺、勇者様を殺そうってか!無理無理。お前はどうせ

    村          人

なんだ。ステータスオール一桁で、スキルも何もないのに俺を殺せるわけないだろ!」


 と、言い放った。

今回は『未投稿エタ作品・ボツ話大集合SP!』シリーズ第二弾です。

色々とぐちゃぐちゃですが、勘弁してください。


本来筆者はこの作品のような異世界ものが書きたかったのですが、いつの間にか現実世界の恋愛ものを書くようになってしまいました。理由は不明です。


この作品は十話程度書かれていたので、全部投稿します。黒歴史覚悟です。 

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