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第94話 畑  《挿し絵あり》

「ジ…ジルさん、光が」


「ん?」


ジルの体からは弾けんばかりの黄緑色の光が照っていた。


「ドーツクターツク

慣れるとリズムをイメージしながら

ドーツク

普通にしゃべれるわよ」


「すごい…」


ライドンもさっきから試みてはいるものの、こちらはうまくいかないようだ。


「シュン、なんでお前はできるんだよ、意味がわからない」


「いや、これはやったことがあったんだよ」


これに関してはシュンはライドンより一日(いちじつ)の長がある。


「ジルさん、でもこれをずっと纏わなきゃいけなくなる状況ってよくあるんですか?

何十体のモンスターと常に相対するような…」


ジルはなんとも言えない表情でシュンを見る。


「戦う相手はモンスターだけかしら?」


「…え?」


「連盟の仕事はそれだけじゃないわ」

「ときには泥水に手を突っ込まなきゃいけこともあるのよ」


ジルの表情。

真っ直ぐシュンを見ている。

その眼差しに、シュンは一瞬怒られたかのように感じた。


「まあ、ここまでわかればあとは自分で磨けるわよね

ひとまず畑に移動しましょ

見えてるわよね、もうみんなやってるわ」


さっきの受け答えは無かったかのように流された。シュンもこれ以上聞くまいと思った。

今はそのときじゃない気がしたから…。


あたりは見渡す限りの大草原のようだが、少し先まで目をやるとある程度整備されている場所がある。

すでに開墾は進んでいるのだ。


ジルについて歩く二人。

開墾に携わる人数は屈強な男たちばかり二十人ほど。みなテキパキと道具を使いこなし、草を刈ったり土を掘り起こしたりしていた。


「ジルさん、お疲れさまです」

「お、ジルさんこちらは順調です」


ニコニコと目で挨拶するジル。

皆からの信頼は篤いようだ。

三人はすでに開墾が終わった畑に並んだ。


「ここにはすでに野菜の種を10種類ほど植えてるわ、

それぞれに特徴のある野菜たちよ」

「ただ、まだ種を植えただけなの

これの芽を出して、苗の状態までできる?」


「あの…ジルさん?そんなこと…できるわけが」


戸惑いを隠せないシュン。


「ジルさん!」


そこへ、わらわらとこっちへ来る人影があった。

見ると、みな律動連盟の制服を着ていた。


クリーム色に金色のライン。ジルと同じ制服が二人。

クリーム色に灰色のライン。初めて見る制服が一人だ。


「紹介するわ

クロニアのデコイとスーノ

プリーストのネリよ


こちらはテンポスの

ライドンとシュン


それぞれの聖拍院で一番有能なのを引っ張ってきたわ」


ジルにそう言われてみんなが嬉しそうだ。


デコイは長身の男の子、髪は茶系の短髪だ。見るからに素朴な印象で都会っ子の感じが無い。

スーノは赤の髪色の女の子。前髪がすごく短い。少しそばかすがある。


ネリは伏目がちな女の子。紫がかった髪色で、後ろに三つ編みにしている。


挿絵(By みてみん)


五人はそれぞれ挨拶した。

割とおとなしそうなメンバーだなとシュンは思った。

イーサップでの出会いが強烈すぎて身構えていたが、スリルガンの二人は異常すぎた。


「せっかく全員揃ってるし、競争しましょうか」

「この辺一帯に野菜の種をたくさん蒔いてるのだけど…そうね、まあ、10種類、合計1,000個くらいあると思うわ

条件は、1つずつでもいいから10種類全て最低芽を出させること

その上で数を競うわよ、正午までの1時間の勝負」


「似たようなリズムにならないようにそれぞれ特徴のある野菜を植えたから

エイト

16

ゴースト

低音の16

3連

最低これはやってね」


(3連…三拍子)


シュンの聞きたくない言葉だ。


「エイトは赤茶トマトだったとして

BPMが150以上ならストレートリズム…

3連は白茄子、フィルの打ち込み方次第で成長速度は増幅傾向…

ドキーニがあればリズムの打ち方を変えていけば一度に4つまで成長可能…」


「え?」


突然となりで小さな声がぶつぶつ聴こえた。


ネリが何かしゃべっている。

驚くシュンに気づき、チラとこちらを見た。


「あ、気にしないでください

しゃべらないとイメージを作れないんです」


彼女の手には、小さな紙と鉛筆のようなものが握られている。


(ガリ勉だ…ガリ勉委員長タイプだ…!!)


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