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【短編集】短い歌の恋  作者: 葛の葉


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3/9

おもちゃ箱 傷がついても大事にしてた あの頃のままじゃなくても

夜中に目が覚めた。

もう一度眠ろうとしても、目が冴えてしまってなかなか寝付けない。諦めてキッチンに向かい、水を汲んで一口飲んだ。

ため息と共に身体中の力が抜けて、そのまま床にペタンと座った。


虚しい。寂しい。ここじゃないどこかへ。


そんな気持ちを抱くのはこれが初めてではないから、いつか過ぎ去っていくものだと分かってる。

分かってる。けど。


小さい頃に絵本で読んだ、ギリシャ神話をふと思い出す。

箱の中から、悲しみや病気や嫉妬などの『悪いもの』がどんどん飛び出していく話。

真っ暗な箱の中、最後に残った『希望』は、妖精の羽が生えていて美しく、箱の外に憧れるように上を見上げていた。


私の希望はどこだ。

きらきらした気持ちで、楽しむことだけで全てが成り立っていた子どもの頃。おもちゃ箱を開けるだけで幸せだった。


願っても、あの頃に戻れるわけじゃない。

大人になった今、私のおもちゃ箱はどこ。


スマホが、メッセージの受信を告げるため点灯する。

こんな夜中にメッセージを送ってくるのは、いつもの友達のうちの誰かに決まってる。


予想通り、友達からの予定を確認するメッセージだった。何もこんな夜中に送ってこなくても。

ふふっと笑って、一人の部屋に響く自分の笑い声に少し驚き、もう一回笑った。


次の予定にはネックレスを付けていこうかな。

オーロラが入ってる、おもちゃみたいなネックレス。

子どもの頃にちょっとだけ憧れたお姫様のお城のシャンデリアみたいに、石がしゃらしゃら鳴る新しいネックレス。


虚しいし、寂しいし、ここではないどこかへ行きたい。でも別に、そんな自分が嫌いなわけでもない。


待ってなくても明日は来る。


虚しさも寂しさも、どこかへ行きたい欲求も、友達に聞いてもらおう。


私の心のおもちゃ箱にも『希望』がずっと、最後まで残ってる。


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