11遭遇!テンプレ勇者
「こんな事出来るなら、早く言ってよ……キィ……」
私は肩で息をしながら、地面へと倒れこむようにしゃがみ込んでいた。
同様にロンドもフォルスも同じように、へばっている。それもそうだろう。全力疾走後なのだから。
こんなにも肺を意識した事があるだろうか?
土と砂利が混じっている地べたには、グラウンドで使うライン引きを使用したかのように真っ白い魔方陣が描かれていた。
「申し訳ございません。ダンジョンの傍に、転移魔方陣があるのは常識ですので」
「そんな常識知らないよ! だったら最初から全力疾走なんてしなかったってば!」
汗だくでぐったりとしている私達と違い、一人キィだけは涼しそう。
彼は佇みながら、後方にあるダンジョンを涼しい顔で見上げていた。
「懐かしいですね……あの頃のまま、朽ちる事はない。これが竜の力」
「は? 何、キィ。ここに来た事あるの?」
「えぇ、一度だけ」
「へー。なんかピラミッドみたいな建造物だよね」
ダンジョンは塩の結晶のような色をした三角形の建物で、真っ黒い口を開けている。
日の光が一切無いであろうその入り口を見て、私は懐中電灯持って来てよかったと思った。
異世界で困らないように、必要な物はあちらの世界から取り寄せしてある。
タンブラーもそうだし、非常食もそうだ。あと、トランプ。
「あぁ、そうだ神子様。今後の為にご説明しておきますね。これが、魔法使い御用達のダンジョンマップです」
そう言いながらキィが差し出して来たのは、A3ぐらいの紙だった。
そこには大陸が描かれ、何やら文字が描かれている。
そして○や△、×等の記号も。
「ここには、今確認されているダンジョンが全て描かれています。一見普通の地図ですが、
こうやって魔力を注ぐと……」
キィがそう言いながら文字へと手を触れれば、何も無い空間に小さい魔方陣が浮かび上がってきた。
「あれ、これって……」
私はそう呟くと、地面へと視線を向ければ案の定同じだった。
白く光っているものと同一。どうやらこの地図と魔方陣は、繋がっているらしい。
こんなに便利なんて魔法っていいね。
「こうやって転移魔法を使うんですよ。勿論、距離は魔力に比例しますから、全ての魔術師が使えるわけではありません」
「へー。便利だね」
「えぇ。ですが、魔方陣の無い未開の地では使用出来ませんので要注意を」
「これ、イケメンがいる所へ行けるマップあればいいのにね」
と呟けば、「神子様っ!」と咎める言葉をキィにぶつけられてしまった。
いいじゃないか。目的がそれなんだから。
相変わらず、キィは真面目過ぎる。ほんと、良くうちのパーティーに選ばれたよね。
「んな事より勇者達の姿が見えないけれども、不味くないか?」
水筒の水をがぶ飲みしながら、ロンドがそう口にした。
その時になってようやく私もこんなまったりしている場合じゃない事に気づく。
そうだ。一刻も早くあのテンプレ勇者達よりも早く攻略しなきゃ。
「神子様! 急ぎましょう!」
「そりゃあ、勿論」
杯を手に入れるのは私。
チートでハーレム持ちの勇者になんて渡さないわよ。
そう意気込みながら、私は入り口の方へと足を進めて行った。
+
+
+
ダンジョンの中は白い大理石のような物質で構成されていた。
しかも窓の無い地下なのに、何故か明るい。どうやら天井に描かれている文様が光っているようだ。
道も迷路のように細く、敵が出て来たら戦いずらそうと思うけれども、
幸いな事に勇者チームが倒してくれているらしく、遭遇しないで駆け足で進めている。
だが、一向に目的の人物の姿を拝める事は出来ない。
「ねぇ! 勇者一行まだ会えないんだけど。まさかもう最深部まで辿りついちゃったのかな?」
「それなら凹むっす」
「俺もー」
手に入らないかもとテンションがだだ下がりしている私達に、キィが呆れた眼差しを向けているが、
それをいつものように華麗にスルー。
「勇者チームなら、もうすぐ追いつきますよ。もう少し行った先で動かないから、恐らく休んでいるみたいです」
「え? そんな事わかるの?」
「えぇ。魔力を感じますから」
「さすがキィ!」
なら、もう少し頑張れば追いつくな。
私はやる気を出し、彼らに追いつくために更にスピードを進めていく。
するとキィの言う通り、大きな広場のような場所へと出た。
そこには床に座っている勇者一行と思われる人々が。
しかも、平凡な学ラン少年が綺麗なお姉さんと可愛い女の子達に囲まれている。
「マジでテンプレじゃないですか……」
どうやら言葉使いが移ったのか、ロンドがそんな風に呟いたのが耳に届く。
「え? 日本人?」
人の事をとやかく言えないが、素朴な少年は目を丸くさせこちらを眺めたかと思えば、
「うわっ。久し振りの同郷!」と大きく手を振り出し始めた。
すると周りの女性達はこちらへと突き刺すような視線を放って来る。
「もしかして、貴方が須飼太一さん?」
「俺の事知っているの?」
「芽生さんに伺ったから」
私はそう口にすると、そのハーレム集団へと近づいていく。
魔術師や僧侶、それから戦士など全てが女性。
しかも皆、超絶美人。
「休憩中?」
「そう。先が結構長そうだから、今日はここで一旦休もうって話をしているんだ。
この先はあまり休憩出来そうな所がないから、ここを拠点にして就寝しようって」
「どうしてわかるの?」
「あぁ、これ」
そう言って彼が差し出したのは、古ぼけた本。
所々に破れているため、あまり読めない。
「これ、大魔術師アークベルが書いた日記の一つなんだ」
「誰、それ?」
「800年前の伝説の勇者と同じパーティーだった人。勇者記念館行かなかった? 彼の肖像画も掲げられていたはずだよ」
「行ってない。でもさ、そんな有名人なら結構なお宝ね」
「それがそうでもなかったんだ。露店で在庫処分の山から偶然見つけてね。店主も気づいて無かったらしくて、タダに近い額で手に入れる事ができたんだよ」
「……」
なんてチート。
そんなレアアイテム偶然手にいれられるか?
どうやらそれは私の左右の隣の連中も同じだったらしい。
顔を歪めて勇者を眺めている。
もう少し取り繕えって、大人なんだから……
「どうやら彼らはここに一度来た事があるらしい。武器のためにアイテム探しに」
「えっ!? じゃあ、ログリッドの杯も勇者達が持っていったの?」
「いや、それはあると思うよ。ホワイトドラゴンが守っている宝の一つなんだって。だからなかなか手に入らない代物だから」
「……え。ドラゴンって、難易度高くない?」
「高いんじゃないかなー。俺、よくわかんないや。ねぇ、それより何か日本の物持ってない? 俺、召還されて三ヶ月なんだけど、ホームシックにかかっててさ」
「緑茶とカップラーメンならあるよ」
「マジで!? わけて貰っていい?」
目を輝かせながら、テンプレ勇者は両手を掴んできた。
それを焼き殺しそうなぐらいの眼力で、美女達が睨み付けてくる。
あまりにも鋭いそれに、すみません。手を離して貰えますか? と言いたい。
――あれ? でも、これチャンスなんじゃない?
このままここで一緒に夕食摂って就寝。
……と見せかけて、私達は夜のうちに捜索開始。
それなら、この人達より先に進めるじゃん。




