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【短編集】短い歌の恋  作者: 葛の葉


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7/9

誠実を求めないのに 「お前だけ」 うそ吐く人と 今日も溺れる

ずっと夢の途中にいるような心地で、夢から覚めても夢。

午後の微睡の中、素肌に感じるシーツの肌触りにももう飽きてきた頃合いだった。


「あ、雨」


窓の外は、この季節なら賑わっているはずだった。

マンションの目の前の川には桜の木が植えられていて、三月下旬から四月の頭にかけては花見客と露店で賑わう。

今日はやけに静かだと思っていたら、雨が降り出していたのだ。

天気予報を見ることもなく、久しぶりの連休をベッドで過ごした。


素肌にスリップワンピースを纏い、窓の外を眺めていたら後ろで空気の動く気配がした。

ひと足先に起きていた彼が、キッチンからミネラルウォーターのペットボトルを持って現れる。


「水飲む?」


その問いに頷くと、近づいてきた彼に顎を掴まれ、口で口を塞がれる。

口内に水を流し込まれ、嚥下しきれなかった水が顎を伝う。


「下手くそ」


そう言って彼は笑い、後ろから私を抱き締める。


愛情の無い私たちが、こんな風に抱き合っているのは滑稽だ。

都合の良い時だけ会って、体を繋げるだけの即物的な私たち。

愛して欲しいとも思わないし、愛したいとも思わない。

だからこそ、動物的本能で繋がっている。そう思っている。


「雨、降ってきたの」


「あぁ、本当だ」


彼は当たり前のように私の胸を弄りながら答えた。

窓の外など見ていないことは、振り向かなくてもわかる。


「桜が、終わるな」


彼はそう言って、私にキスをした。唇という柔い粘膜を何度も擦り合わせる。


逢瀬の中、どこか冷静でいる私の頭は桜のことばかりを考えていた。

こんなに近くに桜があるのに、バルコニーから見下ろすばかりの桜。プラスチックのカップに入ったぬるいビールと、焼き鳥。

そういうものを食べながら、笑ってこの桜を見てみたい。

見てみる日がいつか私にも訪れるだろうか。


二人でベッドに寝転び、荒い息を整えている時に彼が言った。


「後で、その辺の桜見に行こうか」

「え?」

「桜が終わる前に」


うん、と答える前にまた、キスで唇を塞がれた。


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