表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集  作者: 中津川由樹
2/3

本日は雨天なり

「あ、雨」


隣で呟いた彼女の声に僕は窓を見た。

ざあざあと大きな音と共にバケツを返した様な雨粒が灰色のビル群に襲いかかる。


「じゃあ、私行くね」

「…うん、わかった」


僕は彼女を見ずに言った。


玄関のドアがガチャンと冷たい音を立てて閉まり、カツカツとヒールの甲高い足音が遠ざかっていく。



5年一緒だった。



一緒に買いに行った色違いのマグカップには一口もつけられていない紅茶が残されている。



茶葉は彼女の大好きなメーカーのダージリンだ。



紅茶に小うるさい彼女はいつでも自分で入れていた。

暮らし始めの頃、僕は茶葉の違いも味もわからなかったので、入れる度にああでもないこうでもないと手を出されては叱られて、何度も入れ直しをした。



僕はゆっくりと窓から部屋へと目を移した。



さっきまでと変わらない。



テーブルにおかれたマグカップ、整頓されたキッチン、埃一つないテレビ。




そして、空っぽになった彼女の本棚、消えたベッド、主人のいない、空っぽの部屋。



僕は窓越しに空を見上げた。



雨は当分止まない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ