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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界は更にひどい

右手を折っているので、左手でどこまでいけるかな、と軽い気持ちで書いたものがここまでなるとは。カウンセリング受けようかなって思った。



冬もあけて僕は今年で高校二年生になる。


周りの騒音の中には、もうすぐ一年生じゃなくなっちゃうからパーティーでもしない?

なんて声も聞こえる。


そんな僕はクラスの真ん中あたりの自分の席からじっ、と動かず手に持っている本の表紙を凝視していた。


特に意味なんてない。他にすることがないだけで。


授業合間に喋る友達なんていないし、本が好きなんて高尚な趣味も持っていない。


まあ、もし読んでいたとしたら、同級生の誰かに取り上げられてビリビリにやぶられてしまうのだが。


こんな風に。


「おいおい、こいつ本なんて持ってるぜ。カバン以外持って来たらぶっ壊してやるって言ったの覚えてなかったのか?」

「ほんとだ。まぁ、馬鹿だもんな仕方ねぇよ」

「アッハッハ!流石馬鹿だわ!」


今日はコイツらか。


「んー?くっ、なんだこれ。笑える」

「題名か?なんだなんだ、ぶっ!」

「『自殺で必ず死ぬために』?ブハッ!うける!!」


くそ、人が黙ってりゃいい気になりやがって


「べ、べつにお前らと…かん…け…な」

「なんだってぇ!?」


「ひっ、」


「ちっ、すぐびびる癖にいきりやがって」

「ははは!いまの聞いたか?ひっ、だってよ!」

「あ、ごめ、手が滑って本破っちゃったよ!」



「黙ってねぇでなんとか言えよ!」


ドカッ、と僕の机を蹴る


椅子から転げ落ち床に転がる僕。


キャーとか、キモーだとか言って僕から離れるクラスメイト達


しかし、僕を蹴飛ばした奴は近づいてきた。


「オラッ!」


その声と共に追撃を僕に加える。


「ガハッ」


勢いのある足が鳩尾にクリーンヒット。

苦しい。息ができない。


「もういっちょ!」



ーーーーー



「今日も酷い目にあった」


そうだ。僕はイジメられている。

高校に入学して早々イジメられた。


イジメられるキッカケは些細なことだった。


もう今となっては僕の財布には一銭も入っていない程だ。っていうか、財布すらない。


「これほど派手にやってるのに教師にはバレないのか?」


なんてな。


気づけば家の前だったので既に母は帰って来ているだろうと思って、鍵を使わずドアを開けた。


「ただいま」


ドアは開いたので帰ってきているのだろう。


「あ、お帰り。ご飯作ってるから、今のうちにお風呂入っちゃいなさい」

「わかった」


母は僕にとっての唯一の味方だ。

母に心配かけたくないからという思いで今まで生きている。


ーーーーー



今日で二年生になった。


ただ、学校には行かず電車を乗り継ぎ、とある自殺名所の樹海に来ていた。


最近はさらにエスカレートしてきた。


辛い。


イジメを一人で抱えるのはもう無理だ。

教師になんて相談すれば次の日どうなるかわからない。

かといって母には心配かけたくない。




だから

生きるのをやめた。




ーーーーー



『目覚…なさい』


ん?


『目覚めなさい』


まだ眠たいんだけど


『目覚めなさい!』


「ハッ!」


『やっと起きましたね』


どこだここ?

ただ真っ白いだけの空間。

それに


「だだ、だれですか」


『そう慌てなくても大丈夫ですよ。ここは生死の狭間、そして私は、俗に言う神です。ちなみにあなたはこの声以外で私の存在はわかりませんよ」


神ね。。。


「ぼぼぼ僕…死…だは…」


『ええ。イジメで追い詰められ、耐えきれなかったあなたは自殺によって若くして死んだ』


その通りだ


『それにいったでしょう?ここは生死の狭間だって』


「せい、のは…ざまって?」


『知らないのならそれでもいいです。話を進めます』


え?


『私も忙しい身なので単刀直入に言います。異世界に転生して、もう一度生を謳歌してみませんか?』


は?


なんだその都合のいい提案。


今まで何もしてこなかった神が今になって出てきてもう一度生きてみないかだって?


冗談じゃない。もう生きたくないんだ。


『ああ、勿論今流行りのチートをつけてあげますよ』


流行には疎い僕にはよく分からないが、ようはズルができるということだろうか。


『しかも一つだけではありません。私が頃合いを見て付け足していきます』


「それ、で、イジメら、れ…くなり…すか?」


『それはあなたの努力次第ですがね』


「か、かのぅせぇいは」


『可能性ですか?私は未来が見れるわけではないですから、強く言えないですが、頑張ればいけるのでは?』


頑張ればって、おめぇ…


ーーーーー



まず目に入ったのは知っているような天井だった。


あのあと、一応断ったのだが、懇願され仕方なしに転生した。最悪、もう一度自殺でもしてやろうなんて考えながら。


ところで、ここはなんとも懐かしい場所だ。確か、幼稚園に入る前まで住んでいたアパートの一室によく似ている。


ーー因みにその後は一軒家に移り住み、自殺するまでそこで暮らした。


文化的な生活を匂わせる部屋だ。少ない知識からもっと西洋的なイメージをしていたのだが。


ガチャ


ドアノブを回す音がした。


「あら起きてたのね。お腹空いたの?おっぱいでも飲む?」


そういえば赤ん坊からスタートってあの神言ってたな。


(お腹空いたし頂こうかな?え?)


ふと上を向いた瞬間、すっかり忘れていた若かれしときの前世の母の顔があった。


暫く呆然とした後、あとで考えてみるかと食事をする。


そこで、


バンッ!


と勢いよくドアが開いた音がした。


「おい!どこにいる!出てこい!」


(誰だ?勝手に入ってきたのか?)


そうこうしているうちに足音は近づいてくる。


「もう少しここで寝ていてね」


と前世の母に似た彼女は僕をベビーベッドに寝かした。


ガチャ!


乱暴に音をたててドアが開く。男だ。


「こんなところにいたのか!なぜ出迎えない!」


男は拳を振るう


パン!


僕におっぱいを飲ませてくれた恐らく今世の母であろう人物にモロにあたる


「ごめんなさいごめんなさい…」


もしかして、この家ってDVとかあるのか


って、この男は前世の父に似ているな。


前世の父は中学校の頃出張したっきり帰ってこなかった。


今世はDVがあるのかと思うと気が重くなる。


仕方ない。母のためにも止めてやるか


「おぎゃあああ、おぎゃあああ」


大声で叫んだ。前世なら恥ずかしくてできなかっただろうけど。


なんだかんだで自分に余裕ができたのかな?


「煩いぞ!オラッ」


おいおい、赤ん坊に怒鳴るって、、ってうわぁあぁ


揺れる揺れる!


必死に小さな手でシーツにしがみつこうとする。


「ははは!こいつ赤ん坊の癖に必死な顔してやがる!おもしれぇ!」

「やめてください、やめてください」

「るせぇ!お前は黙ってろよ」


くそ、ベビーベッド蹴りやがったな


酔っているのか?


ん?


「すいません、ごめんなさい」

「謝ってんじゃねぇよ!」


父らしき人物は棚に置いてあった置き時計を母に投げつけた。


「うぐっ、ごめんなさい、ごめんなさい」

「オラ、オラッ!」

「あがっ!ごめひぐっ、んなさい…」


……………



ーーーーー



「きょうから小学生か」


転生してから長かった。だが、学校にいれば家に帰るまでの間気まぐれに帰ってきて、気まぐれに殴られることは少なくなる。


保育所、幼稚園には行けなかった。


「今日はーーー」


入学式の校長の話は聞き流す。


すると、クラスに移動するというので担任の先生にクラスメイトであろう子供たちとついていく。


「なんで君の服は汚いの?ってくさーい」

「ほんとだ、くさー」

「くさー」

「っていうか、体がくさい」


早速か


「仕方ないだろ、うちは貧乏なんだから」


「ビンボー?」

「あははは、ビンボーだって、もしかしてお母さんが言ってた人かな?」


え?


「ビンボーで汚い子には近づいちゃダメって言ってた!」

「きゃー離れないとー」


まじかよ、小学校でもイジメられるのかよ。


ーーーーー


今日で小学校は終わりだ


「卒業…」


「あ、きもきもうんこだ!」

「ほんとだ!近づかないようにしよう!」

「きもきもうんこ菌移すなよ!」


またこれか。

あいつらは、僕から距離をおいて悪口を言ってくる。

それは女子も例外ではない。


「あははは、なんでいるの?キモいんですけど」

「なんでお前と同じ学校なんだろう」

「もう、こんなやつの近くにいるの嫌!キモい!」


僕は席を離れた


ーーーーー


「中学生…」


春休みも終わって今日から中学生。


予想通り入学式から絡まれた


「え、まじかよ。コイツと同じ中学校なんて」

「まじ無理、学校くんなよ」


そういえばコイツらと小学校一緒だったな


「おーい、みんなー、俺たちの小学校のアイドルを紹介するぜー。それはーこいつだ!」


ばっ、と僕を指差す


「ぎゃははは!」

「顔はブスいし、服は汚い!流石アイドルだわ」

「えー、こんなやつと同じクラス?」


よけいなことを


ーーーーー


二年生になった。


中学校になってイジメがエスカレートしていくなか、新しいクラスになり、前世好きだった子の近くになった。


今思えば、高望みしすぎだったと思う。


彼女は本当のクラスのアイドルだ


「あれ、席近くだね?一年間よろしく」


というと彼女はフワッとした笑顔を向けた


前世の僕なら顔真っ赤だろうな、なんて考えながら


「よろしくお願いします」


敬語は癖だ。意識しているわけではない。こんな状況になれば自然とそうなると思う。


「ふふ、いいよ、敬語なんか」

「じゃあ、よろしく」


押し問答になると思ったので、自分が引いた。


ーーーーー


「ねぇ、一緒にご飯食べない?」


と僕に声をかけたのは例の彼女だ。


「いやいや、君と一緒に食べたがっている人もいるみたいだから、その人のところに行ってあげなよ」


断らないと、のちのちどうなるか。


「別にいいよ。今日は君と食べたいの」

「なんで僕なんかと」

「いいじゃない、さっさと食べちゃお」

「う、うん」


ーーーーー


一ヶ月後


今日は父との暴力がいつにも増して酷かった。ああ、住居は今もアパートだ


「どうしたの?そんな怪我して」

「いや、なんともないよ」


「なんでもないことないでしょう?ちょっとみせてみて!」


ああ、優しいなぁ


「保健室に行こう?一緒について行ってあげるから」



このイジメられている僕に味方してくれる彼女に惚れていた。


ーーーーー


二週間後


彼女を体育館裏に呼び出した


今日は、彼女に告白する。


もちろん、僕なんかじゃダメだとわかっている。


けれど、もしかしたら。


そんな時


『あらあら、あれほどイジメられているのに恋をしちゃうなんて。私にはよくわかりませんね』


真っ白い場所にいた


「いいじゃないか!お前にはわからないだろう!それに、何がチートだ、異世界だ、都合の悪い事ばっかりじゃないか!」


『いいえ、私が正気を保つ能力を上げなければあなたは、すでに狂っているし、前の世界とは違うでしょう?これを異世界と呼ばずしてなんと呼ぶのですか』


確かに、前世では、母は俺に手を出すことはなかったし、父は会社に勤めていた。幼稚園には行ったし、中学校まではイジメられることはなかった。


「そんなことより、なにか知らんが早くしろ!いそがなきゃ駄目なんだ!」


『ええ。わかってますとも。今日は新しいチートをつけてあげようと思いまして』


そう言えば、チートを付け足すとかなんとかいってたな


『では、早速、あなたには人の考えを読む力を差し上げましょう』


ーーーーー


いつのまにか元の場所に戻っていたので、体育館に急ぐ。


着いたので、遠目からいるかどうか確認する。


「いた!」


すると、空中にまるでタイピングされたように文章が現れた。


「なんだ?」


視線を文章に移す


「あいつ呼びつけたのにまだこないのかよ、告白なら派手に振ってつい◯たーに投稿してやるっていうのに。っていうか、あいつちょっと優しくしただけで落ちちゃって、うけるw」


なんだ…これ。


これが、人の考えが読める能力なのだろうか。


「もしかしてこれ…」


もう一度彼女に目線を戻すと、文章は続いた。


「動画準備万端なんだけど。全然こないじゃん。ま、いっかあいつ豚みたいだもんね。足も豚見たく豚足なんだろうなwあー、はやくこっ酷く振って、縁を切りたい。あれ、そういえばなんであいつになんか優しくしたんだっけ?……ああ!金蔓か!まてよ?ここで振ったら金蔓にできないな」


これが彼女の心の声というのか。


いや。これはあの神が適当にやったんだろ。


「おーい、待たせてごめん!」


僕は走りながら声をかける


「あ、来た!どうしたの?」


今日も花のような笑みだ。

さっきのはデタラメだったんだろう


「じ、実はさ……付き合ってください!」


どうだ?


「プッ!あははは!みんな聴いた?付き合ってくださいだって。まじキモすぎw動画つい◯たーに載せるからよろしく」


え?


「まさか君みたいな底辺が告白するなんてな。死ね」

「その顔でいけると思ったの?無理に決まってよねー」

「キモすぎ。自分がどれだけキモいかわかってない」


「な、んでみんなが?」


「面白いもん見れるっていってたからさ来て見たら、これは爆笑ものだわ」

「えー、キモくて見たくなかった」

「あは、それはわかるわー」


ーーーーー


あれから更にエスカレートして、所構わず暴力を振られるほどにはイジメられるようになった。同学年全員の考えを読んだが、僕に味方をするような考えを持つ者はいなかった。


「卒業か」


今日で中学校は終わりだ。高校に行く金がない僕は就職する。


「あはは!お前就職するんだってな!そうだ、卒業祝いで五発蹴ってやるよ」

「俺もおれもー」

「よっしゃ、みんなで取り囲めー。今日はいっせーので蹴るぞ」

「わかった」

「「「「「いっせーのーせっ!」」」」」

「うぐっ!」

「いっせーのーせ!」

「ブハッ!もう、「いっせーのーせ!」やめぐっ、ゲボッケボッ」


ーーーーー


卒業してから二年ちょっと。


僕は職場でもイジメられた。給料は最低賃金を下回っていて生活は苦しく、借金も多い。しまいには、父が母が金を奪いにくる。奪った後は当然僕を痛めつける。




僕はあのあといくつか神のいうチートを貰ったし、頑張ったつもりだ。しかし、チートをもらうたび辛くなる。


それに転生してから、感情の上がり下がりがおかしくなった。急に物にあたりたくなったり、暴力を振るわれても何も思わなかったり。


人として壊れているのだろう。


いや。僕は他人に人として認められていない。


それは親も。


ただ戸籍に名前があるだけの何か。






今日は仕事には行かず、電車を乗り継ぎ、とある自殺名所の樹海に来ていた。




途中立ち寄ったホームセンターで買った縄で自殺するための準備をする。


レジの人は僕をみて露骨に嫌そうな顔をしていたなと思いながら。









「あれ?なんでこんなところにいるの?もしかして自殺?w」


だれ…あ


「な…でこ…な、ところ」


いたのはあの時僕が告白した彼女だった。


「あのさぁ、あの時、お前、私に告ったじゃん?あれでさぁ、私ちょっと話のネタになってんの。ストレス溜まったからさぁ………………死んだくんね」


ふらふらと近づいて来た彼女が突き出した包丁は僕の腹にすっ、と入っていった


最後まで報われないな。と思った。





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― 新着の感想 ―
[良い点] いじめのシーンがリアルで上手いです。 [気になる点] 全体的に話が重いので、中盤で主人公が多少はいい目にあった方がバランスとれるかな?と思いました。 [一言] 結局、女神様までがいじめっ…
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