no.2
「……っ? …、」
全身を使い切った後の後遺症の様な痛みに、少女は思わず眉間に皺を寄せ身体を起こした。
「動くな」
「っ!」
聞きなれないウォルターの声に、怪訝な顔をした。
「ッ!!!」
次に少女は首にあてがわれている剣に息を飲んだ。
「目的は?」
背後からの鋭く有無も言わせぬ気迫に、血の気が引いて頭の酸素が薄くなっていく。
「……っ、、!!」
見覚えのない部屋、重なる身に覚えのない出来事の中彼女は自分の声が出ないことに気付いた。
声を出そうと無意識に喉に手を伸ばすと、今にも切れてしまいそうなほどピタリと刃が皮膚にあたる。
「…目的を言いなさい。このまま喉を切りますよ」
間いれず繰り返されるウォルターの質問。
起こっている状況に処理能力が追い付かず、意味も分からなく小さい体は震え始める。
心臓が脈打つ度に刃が当たり、繰り返される質問に恐怖心は増し、対応できない自分に焦りが増す。
「…、……」
少女は唯一開いている目で、恐る恐る、ゆっくりと振り返り、黒髪から覗く透き通る水色のウォルターの瞳を見る。
「〜〜っ、」
絶望と望みの狭間で、動く小さな手で刃物を持ったウォルターの手に触れた。
『自分は敵ではない。無力だ。』
と、皮膚が切れるのも覚悟で真っ直ぐ彼を見ていると、思いが通じたのか少女の首にあてがわれた刃物の力が抜かれていく。
「……もういいでしょう」
誰かに呆れたように言い放ち、涼しげな顔で剣をしまったウォルターの言葉。
少女は当てられていた殺気で、張り詰めていた糸が切れた様に意識を失った。
「ほら、起きましたよ」
少女が次に目を覚ました時は、いくらか身体が動くようになっていた。
付き添う様にベットに腰をかけているウォルターと、もう1人の長身の男、スコルに気付く。
「っ、」
ひゅ、っと喉が鳴る。
首に当てられていた刃物への恐怖心が蘇った少女は、得体の知れない男達にまだ何かされるのかと極度に身体を強張らせた。
「!」
「怖い思いをさせてごめん」
丸めた体に手を添え、ウォルターが小さく呟いた。
「……」
「……」
彼の切れ長の目と視線がぶつかり、少女は自然と呼吸が落ち着き始める。
「……?」
少女なりに状況を把握したのか、ウォルターを目の前に喉に手を当て、声が出ない事、ここはどこ?の意味を込めて首を傾げた。
「声が出ないんですね?」
「……?」
ぐっと寄せられるウォルターの眉間のシワを、少女は何故か知っている気がする。
「ウォルター、先ずはお互いの自己紹介からしようよ」
何も言わず静かに部屋の端に立っていたスコルが、ウォルターの隣に立つようにベットサイドにやって来る。
「手荒な真似をしてすまなかったね。この男はウォルター……私はスコル。……私の言葉は理解できるかな?」
金髪に物腰の柔らかい王子要素のスコルに、少女は先程までの警戒心は無く小さく頷いた。
「文字は書ける?」
今度は横に首を振る。
「そうか……困ったねぇ。これではただ、おじさんが一方的に幼女に話す図。で、あまり宜しくはないね」
困った様に笑うスコルに、少女の体の緊張感が解れる。
「ダンさんが来ますよ……」
ウォルターが小さく呟くと、部屋のドアが静かに開いた。