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06 突然の夜の訪問者は謎の巨乳美女

「――……って、マジで私も参加なのっ!? しかも一番じゃん!」

「お願いしますー」

星々か煌めき空の下で、たき火を囲んでキャンプ! じゃなくて野宿をしていた。

その辺で拾ってきた薪をくべながら、絶えずその火を守っている。

それは野生の獣に対しては、人間がここにいるよーだから近づかないでねという合図だったり、喉が渇いた時にお茶を沸かして飲めるようにだ。


ここから少し離れた場所には今夜の寝床・テントが貼られている。

私のような女子にも簡単に組み立てれるようにワンプッシュ。

ものの一分あれば楽勝。技術って進んでいるよね。

それを目撃した時のロンド達の驚き様といったら面白かった。


「では、俺達はそろそろ。後はお願いしますね」

と言いながらロンド達は立ち上がってしまう。

待て! まだ話は終わってないぞ!

当たり前のようにテントの方へ向かっていこうとしたので、それには「ちょっと!」と声をかけ全力で止めた。

当然だろう。何故ロンド達が使うの!? 交代した時に私は何処で眠ればいいわけ?


「ちょっと待って! 女子! 私、女子だーかーら!」

「大丈夫っすよー。間違いなんて絶対にありません。俺達も男です」

「可笑しい! 可笑しいって今の台詞!」

「さぁ、寝るか」

「あぁ。では、神子様。美女が来たら起こして下さい」

「なんで?!」

私は神子である前に女子だぞ。女子! 

結局私のツッコミも虚しく、あいつらはテントの中へ。

唯一常識人のキィだけは「交代しますか?」と名乗り出てくれたが。

しかも真面目な奴なので外で寝るというから、テントの使用を許可した。

あれは五人用だから余裕で寝られるから。




――しかし暇だな。


みんな寝静まったらしく、「すげぇな! これ!」とテントに興奮している声も耳に届かなくなった。

代わりに虫の声や木々がざわめくのが支配している。

何か携帯ゲームでもあればいいのだが、まさか火の番するとは知らずに持って来てない。

というか、火の番する神子って絶対居ないと思う。

一応女子なんですけど……


「しかも美女が来たら起こしてって来るかよ! 来られても困るっつうの」

イケメンならば大歓迎だけどさ。なんてくだらない事を考えている間は良かった。

無の時間が暇で暇でしょうがない。

電車待ちとかちょっと暇な時は、スマホ弄ってれば良かったから今のこの状況は苦痛だ。

今はもう退屈過ぎる。時が止まるのが遅すぎて仕方が無い。


「もういい。魔族でもいい。誰か話し相手になって欲しい……」

と、あまりに退屈過ぎて呟いた時だった。


「ならば、わらわがなってやろう」

という鈴を転がしたかのような音色と共に、何やら良き香りが漂ってきたのは。

線香のような匂い。甘めの中にも奥深さ。これは白檀か? 


音も無く現れた気配に、私は弾かれたかのように後ろを振り返った。

するとそこには、闇の中からまさかの美女の姿が。


漆黒の馬にまたがりその背にもたれ掛かっている。

人も極上なら、馬もそうだ。

こんな暗闇でも艶のある柔らかそうな毛、その上顔立ちすらも凛々しい。


「マジで美女が来たっ!?」

「マジでとはどのような意味なのだ?」

ストレートの灰色の髪を靡かせ、その美女は馬を降りこちらに足を進めてくる。

ただ布を体に巻き付けたようなドレスは、右太ももに大きくスリットが入れられ、異常に真っ白な生足が見える。しかも布をもっと使えよ! というぐらいにきつめの胸元には、たわわなモノが。

グラマラス。まさにそんな言葉がぴったりな女性だ。


「お主が光の神子か?」

「そうだけど……貴方は?」

「気にするな。ただの通りすがりだ」

「そんな格好で通りすがらない方がいいよ。危ないって。しかも綺麗なお姉さんがこんな山道に一人って危険極まりない。防犯は大事だよ」

「ほぅ。お主は面白い事をいうな。わらわに向かって。危ないと?」

「当然でしょ? 今日はここに泊まって行きなよ。後でこいつらを叩き起こして外に放り出すからテント使って。寝袋は私のを使っていいから。寒くない? 今お茶入れるから暖まって休みなよ」

石で囲って竈風になっているたき火に、棒を通した薬缶をくべる。

そしてその間にキャンプ用のステンレス製マグカップに粉末の緑茶を入れた。

毎日緑茶を朝に飲んでいるため、これが無いと困るので送って貰ったのだ。


「お姉さんもプリーゼ国から来たの? それとも山越えた始まりの国から?」

「わらわか? わらわはそこから」

そう行ってお姉さんが指を指したのは、深く吸い込まれそうな森。

まるで底抜けのマンホールやブラックホールのように真っ暗さ。


「やだな~、お姉さん。そういうホラーな冗談、私あんま得意じゃないから」

「わらわは嘘は言っておらぬが」

マジか。マジなのか? 幽霊とかじゃないよね? 足あるし。

日の光を一切浴びた事がないというようなお姉さんの肌を眺めながら、心臓が不規則に動き出している。


「……はいどうぞ」

これ以上の余計な妄想から逸らそうと、私は湯を注いだカップを差し出した。

するとお姉さんは小首を傾げながらもそれを受け取る。そして、カップを動かし、

「見た事のないカップだ。軽い。銀でもないな」

と呟く。


「あぁ、それ? 私の世界でキャンプ用で使っているやつ。ステンレスだよ。中身は緑茶と言って、私の国でよく呑まれているお茶」

「ほぅ」

何故だ。同じコップでも高級感が違う。

私が持つとステンレスだが、その謎の美女が持つとあら不思議。銀食器。

これはあれか。飲み方だな。きっとそうだ。


「うむ。渋みの中にも甘みがある。これは気に入ったぞ。光の神子は茶を入れるのが上手いな」

「……即席インスタントだけどね」

褒められてもそれは粉にお湯を注いだだけという簡単なもの。

従ってこれを美味しいと言われても、業者の研究の賜。

そのメーカーのアンケートなどがあったら記載しておこう。美女が褒めていたと。


「光の神子よ。どうしてお主は魔族討伐に向かうのだ? この世界はお主とは縁もゆかりもないはず。それなのに何故?」

「えーとね、言いにくい事なんだけど、私というか……私達は諸悪の権現である魔族を倒して世界を救う。……なんて事は考えてないよ。逆ハー目指してのモテ道のメインの旅なのさ。勿論、一応魔族討伐もするけどね」

キィには大反対あっているが、私とロンド達はそっちの方向で進む事にした。


勝手に召還したんだから知らん。しかもこっちを立てればいいのに、「華がない」ってどういう意味!?

と言うことで、私達は逆ハーレムエンド目指して頑張る事にした。

とりあえずてっとりばやく、何でも叶う「ログリッドの杯」というアイテム使用で。


――『逆ハーレムは神殿への反逆行為』ってキィはいうけど、あいつは堅すぎる。

反逆なんて大それたことじゃない。それにちゃんと魔族討伐もやっているので、問題ナシ。


そんな事で反逆っていうなら、ちゃっちい。

どうせなら『世界を救う神子が世界を敵に回す』ってのが、『反逆』だろうが。

それぐらいのスケールは必要。


「ほぅ。逆ハーと。して、その逆ハーとはなんだ?」

「え? 逆ハーレム。ハーレムだと男の人が女の人に好かれまくるでしょ? それの逆」

「では神子は男にちやほやされたいのか?」

「されたいねー」

「変わっているのぅ。そのような事を体験してどうするのだ?」

「どうするって……良い気分になるじゃん。こう気分が高揚するっていうか。私、モテているって感じれるし」

「やはり光の神子は変わっておる。わらわにはわからぬ」

「お姉さん綺麗だから勝手に寄ってくるんじゃない?」

「……まぁ、たしかに寄ってはくるな。三下が」

「さ、三下って、酷くない?」

まぁ、たしかにこんなに綺麗なお姉さんに猛アプローチしても、「イケメンならば許すが」ってなるかもしれないけどさ。三下って……

私は全く知らないお姉さんにアプローチして玉砕したであろう人々に同情した。

さすがに可哀想すぎるじゃんか。

まぁ、でもこんな美女なら仕方ないかもしれないけれども。


「ねぇ。ところで、お姉さん。名前……――」

と、お互いに自己紹介へと持ち込もうとした瞬間、お姉さんの顔つきが変わった。

眉を寄せ、目つきが鋭くなっている。


「――またか」

「え?」

突如としてお姉さんは深く重苦しい嘆息を漏らしたかと思えば、

立ち上がり後ろを振り返った。







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