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天空の城を貰ったので異世界で楽しく遊びたい  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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屋上からこんにちは

忙しさに負けて更新が遅れてしまいました…。

大変申し訳ありません…。

 まるで方眼紙のように綺麗な正方形が並ぶ石の床。多少石材にヒビ割れや欠けがあるが、それでも単なる石造りの塔では無いと知れた。


 その床の上を、シュバルツは這いつくばって動き回っている。目を皿のようにして這いずり回る皇太子に、ユーリは何とも言えない顔を向けた。


「シュバルツ皇太子殿下。そろそろ見つかりましたでしょうか?」


 そう尋ねると、シュバルツは振り向きもせずに口を開く。


「……しばし待て」


 不機嫌そうな声に、ユーリは黙って周りに視線を巡らせる。わざとそういう構造にしたのか、婦人の館より高い場所は城内には無い。見つかり辛く、空から以外からは攻められ無いような状況だ。


 しかし、ディツェンは忙しなく中庭やアイファのいる筈の城などを隠れて偵察している。


「城から聞こえてくる音が小さくなりました……もしや、アイファが捕まったのかも……」


「まだ兵士の方々のお怒りの声も聞こえますし、大丈夫ではありませんか?」


「そ、そうですね……いや、どちらにせよ、こちらもエルフを探す時間もあるんだから、早くこの下に入らねば……」


 ディツェンがぶつぶつと呟きながらシュバルツの背を見ると、タイミング良くシュバルツが何かを見つけて声を発した。


「あった……」


「ありました!?」


 シュバルツの呟きにディツェンは瞬時に反応し駆け寄る。ユーリも興味深そうな面持ちでシュバルツの背後から覗き込む。


 シュバルツが触れる床には薄っすらと紋章が彫られていた。石に刻まれたその紋章に、シュバルツは右手を添える。


 そして、何かを小さく口の中でだけ呟いた。


 直後、整然としていた屋上の床の隙間が青白く光り、一部がゆっくりと下に降りていく。


 ゴンゴンと重苦しい音を響かせて石の床が次々と階下に降りていき、気が付けばそこには螺旋階段が出来上がっていた。


「……凄い。流石はブラウ帝国ですね」


 何が、とも言わず、ディツェンが奇妙な褒め方をすると、立ち上がったシュバルツが軽く首を左右に振る。


「この塔は、初代皇帝が建てた。今では失われた魔導技術も使われているという話だ。私はどういった仕組みなのか見当もつかん」


 それだけ告げると、シュバルツはさっさと下へと降りていった。


「え? それ、大丈夫なんですか? わ、罠とか……」


 ディツェンが怖気付く中、ユーリは面白そうに螺旋階段を見て、シュバルツの後に続く。


「……ま、まぁ、大丈夫ですよね。多分……」


 二人が先に降りたのを見て、ディツェンは乾いた笑いと共にそう呟いて階段を降りるのだった。


 階段は然程長く無いらしく、壁に手を伝いながら降りる内に僅かに灯りが見え始めた。先行したシュバルツの姿はもう無いが、ユーリとディツェンは急ぐ事無くゆっくりと降りていく。


「もう着くようですね」


「……どうしてこんなに静かなんでしょう?」


「静謐な空気ですねぇ」


「そういう意味では……」


「あ、着きましたよ。扉が開いています」


 ユーリは小さく呟き、扉の隙間から顔を出した。扉の向こうにはシュバルツの背中が、そしてその向こう側には剣を抜いた三人の女の兵士が立っていた。胸当てと小手だけの軽装の兵士達である。


「やっぱり罠じゃないですか!」


 ディツェンが思わず声を発し、女の兵士達は険しい顔で顔を上げる。


「こいつの仲間か」


「そこを動くな」


 落ち着いた様子で三人の内の二人が動き、ユーリ達の方へ歩き出す。


「こ、ここは強行突破でいきましょう」


 ディツェンはそう口にして小さく口の中で呟く。


 しかし、何も起きる様子は無い。


「じゅ、術が使えない……!?」


「あら、本当ですねぇ」


 その言葉にユーリも不思議そうに同意した。その首筋に、抜き身の剣が添えられる。


「ここは魔術が使えない封魔の術式が張り巡らされている。この館に来るには魔術師が必要だが、中に入ってしまえば魔術師は無力となるのだ」


 ユーリの首に剣を向けた兵士がそう答えると、もう一人の兵士がディツェンの顔に剣の先を向けた。


「貴様らが何故この入り口を知っているのかは知らん。だが、外でこれだけ争う声が聞こえている状況だ。絶対に逃がさんぞ」


「魔術が使えないんだから、逃げたくても逃げられませんよ……」


 ディツェンは冷や汗と共にそう言い、両手を上げて早々に降参の意思を示す。


 と、ディツェン達に背を向けた状態で立っていたシュバルツが口を開いた。


「誰に剣を向けていると思っている? 私は皇太子だぞ」


 シュバルツがそう告げると、兵士は目を鋭く細めて睨んだ。


「馬鹿な。貴様が皇太子殿下だと? 親衛隊である我々が知らないなどありえない。王族を騙って何をしようとしている? まさか、貴様を旗印にして革命でもする気ではあるまいな?」


 兵士は怒りを滲ませながら馬鹿にしたような言い方をすると、シュバルツは不敵に笑って一歩前に出た。


「嘘だと思うならば、我が母、皇后メルリーラ陛下を呼ぶが良い」


 その一言で、兵士達の顔は僅かに引き攣った。思わずといった様子で視線を交わし合い、シュバルツの前に立つ兵士が口を開く。


「……皇后様の子を名乗ってもしも嘘だと分かれば、どうなるか分かっているんだろうな?」


「いいから、早く呼んで来い」


 シュバルツが低い声で再度同じ要求を口にし、兵士は閉口して眉間の皺を深くした。


 兵士が眉根を寄せたまま動かずにいると、背後から声がかかる。


「……シュバルツ様?」


 と、その声を聞いて皆が兵士の背後に目を向ける。


 すると、そこには少女と言っても差し支えないような若いエルフの女が立っていた。青いワンピースのような衣装を着た、金色の短髪のエルフだ。例に漏れず美しい顔と細っそりとした体型だが、その瞳は他と違い、鮮やかな緑色だった。そのエルフを見て、シュバルツは目を細める。


「フィアトーラ。やはり、変わらんな」


 シュバルツがそう呟くと、フィアトーラと呼ばれたエルフの女が眉を顰めて口を開いた。


「……シュバルツ様は、随分とお変わりになられましたね。たった数年会わない間に、何があったのですか?」


 驚きと困惑の混じった微妙な表情で尋ねるフィアトーラ。それにシュバルツが苦虫を噛み潰したような顔で唸る。


「……話せば長くなる。先に母上に会わせてもらおう」


 トーンを落としてそう答えたシュバルツに、フィアトーラは難しい表情で浅く頷き、ユーリとディツェンに目を向けた。


「しかし、その方達は……?」


 話を振られ、ユーリは柔らかな微笑と共に視線を向け、口を開く。


「我々は貴女様に会いに来ました、フィアトーラ様」


「……わ、私に?」


 動揺しつつ聞き返してきたフィアトーラに、ユーリは大きく頷いた。


「はい。我々はアイファ様の使いです」


 ユーリがそう答えると、フィアトーラは目を瞬かせた。


「アイファの……? 彼は、私が此処にいると知っていたの?」


 目を白黒させるフィアトーラに、ユーリの後ろからディツェンが顔を出す。


「あのー……とりあえず、剣を下げさせてくれます? 怖くて仕方がないんで……」


 ディツェンはいまだ自分に向けられたままの剣の刃先を横目にそう呟いたのだった。


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