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7.謁見後・上




 レオニダスが玉座の間を去ってからしばらくたっても尚、9人の軍団長は感極まった表情で頭を垂れたままでいた。 



 カチ、カチ、カチ ――― 静まり返った玉座の間には、巨大扉前の天井に張り付けられた巨大時計が鳴らす僅かな音のみが名鳴り響いて...




おえっ





時刻は4時59分、巨大時計の僅かな音と、だれかの嗚咽だけが鳴り響いていた...




2本の針が重なった瞬間、






―――轟






 「ピーピーうるせえっ!! いつまで泣いてんだラルフっ!アルトリウスっ!リリスッ!! 軍団長がこれしきのことで泣いてんじゃねえぞ!! 」



 

 我慢の限界だといわんばかりに怒号を発しているのは ―――




 両肩のあたりから更に2本の腕のを生やし、腕が4本の男。

 真っ赤な浴衣が肌蹴た上裸姿からは、筋骨隆々の浅黒い肉体が見て取れる。

 胸のあたりまで伸びた赤黒い髪を辿って頭に視線を移すと、額、頭から計3本の漆黒の角が生えており、僧帽筋のあたりから生えた円状のなにかには4つの雷太鼓がついている。

 彼の得物は4本の錫槍杖。 四槍流の達人である。

 四本の腕で縦横無尽に振るわれる達人の技は、何者をも切り刻み、ハチの巣にする。

 雷神に愛された彼の名は 



第七軍団団長 ――― 雷鬼神(最強の鬼)シュテンドウジ


 

 額に血管を浮かび上がらせ、4本の腕でラルフ、アルトリウス、リリスの3人を器用に指さしている。

 

 

 

 「シュテンこそなによっ! そんな透かしちゃって、レオニダス様の素晴らしさが分からないとでも言いたいわけ!? 頭おかしいんじゃないの?」




 「そうですよシュテン。 スパルタ王国建国からはや550年。 戦争以外で王からの御言葉を頂いたことは数えるほどしかありません。 この幸運があなたに理解できないとは言わせませんよ。 あなたも私たちと同じ、スパルタが黎明期のときから王と共に歩んだ者の一人なのですから。」



 そんなシュテンに心外だと言わんばかりのリリスとラルフに追従する3人の軍団長とシュテンを面白そうに見ているマーリン、腕を組み、目をつむっているハクア、いまだに泣いているアルトリウス。


 

 「がーっはっはっはっはっはっ! シュテンてめえ、謁見前に一番泣きわめいてた奴がなに言ってやがる!」 


 

 大量のあごひげを180度蓄え、豪快に笑いバカにしたようにシュテンドウジを非難するのは第四軍団団長 ――― 鍛冶長レギン。


  特殊繊維で織られたマント、アダマンタイト製のダイン・アイアンフッドにショルダーアーマー、ドワーフとは思えない彼の巨躯は、これでもかと筋肉が盛り上がっている。

 その相貌はまさに筋肉達磨。スパルタで2番目の怪力を持つ漢である。

 彼の腰には二対のハンマー。

 戦場でふるわれたそのハンマーは竜の頭蓋をも一撃で砕き、地面が隆起する。

 鍛冶場でふるわれたそのハンマーは材料さえあれば神話級の武具、武器を作り上げる。






 「シュテンドウジ、みっともない見栄をはってどうになる。 素直になれ。 それこそが真のバルクッ!」



 

 少し意味のわからない事を言う超大男 彼こそが第六軍団が団長 ――― 【神殺しの】へラクレス


 年一度で開催される大型イベントのラスボス、神の子である獅子神を腕力のみで圧迫死させた際に与えられた称号【神殺しの】。レギンを抑えスパルタ王国最強の怪力を持つ彼は、獅子神を倒した際に低確率でドロップする神話等級装備、獅子神乃兜と獅子神の素材とインゴッドで作られた草摺のみ。

 全身タトゥーで覆われた筋骨隆々の肉体は、レギン以上のバルクを誇る

 本来の姿は現在の3メートル程度の身長では収まらず20メートルを超えるが、そんな彼の大きさも中堅どころというのがタイタン族の恐ろしさだろう。

 彼の強さはその大きさではなく、彼の圧倒的バルクと生まれながらの身体能力故だろう。

 その怪力は神をも潰し、パンチ一つで山が爆ぜる。




 4人の軍団長から馬鹿にされた彼の沸点は限界に達していた。

 



 「っっってんめぇらっ! ブチ殺すッ!!」

 



じゃりんっ!




シュテンドウジが錫槍杖の柄頭を床に叩きつけた瞬間、


 


 ―――― バチバチバチッ!!!




 雷撃が迸った。

 



 2000万ボルトを超える雷撃が微動だにしない各軍団長に襲いかかるるが、直撃直前に胡散してしまう。





 「だ、だめだとおもいます、そんなことしちゃっ...。 ここは玉座の間なので.....その、あの..... 王様に嫌わちゃうかもしれないですぅ....。」



 そう気弱にシュテンドウジを叱ってみせたのは第三軍団団長 ――― 【太陽の巫女】ララノア・ソレイユ


 

 ライトグリーンを基調としたぶかぶかの神官服を纏った彼女。

 恐ろしく整った顔とツンと伸びた耳から一目でエルフに連なる者だということが分かり、その黄金に輝く瞳はエルフの王種、ハイエルフの証である。

 母なる太陽神の恩寵を受けた彼女はハイエルフの中でも別格の存在であり、回復魔法を大の得意としている。

 彼女は、長身でスラりとした体系が多いエルフ族としてはかなり珍しい短身。ショートヘアで切りそろえられた彼女の前髪も相まって非常に可愛らしい風貌をしている。

 見た目からは想像できない年齢をしている彼女は、いわゆるロリば...ロリ娘というやつだ。

 腰に掛けられた十字のバトルメイスから、彼女が回復魔法だけではないことが分かるだろう。シュテンドウジの雷撃を無効化して見せた彼女の魔力無効化能力は各団長が一目を置くほどに強力だ。




 

 「ちっ。 ララノア、余計な事すんじゃねえ。」



 シュテンがぼやく。



 

 「すすす、すみません...。 軍団長が争うと王様がか、悲しむきが.....

で、でも、私はシュテンさんにさ、賛成です.....。 王様は、軍団長が簡単に涙をみせてはいけないと....。」





 「ふむ、ではララノアさんは王の素晴らしさに感銘を受けて涙することは簡単なことだとおっしゃるのですね?」





 「え...そ、そんなつもりじゃ.....。」





 シュテンを庇ったララノアの言葉の隙をついたラルフにしどろもどろになってしまうララノアに、マーリンが助け船を出す。





 「あなたたちぃ、そんくらいにしてあげなさいな。ラルフたちの気持ちもすっごくわかるわ。 でもね、レオニダス様は私たちが王の素晴らしさで涙したときにこうおっしゃられたわ「これしきのことで泣いてはならん」と、王がそういったのならこれはそういうことなの。 まさかあなたたちはレオニダス様の御言葉を否定するつもりなのかしら?」





 「そういうこった。次めそめそしやがったら今度こそぶち殺してやる。」



 

 王の御言葉だというマーリンの言葉に納得していく軍団長たち。


 



 「うぅ、ごごめんなさい...。気を付けますわ」



 

 「そうですね、王の御言葉は絶対です。 この場は私の間違いだったようです。 申し訳ありません。 ほら、そういうことです。 アルトリウスさんもそろそろ泣き止んでください。 王の御怒りを受けますよ。」




 「そ、そうか.....。 気を付けよう。 それにしても王はすばらしい...」



  

 

 注意を素直に聞き入れたアルトリウスを見て、ラルフは話題を移す。






 「さて、今、スパルタは少しおかしなことになってしまいましたが、みなさんは今の事態についてどう思いますか?」





 「どう思うもなにも、何もかわらねえよ。 あっちの世界に居た「ハーン帝国」とかいう国は気に食わねえ。だが、それだけの話だ。 王と、国がある。 それだけで十分じゃねえか。  今までと同じように、王のに従うだけだろうよ。」




 「シュテンの言う通り確かにあの国は気に食わんな。次戦うことがあれば圧倒的バルクでねじ伏せるつもりだったが、勝ち逃げされてしまったな。」




 「あの国ねー、きーっ! 思い出したらムカムカしてきたわっ!」



 

 軍団長たちが話しているのはロード・オブ・ネイションで世界ランキング1位の座に君臨していた国のことだった。スパルタも一度対戦したことのある国だったが、有名なプレイヤーが数多く所属しており、最終的にはラルフ、ハクアを除く軍団長が倒され攻略を断念した国だ。スパルタの圧倒的防衛力を恐れてか向こうからなかなか攻めてこないので、こちらから攻めることを決意したレオニダスだったが見事に返り討ちにされた格好になる。





 「ハーン帝国は気に食いませんが、今やれば問題なく勝てるでしょう。 しかし、そうですねシュテン。 王が居ればなにも問題はありません。ましてやスパルタ本土があるのです、海を失い職を失った国民から多少の文句は出ると思いますがそれだけの話です。 そもそも彼ら彼女らも戦士のはしくれ、兵としての仕事を与えれば問題ありません。 この世界で王が覇を唱えるかはわかりませんが、そうなれば私たちが全力で叶えるだけです。」



 

 「そうだね」

 「だな」

 「うむ」 ・・・・



 ラルフの意見に軍団長たちは相槌を返していく。





 「さて、いつまでも玉座の間にいては王に失礼です。 それぞれの軍団本部に戻りましょう。」




 

 

 

 

 

読んでいただいてありがとうございます!




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