31話『復活と友達』
昨日、あいりに看病に来てもらって、すっかり休んだことによって熱は引いた。昨日よりは良くなったので今日は学校に行けそうだ。
──────────ピンポーン
こんな朝早くからチャイムが鳴る。母さんが扉を開ける。俺は顔を洗っていたけど玄関の方から声が聞こえてきた。
「あら?あなたはもしかして彼女?」
それを聞き俺は蛇口を止めすぐに向かう。
「あいり!?」
「やっぱり蓮の彼女なのね!」
「初めましてお母さん、蓮君の彼女の水瀬あいりです」
「あ、初めまして、蓮の母の梓です。蓮から彼女の話を聞いた時びっくりしたけどこんなにきれいだなんて蓮もやるね〜」
そのうち連れてくることになるだろうと思ってたけど、まさかこんな朝イチに彼女の方から来るなんて思ってもいなかった。
「あいりはどうしてここに?」
「今日は学校行けるかどうかわかんなかったから様子見に来たの無理そうならお弁当とか用意してないから途中で買ったりしないとだからね」
「ああ、なるほど、今日は行けるよ」
「そっか!じゃあ途中でお昼買って行こうか」
「わかった、まだ準備かかるし中で待ってて」
あいりを家に入れ俺は登校の準備をする。
あいりはそのまま母さんと話し込んでいる。何言ってるのか気になるけどご飯食べて、歯磨きして部屋からカバンを持ってリビングに行く
「あ、蓮君」
「準備出来たよ、行こうか」
「それじゃあお母さん行ってきます」
「はいはい、気をつけてねー」
俺とあいりは家を出て、学校近くにあるコンビニでおにぎりとパンを買って学校に登校する。
学校付近に近づけば他にも登校している生徒がいる。
学校中にそこそこ知られてたあいりはイメチェンした時も結構教室の外に様子を見に来た人達が多かった。
そんな人が男と歩いているのだ。視線を一気に集める。元々俺とあいりの関係を知っているのは良くて同学年の他のクラスまでだ。だからギャルだったあいりがイメチェンしたのは男ができたからだと思った人も沢山いたらしい。
そして俺が隣を歩いている。つまり俺は彼氏と判断されているわけだ。ちゃんとあっているので文句はないのでいいんだけどこうも視線を集めるとあいりって意外と人気があったことに気づく。
中にはあいりに熱い視線を向けてる男子もいるので俺としてはあんまりいい気がしない。そんな気持ちにあいりが気づいたのかどうかわからないけど腕を絡めてきた。
これに周りの女子からは「キャー」と歓声が男子からは羨ましいという恨みの篭もった視線を受ける。
あいりはその視線を受けながら俺の耳元に近づいて「こんなことするのは蓮君だけだよ」そう言って顔を赤くしながら少し早足になったあいりに引っ張られて教室に向かう。
体育の時間。
男子はバスケ、女子はテニスをするためそれぞれ更衣室に移動する。
更衣室でジャージに着替え体育館に行く。
準備運動の時2人1組になって柔軟もやるのでいつも俺は1人で体育の先生とペアになる。
うちのクラスは男子が25人女子が15人だ。男子も女子も1人必ずペアが組めない人が出てくる。その1人は先生と組むのがいつもの流れ、だから俺も今日は1人だと思ってた。
「ねぇねぇ、ペア組まないか?」
「え?」
声をかけてきたのは確か俺の後ろの席にいる佐藤だったかな?その人が声をかけてきた。
「せっかく席が近いのに話もできなくてさ、せっかく近いんだから仲良くなろうぜ」
「うん」
高校に入って初めてできた友達。久しぶりの友達。それに俺は少し感動した。
中学の時に友達に怪我させてしまってから中学時代に友達ができることは無かった。
高校に入ってもあいりに目をつけられてしまったので他の人たちは怖がって話しかけてきてくれる人はいなかった。
「じゃあやろうぜ」
「うん」
そして俺は今日はペアを組んで準備運動をすることが出来た。
バスケのパス練習などもペアを組んでできた。
お昼の時間になり佐藤が後ろからお昼を誘ってきた。
「なぁなぁ相葉、飯食おうぜ」
「あー、あいりと食べる約束してるんだ、ごめん」
「いやそれなら仕方ないな、彼女だからなまた今度誘うことにするわ」
「わかった」
あいりがその後机に来てお弁当を広げる。
俺は買ってきたおにぎりとパンを食べる。
あいりはさっきの様子を見てたのか聞いてくる。
「さっき何話してたの?」
「飯食わないかって誘われたんだよ」
「あー、食べなくてよかったの?」
「あいりと食べるって約束してたし」
「食べるなら食べてもいいからね、私も友達と食べるから」
「わかった」
あいりにも友達はいるしずっと俺と食べるなんてことは勿体ないし、その通りだな。
俺も今度誘ってみよう。
こうして俺は久しぶりに友達というものを作れた。それもこれも俺とあいりの関係がガラッと変わったことによるものだろう。




