誠実を求めないのに 「お前だけ」 うそ吐く人と 今日も溺れる
ずっと夢の途中にいるような心地で、夢から覚めても夢。
午後の微睡の中、素肌に感じるシーツの肌触りにももう飽きてきた頃合いだった。
「あ、雨」
窓の外は、この季節なら賑わっているはずだった。
マンションの目の前の川には桜の木が植えられていて、三月下旬から四月の頭にかけては花見客と露店で賑わう。
今日はやけに静かだと思っていたら、雨が降り出していたのだ。
天気予報を見ることもなく、久しぶりの連休をベッドで過ごした。
素肌にスリップワンピースを纏い、窓の外を眺めていたら後ろで空気の動く気配がした。
ひと足先に起きていた彼が、キッチンからミネラルウォーターのペットボトルを持って現れる。
「水飲む?」
その問いに頷くと、近づいてきた彼に顎を掴まれ、口で口を塞がれる。
口内に水を流し込まれ、嚥下しきれなかった水が顎を伝う。
「下手くそ」
そう言って彼は笑い、後ろから私を抱き締める。
愛情の無い私たちが、こんな風に抱き合っているのは滑稽だ。
都合の良い時だけ会って、体を繋げるだけの即物的な私たち。
愛して欲しいとも思わないし、愛したいとも思わない。
だからこそ、動物的本能で繋がっている。そう思っている。
「雨、降ってきたの」
「あぁ、本当だ」
彼は当たり前のように私の胸を弄りながら答えた。
窓の外など見ていないことは、振り向かなくてもわかる。
「桜が、終わるな」
彼はそう言って、私にキスをした。唇という柔い粘膜を何度も擦り合わせる。
逢瀬の中、どこか冷静でいる私の頭は桜のことばかりを考えていた。
こんなに近くに桜があるのに、バルコニーから見下ろすばかりの桜。プラスチックのカップに入ったぬるいビールと、焼き鳥。
そういうものを食べながら、笑ってこの桜を見てみたい。
見てみる日がいつか私にも訪れるだろうか。
二人でベッドに寝転び、荒い息を整えている時に彼が言った。
「後で、その辺の桜見に行こうか」
「え?」
「桜が終わる前に」
うん、と答える前にまた、キスで唇を塞がれた。




