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天空の城を貰ったので異世界で楽しく遊びたい  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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呼び出し

 数日後。


 王都で起きた事件の真相が公式に発表されることは無かった。


 その為、王都内では様々な憶測や噂が飛び交った。その主な内容は、敗走した騎士団とカルルク王国の国王、そして天空の国のゴーレムである。


 あの傲慢な騎士団が天空の国にちょっかいを出し、敗走した。


 カルルク王国が、天空の国と密かに交戦している。


 天空の国がカルルク王国を潰そうとしている。


 そういった噂は多数あったが、その派手さ故か、不思議とグレイ達の存在については語られなかった。


「何故か噂の出所が外からの行商人とレジニシオン商会ばかりだけどね」


 笑いながらタイキがそう口にすると、エイラが困ったように笑う。


「少々、不自然だったかもしれませんね。多分、ディエゴさん達が張り切りすぎたのでしょう」


 そう言って顔を上げ、スクリーンに映る景色を眺めた。スクリーンには広場で噂話に花を咲かせる町民達の姿があった。


「調査によると、侯爵は今回の事件で失脚は免れないようです。ただ、同時にカルルク王から会談を告げる書状が届いております」


 エイラがそう言うと、メーアが不思議そうに首を傾げる。


「会談? タイキ様と?」


 話の流れが分からなかったメーアに微笑み、ユーリが口を開く。


「今回の事件に天空の国が関与していることは分かっているでしょうし、グレイ様達を保護していることも察しはついている筈です。ですから、こちらは部下である侯爵を罰したのだから、天空の国にも何か……といった形で交渉したいのでしょう。とはいえ、何も物的証拠はありませんし、グレイ様達を上手く隠してしまえば、知らぬ存ぜぬで通せましょう」


 と、最近はすっかり天然な空気を出さなくなったユーリがそう説明し、タイキは乾いた笑い声を発した。


「ま、まぁ、とりあえず呼ばれたなら顔は出そうか。王都の横に店を出させてもらってるからね。ご近所付き合いは大切にしないと」


 タイキはそう言って背伸びをすると、椅子から立ち上がって振り向いた。


「アイファさんや。行きましょうか」


「はい。お伴します」


 タイキの言葉に、アイファは二つ返事で頷いたのだった。







 分厚い絨毯、美しいステンドグラス、豪華なシャンデリア。高い天井と左右には全身鎧の兵士達が立ち並び、最奥の壇上にカルルク王と宰相の姿があった。


 一度来たことのあるその広間だったが、タイキはまるで観光地に来たかのように興味深そうに周りを眺めながら歩く。


 その様子は見方によっては礼儀を知らない田舎者だったが、こと強大なる国の王が行えばその限りでは無い。


 それは、敵国の真っ只中にあって尚散歩でもしているかのような余裕があるように見え、面白そうに周囲を見回す様子はまるで格下の国が精一杯虚勢を張っている様に笑っているようにすら見えた。


 故に、広間の左右を埋める兵士達は内心で強い畏怖を感じ、同様に広間の奥で待つ二人も恐怖心に支配されつつあった。


 タイキはそんなことは一切気づかずに歩いていくが、後に続くアイファは何処か誇らしげに胸を張って歩く。最後尾にはA1がいた。


 壇上前に辿り着いてタイキが一礼すると、カルルク王、イニシダが眉根を寄せて口を開いた。


「……御足労頂き感謝する、天空の国の王、タイキ殿」


「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。イニシダ陛下」


 笑顔で返事をするタイキに、宰相が息を呑んだ。その表情は血の気が引いており、まるで病人のようである。


 イニシダは苦虫を噛み潰したような表情で顎を引き、呟いた。


「……まず先に、非礼を詫びよう」


「なんのです?」


 イニシダの言葉にタイキが首を傾げる。すると、イニシダの顔が僅かに紅潮した。


「……正直に言って、我々はそちらを侮っていた。タイキ殿の口にする奴隷の在り方など、どうあっても成立しない、と……だが、結果はご覧の有様といったところだ。今や、新規の奴隷は殆どがタイキ殿の元に集まっている。そのせいで、オークションすら開けないほどだ」


「いやいや、偶々ですよ。いやぁ、運が良かったと言いますか何と言いますか」


 謙遜したつもりのタイキだったが、その言葉にイニシダの顔は更に赤くなる。


「……更には、あの奴隷の待遇が悪い時に出てくるゴーレムの存在だ。あれは、我々には思いつきもしないものである。ゴーレムに襲撃された者は貴族であろうと問答無用であり、元より先に約束を破ったのだから文句も言えん。襲われなかった者達も、それを見て慌てて奴隷の待遇を改めたことだろう。これは天空の国の力を示す役にも立ったわけであろう?」


「そうなんですか? いやぁ、どうりで段々と奴隷に酷いことする人が減ったわけだ」


 照れたように笑ってタイキは頷き、イニシダのこめかみに血管が浮いた。


「……まさに、希代の戦略家と呼ぶに相応しい。ブラウ帝国を武力で抑えこんだだけでなく、我がカルルク王国相手に経済戦争を持ち込むとは……」


 口惜しそうにそう呟いた後、イニシダは顔を上げる。


「しかし、今回のことには明確な説明をしてもらいたい。この王都のど真ん中で一体何があったのか。当初、こちらは無差別に貴族を襲う危険な輩の討伐に動いていたのだが、返り討ちにあってしまった……そして、周囲には空を飛ぶゴーレムの目撃者が多数いたという」


 目を鋭く細め、イニシダはタイキを見下ろした。


「……何故、タイキ殿がそのような危険な輩に手を貸したのか。そして、何故今もなおその輩を匿っているのか」


 ハッキリと断言する形でそう告げられ、さしものタイキも苦笑いを返す。


「いやいや、それがまぁ、なんと言いますか……」


 困ったような態度で言い淀むと、イニシダは途端に勢いを取り戻して追求を続けた。


「納得のいく理由を聞かせてもらいたい。そもそも、我が国と天空の国との約定では、双方の売買する奴隷に手を出さないとあった筈。逃げ出したとはいえ、あの貴族狩り共は元奴隷であろう。もし奴隷でない者がおろうが、あのような輩はこのカルルク王国の法で裁かねばならん」


 そう告げてタイキの反応を待つと、タイキは考えるように唸り、成る程と頷く。


「確かに。法を犯した者はその国の法で裁くのが道理ですね」


 まるでイニシダの言葉に納得し、話を聞こうとしているように見えるタイキに、それまで喋らなかった宰相が慌てて口を開いた。


「両陛下、口を挟むことをお許しください! そ、その、今回のことは不幸な事故であると考えております。ですので、どうでしょうか。天空の国には咎は無いとして……そうすれば周辺国も何も思うことはありますまい」


 まるで恩を着せるようにそう言うと、宰相は両手を合わせて音を鳴らす。


「ただ、タイキ様に一つお願いが……その、大変申し訳ありませんが、奴隷売買の規模をもうこれ以上拡げないでいただきたいのですが……」


 卑屈な笑い方で笑みを浮かべてそう言う宰相に、イニシダが小さく舌打ちをして腕を組んだ。


 返事を待つ二人に、タイキは困ったような微笑みを浮かべたまま、口を開く。


「いやぁ、申し訳ないのですが、お断りさせていただきます」


 一言、そう断ると、二人は動きを止めてタイキを見下ろした。


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