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初めての異世界人

書くのが楽しい…楽し過ぎる…

書き書きジャンキー…


 空からふわふわと降りて来るロボットと女性の姿を確認し、俺は城から出た。


 さぁ、久しぶりの会話である。しかも女性だ。


 期待と不安で尋常ではない緊張感を味わいながら、俺はロボットの着陸を待った。


 女性はロボットの胸に顔を押し付けるようにして動かないが、ロボットの捕縛の仕方を見る限りでは圧死などの心配は無いだろう。


 ロボットが着陸し、女性の足を地面につける。


「えぇっと、は、初めまして……って、あ、日本語通じるのかな?」


 俺はぎこちなく笑いながらそう言って、女性の後頭部を見守った。


 と、膝から崩れ落ちるようにグニャリと女性の身体が地面に倒れて行く。


「おぉっと!?」


 慌てて両手で女性の身体を支えるが、そのまま一緒に地面に倒れてしまった。


 抱き込みながら倒れたので女性に怪我は無いだろうが、俺は強かに側頭部を打ち付けた。


 口の中に鉄の味が広がる。


「痛っ、つつつ……」


 悶絶しながら顔を上げ、女性の状態を見ようと視線を下げると、そこには眼を見張るような美女の姿があった。


 長く艶やかな赤い髪が頬に掛かっているが、それでも女性の美しい顔立ちは十分過ぎるほど理解出来る。少しハの字になった眉と、静かに伏せられた長い睫毛を携えた両目。スッと通った鼻筋に、形の良い唇。


 頬から顎、首筋のラインを見ると少し痩せているようにも見えるが、手脚がスラリと長いのでモデルのようにバランスが良い。


 と、思わず見惚れた挙句にジロジロと女性の身体を見てしまった。


「……気を失ってる。やっぱり、火サスの現場は怖かったんだろうな」


 俺は一人納得して何度か頷くと、ロボットを見上げる。


「……画面に触らずに命令出来るかな? このコを優しく抱き上げておくれー」


 声を掛けてみると、ロボットは腰を折って上半身を倒し、両手で優しく女性の身体を持ち上げた。ナチュラルにお姫様抱っこである。


「よし、とりあえず、医療室へ連れて行こうか」


 そう言って先に歩き出すと、ロボットは無言で付いてきた。賢い子である。


 エレベーターに乗り、三階を押す。


 三階に着きエレベーターから降りると、薄暗い部屋が明るくなった。ズラッとロボット達が整列する中、一番右の最前列だけ凹んでいる。一体足りないのだ。


「ああ、A1。お前はあそこに立ってたのか」


 俺がそう言ってロボットを見上げると、ロボット改めA1はただ静かに前を向いていた。


 無口である。だが、女性の扱いを見る限り紳士に違いない。A1はジェントルマンだ。


 俺はそんな妄想をしつつロボット達の列の中を突っ切り、奥へと向かう。


 本当にいったい何体いるのか。項目にはAだけの文字もあったから、Aを押せばこの一列が丸々動き出すのだろうか。


 と、ロボットの列を抜け、奥の壁に辿り着いた。壁には簡素な観音開きのドアがあり、それを開くと医療室がある。


 白い壁と床、白いベッドと何かしらの医療器具。後は日焼けマシンみたいな形状のものもあった。


 ドアが大きめだが、俺に続いて医療室に入ってきたA1は器用に腰を落とし、上半身を屈めていた。そこでも抱きかかえた女性への配慮が見える辺り、こいつは本物の紳士である。


 そんなことを考えていると、A1は指示をしていないのに日焼けマシンに女性を寝かせた。


「ん? 小麦色の肌が好みか? でも押し付けたら嫌われるぞ? 白い肌が自慢かもしれないし」


 俺がそう諭すと、A1は真っ直ぐ突っ立ったまま、動きを止める。


 何やら拗ねてしまったようにも見えるではないか。


「ふむ。紳士のお前が勝手に眠れる美女を小麦色に焼くわけが無いよな。悪かったよ」


 俺はA1に謝ると、女性の眠る日焼けマシンに近づいた。日焼けマシンのフタの部分には、ディスプレイと中の様子を見る為の覗き窓がある。


 ディスプレイに触れてみると画面が黒くなり、女性の眠る日焼けマシンの内側の部分が白く光を放った。


 そして、勝手にフタが閉まってしまった。


「ヘイ!?」


 俺は慌ててディスプレイをチェックする。間違えて日焼けさせてしまったら、もう友好関係は築けまい。国交断絶。鎖国状態になること間違いなしだ。


 だが、画面に並ぶ文字を見て、俺はホッと一息吐いた。


 画面には診察、簡易治療、急速休養といった優しい文字が並んでいた。


 どうやら、これも映画で見たことがあるような医療機器らしい。


「まずは、診察だな」


 そう言って画面をタッチすると、覗き窓から漏れる光が倍くらいに増えた。恐る恐る覗き込むと、女性の顔が下からライトアップされて恐怖映像と化している。


「夜に西洋人形を見ると怖くなるのと一緒だな……」


 失礼なことを口走ってからディスプレイを眺めていると、画面に様々な情報が表示された。


「人間、女、十六歳……若いなぁ。身長百六十センチ、体重五十キロ、胸囲……!? は、はち……いかんいかん」


 余りにも魅力的な情報が表示されていき、俺は顔を上げる。この機械にプライバシーという概念は無いらしい。紳士たるA1とはえらい違いだ。


 セクハラマシンと名付けよう。


 と、苦情を申し立てるようにセクハラマシンがピピピピと鳴り出した。


 ディスプレイを見てみると、今度は血液検査などで見る表みたいなものが表示されている。ガンマGDPが高いと酒飲み過ぎとか、そんなやつだ。


 それらの項目と数値がビッシリ並び、一番下のところに文字があった。


「……栄養失調気味? 痩せてるもんなぁ」


 色々な数字を見せられた割にシンプルな答えに肩透かしを食らいながらも、俺は女性、というか少女のライトアップされた顔を眺める。やっぱり怖い。


 すると、診察が終わったからか、フタが自動的に上がった。セクハラマシンで横になる少女を眺めて、腕を組んで頷く。


「よし、それなら料理を振舞ってやろうじゃないか」


 俺はそう言って口の端を上げると、A1に顔を向ける。


「もし気が付いたら教えてくれ。食堂にいるからな」


 俺がそう告げると、A1はこちらを振り向いた。


 ……まぁ、大丈夫だろう。


 俺は無言でこちらを見るA1に軽く頷き、医療室を後にしたのだった。



休日出勤だから休憩多めに取ってずっと小説書いてます。

上司が居ないって素晴らしい!


いや、待て。これを上司が見たら……

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