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九話 出でよ、眷属達よ!

 王墓の間への入場許可が出ているかを、侍女さんに確認してきていただいて、許可はすでに昨日の内に出ているとの事で、黒騎士さん二名と王墓の間へ向かう事にします。


 王墓の間の前で黒騎士さん二名は待機していただいてひとりで入ります。



『出でよ、眷属達よ!』



 私の背より高い中空に黒い大きな穴が下向きに開き、そこから三体の獣達が足元から召喚されてきます。

 ()(じゃく)(ふくろう)蝙蝠(こうもり)です。

 床に接するとすぐに三体は跪きました。


「オーリス様お喚びにより(まか)り越しました」

「来たわよ、久しぶりねー!」

「ピーキャーグググギキュー!」


“まだ存在していましたね。蝙蝠(こうもり)ドライ、怪音波は理解できません。前から言っていましたよね? 今は人語でお願いしますね”


「久しぶり過ぎじゃ無いかなー!」


“おや? ヌルはどうしました?”


「はっ! 奴は不敬にも召喚拒否致しました!」

「拗ねてるねー」

「僕も拗ねてるんだけど?」


“そうですか。放置しすぎましたので、拗ねていてもしょうがないですね”


“三体とも人間の姿をとってください”


 三体の眷属は、()(じゃく)アインス、(ふくろう)ツヴァイ、蝙蝠(こうもり)ドライと言いましてその獣の姿で出てきておりますが、三体とも人間の姿をとる事が出来ます。


 人間の姿をとると孔雀アインスは青い髪で三十代前半ほどの細身の紳士で燕尾服姿をしており、執事を名乗っております。自称です。


 梟ツヴァイは赤髪二十代後半女性の姿、ニットワンピースでセクシーさをアピールしているようですが、口調も相まって周りからその路線では無理と思われております。


 蝙蝠ドライは十代前半に見え性別はありませんが、普段から男の子の格好を好んでしており長袖シャツに短パン、ショートブーツを選ぶ事が多いようです。金髪です。


 服は自分の身体を変化させて作っています。

 三体とも瞳は青。眷属にしたのは孔雀アインス、梟ツヴァイ、蝙蝠ドライの順になります。


(かしこ)まりました」

「はーい」

「わかったよ!」


 三体は人間の姿をとりあらためて跪きます。


“それでは蝙蝠ドライ以外、還っていいですよ”


「オーリス様……?」

「ちょっと! ちょーっと! 待ってよ。何の為にあたしを喚んだの?」

「みんなバイバーイ!」


“私の命以外での殺傷をしないならば考えましょう”


「オーリス様の御心のままに」

「もちろんよ、大丈夫よ」

「ちっ、僕だけかと思ったのに!」



 三体を連れ貴賓室へ戻ります。

 黒騎士さんは王墓の間から突然出てきた三体に驚き剣を抜きかけましたが、私の眷属であるという事を説明し納得いただきました。


 貴賓室へ戻り侍女さんに全員分のお茶を用意して貰います。


「む。ここのお茶は美味しいですね。オーリス様」

「あらホント。美味しいわー」

「むむむ、僕の方が美味しく淹れられるよ!」


“侍女さんの淹れるお茶は好きですね”


「ああ、オーリス様ありがとうございます!」


「素晴らしい腕前です。侍女さんとやら、私にも教授ください」

「私は飲んで楽しむ方がいいわー」

「僕の方が美味しく淹れられるよ!」


 三体がいると騒がしいですね。

 早めに還すか余所への仕事を指示する事にしましょう。


「オーリス様、私共の名前を考え直して頂けないでしょうか?」

「てきとー過ぎー! あの世界の数字でしょー」

「そうだよ! ドイツの人が見たら、(いち)()(さん)だよ!」


“呼びやすくて、覚えやすいので好きなのですけれどね”


「オーリス様のお望みのままに」

「しょ、しょうがないわねー」

「僕もこの名前好きなんだ!」


「ところでドライだけ必要のようなお話でしたが」

「ひいき、ひいきー!」

「僕だけで充分だからだよ!」


“近いうちに五百人近く教戒するかもしれません”


「なるほど、それでドライを。私も何かお役に立てないでしょうか!」

「あたしもーたまには働いてもいいわよ」

「喉の調子整えとこーっと!」


“孔雀アインスと梟ツヴァイにはそのうち指命を与えましょう”


「畏まりました」

「楽なのにしてねー」

「あ、え、い、う、え、お、あ、お」



 王とマリスさんに眷属三体を召喚した事の報告と、貴賓室へ留める旨の願いを手紙に書き侍女さんに届けて貰います。

 時を移さず許可の返事が来ました。



 控えていた黒騎士さん二名と眷属三体を連れ王都外へ向かいます。

 黒騎士さんは甲冑姿では無く騎士服に帯剣、盾無しです。


 二日前に兎と犬の獣に使命を与えましたが集まっているでしょうか。

 日雇い業組織の前を通りかかると、外業組織の中が騒がしいようです。怒号が飛び交っています。

 なんでしょうね、と黒騎士さんと話しながら覗くと、私に気づいた幾人かが跪いてくださいました。先日教戒をした方達ですね。教戒を受けていない方々は、何だ? と不思議そうです。


“何だか騒がしいようですが、何かありましたか?”


 外業組織の職員らしき方が前に出て跪き、お話を聞かせて下さいました。


「はい、王都の外すぐに野獣が集まっております! 見た事の無い数です。これから特別討伐隊を組み、討伐へ向かう段取りを付けておりました。王城へは連絡済みであります!」


 あ……、あー……うーん。場所を考えるべきでした。私が集めさせた獣達でしょうね。

 黒騎士さん達は互いに見つめ合いながらうんうんと頷いております。


“私が集めた獣達のようです。心配は要りません。王城へはオーリスが集めた物とご連絡してください。これから外へ向かいます”


「は……? はい、畏まりました! 念の為、何人か付き従ってよろしいでしょうか?」


“構いません。教戒を受けた人のみ選んでください”


「はいっ!」


 職員の方はすぐに立ち上がり人選を始めます。心配はいらないと周りの人に叫びながら、五名を選りすぐったようです。職員の方も人数に入っています。


「これはオーリス様の失態!? 非常に珍しいですので今日は記念日にしましょう」

「あたしらはまともに出来た日が記念日になりそうねー」

「言うなよ! 思ったけど、言うなよ!」


 眷属三体とも黙らっしゃい。マスターである私が恥ずかしい……。


 私達六名と合わせて十一名で王都門へ向かうとそこでも騒ぎになっていました。

 王都門が閉じられ出門出来ずに長い行列が出来ているようです。


 王都門の兵士さんに外の獣は心配ない、これから外へ出るから私達が出たら門を閉めるように、と黒騎士さんから伝えてもらいます。

 人が通れるほど門を開けていただき、外へ出ますと間もなく閉門されました。



 少し進むと獣の群れが見えてきました。多いですね。兎と犬の獣ががんばったようです。


 群れの先頭に兎と犬の獣が座って待っていました。

 他の獣は牙を剥き、うなり声を上げ、息荒く今にも襲ってきそうです。


「オーリス様、ざっくり百頭です。これを()るのですね?」

「よーし、がんばろー」

「わん! わん! がううぅぅ!!」


“殺りません。梟ツヴァイは反響結界を、蝙蝠ドライは音響増幅をお願いしますね”


「え、私は……」

「まっかせてー、えーい!」

「いつでもおっけー!」


 梟ツヴァイが反響結界と言う、光も音も物理攻撃さえも内側で反射させる結界を張り、獣達全体を包み込みます。蝙蝠ドライは私の声を増幅させる音響増幅の準備をしています。

 これでわずかな力で多くの者達に私の声を届かせることが出来ます。それでも十分の一程度ですので、百頭いるならば十頭分の力は必要になります。今日は眷属召喚もしていますし、肩くらいまでは浸蝕されていそうですね。



『跪け!』



 蝙蝠ドライが声を増幅し始めます。彼は私の声を音波として捉え、同じ波長で数倍に増幅し発する事が出来ます。

 梟ツヴァイの反響結界にその波長が響き、反射し私の叡智をさらに強い物にしていきます。


 そうすると、獣達は一斉に伏せて尾がある者は尾を垂らし、耳の長い者は耳を伏せ、服従の姿勢のように腹を見せる者もおります。

 外業組織より付いてきた五名はその光景に驚き手を合わせ、涙を流し感動しているようです。



『主は唯一神であらせられる。改心せよ!』



 やがて獣達に教典が入り込んでいきます。皆一回り身体が大きくなっていきます。

 よくやりました、という思いを込めて兎と犬の獣を撫でます。二匹は嬉しそうな声を上げます。誇らしげに見えますね。


「オーリス様、私は仕事がありませんでした……」

「はぁ、疲れたーあたしがんばったなー」

「だよねー! がんばったよね?」


 孔雀アインスは悲しそうに、梟ツヴァイと蝙蝠ドライは獣と同じ様に撫でて欲しそうに私をチラチラ見ています。


 そうしながら獣達を見回していると、獣に混じり人がひとり跪いておりました。

 やがてその人が立ち上がりこちらへ向かってきます。



「獣人です。猫の獣人のようです」


 黒騎士さんが教えてくださいます。


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