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或るあるシリーズ

或る星占いの一生

作者: 林 秀明

いつもと携帯の重さが違う事に違和感を感じた。あぁそうだ、彼女からクマのキーホルダーを付けろと言われたんだった。

 夏の暑い日差しが目を霞め、太陽が毎日仕事をしている事に気が付く。夏の太陽が一生懸命仕事をすると、倒れる人が続出する。なんともいえない不条理な世界に道端で咲く花を見ながら、今日もいつも通りだと気持ちを元に戻す。

 最近気になり始めたインターネットの星占いを見る。

「今日の獅子座のあなたは98点、集中力が優れ、仕事がテキパキと進むでしょう」

普段占いは信じないが、少し高得点だと妙に親密感がわき、今日も頑張ろうと思ってしまう。今日は普段出来ない電車での席譲りをしようと思いながら、結局寝てしまう自分に少し呆れてしまった。


そして……帰り道。

仕事では上司の叱咤、クレーム電話の対応、そして下痢……全てがうまくいかず落ち込んでしまった。たまたま一緒に帰った彼女にその事を話すと彼女は


「お疲れ様、今日は大変だったね。残り2点の災難が全部仕事に集中したね。でも○○君と今日一緒に帰れて良かった。私だったら98点は○○君と会えた喜びだと思うけどな」


その言葉に停止した波が動き出した。それはゆっくりと大きく動きながら、自分の乾いた喜びの感情へと打ち寄せる。「乾き」が「潤い」に変わり、僕はいつしか水を得た魚のようにはしゃいでいた。


「そうだ、そう思えばいい」


98点のマイナスの出来事があっても、残り2点の喜びを充分に心に満たせばいい。

僕は彼女から元気をもらい、薄暮れに消えていく電車をあとにした。


その時、僕は立ち止まって気付いた。

また電車に傘を忘れてしまった。


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