一日の終わり
それから城内を見て回り、二階は高級ホテルのような部屋が並んでいることが分かった。ちなみに、真ん中ほどの場所にはレストランみたいな施設があった。
自動で料理が出ないかと思ったが、その辺りの機能は無いらしい。自炊してたから良いけども。
ちなみに三階はあのロボット達である。薄暗かったフロアーはエレベーターから降りると明るくなり、規則正しく大量に並んだ金属製のロボットは身動き一つせず、静かに前を見て立っていた。
奥にはよく分からない部屋があったり、医療用の部屋らしき場所もあったりした。そこには天空の城がある飛行島の畑で採れる薬草などの資料もあったので、とりあえず持ち出して携帯している。
四階は広い舞踏会場といった雰囲気である。周囲を取り囲む縦長の窓はまるで何も無いかと思うほど綺麗で、縁には見事な装飾が施されている。
柱やフロアー内のステップ、作り込まれた天井に調度品など、どれも贅を凝らした代物だ。
バーカウンターやピアノなども設置されているが、あまり活用出来そうにない。
そして、外から城を見た時に不思議に思った塔である。あの塔のような建物は一階のフロアーから行けることが分かった。
エレベーターに向かう途中にある左右の扉の向こう側にはそれぞれ広い部屋があり、その部屋の奥にエレベーターがあった。
そのエレベーターに乗ると、ボタンは一つしか無く、押すと最上階近くまで行ける。
エレベーターを降りて螺旋階段を登り、展望台のような部屋があった。石造りの床や壁で窓が等間隔に並んでいる。更に、その上の階にも行けて、そこはどうやら家具は無いが人が暮らせるような部屋であるらしい。
塔はどれも同じような設計のようである。
全てを見て回った俺は五階の操作室に戻り、改めて五階の探索をした。
どうやら、四階は他のフロアーより少し狭くなっていたが、五階はそれよりも更に狭いようである。
ただ、スクリーンのある壁の向こう側に出る事が出来て、城の外周をぐるりと囲むようにバルコニーがあった。
外に出て、夜風を浴びながら空を眺めると、見たことも無いような星空が視界いっぱいに広がる。
「うおぉ……」
最新のプラネタリウムもかくやといった全方位に広がる星空だ。流れ星なんてひょいひょい見つけられる。
周りに灯りが少ないからこその星空だろう。庭園も住居群もプール側も灯りは無い。城の中は明るいが、外には一階と二階、四階の窓からしか光が漏れていないのであまり関係が無いようだ。
城探索を楽しんだ俺は操作室に戻り、ぷらぷらと中を見て回った。
すると、エレベーターの裏側に、エレベーターと並ぶようにして細い螺旋階段があることに気が付いた。腰の高さほどの手すりが一本と、足を置く鉄板だけがあるシンプルな階段だ。遠目から見たらオブジェにしか見えないだろう。
「この上って、屋上?」
天空の城の屋根の上なんて物凄く怖そう。
俺はワクワクしながら螺旋階段を登って見た。天井は螺旋階段の形に穴が開いており、真っ暗な空間となっている。
「屋根裏か?」
螺旋階段を登り切ると、また灯りが自動点灯した。
そして現れたのは、なんと俺の部屋だった。一人暮らしのワンルームアパートの一室である。
いや、少し広くなっているだろうか。十二畳だった部屋が、多分十五か十六畳ほどになっている。
「お、おお……! なんと有難い配慮!」
俺は思わず歓声を上げた。
壁には大きな本棚が並び、学生の時から集めていた漫画やライトノベル、ゲームソフトと映画のDVDが並んでいたのだ。
そして、シングルサイズのベッドと32インチのハイビジョンテレビ。ゲーム機は昔から人気のあるプラスチックステーションの二、三、四が仲良く並んでいる。
テーブルにはノートパソコンがあり、細い食器棚にはポットと電子レンジがある。
六十リットルの小さな冷蔵庫と炊飯器もあり、キッチンも備え付けられているが、何故か洗濯機だけは見当たらない。
「ん?」
部屋の入り口近くにあるドアは風呂場とトイレへの入り口だろうと思い、一応確認したのだが、ここでもサイズが少々変わっていた。
膝を少し曲げて入っていた湯船は二倍くらいに拡大しているし、トイレも簡易的な洋式トイレからウォシュレット完備の新しいタイプになっている。
「……天使様ありがとうございます」
俺は心の底から感謝の言葉を口にし、風呂に入ることにした。
しかも以前には無かった給湯機付きである。ただコックを捻るだけで丁度良い温度のお湯が出るのだ。
これは革命である。
心も身体もポカポカになった俺は、使い慣れたベッドで横になり、目を閉じる。
予想とはかなり違ったが、素晴らしきかな、城生活である。
おやすみなさい。
こんな生活を送りたい…
とりあえず、一カ月くらい南国のリゾートでゆっくりしたい…