10/10
死生観10
8人目である。
これが終われば私はこの仕事を辞める手筈となっている。
上へかけあった訳ではない。飛ぶつもりである。
人の心中を察することなど誰もできぬのだ。
だからこそ卑怯でも私は逃げ出す。
私が自らの人生から逃げ出すのはこれが初めてのことだ。
約束を破った友人に酷く腹を立てていた幼少期の私が今の私を見たら、軽蔑するだろう。
本人さえ心中を理解することもできぬのに、他の誰かが心中を理解するなど甚だ不可能である。
目をつぶり、耳を塞ぐ。
何も聞こえず、何も見えず、私が見るべきものも、私が聞くべきものも何もない。
だが、聞こえてしまった落ちた瞬間。その一瞬間。
終わったと思ったたった1回の瞬きの中でたしかに聞き取ってしまった。
かすれたような謝罪の言葉が私の鼓膜に粘り着いた。




