思ったより偉い人が来たらしい。
「初めまして。タイキです」
「ヤヌアル・フリーダーだ。フリーダー皇国皇帝の弟であり、東の城の城主でもある」
「初めまして、タイキ様。私はユーリ・フリーダーです。ヤヌアル兄様の妹、つまり皇帝の妹でもありますわ」
「ああ。それとこの間抜けな面を晒した男はディツェン。フリーダー皇国屈指の術師だ。残念ながらな」
ヤヌアルが地面に倒れたディツェンを指差しながらそう言うと、後ろでエイラが苦笑した。
そんな自己紹介から始まったフリーダー皇国の重鎮との対談だが、内心ではそれなりに緊張していた。てっきり、貴族とかが来たのかと思ったが、まさか王族とは。
「長い空の旅に同行していただきありがとうございます。改めまして、ようこそ天空の国へ。ところで、ディツェンさんは大丈夫なんでしょうか? どうやら気を失っているような……」
「心配ない。こいつは寝かしておいてくれたら勝手に元気になる」
「そうですか。じゃあ、せめて城の方へ運びましょう。A1」
名を呼ぶと、斜め後ろに控えていたA1がノソノソと動き、地面に横たわったままのディツェンを担いだ。A1が白眼を剥いたディツェンをお姫様抱っこしている映像はシュールである。
その様子を眺めてから、ヤヌアルは周りを見渡す。丘の上の並木道と城の間にいるのだが、ヤヌアルは城では無く木々の裏側を見ようと目を凝らしている。
「ゴーレムが一、二、三、四体……タイキ殿。術師の者はかなり遠くからこのゴーレム達を動かすことが出来るのだろうか?」
ヤヌアルは周囲に人の気配が無いことを訝しんでいるようだ。その言葉に思わずエイラがこちらを見る。
実は、周囲の物陰にはトレーネ達が潜んでいるのだが、そちらにはどうも気付いていないらしい。
「ヤヌアル兄様。ゴーレムと術師をつなぐ魔力が感知出来ませんわ。もしかしたら、あのゴーレムの中に一人ずつ術師の方が入ってらっしゃるのでは?」
「な、なんだと!? かなり細い人間だな! しかし、そんなやり方でゴーレムを動かすとは……」
何故か勝手に驚嘆するヤヌアルとユーリ。よく分からないが、悪い人間では無さそうである。
「その、普通はゴーレムを動かす魔力というものが見えるものなんですか?」
ユーリにそう尋ねてみると、首を左右に振った。
「いえ、私が少々特殊なのです。何故か、魔力が薄っすらと感じられるといいますか……美味しいお肉の焼けた匂いを嗅ぎ分けるような感じでしょうか? こっちから匂いがする、とか分かるでしょう?」
何とも言えない例えを口にするユーリに、思わずエイラと顔を見合わせる。
「分かる?」
「そ、そうですね。なんとなく分かるような気が……」
曖昧な返事をするエイラに苦笑し、ヤヌアルを見た。
「それじゃあ、とりあえず城へ向かいましょう。お持て成しさせて頂きます」
「うん? そうか。それは嬉しいな」
「空の上でのお食事は初めてですね、ヤヌアル兄様」
二人は特に疑いもせずに素直に喜びを口にする。そんな二人に少し好感を抱きながら、城へと足を向ける。
「さぁ、どうぞこちらへ」
そう言って、俺はフリーダー皇国の要人を城へと招いた。
城の中に入ると、ヤヌアルが目を丸くする。
「……お、おぉ。これは中々……」
「まぁ、広い! それに、門の開閉にゴーレムを二体も使うなんて贅沢ですね」
「ぬぉ!? 本当にゴーレムが門を!?」
目を丸くして驚くヤヌアルと、楽しそうに両手を合わせるユーリ。
「まだまだ面白いものがありますよ」
そう言ってエレベーターに乗せると、二人はまたも大騒ぎする。
「扉が勝手に閉まった!」
「勝手に開きましたわ!」
「何処だ此処は!?」
「まぁ、景色が変わってしまいました!」
リアクション芸のようなテンションで反応する二人は、四階に着くとこちらが案内する前に勝手に広間を歩き回る。
豪華な広間の内装や窓からの景色を楽しむ二人を横目に、俺はA1に指示を出して床にディツェンを寝かせた。
ディツェンは幸せそうに白眼を剥いて倒れている。
真ん中に用意していたテーブルにエイラが水の入ったコップを並べていくと、それに気が付いたユーリが目を丸くする。
「まぁ、なんて美しいグラスでしょう。素晴らしい透明度ですね」
「おぉ、確かにこれは凄い!」
コップを掲げる二人に頷き、口を開く。
「お土産にあげましょうか?」
「是非いただこう!」
ヤヌアルは食い気味で返事をした。盛り上がる二人を何とか椅子に座らせ、エイラと共にテーブルを囲む。
このままでは全く話が進まない。そう判断し、早めに本題を切り出すことにしたのだ。
座ってもなお周りを眺め続ける二人に、俺は口を開く。
「この空飛ぶ島を見てもらえば分かるでしょうが、我が国は他の国と繋がりが殆どありません。なので、南西の強国フリーダー皇国に興味があります」
「皇国に?」
「まぁ、嬉しい」
そんな会話をしている時、その人は目を覚ました。
「……こ、此処は……」
そう呟き、ディツェンは上半身を起こす。
そして、A1を見て目を輝かせ、辺りを見回して俺とエイラに気が付いた。
「お、おぉ……!」
そこから、ディツェンの質問の嵐は始まったのだった。
ちょっと消化不良なお話に…!
次回はちゃんと話が進むように致します!




