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二度覚醒したモブの逆転無双 ~万年Fランク探索者の俺は、二度の覚醒を経てSランクをも超越し、鬼バズる~  作者: 豚汁


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万年Fランクの探索者

 俺、鈴木輝明は、どこにでもいる普通の高校二年生だ。

 これといった特徴もない、典型的なモブキャラクターのような存在。


 身長は百六十五センチと平均的で、体重は五十キロ。

 痩せ型で筋肉も殆ど付いていない。

 顔も特別イケメンでもなければブサイクでもない、記憶に残らないタイプの平凡な顔立ち。


 クラスでも目立たない存在で、深い付き合いをする友人はいない。

 成績も中の中程度。

 運動が特別得意でもなければ、音痴というわけでもない。


 何をやっても中途半端で、これといった才能もない。

 将来の夢も特にない。


 そんな俺が探索者になったのは、至極単純な理由だった。


 小学生の時、なんとなく見たダンジョン配信で、探索者たちが華麗に魔物を倒している姿を見た。

 キラキラと光る魔石を手にした彼らは、まるでゲームの主人公のように見えた。

 俺もあんな風になれるかもしれない。


 そんな淡い期待を抱いて、探索者の道を選んだ。

 しかし、現実は甘くなかった。

 俺は万年Fランクの探索者だった。


 探索者には階級があり、FからSまでのランク分けがされている。

 俺は最下位のFランク帯から一向に抜け出せずにいた。

 バイト代わりに魔石を換金して小遣いを稼ぐのが精一杯。


 休日に、一日八時間ダンジョンに潜って、日給五千円程度。

 これなら普通のバイトをした方が効率的かもしれない。

 それでも俺は探索者を続けていた。


 なぜなら、ここだけは俺にも居場所があるような気がしたからだ。

 平凡な日常から少しだけ逸脱できる、特別な場所。

 たとえ弱くても、モブだとしても、一応は探索者という肩書きがある。


 それが俺の凡庸な心を支えてくれていた。


 ダンジョンを潜る探索者には、必ず一つのスキルが宿る。

 これは探索者になる際の通過儀礼のようなもので、初めてダンジョンに足を踏み入れた瞬間、体の奥底から湧き上がる不思議な感覚と共に、固有の能力が開花する。


 炎を操る者、氷を生み出す者、怪力を得る者、素早さを極める者。

 様々なスキルが存在し、それが探索者としての適性や将来性を決定づける重要な要素となる。


 俺に宿ったスキルは『二重掛け』だった。

 これは何でも"二つに増やす"ことができる能力だ。

 斬撃を二回に分けることができるし、飴玉を二個に増やすことも可能だ。


 一見すると便利そうに思えるスキルだが、俺の場合は基礎ステータスが絶望的に低いため、その効果も限定的だった。

 例えば、俺の攻撃力は基本的に1~3程度しかない。

 スライムに剣で斬りかかっても、よくて3のダメージしか与えられない。


『二重掛け』を使用すれば、それが二回に分かれて合計6のダメージになる。

 確かに倍になってはいるが、元が小さすぎて意味をなさない。

 3が6になったところで、大して変わらないのだ。


 それでも俺は『二重掛け』を使い続けていた。

 癖のようになっていて、攻撃する際は必ずスキルを発動させる。

 無意識のうちに、頭の中で「二重掛け」と唱えながらダガーを振るう。


 効果は微々たるものでも、何もやらないよりはマシだ。

 ただ、このスキルには別の使い道もある。


 理論上は、一万円札を二枚にすることも可能だった。

 しかし、俺はそれを実行したことがない。

 それは偽札を偽造するのと何ら変わりない卑劣な行為だからだ。


 確かに金銭的には楽になるだろう。

 しかし、それは犯罪に等しい行為。

 魔石を地道に稼ぐのとは訳が違う。


 たとえ貧乏でも、真っ当に生きたい。

 そんな気持ちが俺を正道に留めていた。


 俺は中学一年から探索者を始めて、最近ようやくF+探索者になった。

 探索者のランクシステムは細かく分かれている。


 最下位のFから始まり、F+、E、E+、D、D+、C、C+、B、B+、A、A+と続く。A+を超えるとAA、さらにその上にAAA、そして最高位のSランクがある。


 探索者のランクは魔力量とステータス値によって自動的に決定される。

 体の中に宿る魔力を測定する装置があり、それによって客観的な数値が算出される。


 俺の場合、魔力量は極端に少なく、ステータス値も平均を大きく下回っている。

 それでも三年かけてFからF+まで上がったのは、小さな成長を続けてきた証拠だった。

 

 ちなみにSランクは日本に十人しかいないとされている超エリートだ。


 世界全体でも数百人に満たない。

 彼らは人類の守護者と呼ばれ、深いダンジョンの最奥部で強大なモンスターと戦い、世界の平和を守っている。


 もしSランク探索者たちがいなければ、ダンジョンからモンスターが溢れ出し、世界は混乱に陥っていただろう。

 俺たちは彼らに感謝しなければならない。


 俺のような底辺探索者から見れば、Sランクは雲の上の存在だ。

 俺とSランクの間には、越えられない壁がある。

 才能、努力、運、全てが違う。


 それでも俺は探索者を諦めるつもりはない。

 いつかEランクになり、最終的にはDランクになりたいと思っている。


 別にSランクやAランクになれるとは思っていない。

 ただ、今よりも少しでも上に行けたらいい。

 そんなささやかな願いを抱いている。


 そして探索者には、ごく稀に『覚醒』というイベントが起こることがある。

 これは探索者界でも伝説とされる現象で、モンスターを倒した際に通常では考えられないほど莫大な経験値を獲得できるというものだ。


 一瞬にして爆発的な成長を遂げ、ランクが数段階も跳ね上がる。

 まさに奇跡としか言いようがない出来事だ。

 覚醒の発生確率はおよそ一億分の一といわれている。

 もはや天文学的な確率だ。


 日本国内でも覚醒を経験した者は数人しかいないらしい。

 その全員が一気にAAAランクやSランクへと駆け上がり、一夜にして人生が変わった。

 覚醒した者たちは皆、その後の人生が約束される。


 莫大な富と名誉が待っている。

 テレビ出演、講演会、スポンサー契約。

 まさに宝くじの一等に当選したようなものだ。

 いや、宝くじよりもはるかに価値がある。


 お金では買えない力と地位を手に入れるのだから。

 俺も密かに覚醒を期待している。

 一億分の一という確率でも、ゼロではない。

 もしかしたら、俺にだって……そんな淡い希望を胸に秘めながら、毎日ダンジョンに潜っている。





 *





 俺の日常は、地味にスライムを倒して魔石をコツコツ稼ぐことの繰り返しだった。

 毎日学校が終わると、制服から探索者用の装備に着替えて、地元のダンジョンに向かう。


 俺の装備は安物ばかりだ。

 鉄製のダガー一本、薄い革の胴着、簡素な革靴。

 防具らしい防具もない。

 金がないから仕方がない。


 今日も俺は目の前のスライムと対峙している。

 俺が狩るのは主に一階層のスライムだ。

 緑色でプルプルとした、まん丸な体をした最弱のモンスター。


 動きも鈍く、攻撃力も低い。

 俺のような弱い探索者でも安全に倒すことができる相手だ。


 スライムのHPはおよそ20。

 俺の攻撃力は『二重掛け』を使って1~6。

 単純計算で数回攻撃すれば倒せる計算だが、実際にはクリティカルヒットや相手の防御力もあるため、大体五回程度ダガーで切り裂けば倒すことができる。


 ダガーを構える。

 相変わらず情けない戦闘スタイルだ。

 スライムは俺を見上げるように震えている。


 まるで「また君か」と言っているようだ。

 俺もこのスライムと何度も戦ったような気がする。


「ごめんね」


 そっと謝ってから、ダガーを振り下ろす。

 もちろんスキル『二重掛け』を発動させる。

 これはもう癖みたいなものだ。


 意識しなくても自然に発動している。

 一回の攻撃が二回分になる。

 微々たる効果だが、やらないよりはマシだ。


 スライムの体にダガーが食い込む。

 柔らかい感触が手に伝わる。

 相手はプルプルと震えながらもまだ生きている。

 HPが削れただけで、まだ余裕がありそうだ。


「はぁっ!」


 二回目の攻撃。

 またも『二重掛け』を発動させる。

 スライムが少し小さくなる。


「やぁっ!」


 三回目、四回目と攻撃を続ける。

 単調な作業だが、俺なりに集中している。

 一撃一撃に魂を込めているつもりだ。

 たとえ相手がスライムでも、手を抜くことはない。


「とどめだ!」


 五、六回目の攻撃でスライムは消滅し、小さな魔石を残した。

 直径二センチほどの青い結晶だ。

 これで今日の収入が五十円増えた。


 これが俺の収入源。

 一個当たり五十円程度で売れる。


 一日に倒せるスライムは百体程度。

 八時間の労働で五千円。

 時給にすると六百二十五円。


 余裕で最低賃金を下回る収入だ。


「あーあ、俺も覚醒しないかなぁ」


 魔石を拾い上げながら、そんな妄想をする。

 もし覚醒したら、一気にAランクやSランクになれるかもしれない。

 そうしたら人生が一変する。


 お金にも困らなくなるし、周りの見る目も変わる。

 もう底辺探索者と呼ばれることもない。

 でも現実は厳しい。


 一億分の一という確率は、ほぼ不可能に近い。

 それでも俺は夢を見続ける。

 夢を見ることくらい、誰にでも許されているはずだ。


「……次のスライムを探そう」


 ダンジョンの奥へと向かう。

 今日もまた、地味で単調な一日が続く。

 それでも俺は歩き続ける。

 いつか、何かが変わることを信じて。

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