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涙降る 優しい顔の裏側が 幸せだけと誰が決めたの
前を向くと決めている。
夫がいて、子どもがいる。
それだけでなく出来ることは沢山あり、出来ないことを助けてくれる人もいる。
そんな恵まれた状況の中で、弱音を吐くのはタブーのように感じていた。
私の涙など、見たい人がいるはずもない。
悲しみの涙をこぼす時、私はひとりになるようにしていた。
涙の形のネックレスにそっと触れる。
下を向いたので、涙がそこにポトリと落ちた。ネックレスを伝い、私の指が濡れる。綺麗だ。
今まで涙を、まるで悪者のように感じていたのにどうしてだろう。
こんなに美しいものが流れている私の体が、とても愛おしく感じた。
後ろから、そっと肩に手を置かれた。私の手よりも大きな優しい手。
夫が優しい声で
「あったかいコーヒー淹れようか」と言う。
そうか、悲しい時に私をひとりにしないでくれるのか。
ひとりにしないでくれる人がいるのか。
涙が流れるたびに私の心は温かく、沢山のものが染み込んでいく。
悲しみの涙にも温度があり、それを流すたびに私の内側に奥行きが増す。
また、強くなる。
弱くても良いという強さがある。
そろそろ前を向こう。
「ありがとう」
笑顔は勝手に溢れた。




