プロローグ
いつも一緒だった。
バイト帰りにこの世界に無理やり異世界召喚され、神子をやらされた時からずっと。
慣れない国どころか、自分が今まで住んでいた所とは違う世界での生活は、私にとっては未知との遭遇ばかり。
しかも召還理由が世界に蔓延る魔族を倒せ。
そんな事言われても平和な日本とは違い、やすやすと眠る事すら出来ない野宿生活。
それでもやってこれたのは、仲間がいたからだ。
最初の神殿で平凡すぎる顔立ちのため「華がない」と言われた私達だけれども、
それでもみんなで力を合わせて来られたから、目指せ逆ハーレム(ハーレム)と各自己のモテ道のためにをしつつ、時々魔族討伐の旅を続けてこられた。
それはお互いに助け合い、無い部分を補いながら成せた事。
なのに――
「どうして?」
焼け焦げた匂いが充満する中、私の呟きがただ風に揺られた。
周辺は瓦礫に覆われ、足の踏み場もない。
屋根瓦と思われる赤い煉瓦のような欠片やら、元々は見事な調度品なのだろうと推測出来る大時計やらが、無残に積み上げられ灰とかしつつある。
そんな現状の中で、私の目の前に存在する何もない空間。
まるでそこだけ何か視えないものに守られていたかのように、ぽっかりと人一人分のスペースが空いていた。
そこにあるのは、私達が左腕に嵌めているものと同じ純金製の腕輪だけが地面に置かれ輝いている。
周りは燃えかすばかりなのに、それだけ真新しいのは対照的であり、もの悲しい。
「ねぇ、答えてよ……」
唇へと塩辛い雫が伝う。
「答えて」
大声で問いただすがそれに答えてくれる者はもうここには居ない。
そのため無慈悲に呟きだけが虚空へと吸い込まれていく。
腹立たしい程に、空は青く澄んでいる。
「裏切ったなら、最後まで裏切りなさいよ。なんで私達を助けるのよ、馬鹿」
本当にあいつは最後まであいつらしい。
最後まで悪役でいればいいのに。
それが残された者達――私達の心にどれだけの傷を残していると思っているのだろうか。
私は屈み込んでその腕輪を掴み、囁いた。「……――」と。
それは裏切り者の名であり、私達の仲間の名。