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空を飛ぶ無敵の城は男の夢

頑張って面白くしたいと思いますので、是非読んでいってください!


「城が欲しいです」


「ん?」


 俺の台詞に、目の前の少女は美しい顔を斜めに傾けた。


 白いドレスを纏った金髪の少女だ。手足は長く指はほっそりとしていて可愛らしい。まさに妖精と呼ぶに相応しい神秘的な美貌である。


 そして、その妖精のような少女の瞳は金色だった。


 少女は不思議そうに、されど興味深そうに俺の顔をマジマジと見る。


「城が欲しいと言った人間は初めてですね。中には温かいスープが飲んでみたいなんていう切ない願いもありましたけど……」


 そう言われ、俺は不敵に笑う。


「勿論、ただの城じゃないです。天空の城……そう、空を自由に飛行する天空の城です! 更に言うと映画天空の……」


「あぁ、はい。分かりました。ということは、防衛設備もあり、不思議な操作室もあり、ゴーレムみたいな番人もいる……」


「それです、それです。あ、でも滅びの呪文はいりません。寝言で間違えて城が崩壊したら笑えませんし」


 俺が笑いながらそう言うと、少女は何度か頷きながら俺の言葉を反芻した。


「ふむふむ……では、生活に必要なものくらいはサービスしましょうか。それで良いですか? 申し訳ないのですが、願いは一つだけですからね」


 確認するように聞かれ、俺は深く首肯する。迷いの無い俺を見て、少女は苦笑しながら口を開いた。


「面白い人ですね。普通なら永遠の命とか一生無くならないくらいのお金とか、そういう方向のものが多いですよ」


「え? そんなに俺みたいな人がいるんですか?」


 少女の一言に思わずそう尋ねると、少女は俺から視線を外して乾いた笑い声をあげた。


「は、はは……いや、まぁ、その……数百年に一人くらい、間違えて……」


「あ、そんなもんですか」


 俺がそう答えると、少女は涙目で俯く。


「でも、管理してる世界が十コ以上あるから、全体でみたら数十年に一人くらい……お陰で隠蔽に慣れちゃいましたよ……はは、堕天しませんように……」


 そんな不穏なことを呟きながら、少女は天を向き、両手の指を胸の前で絡めた。


 俺も先程聞いたばかりだが、この少女は『中位の天使』であるらしい。


 おやおや、とも思ったが、自分が間違いなく死んだであろうと思われる記憶はある。


 それに、この真っ白い何も無い空間だ。音も無く、風も無い。聞こえるのは自分や少女の動く音、声のみである。


 どう考えても現実では無いので、本当に天国か何かか、それとも明晰夢かくらいだろう。


 そんなこんなで落ち着いて少女の話を聞いてみると、間違えて俺を死なせてしまった、という。


 なんだと、この野郎。と、怒ってみても生き返らせることは出来ないと言われ、かといってこのまま俺が死後の世界へ行くと、少女のミスが発覚する。


 だから、俺の魂を異世界に送り、そこで好きに生きて貰いたいということだそうだ。


 いやいや、俺が違う世界に行ったら別の部分で帳尻が合わなくなるんじゃない?


 そう聞くと、なんとも複雑な顔でそちらでも帳尻を合わせます、と言ってきた。


 まさに、嘘が嘘を呼ぶ状態である。俺の予想だが、少女は近いうちに神様に嘘がバレて地獄行きになるであろう。


 そんなことを考えながら少女の悩める顔を眺めていると、少女がこちらに顔を向けた。


「……悩んでいても仕方ありませんね。それでは、私なりに考える最高のお城を用意致しますので、新たなる世界をお楽しみください。あ、あちらで天寿を全うした際にはくれぐれも、神様にはご内密に……会うことは無いと思いますが、念の為」


「分かりましたってば」


「……軽いなぁ」


 不安そうな顔でそう呟いた少女は、俺に手を向けて、そのまま腕を上げた。


 足の下に感じていた地面の感覚が消え、ふわりと身体が浮遊する居心地の悪さを感じる。


 うわ、飛行機とか凄く苦手なんだけど……。


 そんなズレた言葉が頭の中に浮かんだ。


 直後、俺の身体は紐で引っ張り上げられるように、ひゅうっと浮かび上がって行く。


「それでは、椎原大希(しいはらたいき)さん、お達者でー……」


 呑気な少女の声が遠くになっていき、下を見ると真っ白な空間の中で少女が豆粒よりも小さくなっていた。


 これまで感じていた重力の感覚も薄れていき、気が付けば水中に浮かんでいるかのような浮遊感が残る。


 夢ならば凄い夢だ。


 だが、本当に異世界に行くなら、かなりワクワクする。


 ドラゴンとかいるなら見てみたいものだ。


 俺はそんなことを考えながら、目を瞑った。



ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

いやぁ、新しい話を書く時って何でこんなに楽しいのでしょう。


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