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紳士の年の差と魔法と私  作者: 一条 いちか
欺かれた華。
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2no.9


スコルの執務室に戻ってからもソワソワとし続ける。

現場に行きたいとお願いした月は、どこに敵がいるかわからない状態で表に出るわけには行かないと言ったスコルの判断に従った。



嘘みたいな予知でも月は自分の予知に絶対の自信があった。

時間勝負だったのに王政側と一悶着。



「っ…」



ウォルターが向かうまでに時間がかかってしまったことに悔いる。


もっと何か別の方法で伝えるとこができたのではないか。もう少し早く行動ができたのではないか。


悔いても悔いても何もできないこの状態が酷くもどかしくて、震える手を隠すように自信を抱きしめる。



「……っ!?」


狼狽している心を表すように、何もない所でつまづく。


「大丈夫?さっきはあんなに啖呵切ってたのに」



苦笑いしながらスコルが月の体を支えてくれた。



「あれは…」

「大丈夫だよ。ウォルターはこの国で一番強い、頭も切れる。そして私の有能な右腕だよ。必ず何か持って帰ってくる」



ーーーとりあえず、今は待とう。

いつもと変わらないスコルの落ち着いた声が響いた。


ミチルを連れて帰ってくる。なとど言った期待を持たせない。それでも何か手がかりを持ってくると絶対の信頼を寄せているのは流石団長だ。







「…月はどの世界でも綺麗だなぁ…」


自室にいても窓を見るばかりで、それならウォルターの執務室の方がいいと、いてもたってもいられずウォルターの執務室で丸くなる。


月の予知に一切の疑いを持たずに信じて向かったウォルター。


夜を迎え朝が来て、夜が来る。そしてまた朝になろうとすると、月の寝てない頭がグラグラと休息を求めて瞼を閉じた。



「うっ!?」



ザワザワと頭の内側を擽られる初めての感触に身構えた。



「(予知じゃない……な、に…)」



嫌な感じがして起きようとも意識が押さえつけられたように、浮上しない。




ーー呪われた血が帰って来た…


ーーーーーー人々はまた死んでゆく……お前が殺すのだ…お前の帰りを心待ちにしていたーーーーーーこれでまた死んでゆくーーお前の周りからーーお前の呪いが災いを招くーーーー全てはお前のーー






「ッッッッ!!!?」



無理やり解くようにバッ!と勢いのまま飛び起きると背中を嫌な汗が伝った。





「ハッ…ハッ…は、はぁ、”存在“って、続いた…」



ドッドッドッと激しく胸を打つ音がなり、呼吸が浅くなる。



「今のは…、あたしの存在がバレてる…。あたしは無闇に人に関わるべきではないってこと…?」



収まらない心臓の速さに口内が乾き、吐き気がしてくる。



「ウォルターさん、…」



苦しさに縋るような声で部屋の主を呼ぶ。



「なんですか、」


「!」



構えてない返事に、声の主を探して振り返りと、窓枠にしゃがんで部屋に入り込もうとしてるウォルターがいた。



「ウォルターさん…!」


安堵した月から漂う気に、ウォルターはすぐさま読みとった。



「……何か視ましたね?」


「……」



とっさに黙った月に、ウォルターが少し力のこもった視線を合わせた。



「他者の気を感じます。…接触してきたんでしょ?」


「………」



なぜか口を開かない月。



「…頼りになりませんか?」


「!…」



優しい声に心が折れそうになる月


じわじわと涙が浮かぶ。



「私はね、わりとなんでもできる方だし、1人でいるのも好きです。…それにここでは強い方です。薬学が得意なだけあって死なない自信もある。……それでも、頼りにならないですか?」



ウォルターの手が優しく頬を撫でた。


涙を流すまいとグッと奥歯を噛み締める。



「………声が、あたしの存在を知る忠告を受けました。あたしが災いを呼ぶと…あたしの周りから死んでしまうと…」


「!(動いたか…)」




今度はウォルターが奥歯を噛み締めた。



涙の代わりにポロポロと溢れた言葉は、査問で存在意義を問われ続けた月の心を最も簡単に抉った内容だった。



「人は”あなた“がいてもいなくても死にますよ。でも、あなたの能力は生かすも殺すも、それすらを阻止することもできる」


「……?」



ウォルターが月に視線の高さを合わせる。



「あなたが災いって言われるのは、その持つ能力の高さからです。…皆はその力を恐れてるからね。でも、あなたがいなければゲイルの子が連れ去られるのに気付かなかった。気付けなければ私は動けない」



分かりますよね?と呟かれた言葉に月は押し黙る。



「…この力が、怖いんです…」



ヒシヒシと冷たくなる空気に、部屋の窓に霜が走る。



「あなたが怖いのは力が使えないからです。ならば、強くなればいい」


「それでも周りの人が死んでしまったら?あたし…」


「…それでも怖いならその時は私が殺して差し上げます」


「!」


「私が骨まで拾いますよ」


「…」


「…ゲイルの子は今はどうもできない。相手もそれなりに特化したの集まりの様で、少し手こずります。でも、必ず私がなんとかしてあげます。…それでもあなたの中にある孤独感は取り除けませんか?私がいても怖いですか?」



確信付いてるウォルターの言葉に月が顔を上げる。



「…くす…勝てないなぁ。ウォルターさんはなんでそんなに優しくしてくれるの?」



哀しそうなターコイズの目がウォルターを見上げた。



「そうですね、気になるんですよ…あなたが」


「!」


「私に守られてればいいのにって強く思います」













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