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紳士の年の差と魔法と私  作者: 一条 いちか
時は満ちた。
4/20

no.3

小さな音を立てて扉が開く。



「ちと、遅かった様じゃな。目が覚める前に来るつもりだったんだが……まぁ、過ぎてしまっては仕方あるまい。おはようと言っておこうか……Ms.シノムン」



開いたドアから現れたのは、白ヒゲの長い老人だっった。



Ms.シノムンと、聞き慣れない名前に少女はパクパクと口を動かすが、スンとも鳴らない。




「声が出ないのだな? どうやら魔法が持続しておる……ふむ」



黙る老人の後ろには、シノムンの名前を聞き少し驚きを表したウォルターとスコル。



「ひとつ確認しておきたいのじゃが……見た所3、4歳に見えるが、”中身“は成人してると考えていいかのう?」



近寄ってきた老人に少女はコクコクと頭を縦に振れば、満足そうに笑った。



「お主には悪いが、暫くそのままで話を聞いてもらいたいのじゃが……いいかのぉ?」




少女は暫く困惑したが、優しく微笑む老人に大人しく首を縦に振った。



「はて……どこから話したものか……。まずは君の一族についてから話そうか……長い話になるが…」



どこか重苦しい空気に、身を固くする。







「20年前、闇の帝王ハデスが全盛期の頃の話じゃーーーー」





魔法族、悲魔法族の殺害。

闇の帝王の勢力が日々増す時代に、誰にも何処にも干渉を受けない一族がいたのだ。



その名をシノムン。

魔法族純血名家として高貴かつ、長い歴史を持つ神に近い未知の力は、その非人道的な力に魅せらる凡ゆる者を呼び寄せる要因だった。

故に、シノムン家は、血族以外とは親しくせず、その存在だけを君臨させていた。




そして独立しているシノムンの力は誠しやかに囁かれた。

予言者であり、絶大な魔力と持ち得ない特殊能力。




そのシノムン家を闇側が見逃すはずもなく、直ぐに闇の帝王……ハデスの目に止まった。

闇側に加勢するよう呼びかけるが、シノムンはあくまで非干渉を貫いた。



闇側は幾度となく奇襲をかけたが、絶対君臨するその地位に導いた能力に手も足も出ない。




ーーーーーそして悲劇が起こる。






「……闇の帝王ハデスはある作戦を思いついたのじゃよ……」




老人の次に来るであろう言葉に、ウォルターの瞼が下を向いた。





”子供を使えばいい。”






「!!」


響いた言葉に少女は目を限界まで開かせた。





「杖を持ったばかりの子供に服従の呪文をかけ、一族を襲わせたのじゃ」




絶対の力を持っていても、魔法に慣れてない子供達は簡単にハデスの呪文に掛かった。


そして作戦はハデスの思惑通りに進む。

杖を向けて来る我が子に、シノムンの大人達は大いに怯んだ。その隙にハデスは子供等に死の呪文を使わせた。


子が親を殺す。親が子を殺す。


親の防御呪文で跳ね返った死の呪文を受け、動かなくなる子。泣きながら自害する大人達。正気を失い短い命を絶つ子。……それは酷い地獄絵図の様な光景だった。


……たった2人を除いて。







「……」


まさか……まさか、という思いが少女を駆け巡る。





「君の姉が傷付きながらも幼い君を抱いて儂の前に来たのじゃ。ーーー『時期当主である君を安全に匿って欲しい』と」





シノム家にはある呪いがある。

当主だけが持つ、漆黒の黒髪にターコイズの目。

そして付けられる和名。




「君の名前は月と書いて、ゆえ。じゃな?」




射抜く様に見つめる目に、身体は脈を打った。


確信付いてる老人の言葉に、身に覚えのない記憶が流れる。






ーーーーゆえ、あなたの名前は月よ。そして、ミドルネームにはあなたのお姉さんの名前を……。






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