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5.歩くペース

◇◇◇


「おはよう!昨日はありがとう!重かったでしょ。私」

 学校にいくと、元気に鈴木さんが話しかけてくれた。

「え、あ、おはよ。その……元気?」そう聞くと、鈴木さんは「うん。おかげ様で」と髪をなびかせながらニコニコしている。良かった。すっかり元気になったようだ。


「昨日、楓ちゃんから聞いちゃった。荷物まで保健室に届けてもらって、何から何まで」

「あ、いや、なんか……その体調大丈夫かなって、気になったから」


 そんな二人をみて、微笑ましくなる周囲の中に、一人だけ怒りに燃える男がいた。それが高木だった。

 高木は、サッカー部のエースだし、容姿は整っている方だ、が、クラスで彼を好きになる女の子は皆無だ。何故なら性格に難があるから。


「二人ってどういう関係なの?」

 怒気を込めた表情で言われ、二人が言い淀んでいると鈴木の親友である楓は高木に冷たく言い放った。


「はぁ?それって、高木くんには関係なくない?」



 楓は、そこそこにモテる方である。だからこそ、生理的に無理な男性に迫られる恐怖も知っているし、相手の気持ちを理解しようともせず、しつこい行動をとり続ける男性、つまり高木は滅びろといつも思っている。こういう男は好きな相手が何を思っているかとか、どんな表情でいるかとか、そういう推測を投げ出して、自分を押し付けてくるやつばかりで、ろくでもないヤツが多い。


 楓からすると、恋する親友を助けてあげたい。それに、青木の方も満更じゃなさそうな気がする。じゃなきゃ、あそこのタイミングで助けないだろうと思う。まるで高木から奪い取るように攫って行ったではないか。


 紗枝はというと、高木のことは眼中に入っていないらしく「ねぇ、あの先生から伝言もらって……一緒に帰ってくれるって本当?」と感動に潤んだ瞳で、青木を覗き込んでいる。青木は照れくさそうに「……おう。鈴木さんが良ければ」と返してた。アオハルか!これがアオハルか!と楓は心の中で親友の恋路を応援する。





 ◇◇◇




「ほら、荷物よこせ。病み上がりだろ」

 そう、青木くんは私の荷物を奪い去った。

 嬉しくてたまらない。頬がゆるんでしまうのが、どうしても抑えられない。

 青木くんと一緒に下校できるなんて!昨日、熱出た私グッジョブ!うふふ。こんなに間近で青木くんを眺めることができるなんて、やったぁー!!


「ちょっと、ジロジロ見すぎ」

 そう青木くんに注意されて、ちょっと反省する。


「あのな。そんなに見られたら、流石の俺も緊張するから」

でも、全然緊張していなさそうな気がすると表情で訴えると、「あーー、分かった。今から、俺がずっと鈴木さんが俺を見ているように、鈴木さんを見てみるから」といって、こちらを見る。


 切れ長の瞳がじぃーっと私を見つめる。

 死ぬほど照れくさい。落ち着かない。それに、かっこよすぎる! 胸を矢で貫かれてしまうんじゃないかくらい攻撃力の高い視線である。もうっ! 頬が熱い。


「あー、何、その顔。反則」

 青木くんは顔を手で覆い視線を外す。確かに、妙齢の男女でにらめっこなんて、むやみやたらにするもんじゃない。


 青木くんは、ふぅーと深呼吸して、歩き出す。

 でも、歩くペースはゆっくりで、それは私を意識したものであった。

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